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  • 2024.02.22

越境ECとは?国内ECとの違いから特徴を解説

越境ECとは?国内ECとの違いから特徴を解説

スマートフォンやインターネットが世界的に普及している昨今、販路拡大の選択肢として越境ECに注目が集まっています。越境ECとはWEBのプラットフォームを通じて海外への消費者向けに商品を販売するECの一つの形態です。

海外市場に商品を販売できるという特性上、越境ECには国内ECと比較して巨大な市場にチャレンジできるというメリットがある一方で、手続きや法律の理解などコストが重いというデメリットもあります。

当記事では、越境ECの概要と国内ECとの相違点を解説します。販路拡大の手段として越境ECの利用を検討している方は参考にしてみてください。

境ECとは海外向けの電子商取引を指す

越境ECとは、EC(Electronic Commerce、イーコマース)に国境を超える意味合いの「越境」をつけた造語であり、海外向けに電子商取引することを指します。

越境ECはECの一種であり、インターネットやコンピューターネットワークを利用して商品やサービスの受発注を完了させるシステムです。サイトを通じた取引が一般的ではありますが、定義上はメールやSNSなどネット上で完了する取引も越境ECの一種と言えます。

取引の形態としてはB2BやC2Cも含みますが、越境ECでは海外の消費者と直接やり取りをするB2C取引が一般的です。WEB上で完結するという特性上、国内にいながら海外の消費者をターゲットにできるのも越境ECの特徴と言えるでしょう。

経済産業省による越境ECの定義

令和4年度電子商取引に関する市場調査報告書 」において、経済産業省は次の6つのいずれかの販売モデルで海外消費者向けに商品を販売しているケースを越境ECと定義しています。

【経済産業省による越境ECの定義】

事業モデル

概要

国内自社サイト

自社の持つ既存のECサイトを多言語に対応させて海外消費者向けにも販売するモデル

国内ECモール等出店

越境ECに対応した日本語サイトに出店しつつ、国内の消費者向けの延長線として海外の消費者へにも商品を販売するモデル

相手国EC等モール出店

商品を売りたい相手国のECモールに出品するモデル

保税区活用型出店

消費者の在住する国の保税区内にある倉庫に予め商品を発送しておき、受発注後に保税倉庫から配送する事業モデル。相手国ECモール等出店の派生形であり、主に中国向け越境ECで活用される

一般貿易型EC販売

一般貿易における販売チャネルとしてECを活用するモデル。主にB2B取引においてネット上で手続き完結させるが、通関など手続きに関しては一般的な貿易に準じる

相手国自社サイト

商品を売りたい相手国専用にECサイトを構築する

経済産業省の定義する事業モデルは、新たに越境ECに参画する事業者がどのモデルで開始するべきかの参考になります。

EC事業そのものが初めての場合は、国内ECモール等出店や相手国ECモール等出店、保税区活用型出店モデルを選択するのが良いでしょう。知名度のあるECサイトには消費者が集まっているので、集客施策をする必要性がないためです。

一方、自社サイトを構築すれば既存のECサイトを利用するうえで発生する手数料の支払いが免除されます。すでに自社ブランドが海外において一定の知名度を得ておりWEB上での集客が見込める場合は、手数料の抑えられる自社ECサイトの多言語対応や相手国自社サイトの作成をするのも良いでしょう。

どのモデルが利益を最大化できるかは、越境ECを始める時期の状況によって異なります。越境ECのチャレンジを検討しているなら、既存のECモールに出店するのか、自社でECサイトを構築するのか、状況に合わせた選択を心がけてください。

国内ECと比較した越境ECの特徴

国内ECと比較して、越境ECには市場規模、為替の絵強、配送コスト、適用される法律という4つの特徴に留意する必要があります。

【国内ECと比較した越境ECの特徴】

特徴

概要

市場規模

国内ECより越境ECの方が40倍以上の規模感がある

為替の影響

為替レートによる

配送コスト

越境ECの方が高くなる傾向にある

適用される法律

国内の法律に上乗せして、越境ECでは関税法や国際法、取引する国の法律が適用される

越境ECは巨大な市場に商品を販売できるため、販路拡大の一つの手段としては国内ECより巨大な市場にチャレンジできるのがメリットです。一方で為替変動のリスクや配送、法律の面から金銭的、時間的コストが増大する傾向にあるため、国内ECと同じ価格設定で同数の商品を販売する場合は利益が下がるリスクがあります。

