越境ECで輸出をする時に必要な
通関手続きについて解説
越境ECで輸出をする際には、必ずしも通関手続きが必要になる訳ではなく、配送手段によっては不要になることもあります。とくに個人消費者向けであれば免除されることも多いため、越境ECは一般的な輸出と比較して手続きの面は簡略化されるというメリットがあります。
通関手続きをする必要が無くても荷物を税関に通すには必要書類の準備が必要です。必要書類は利用する発送方法毎に異なるので、事前に何が必要になるのか確認しておくと良いでしょう。
当記事では、越境ECで商品を輸出する時に必要な通関手続きについて解説していきます。通関手続きが不要になるケースや必要書類、また通関手続きを自社でやる場合の方法も説明していますので、通関手続きについて気になる人は参考にしてください。
必要な通関手続きは配送する手段によって異なる
越境ECで必要になる通関手続きは、配送する手段によって異なります。選択する手段によっては通関手続きが不要になるケースもあるので、通関手続きを避けたい場合は手続きが不要になる配送手段を選択すると良いでしょう。
【越境EC】
配送方法 |
通関手続きの有無 |
商品の配送 |
1度の取引量 |
国際郵便 |
商品20万円まで不要 |
消費者に直接 |
数十Kgまで |
国際宅急便 |
不要 |
||
フルフィルメント |
必要 |
業者を経由する |
1度に大量の商品を 搬送できる |
貨物輸送会社 |
必要 |
自社で通関手続きが必要になるのは、国際郵便で1度に20万円以上の商品を配送する場合と、一度に大量の商品を海外へ搬送する場合です。また、通関手続きが必要になるケースにおいても、通関業者に手続きの代行を依頼することが一般的です。
いずれの配送手段を選択するかは、一度の取引量で決めると良いでしょう。少量の販売を想定している場合は消費者向けの配送手段を利用し、一度に大量の商品を販売したい場合は業者を経由する配送手段を選択しましょう。
消費者向けの配送手段
消費者向けに直接配送する手段である国際郵便と国際宅急便は、20万円以下の商品を配送するならどちらも通関手続きが不要です。その他の面を比較すると、国際郵便の方が配送費用が安価であり、国際宅急便の方が配達日数に優れる傾向にあります。
たとえば、中国に10Kgの商品を発送した場合の費用と配達日数の比較は次の通りです。
【中国に商品発送した場合の費用と配達日数比較】
比較項目 |
国際郵便 |
国際宅急便(ヤマト運輸) |
費用 |
EMS:10,600円 航空便:8,350円 |
14,800円 |
配達日数(最短) |
EMS:4~5日 航空便:7日 |
3~5日 |
配送料金を重視する場合は国際郵便、食品など鮮度や質が重視される商品を発送する場合には国際宅急便を選択するなど使い分けると良いでしょう。また、国際郵便は1度に配送する商品価格が20万円を超えると通関手続きが必要になるので、高額商品を個人あてに配送する場合は国際宅急便を選択するのも一つの手段です。
ただし、利用するサービスや依頼する時期、配送国によっては配送速度は前後する可能性もあり得ます。越境ECで消費者宛てに商品を発送する際は、主に出品する配送国や商品の性質から、国際郵便を使うか国際宅急便を使うか決めると良いでしょう。
業者を経由する配送手段
一度に大量の商品を発送するのに業者を経由する配送手段としては、フルフィルメントと貨物輸送会社の利用が考えられます。通関手続きの点で言えば業者への代行が前提のため、どちらのサービスを使うかはその他の特徴から決める必要があります。
【フルフィルメントと貨物輸送会社の特徴】
サービス名 |
特徴 |
フルフィルメント |
プラットフォームが運営する倉庫に商品を発送し、運営者の物流センターから消費者に向けて商品を販売する。 たとえば、Amazonが運用する「フルフィルメント by Amazon(FBA) 」などがある。 物流に関してはプラットフォームに任せられるが、通関手続きに関しては自社で行う必要があり、多くの場合は業者に代行依頼をする |
貨物輸送会社 |
海外にある取引先企業に対し一度に大量の商品を発送する。 |
フルフィルメントと貨物輸送会社の利用の違いは取引相手です。フルフィルメントはB2C向けにプラットフォームが運用する倉庫に商品を搬入するのに対し、貨物輸送会社の利用はB2B向けに一度に大量の商品を発送します。
越境ECでは主に消費者と取引するので、貨物輸送会社を経由して商品を海外に発送することは稀です。B2Cの越境ECは受注を受けてすぐに発送しないと顧客満足度の低下を招く恐れがあるため、一度に大量の商品を搬入する場合はフルフィルメントサービスを利用し受注後にすぐ商品を発送するケースが多いためです。
ただし、フルフィルメントは継続的に倉庫を利用する手数料が発生するため、頻度を抑えた発送なら貨物輸送の方が費用を抑えられる可能性はあります。とくにB2B取引であれば商品の発送頻度を抑えることもできるので、一度に大量の製品を発送するなら海外の取引先企業を見つけたほうが手数料を抑えられることもあるでしょう。
業者を経由して発送する手段に関してフルフィルメントと貨物輸送のどちらが適切かは、取引量や商品の性質、ビジネスモデルによって異なります。利用前に双方のサービスに問合せをして、自社にはどちらが合うか事前にシミュレーションをしておくと良いでしょう。
通関手続きに必要になる書類
