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  • 2023.03.29

初めての海外赴任、何から手をつければいい?1

初めての海外赴任、何から手をつければいい?1

はじめに

日本企業が海外で活動することももはや珍しくなくなってきました。外務省が公表している「海外進出日系企業拠点数調査」によると、2021年10月現在で世界にある日系企業の拠点数は77,000あまりに上ります。これらすべてに日本からの派遣員がいるとは限りませんが、日本の全事業所数が560万箇所(平成28年のデータ。総務省統計https://www.stat.go.jp/data/nihon/07.htmlによる)であることを考えると、日本企業が海外に出るというのはまだ少数派と言えるかもしれません。

派遣される社員にとっては、海外での経済活動は非日常の世界とも言えるでしょう。その人が日本で生まれ育った場合には、それまでの日常生活が大きく変化する一大事です。(筆者がそうでした)
派遣期間も通常は年単位となることが多いことでしょう。生活の拠点が一定期間海外に移ることになりますので、それなりの準備はしておきたいものです。

会社によっては、赴任前説明会などを実施し、事前サポートを行ってくれるところもあるようですが、本稿では、マニュアル目線ではなく、派遣される一従業員目線で、赴任前後に考えたいポイントを、筆者の経験も交えながらいくつか述べていきたいと思います。

筆者の海外赴任経歴

本稿を進める前に、筆者の海外赴任履歴をご紹介しておきます。

 1990年代半ば 入社1年目に中東(1年間)
 1990年代後半 中東(1年間)
 2010年代後半 東南アジア(3年半)
 現在      米州(記事執筆時点で約1年半経過)

キャリアの大半を海外で過ごしてきた方も多くおられるでしょう。そのような方々から見れば、筆者の海外歴は少ないほうかもしれません。しかしそれだからこそ、それぞれの局面で感じたこと、大変だったこと、を新鮮に感じ、読者にお伝えできることもあるように思います。

渡航に向けた準備

まずは渡航前に日本で準備しておく事柄について触れたいと思います。

① パスポート(旅券)

これがないことには海外渡航は始まりません。住民票所在地を管轄する旅券事務所で手続きを行います。戸籍謄本(あるいは戸籍抄本)、申請書、住民票、パスポート用写真、身分証が必要となります。パスポートを既にお持ちの方でも、有効期限は確認が必要です。有効期間が一定以上残存していないと入国を拒否される事態もあり得ます。筆者の家族が入国しようとした際に、残存期間が5か月しかなく、到着時にあやうく入国拒否されそうになり慌てたことがあります。このときは窓口に交渉して事なきを得ましたが、準備不足を反省しました。

パスポートを取得あるいは更新する際には10営業日程度の時間がかかりますので、余裕を見て準備をする必要があります。

② ビザ取得

短期間の旅行や出張では、日本のパスポートを持っていればビザが要らない国も多いですが、赴任となると現地就労になりますので、一般的には就労ビザが必要です。手続の詳細は赴任国によって異なりますが、必要書類を揃えたうえで、該当国の在日大使館に申請することになります。ビザ取得のために必要な書類は、以下のようなものがあります。

◆卒業証明書
ご自身の最終学歴を証明する書類で、最終的に卒業した学校に問い合わせて作成してもらう必要がありますが、作成依頼の方法や作成された書類の取得方法、取得できるまでの期間などは学校に確認する必要がありますが昨今はウェブサイトでも公開されていることが多いようです。

◆職歴
英語ではCurriculum Vitae、略してCVとよびます。これまでの簡単な職歴を提出することが求められることがあり、その場合は英語で記載する必要があります。前任者がいる場合は、その人が提出したものを参考に自分のものを作成すればいいですが、参照できるものがなくても、これまでの経歴を簡単にまとめる程度で事足りると思います。

◆健康診断
ビザ取得の要件になっている国もあります。該当国の所定書式を使う場合や、検診項目が指定されている場合がありますので、該当国の要求項目を確認したうえで、対応する医療機関で受診する必要があります。検診結果は少なくとも英語で提出する必要がありますので、英語での対応が可能か医療機関に確認する必要があります。

