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  • 2022.12.05

健康経営のすすめ

健康経営のすすめ

はじめに

「健康経営」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。

「健康経営とは、従業員等の健康保持・増進の取り組みが、将来的に収益性等を高める投資である」という考えのもと、健康管理を経営的視点から考え、戦略的に実践することをいいます。
今回は、「健康経営のすすめ」ということで健康経営が注目される理由や効果などを解説していきますので、今後の経営に活かしていただければ幸いです。

1.健康経営が注目される理由

健康経営が注目される理由は次のようなことが考えられます。

(1)労働力人口の減少

今後、少子高齢化社会の進展により労働力人口の減少は間違いなく進んでいきます。
日本においても、2060年には全人口に占める65歳以上の人口の比率が38.1%にまで上昇することが見込まれています。当然企業においても、従業員の高齢化が進むことが予想されています。その中において、今後企業が生産性を維持向上させるためには、従業員が健康で働きやすい環境を整備することが求められます。

健康経営のすすめ

(出典:健康経営の推進について 経済産業省ヘルスケア産業課)

(2)従業員の健康被害

近年において企業の生産性を上げるために、従業員に長時間労働を強制することによる過労死、精神障害・自殺などが問題になりました。長時間労働は、労働負荷の増大や睡眠、休養時間の不足による重大な健康被害を招く可能性があります。また、従業員に仕事の成果を求めるあまり、精神的負担が大きくなり従業員の長期療養や離職率が高くなる傾向にあります。

(3)企業イメージの低下

従業員への長期間労働などにより過労死・うつ病などが発病した場合は、企業は訴訟を受けるリスクが考えられます。こうした場合、企業イメージの低下は避けられないでしょう。また、労働環境が悪い会社は、ブラック企業としてSNSなどであっという間に拡散してしまいます。

このような背景から健康経営が注目されるようになりました。昨今では、働き方改革により労働時間の見直しが叫ばれています。健康経営の考え方を取りこむことで従業員の健康リスクを改善することが求められています。

2.健康経営による効果

前章では健康経営が注目される理由について解説してきましたが、本章では健康経営を行うことによる効果を解説していきます。

(1)社員のモチベーション向上

過重労働が当たり前の職場では、従業員の疲労蓄積や精神的疲労により従業員のパフォーマンスは低下し、従業員自らが働こうとする意欲が無くなることは間違いないでしょう。
健康に働ける職場であれば、従業員のパフォーマンスは最大化されます。また、精神的な負担も軽減され、社員のモチベーションアップが見込めます。

(2)企業イメージの向上

健康経営を行う企業は、「従業員を大切にする会社」ということで企業イメージの向上につながります。企業イメージが悪い企業には、優良な人材は集まりません。今後、労働力人口は減少していきますので、優秀な人材を採用することは企業にとって重要な課題となります。就活生および就職を控えた親に対して就職先に望む勤務条件についてアンケートを実施したところ、「従業員の健康や働き方への配慮」については高い回答率を得たことから、人事戦略において健康経営が重要であることがわかります。

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(3)人材定着率の向上

長時間労働の弊害として、従業員の病気による療養や退職者の増加があげられます。いわゆる「ブラック企業」と呼ばれる会社では、従業員が退職した際に直ぐに新たな採用は難しいことから、残った従業員がさらに厳しい労働環境に追い込まれるという負のスパイラルに陥ることになり、さらなる健康被害が起こる可能性が高くなります。

これに対して、健康経営を行い従業員の労働環境の整備を行っている企業では、従業員はいきいきと働くことができます。また、自分の会社に対する満足度が上がることにより人材の定着率は上がります。

3.健康経営優良法人認定制度

(1)健康経営優良法人制度とは?

健康経営優良法人認定制度とは、地域の健康課題に即した取り組みや日本健康会議が進める健康増進の取り組みをもとに、特に優良な健康経営を実践している大企業や中小企業等の法人を顕彰する制度です。
これは健康経営に係る各種顕彰制度を通じて、優良な健康経営に取り組む法人を「見える化」し、社会的な評価を受けることができる環境を整備することを目標としています。

健康経営優良法人には大企業が対象である大規模法人部門、中小企業が対象である中小規模法人部門に分かれます。2014年度から上場企業を対象に「健康経営銘柄」を選定しています。また、大規模法人部門の上位500社は「ホワイト500」、中小規模法人部門の上位500社は「ブライト500」の冠が付加されます。 

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(出典:健康経営の推進について 経済産業省ヘルスケア産業課)

「健康経営銘柄」は東京証券取引所の上場会社の中から健康経営に優れた企業が選定されます。健康経営銘柄企業には、健康経営を普及させていくアンバサダー的な役割が求められます。また、健康経営を行うことでいかに生産性や企業価値に効果があるかを分析し、それをステークホルダーに対して積極的に発信していくことが求められます。