そのため、越境ECを利用してた商品販売を始める時には、コストを払ってでも利益が出るかシミュレーションをしておくのが重要です。海外市場についての知識や専門家の意見が欲しい場合には、中小機構の運営するEC活用ポータルサイト「ebiz 」やジェトロ(日本貿易振興機構)の貿易投資相談が無料で活用できますので、利用を検討してみてください。


市場規模が巨大

国内ECと比較して、越境ECは市場規模が巨大です。市場規模を測るうえで重要な指標になる取引額、消費者数いずれにおいても越境ECは国内ECを大きく上回っています。

2021年の国内ECと越境ECの市場規模の比較】

国内EC

越境EC

B2C市場取引額

202億USドル ※1

7,850億USドル

B2C市場成長率

8%

26

利用人口見込み ※2

1.16億人

49億人

1 国内ECの売上19.4兆円を2021年の円ドルの平均為替レート109円より算出
2 インターネット利用人口から算出

2021年時点における日本国内のB2C市場と比較して、越境EC40倍近くの取引規模を誇ります。市場の成長率も越境ECの方が高く、国内ECと比較して3倍ほど差をつけられています。その結果、2030年の越境ECの市場は79380USドルまで拡大する見込みであり、市場規模の差は大きく開いていくと予想されています。

また、利用人口も越境ECの方が多いです。とくに日本は将来的な人口減少に比例してEC利用者も減少する見込みなのに対し、世界人口とインターネット利用者数は今後も増加し続けており、比例して越境ECの利用者も増加すると予測されます。

売上規模においても利用人口においても、越境ECは市場規模が国内ECと比較して大きく、今後もその規模は拡大していく見込みです。とくに十年単位の長期的な目線で売上を拡大していきたい企業にとっては、越境ECの利用は販路開拓における選択肢の一つとなるでしょう。

越境EC市場における日本製品のニーズ

市場規模が大きかったとしても、製品が売れなければ越境ECを利用する意味がありません。しかし、越境ECにおいて日本製品のニーズは存在しているため、新たに越境ECを利用することで利益を出せるチャンスはあります。

たとえば、2022年の中国における越境ECB2Cの取引市場は1,653USドルと見られており、うち約205USドルが日本からの輸入です。取引額のうち約1/8を日本が占めている計算となり、日本製品は中国市場においてある一定のニーズがあることがうかがえます。

越境ECを通じて中国に出品している製品としては、美容コスメや衣料品、食品が人気です。中国の消費者が越境ECを通じて日本製品を買いたい理由として、国内にない物を購入できるから、正規品等信頼できる先から購入できる、高品質であるなど、日本製品の独自性や品質が評価されているのです。

また、商工会議所「越境 EC/ 海外販売の 基礎知識 」によると、以下のような製品が越境ECで人気があると説明されています。

【越境ECでニーズのある日本製品】
・中古ブランド品やアクセサリー
・食品、日本酒、健康食品
・美容製品、コスメ
・自動車やバイクなどのパーツ
・ベビー用品
・アニメやゲームなどカルチャーグッズ
・伝統工芸品
・スポーツ用品

とくに日本食やカルチャー製品、伝統工芸品などは日本独自の文化への評価が人気を博しており、美容製品やベビー用品、スポーツ用品や乗り物のパーツなどは品質が評価されていると推測できます。

以上のことから、越境ECにおける日本製品のニーズは日本文化の独自性か品質の高さにあると言えるでしょう。海外の消費者は自国の商品に無いものを越境ECに求めているのであり、現地の競合製品と比較した時に出品する製品に何かしらの優位点がなければ利益を出すのも難しいです。

そのため、越境ECを活用する時には、自社製品に独自性や品質が担保されているかは出品前に確認しておくと良いでしょう。

為替の影響を受けやすい

国内ECと比較して、越境ECは為替相場の影響を受けやすいです。越境ECは輸出国との為替レートによって売上が変動するため、利益増にも利益減にもつながる可能性があるからです。

