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  • 2024.02.22

越境ECと一般貿易の違いを解説

越境ECと一般貿易の違いを解説

近年、海外への製品販売の手段として越境ECが市場を拡大してきています。同じ海外への製品販売として、越境ECと一般貿易の違いについて気になる人も居るでしょう。

越境ECと一般貿易は共に輸出という共通点がある一方で、取引相手と利用するプラットフォームに違いがあります。また、物流における手続きも変わるケースがあり、それぞれに長所と短所があります。

当記事では、越境ECと一般貿易の違いについて解説します。越境ECと一般貿易のどちらで海外販路の開拓をしようか悩んでいる人は参考にしてみてください。

取引相手の違い

越境ECと一般貿易とでは、主とする取引相手が変わります。越境ECは主として国外の消費者が取引相手になるB2Cがメインになるのに対し、一般貿易は海外の卸売業者が取引相手となるB2Bが主な取引相手になります。

取引相手の違いにより、越境ECと一般貿易には取引規模、取引頻度、ビジネスの安定性という相違点も発生します。

【取引相手から生じる越境ECと一般貿易の違い】

越境EC

一般貿易

取引規模

相手個人に少量

法人相手に大量

取引頻度

注文に対して都度発生

業者ごとに1

ビジネスの安定性

都度発生なので不安定

長期契約で注文数も安定する

越境ECは少量の取引から始められるため、中小企業が海外市場にチャレンジする際に向いています。また、本格的な貿易を開始する前に自社製品がどの市場にニーズがあるのか、テストマーケティングとして越境ECを活用するという方法も考えられます。

規模の大きい企業であれば、取引規模の大きさや安定性の面から一般貿易を選択するのも良いでしょう。売上が見込めるのであれば、中小企業であっても安定性を重視して一般貿易から始める手段もあります。

海外販路を開拓する手段として、越境ECと一般貿易どちらを選ぶべきかは自社の状況に合わせた選択をするべきです。それぞれの長所と短所を認識したうえで、どちらの手段を選択するか決定すると良いでしょう。

取引規模が変わる

取引相手の違いにより、一般貿易よりも越境ECの方が一度の取引規模は小さくなります。越境ECでは消費者個人や一法人を相手に少量の取引をするのに対し、一般貿易は企業相手に一度に多くの製品を輸出するためです。

取引規模は産業の種別や製品によっても異なります。たとえば、アパレル製品を越境ECで個人向けに販売する場合は一度の取引で販売するのは1点から数点ですが、一般貿易で企業に降ろす場合は一度に数千から数十万単位での輸出になります。

規模の小ささに比例して売上が少額になるというデメリットがある一方で、越境ECには少数ロットから海外展開ができるというメリットもあります。大量生産の体制ができていないうちから海外進出にチャレンジできるのは、一般貿易にはない越境ECの強みです。

対する一般貿易は一度に大量の製品を輸出できるという観点から、売上規模も大きくなります。海外拠点を持たずに大きく販路開拓をしたい場合は、越境ECよりも一般貿易の方が適していると言えるでしょう。

取引頻度が変わる

取引相手の違いにより、一般貿易よりも越境ECの方が一度の取引の頻度が多くなります。一般貿易は提携する1社から数社に対して手続きすればよいのに対し、越境ECは注文してきた消費者に対して都度取引が発生するためです。

取引の頻度が多いということは、手続きに必要な時間的なコストが増えることを意味します。越境EC上での注文が月に数件程度ならば対応も難しくありませんが、何百も注文が来るようになれば手続きに必要な時間も増えてしまうでしょう。

取引頻度の高さに対応するためには、取引をする国を絞ったり、確認メールの自動化など取引のシステム化をしたりする必要があります。また、取引頻度が高くなってきたタイミングで越境ECから一般貿易に切り替え、手続きの頻度を減らすことを検討してみましょう。

ビジネスの安定性が変わる

取引相手の違いにより、一般貿易よりも越境ECの方がビジネスの安定性は下がります。越境ECは消費者からの注文数で売上が変動しますが、一般貿易は企業との長期的な契約に基づく取引が多く注文数や売上が安定しやすいためです。