越境ECを利用して海外に荷物を配送する際には、通関手続きに必要になる書類を準備しておきましょう。自社で通関手続きをするのに必要なのはもちろんのこと、通関手続きを代行してもらう場合でも業者に提出しなければならない書類があるためです。
【通関手続きに必要になる書類】
書類名 |
必要になるケース |
書類の発行先 |
インボイス |
必須 |
自作 |
パッキングリスト |
必須 |
自作 |
送り状 |
国際郵便か国際宅急便で消費者宛てに 直接発送する場合 |
郵便局やコンビニ |
税関告知書 |
国際郵便で20万円以下の商品を発送する場合 |
郵便局 |
輸出申告書 |
20万円を超える商品を発送する場合 |
税関のホームページ |
船積依頼書 |
通関手続きを依頼する場合 |
依頼業者より受け取る |
委任状 |
通関手続きを依頼する場合 |
依頼業者より受け取る |
原産地証明書 |
輸入国の法律や規則による |
商工会議所 |
必須になる書類はインボイス(商品送り状)とパッキングリストであり、これらは自作する必要があります。その他の書類の発行先は利用する配送手段によって異なるので、事前に配送手段を決めておき、必要な書類の準備をしておきましょう。
また、原産地証明書など、商品を発送する相手国の法律や規則によって別途必要になる書類もあります。自社の商品を搬送するのに必要になる書類は無いか、主要な輸出国別に法規制を調べておくか、必要書類を専門家に相談しておくと良いでしょう。
自社で通関手続きをする時の流れ
業者による代行を利用せずに自社で輸出の通関手続きをする際には、次のような流れで手続きを進めます。
【輸出する際に必要になる通関の流れ】
手順 |
手続き相手 |
出荷 |
貨物輸送会社 |
他法令手続き ※ |
関係する主管省庁課 |
輸出申告 |
税関 |
審査 |
税関 |
検査 |
税関 |
輸出許可 |
税関 |
船積み・搭載 |
貨物輸送会社 |
※ 特定の品目を輸出する際にのみ必要
税関「貨物到着から貨物と引き取りまでの流れ 通関の流れ 」より作成
通関手続きは税関で行われます。出荷する荷物を税関の検査場、または保税地域へと搬入したのち、所定の審査と検査を受けて輸出許可を受ける必要があります。
通関手続きが完了するまでには数日の期間を要するほか、税関の混雑状況などにより前後します。また、税関職員とのコミュニケーションや必要書類の準備など専門性の高い業務が必要になることも多いため、自社で通関手続きを行う際には入念な前準備と時間の確保をしておきましょう。
なお、他法令手続きは動植物や特定の食品、中古車などを輸出する際に、関係する省庁より輸出に関する許可や承認を受けて、それを証明する書類を税関に提出する必要があります。他法令手続きが必要になる品目と主管省庁に関しては、税関の「輸出関係他法令一覧表 」のページを参考にしてください。
通関手続きに必要になる費用
通関手続きに必要になる費用は、次の2通りで異なります。
- 自社で手続きを行う場合
- 業者に通関手続きの代行を依頼する場合
手続き自体には費用が発生しないため、自社で通関手続きを行う場合は原則として費用は掛かりません。ただし、保税地域や保税工場を利用する場合、または指定地外検査や不開港への輸出など例外的な対応を依頼する場合は、税関に別途手数料を払う必要があります。このような対応が必要になる場合は、税関サイトの「税関関係手数料 」のページから手数料がいくらになるか確認してみてください。
一方、通関手続きを業者に依頼する場合の費用は、取引をする業者によって異なります。2017年に通関業法の基本通達が改正され、各業者が手数料を自由に設定できるようになったためです。
とはいえ、多くの場合は17年以前の最高額に準ずる手数料で設定されています。以下、通関業法が改正される前の通関業務に関わる料金の最高額です。
【17年以前の通関業務料金表】
通関業務の種類 |
1件当たりの料金 |
輸出申告 |
輸出製品が20万円を超える:5,900円 輸出製品が20万円以下:4,200円 |
保税蔵置場蔵入申請 |
5,100円 |
その他保税地域の利用に係る申請 |
7,000円 |
外国貨物船(機)用品積込申告 |
5,100円 |
その他の申告・申請又は届 |
1,300円 |
諸申告又は許可承認書写作成 |
200円 |
東京都港湾局「通関業務料金表(平成23年度版) 」より作成
通関手続きに関して上記の料金よりも高い費用を設定されている場合は、相場より高いということができます。ただしサービス内容や手続きの難しさにより値段が上下する可能性はあるので、依頼業者を決定する際は総合的なサービス内容から判断すると良いでしょう。
まとめ
越境ECで受注の決まった商品を海外に発送する際、通関手続きが必要になるかは配送する手段によって異なります。商品価格が20万円以内なら免除になる他、国際宅急便を利用すれば自社で通関手続きをする必要はありません。
通関手続きが必要になるのは、高額な商材を発送する場合や一度に大量の商品を発送する場合です。通関手続きは専門的な書類の準備や手続きが必要になるため、多くの場合は業者に代行してもらうことが一般的です。
通関手続きの有無に関わらず、海外に荷物を発送する時には必要書類の準備が必要です。自社で通関手続きが必要になる場合は書類の準備の他にも手続きの流れを確認しておき、税関での手続きを進めるようにしてみてください。
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