商品価格を一定にする場合、円安が進行すれば越境ECでは売上が増加します。たとえば、アメリカの市場において10USドルの商品を10個販売した場合、最終的な売上は以下のように変動します。

【円ドルレート別の売上例】

円ドル為替レート

ドルでの売上

円換算した時の売上

1USドル100

100USドル

10,000円

1USドル120

100USドル

12,000円

1USドル140

100USドル

14,000円

円ドルレートが100円から120円に変わった時の例をとってみると、同額の100ドルを購入代金を円に戻したときの売上は2,000円向上します。為替レート上では1ドルの価値が100円から120円と高まっているため、同額の10ドルを円に換算した時に1個当たり200円の売上増に繋がるのです。

円安とは反対に、円高の時は越境ECを利用した時の売上は減少します。販売価格を上昇させることで売上の補填ができなくはありませんが、今度は価格上昇により市場のニーズが下がって販売数が減少することが予測されます。

越境ECを利用することは円安によるチャンスがある一方で、円高による売上が減少するリスクをはらんでいるとも言えるでしょう。とくに薄利多売で利益率の低い事業者や、キャッシュフローの厳しい事業者は円高による売上減のリスクが大きくなります。

為替による売上減少のリスクを下げるのなら、既存の販路や国内ECで売上の基盤を作る所から始めましょう。早めに越境ECによる販売にチャレンジしたい場合は、販売価格を上げて高い利益率を確保するなど、リスクを分散する手段を講じてからの利用を考えてみてください。

配送にかかるコストは高い

国内ECと比較して、越境ECの方が配送にかかるコストは時間的にも金銭的にも高いです。国内、越境EC共にかかるコストとして配送時間と配送料があり、越境ECのみにかかるコストとして通関手続きと関税があげられます。

【配送コストの内訳】

配送コストの種類

概要

配送時間

移送距離に比例して時間が掛かるので、より長距離を運ぶ可能性の高い越境ECの方が長くなる傾向にある

配送料

移送距離に比例して値段が上がるので、より長距離を運ぶ可能性が高い越境ECの方が高くなる傾向にある。
負担は原則として消費者だが、販売者側が負担することも可能

通関手続き

越境ECのみにかかる。
手続きは販売者側がする必要があり、発送する際に必要書類を準備して税関に提出する

関税

越境ECのみにかかる。
負担は原則として消費者だが、販売側が負担することも可能

これらのコスト消費者側から見た場合、越境ECでの海外製品の購入は配送に時間がかかり、配送料と関税分の費用が上乗せされる高コストな買い物です。そのため、現地のすぐに手に入る安価な製品が競合になってしまいます。

販売者側から見た時にも、通関手続きにかかる時間的コストも無視できません。越境ECでは消費者からの注文に対して個別に配送手続きをするという特性上、税関に輸出申請書などの必要書類を都度提出する必要があるためです。通関業者に依頼することで時間的なコストの削減はできますが、別途手数料が必要になるため金銭的なコストが発生します。

越境ECでは消費者にかかるコストが多いため、現地の良品と比較して配送コストを払ってでも買いたいと思わせられる商品の販売が必要になります。また、取引規模に応じて通関手続きを自社でやるのか通関業者に依頼するのか決めておき、どちらの方が利益が出るのか試算しておくのが良いでしょう。

なお、配送する国と商品の価格、サイズ次第では通関手続きと関税の免除を受けられるケースもあります。越境ECを活用する際には、自社製品が免除を受けられる配送方法は無いか確認をしておくのをおすすめします。

越境ECで通関手続きが免除されるケース

越境ECを利用して海外に商品を発送する場合、配送方法によっては通関手続きが免除されるケースがあります。

【通関手続きが免除されるケース】

配送方法

概要

国際宅急便

通関手続きは宅急便業者が代行してくれるが、各社規定のサイズ未満での利用になる

国際郵便

規定のサイズ未満でかつ20万円までの商品発送ならば関税手続きは不要。
20万円を超える場合は規定の通関手続きが必要になる

通関手続きが免除されるのは、主に発送する荷物の大きさと商品の価格が一定未満の場合です。取引する製品によっては免除を受けることは難しいですが、B2C取引においては通関手続きの免除を受けられるケースも珍しくありません。