大規模法人部門「ホワイト500」については、グループ会社全体や取引先、地域の関係企業、顧客、従業員の家族などに健康経営の考え方を普及拡大していく「トップランナー」の一員としての役割が求められます。
中小規模法人部門「ブライト500」については、地域における健康経営の拡大のために、その取組事例を発信する役割が求められています。これは、健康経営を全国に浸透させるためのすそ野を広げることが期待されています。

(2)健康経営優良法人の認定要件

健康経営優良法人についての概要はわかりましたが、具体的な認定要件はどのようなものがあるのでしょうか。
ここでは、健康経営優良法人2023中小規模法人部門の認定要件について解説していきます。

①経営理念・方針
健康経営を経営理念の中に明文化し、企業として取り組む姿勢を社内外に発信することが求められます。経営者が、従業員やその家族の健康管理を経営課題として認識し、組織として対策に取り組む旨を文章等への明文化を通じて意思表示することを「健康宣言」といいます。中小企業事業者の方は、協会けんぽ等の医療保険者が実施する「健康宣言」事業への参加や経営者自身の検診受診などが求められます。

②組織体制
経営層全体で取り組みの必要性を共有することや担当者・担当部署を設置するなど取り組みやすい体制を作ることが必要です。

③制度、施行実行
「従業員の健康課題の把握と必要な対策の検討」「健康経営の実践に向けた土台づくり」「従業員の心と身体の健康づくりに関する具体策対策」が認定要件となっています。

「従業員の健康課題の把握と必要な対策の検討」については、「従業員の健康課題の把握と必要な対策の検討」「健康経営の実践に向けた土台づくり」「従業員の心と身体の健康づくりに関する具体的対策」の3項目があります。定期健康診断の受診、運動機会の提供、メンタルヘルスへの取り組みなど様々な要件が求められています。
これ以外にも「評価・改善」「法令遵守・リスクマネジメント」の評価項目があります。

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(出典:健康経営の推進について 経済産業省ヘルスケア産業課)

4.健康経営の実例

健康経営について説明してきましたが、実際の企業で健康経営がどのように実施されているのでしょうか。

(1)TOTO株式会社

TOTO株式会社では、「健康管理」「メンタルヘルス対策」「健康増進(健康づくり)」の3本柱とする健康への取り組みが評価され、健康経営優良法人(大規模法人部門)に6年連続で認定されています。

健康増進については、新型コロナウイルス感染症の拡大下においても三密を回避したイベントとして「RIZAPオンラインセミナー」や「ウォーキングイベント」などを開催しています。また「喫煙改善への取り組み」として、卒煙サポート施策や喫煙室の野外化を推進し喫煙改善に取り組んでいます。

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(出典:株式会社TOTOホームページ)

これらの取り組みにより社員満足度は年々増加しており、離職率も低く抑えられています。

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(出典:株式会社TOTOホームページ)

(2)花王株式会社

花王株式会社は、2008年に「花王グループ健康宣言」を発表しました。同社の取り組みとしては、社員の健康増進のプログラムを「Kao GENKI ACTION」と名付け、健康状態や生活習慣を見える化し、それによって健康への意識を高めることを狙いとしています。
具体的な取り組みとしては、下記のとおりです。

①生活習慣測定会
花王株式会社は、独自の内臓脂肪計測技術と生活分析アルゴリズムを用い、全国の事業場で測定会を開催しています。内臓脂肪の状況と生活習慣を見える化したうえで、健康への意欲を高めることを狙いとしています。

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(出典:株式会社花王ホームページ)

②スマート和食
花王株式会社の独自技術である、しっかり食べても内臓脂肪をためにくい「スマート和食」のランチを全国11事業所の社員食堂で提供しています。また、ランチセミナーや家族向けの料理教室を開催するなど食べる環境づくりを狙いとしています。

③ホコタッチ
ホコタッチとは、歩行生活年齢が表示される活動量計です。ホコタッチ専用歩行計と独自の分析手法から、日常における歩数、歩行速度、生活に応じた「歩行生活年齢」が表示されます。歩行生活年齢が若返ることで、歩くことや歩き方を意識する励みにもなります。

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(出典:株式会社花王ホームページ)

花王株式会社では、これらの取り組みを行ってきた結果2015年から8年連続で健康経営銘柄の選定を受けており、健康経営のトップランナーとして高い評価を受けています。

5.さいごに

「健康経営のすすめ」ということで解説してきましたが、どうだったでしょうか。

企業が成長するためには、「従業員に労働を課す」という視点ではなく、「従業員にいかに働いてもらうか」という視点が大切です。
今後、労働人口が少なくなることは間違いないため、いち早く健康経営の視点で企業経営をおこなう必要があります。
この記事が、健康経営を行うきっかけになっていただければ幸いです。

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