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  • 2024.01.29

越境ECにおける関税の負担はどうなる?
国ごとの制度も解説

越境ECにおける関税の負担はどうなる?国ごとの制度も解説

越境ECへの参入を検討している人の中には、取引において関税がどれくらいかかるのか知りたい人もいますよね。また、関税の負担者や納税方法が気になる人もいるでしょう。

当記事では、越境ECで取引を行う場合の関税の負担や、国ごとの制度について解説します。

越境ECで海外と取引する商品には関税が課される

関税とは、海外から商品を輸入する際に課される税金のことです。越境ECを通じて海外へ販売する商品には、輸出先の国の制度に基づき、配送料とは別に関税が課されます。

関税には、国の収入確保のほか、海外からの安価な輸入品により国産品が売れなくなることを防ぐ目的があります。品目によっては、商品の金額に対して100%以上の関税率が課されるものもあります。

たとえば、日本において米には1㎏あたり341円の関税が課されており、10㎏の米を輸入する場合には3,410円の税負担が発生します。関税率に換算すると約280%といわれており、海外から日本へ米を輸入する際には、実際の米の価格よりも高額な支払いが必要となることがわかります。

課税方法は、商品の個数や重量をもとに設定される「従量税」や商品の価格を元に設定される「従価税」、両者を併用した「混合税」など、品目によって異なります。複数の商品を販売する場合は、各商品の関税率と課税方法を確認しておきましょう。

なお、関税は200以上の国と地域で共通で用いられる「HSコード」によって分類される品目ごとに税率が定められています。HSコードは6桁で構成されており、国によって7桁目以降が細分化された独自のコードを設定している場合もあります。

財務省のHPでは、日本への輸入における実行関税率表を公開しているので、参考にしてみてください。

出品者と購入者のどちらが関税を負担するか決めておく

越境ECで取引をする際には、関税の負担を出品者と購入者のどちらが行うかを定めておく必要があります。関税は原則として購入者が支払う税金ですが、利用する越境ECプラットフォームや配送会社によっては、出品者が負担することも可能です。

自社で関税を負担する場合、関税が商品価格を上回ると利益が出なくなります。品目によっては高額な関税が課されるため、関税を差し引いても利益が出るよう価格設定を行わなければなりません。

一方で、購入者が負担する場合、関税が商品の金額に上乗せされるため、自社での負担よりも割高となり商品が売れにくくなる恐れがあります。商品価格と関税の総額を考慮し、顧客が購入しやすい金額となるよう工夫が必要です。

越境ECを行う際には、関税を考慮して商品価格を決定しましょう。

なお、関税を購入者負担にする場合、購入者が関税の存在を知らずに商品を購入してしまいクレームにつながる恐れもあります。関税の負担者や金額については、越境ECサイトに明記しておきましょう。

関税の制度は国によって異なる

関税の制度は国によって異なり、販売先の国の関税制度が適用されます。同一の商品であっても、国によって関税率や課税方法が異なるため、商品の発送先となる国の関税制度の確認が必要です。

たとえば、日本産リンゴの関税率は台湾が20%、韓国が45%、アメリカが0%と輸出先によって異なります。また、品目ごとに設定されているHSコードは、同じ商品であっても国によって分類が異なる場合もあります。

なお、品目や取引価格に応じて独自の免税措置が適用される場合や、越境EC取引の優遇措置が設けられている国もあります。関税は商品の売れやすさや販売価格にも影響するため、海外の関税率を知ることは、進出予定先を選ぶ際の判断基準のひとつとなるでしょう。

中国の関税制度

中国では、越境EC向けの関税制度として「行郵税」と「越境EC総合税」があります。越境ECとして中国と取引を行う場合、取引内容や配送方法によって、いずれかの関税制度が適用されます。

【中国の関税の種類】

関税の種類

行郵税

越境EC総合税

配送方法

消費者へ直接商品を配送する
「直送モデル」

中国保税倉庫を利用して商品を配送する「保税区モデル」

税率

  • 品目により13%、20%、50%のいずれかを課税

※税金額50元以下の場合は免税

  • 関税:0%
  • 増値税・消費税:一般貿易の70%

対象品目

  • 輸入禁止品目以外全て
  • ポジティブリストに記載の品目のみ

取引の上限金額

  • 1注文あたり1,000元以下
  • 1注文あたり5,000元以下
  • 年間取引額26,000元以下

行郵税は、国際郵便等を用いた個人向けの取引を行う場合に適用され、関税・増値税・消費税に代替される税金です。税率は一般税率よりも低く設定されており、50元以下の少額取引であれば関税が免除されます。

越境EC総合税は、中国の越境ECにおいて税制優遇を受けられる「ポジティブリスト」に記載のある商品を、保税区モデルとして配送する場合に適用される税金です。関税は掛からず、増値税や消費税も一般貿易より優遇されます。