越境ECで荷物を発送する時には、自社製品のサイズと価格帯で通関手続きの免除を受けれる発送方法は無いかを事前に確認しておくのが良いでしょう。

越境ECで関税が免除されるケース

越境ECを利用して海外に商品を配送する場合、特定の条件においては関税の支払いが免除されるケースがあります。

【関税の免除が受けられるケース】

ケース

概要

中国の越境EC総合税

以下の条件を全て満たすときに関税率を0%にできる

・中国国内の個人が個人使用目的で商品を購入する
・特定の越境ECプラットフォームで取引をする
・ポジティブリスト記載の特定品目が取引される
・保税区と呼ばれる中国保税倉庫から商品を発送する

商品を中国国内の倉庫に保管する必要があるので手数料が発生する

デミニマス値
De Minimis Value)以下の個人輸入

個人あての商品において、各国が定めるデミニマス値以下の取引であれば関税がかからない。

【例】
アメリカのデミニマス値:800USドル
EUのデミニマス値:150ユーロ

各国規定により特定品目ではデミニマス値が適応されないこともある

関税の免除が受けられるのは、取引相手が個人の場合です。関税の免除が受けられれば販売価格を下げられるので、B2C取引の多い越境ECにおいては現地の製品との競争力を引き上げることが可能になります。

関税の免除は主に消費者にとってのプラスになりますが、競争力の強化は販売者にとってもプラスに働きます。個人の消費者宛てに越境ECでの出店する予定であるならば、製品の品目や価格帯からどの国ならば関税の免除を受けられるのか調査をしておきましょう。


広範な法律の知識が必要になる

国内ECと比較して、越境ECの方が広範な法律の知識が必要にになります。越境ECを利用する場合は日本の法律の他に取引相手国の法律が適応されるほか、国際取引法の理解も必要になるためです。

越境ECを活用する際に取引相手国側の法律を理解しておかないと、巨額の罰金が科せられることがあります。罰金が科せられる事例として、たとえばGDPRGeneral Data Protection Regulation)があげられます。

GDPRとはEU内で施行されている個人データの取扱いに関する法律で、越境ECを通じてEU内の個人に販売した事業者にも適用されます。GDPRでは個人データの取り扱いに関する同意の明確化や漏洩時の72時間以内の報告が義務付けられており、違反した場合は最大で2,000万ユーロの罰金が科されます。

また、越境ECでの取引でトラブルが起きた時には国際取引法の知識も必要になります。国際取引法とは取引の契約後に発生しうる紛争を解決するのに必要になる知識です。国際取引法を理解していない場合は相手国の法律と裁判所で裁判が行われるなど、相手側に有利な条件で手続きが進んでしまう可能性があります。

越境ECを始める時には取引国の法律や国際取引法について調査しておくのが望ましいものの、事前に知識を得ておくのも難しいです。既存ECサイトやEC構築プラットフォームの中には法的なサポートやガイダンスを提供してくれることもあるので、越境ECを始める際はサポートの充実しているプラットフォームを活用すると良いでしょう。

まとめ

越境ECとは海外向けに電子商取引することを指し、近年市場が拡大しています。販路拡大の手段として国内ECと比較してみるとその特徴は一長一短であり、自社の状況に合わせた選択が必要になると言えるでしょう。

国内ECとの相違点を見ると、越境ECには配送にかかるコストや法律の煩雑さなど、主に手続き面での負担が増えるデメリットがあります。その他にも、単純に出店国に対する文化の違いや言語の違いなどコミュニケーション不全も予想されるため、国内ECと比較して越境ECは運用コストが重いです。

一方で、越境ECには国内市場より巨大なマーケットにアプローチできるというメリットがあります。とくに日本国内の市場は今後縮小していくことが予想されるので、中長期的に事業を拡大していきたい場合には、事前調査をしたうえで越境ECの利用を検討してみてください。

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