越境ECによる取引は単発で終わってしまうケースも少なくありません。化粧品やサプリメントなど、製品の種類によっては継続利用が想定されますが、一般貿易と比較すれば越境ECは売上規模に劣ります。

対して一般貿易は、数年単位の中期契約や長期契約ができれば、継続的な販売先を確保することが可能です。1年未満の短期契約や1度限りのスポット契約もありますが、越境ECと比較すれば一度の取引規模の差から売上の確保はしやすいです。

越境ECを活用してビジネスを安定させるのなら、一度取引した消費者に対してメールマガジンを配布するなど、多くのリピーターを獲得するような施策が必要になります。越境ECで売上を安定させるのが難しいと判断したら、一般貿易への切り替えや国内市場の開拓を考えてみると良いでしょう。

プラットフォームの違い

越境ECと一般貿易では、顧客と取引契約するまでに利用するプラットフォームが異なります。越境ECでは顧客とのやり取りまで一貫してWEBを利用するのに対し、一般貿易ではWEB以外のプラットフォームも活用しなければなりません。

【プラットフォームの違い】

取引種別

プラットフォーム

越境EC

【顧客との接点】
・既存の越境ECサイト
・自社構築のECサイト
SNS

【顧客とのやり取り】
・メール

一般貿易

【顧客との接点】
・商社を通した商談
・展示会や商談会

【顧客とのやり取り】
・メール
・電話
FAX
・対面

越境ECで使用するプラットフォームの強みとして、取引を開始するまでのコストの低さが挙げられます。既存の越境ECサイトをメールを併用することで、国内にいながらすぐに取引を始められるのは一般貿易にないメリットです。

一般貿易は顧客との接点はクローズドな環境であり、やり取りに必要なプラットフォームはWEB以外にも多岐に渡ります。一般貿易は取引の規模が大きいため、越境ECと比較して取引開始までのコストは重くなってしまうのです。

一般貿易はプラットフォームの運用コストが重いので、すぐに海外展開を試してみたい時には開始までのコストの低い越境ECからチャレンジしてみると良いでしょう。

物流における手続きの違い

越境ECと一般貿易を比較すると、物流における手続きに違いが生じます。共に輸出という共通点があるものの、主に個人の消費者を相手にする越境ECでは手続きが簡略化されるケースが多く、一般貿易と比較してスムーズに行えるという特徴があります。

とくに越境ECで手続きがスムーズになるのは、通関手続き、関税の取り扱い、決済です。一般貿易では一度に大量の製品の取引が行われるため、その手続きは慎重に行われており、越境ECのように簡略化される可能性は低いです。

なお、越境ECの手続きがスムーズになるのは個人宛てで少額の取引になりやすいからであり、取引規模が大きくなれば一般貿易と同等の手続きが必要になります。そのため、定義上は越境ECを活用してもB2Bで大量取引をする場合は手続きが簡略化されない点は注意してください。

越境ECは通関手続きが簡略化されるケースがある

一般貿易と比較して、越境ECには通関手続きが簡略化されるケースが多いです。同じ輸出という側面を持っているので通関手続きは必要であるものの、越境ECは一般貿易と比較して一度の取引が安価になるため、税関に提出する書類が少なくなる傾向にあるのです。

越境ECで通関手続きが簡略化されるかは、商品の運送手段と一度の取引額によって決まります。国際宅急便を利用する際には通関手続きは運送会社が代行してくれます。また、国際郵便を使って発送する際には、20万円を超えるか否かで通関手続きをするのに必要な書類が変わります。

【国際郵便を利用して通関手続きをするのに必要な書類】

取引額

必要書類

20万円以下の取引

税関通知書のみ

20万円を超える取引

【提出必須書類】
・輸出申告書
・包装明細書(パッキングリスト)
・仕入書(インボイス)

【場合によって必要になる書類】
・船荷証券(B/LBill of Lading
・原産地証明書
・通関手続きの委任状

対する一般貿易では、国際郵便で20万円を超える取引を行う際に必要になる書類を税関に提出する必要があります。煩雑な通関手続きを通関業者に依頼することも可能ですが、その場合は業者の利用手数料の支払いが必要です。