中国向けに越境ECを行う場合、行郵税または越境EC総合税による関税の優遇を受けられます。ただし、取引上限金額を超える場合や規定の条件を満たしていない場合には越境ECとして認められず、一般貿易としての関税や増値税、消費税が掛かる点に注意しましょう。


アメリカの関税制度


アメリカの関税は「一般税率」、「特別税率」、「法定税率」の3種に分類されており、
取引を行う相手の国によって、税率の区分が異なります。

【アメリカの関税の種類】

関税の種類

概要

一般税率

  • NTR(正常貿易関係)諸国向けの税率
  • 日本からの輸入も一般税率が適用される

特別税率

  • FTAなどを締結している国向けに特恵措置が適用された税率

法定税率

  • キューバと北朝鮮の2か国のみに適用される税率

日本から輸入された商品には一般税率が用いられますが、一部の工業品や農産品など、日米貿易協定が対象とする品目に関しては特別税率が適用されます。アメリカにおける関税の納税方法は、輸入者本人が関税率表を元に計算し、自己申告によって行われます。

また、アメリカにおける品目の分類は、HSコードを元に細分化された8桁のHTSコードが用いられます。HTSコードは、米国国際貿易委員会(USTIC)のホームページなどで検索できるため、品目ごとの関税率を詳しく知りたい人は確認してみてください。

なお、アメリカでは、商品価格が800USドル(約11万円)までの個人輸入に関税はかかりません。また、2,500USドル(約37万円)以下の小口貨物であれば略式輸入として扱われ、関税率の優遇を受けることができます。

台湾の関税制度


台湾の関税は、取引相手の国や地域によって「カラム1」「カラム2」「カラム3」の3種類に分類されています。

【台湾の関税の種類】

関税の種類

概要

カラム1

  • WTO加盟もしくは台湾と互恵待遇を有する国や地域からの輸入物品が対象

カラム2

  • 特定開発途上国(地域)または台湾と自由貿易協定を締結している国や地域からの特定輸入物品が対象

カラム3

  • カラム1およびカラム2に該当しない国や地域からの輸入物品が対象

日本は、台湾と相互に同程度の優遇措置を行っている「互恵待遇」の関係にあるため、カラム1の税率が用いられます。カラム1では、一般税率であるカラム3よりも税率が優遇されています。

たとえば、小麦粉を輸入する場合、カラム3の関税率は30%ですが、カラム1の関税率は17.5%です。カラム2は、対象国によって免税または17.5%のいずれかが適用されます。

また、台湾における品目の分類は、HSコードをもとに細分化された台湾独自のCCCコードが用いられます。CCCコードは台湾の関税事務局のホームページなどから検索できるため、品目ごとの詳しい関税率を知りたい人は確認してみてください。

なお、台湾では1回の取引金額が台湾ドル2,000元(約1万円)以下の少額越境取引では免税となります。

関税とは別にVAT(付加価値税)が課される場合がある

国や地域によっては、関税とは別に付加価値額税であるVATが課される場合もあります。VATとは、台湾などでは「営業税」とも呼ばれる間接税のひとつであり、日本の消費税に似た税金です。

VATの税率は関税と同様に国によって異なり、20%以上の税率が課される国もあります。また、免税措置などにより関税が掛からない取引にも、VATの支払いが発生することがあります。

たとえば、EUで150ユーロ以下の少額取引を行う場合、関税は免税となりますがVATは免税にならず支払い義務が発生します。150ユーロ以上の取引の場合は、VATに加えて関税の支払いも必要となります。

VATは、EU諸国を中心に世界150か国以上で導入されている制度です。越境ECを行う場合は、販売先の地域におけるVATの有無も確認しておきましょう。

なお、消費税は日本国内で消費される商品に課税される税金のため、越境ECで日本から海外へ商品を発送する場合には消費税は掛かりません。すでに支払ってしまった場合も、必要書類の提出などの条件を満たせば、還付を受けられる可能性があります。

まとめ

越境ECを通じて取引をする商品には関税がかかります。関税率や品目の分類は国によって異なるため、取引を行う国における関税率の確認が必要です。

関税は原則として購入者が負担するものですが、越境ECプラットフォームや配送会社によっては出品者の負担とすることも可能です。いずれの場合も関税を考慮した価格設定を行い、購入者負担とする場合は関税込みの価格を越境ECサイトに明記する必要があります。

なお、国によっては関税とは別に、付加価値税としてVATが課される場合があります。VATは世界150か国以上で導入されている制度であり、国や品目によって税率も異なるため、越境ECを行う際は取引先の国におけるVATの有無も確認しておきましょう。

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