入国後に現地医療機関で受診すればいい国もありますが、言葉の問題や不慣れな場所で受診するのも不安要素になり得ますので、日本国内で受診できるのがベストでしょう。

◆予防接種
肝炎などの予防接種をビザ取得の条件としている国もあります。予防接種の種類によっては、月単位の一定の間隔をあけて複数回接種する必要があるものもあり、医療機関と相談して前広に計画的な接種が必要です。トラベルクリニックと名前のついている医療機関だと対応はスムーズでしょう。ただし、世界中の各国個別の予防接種要件までは把握していないことが多いでしょうから、どの種類の接種が必要かご自身で確認しておくことが望ましいです。

◆無犯罪証明書
過去に犯罪歴がないことを証明することを求める国もあります。住所を管轄する警察署で取得します。
(警視庁の例 https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/tetsuzuki/toko/toko.html

◆該当国からの招聘状(Invitation Letter)
該当国の受け入れ機関に発行してもらう書類で、現地法人や現地企業への出向の場合は、その受け入れ先の総務担当にお願いして作成してもらう必要があります。

初めての海外赴任、何から手をつければいい?1

ここで紹介した例は必要書類のごく一部ですが、それぞれ取得までには一定期間を要しますので、それを考慮して渡航計画を立てていく必要があります。

また、書類が揃っても、赴任国政府が手続を進めて最終的にビザ発給に至るまでには相当の時間がかかります。ビザ取得までに数か月かかることもありますのでかなり前広な準備が必要です。
筆者の場合は、東南アジア、北米ともに、書類準備を開始してから実際にビザを取得するまでに2か月超かかりました。

③ 引越手配

住居を移す準備もしなくてはいけません。

荷物は以下のように区分して整理します。

送付方法

説明

新任地へ送付

携行品

到着後すぐ使いたいもの。
貴重品や身の回り品が中心。航空機に預けられる限度を考慮して準備。

航空便

到着後に比較的すぐに使いたいが携行荷物に入れられないもの

船便

大きな荷物、大半の荷物で、すぐに使わないもの

国内に保管

-

現地では使わないもの。

処分

-

赴任を機に処分

現地に送付するものは、引越業者に見積をしてもらいます。そのうえで搬出時期を打ち合わせます。繁忙期に重なると希望日に搬出しづらくなりますので、注意しましょう。通常は人事異動の重なる3月頃がピークのようです。

スムーズな引越のためには荷物の仕分けを事前にしっかりと行っておくことが非常に重要です。また、携行手荷物もうまく活用したいです。筆者のときはコロナウィルス騒動で世界中の物流が混乱しており、航空便、船便ともに相当時間がかかり不便な思いをしました。国際輸送はリスクがありますので、携行手荷物で持てるものはできるだけ持って行ったほうが安心です。

④ 留守宅をどうするか

(賃貸住宅に居住の場合)
転出するまでは居住する必要がありますので、転出日から逆算して賃貸契約の適切な解約日を念頭に家主さんと協議する必要があります。賃貸契約には解約の申し出をするタイミングの記載がありますので、留意しましょう。(通常は1か月)

(持ち家の場合)
大別すると、留守宅を駐在期間中に誰かに貸す(第三者に賃貸)、留守宅はそのまま置いておく、留守宅を売却する、といった方法があります。それぞれのメリット、デメリットを整理すると以下の通りとなりますが、これらを総合してご自身にとってベストな選択をすることになります。

場合分け

メリット

デメリット

第三者に賃貸

月々の賃料

帰任時にすぐ自宅に住めるとは限らない

留守宅を残置

一時帰国時の住居として使える

使わない期間も維持費がかかる(マンションの管理費など)

留守宅を売却

確定申告が必要
売却益が出た場合納税

紙面が尽きてきました。
今回はこのあたりとし、次回以降も続けてご紹介していきます。

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