越境ECで海外に荷物を発送する場合は一度の取引額や発送する荷物のサイズが小さいため、国際宅急便や国際郵便を利用して通関手続きを簡略化されるケースが多いです。もちろん、取引額と荷物のサイズが大きくなれば一般貿易と同等の手続きが必要になるため、発送する商品の価格帯とサイズをチェックしておいてください。

越境ECは関税は免除されるケースがある

一般貿易と比較して、越境ECには関税が免除されるケースがあります。関税は輸入国の規定に従う必要があるものの、個人を取引相手に少量の輸出をする場合は関税の免除をしている可能性があるためです。

関税の免除を受けられる例として、デミニマス値があります。デミニマス値とは、個人あての商品において、各国が定めるデミニマス値以下の取引であれば関税がかからないというルールです。越境ECは個人あてというルールに合致しており、さらに発送する製品が各国規定の値以下なら関税の免除が受けられます。

【各国のデミニマス値】

国名

デミニマス値

アメリカ

800USドル

EU

150ユーロ

イギリス

135ポンド

また、中国の越境EC総合税を活用することで関税を免除されます。越境EC総合税とは、ポジティブリストと呼ばれる特定品目に関する取引を指定の越境ECプラットフォームから行い、かつ保全区と呼ばれる保税倉庫から商品を個人あてに発送する場合に限り関税の免除を受けられるという制度です。

一方、法人相手に大量の製品を輸出する一般貿易では、越境ECで受けられたような関税の免除を受けられません。越境ECでも法人相手や一度の取引量次第では関税の免除を受けられないこともあります。

関税の支払いは販売者に科される訳ではないものの、関税が免除されることで消費者目線で見た時の販売価格が下がるため、越境ECの方が一般貿易よりも販売個数を伸ばせる可能性があります。

一般貿易での売上は取引企業に卸した時に決まるため、現地での販売個数は直近の利益には関係しませんが、現地での人気は長期的な海外販路の開拓としては重要になります。そのため、関税の免除を受けられる可能性がある越境ECは、海外で認知を得るには一般貿易と比べて有利といってよいでしょう。

越境ECは決済はスムーズであるケースが多い

一般貿易と比較して、越境ECの方が決済はスムーズであるケースが多いです。越境ECはクレジットカードや電子決済など即時決済できる取引が多い一方で、一般貿易では煩雑な手続きが必要になるためです。

即時決済が多いという特性上、決済に必要な手続きは越境ECの方が簡略化されており、入金までのスピードも速いです。どの決済方法が利用されるかは、基本的には取引相手国側で親しまれている方法に準じます。

【越境ECで利用される国別の決済手段の例】

取引相手国

利用される決済手段

中国

AlipayやWeChat Payなどモバイル決済

アメリカ

クレジットカード、PayPalなどモバイル決済

EU

クレジットカード

一方で、一般貿易で利用される決済の一つに信用状(L/C,Letter of Credit)による取引を例にとると、入金までにかかる時間は数週間以上におよびます。専門書類に対する知識も必要で、不備があれば入金まで時間は遅れることとなり、数か月かかるケースも出てきます。

入金までのスピードはキャッシュフローに影響してきます。とくにキャッシュフローを重視する事業者にとっては、入金速度の速い越境ECの決済はメリットになると言えるでしょう。

まとめ

越境ECB2Cの取引がメインになるため、一度の取引規模が小さく手続きも簡略されることが多いです。少量の製品から輸出でき、開始するにも既存のプラットフォームを活用できるので、初期コストの低さが一般貿易と比較して優れていると言えます。

対する一般貿易は運用コストは重いものの、取引規模の大きさから来る売上の大きさと、ビジネスの安定性の面で越境ECと比較して優れています。

同じ輸出の手段としてそれぞれメリットとデメリットがありますので、事業のフェーズや目的に合わせ、自社に合った方法を選択するのが良いでしょう。

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