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  • 2022.10.21

海外で知的財産権を取得しませんか?

海外で知的財産権を取得しませんか?

海外でも日本の技術力とブランドは高く評価されています。経済産業省の海外展開支援などの後押しもあり、海外に事業を展開する機会がいつ訪れるかわかりません。そのとき、あなたの会社の技術やブランドは、海外で知的財産権として守られているのでしょうか?特許権・商標権などの知的財産権は、国ごとに権利を取得するための手続き(出願)をし、審査を受けたうえでないと取得できません。海外であなたの会社の技術やブランドを無断で使われても、日本国内で特許権や商標権を取得しているだけでは、それを止める手段が限られてしまいます。そうなると、せっかく海外展開の機会が訪れても、機会を逃してしまいかねません。

本稿では、事業の海外進出に備えた海外での知的財産権、特に特許権と商標権の取得方法と、補助金・助成金など海外で知的財産権を取得するときに活用できる支援制度について解説します。

海外での知的財産権の種類

海外にも日本と同様に、特許権、商標権、意匠権といった知的財産権が存在します。これらの知的財産権は国ごとに独立して存在しているため、日本で特許権を取得しても、外国で特許権を取得したことにはなりません。自社製品を海外に輸出したり、海外で製造する場合には、各国で特許等の知的財産権を取得していなければ、その国で競合などの第三者に技術を模倣されても、自社の知的財産権の侵害を理由に、差し止めや損害賠償請求ができません。

特許権

①出願国の選び方

自社の技術に関する発明について特許を取得できそうであれば、まず本国(日本)で出願することになります。次に、他社が実施する可能性がある場合、その発明を用いて作られる製品の数などの実施規模が大きい場合、海外の自社拠点で製造する場合、現地の会社へ技術供与する場合などは、さらに海外に出願することを検討すべきです。

出願する国については、自社の特許を実施する可能性がある製品の輸出先や現地製造拠点のある国、競合メーカーが製造拠点や市場を有している国、さらに、特許のライセンシーがその特許を実施する可能性がある国などから選定します。

②出願方法

海外で特許権を取得するための出願方法は、以下の図のように、大きく分けて「直接出願」と「PCT出願」の2つのルートに分かれます。
(特許庁「特許の国際出願制度のご案内(パンフレット)」より)

海外で知的財産権を取得しませんか?

直接出願は、海外の特許庁ごとに直接出願する方法です。通常は日本国内に最初に出願(基礎出願)をしてから、パリ条約上の優先権に基づき海外の特許庁に、その国の言語を訳した出願書類を提出します。基礎出願から1年以内であれば、優先権を主張することが可能です。

PCT出願は、国際出願とも呼ばれます。特許協力条約(Patent Cooperation Treaty)の加盟国(2022831日時点で156カ国)を指定国にして、日本の特許庁へ出願する方法です(日本語での出願が可能)。PCTの目的は特許出願の手続面における効率化です。日本語で作成した出願書類を日本の特許庁に提出すれば、すべてのPCT加盟国への出願準備をしたことになります。

ただし、PCT出願は出願の準備であり、実際の海外の特許庁への出願(国内段階への移行)は、原則、最初の出願日(優先日)から30カ月以内に、出願したい国の特許庁へ出願書類の翻訳文などを提出する必要があります。
PCT出願をしても国際特許といった全世界に及ぶような権利を取得できるものではなく、各国の特許庁の審査を受け、認められた時に初めて各国ごとに特許権が発生することにご注意ください。

国際特許を得られないならば、PCT出願をする意味がないようにみえますが、PCT出願には直接出願にはないメリットがあります。

PCT出願は、外国語に翻訳することなく、日本語で記載された書類を日本の特許庁に提出することで出願できます。また、原則として基礎とする最先の日本出願の出願日(優先日)から30カ月間、最終的にどこの国に出願するか検討したり、出願する国の言語に出願書類を翻訳する時間的な猶予を得ることができます。また、PCT出願に対して作成される、国際調査報告に記載される特許性の判断も参考にすることができるなどの利点があり、広く活用されています。

商標権

海外で知的財産権を取得しませんか?

今まで国内で長く使用してきた商標は、事業展開した外国でも使用したいものです。商標の場合は、「一旦、関連する商品を販売したり特許出願が公開されれば、第三者が同じ発明についてどの国でも権利を取得できなくなる特許」と違い、商標が登録されていない国では他者が商標権を取得することが可能です。

つまり、自社が日本国内で長年使ってきた商標であっても、アメリカで商標登録していなければ、他者に現地で商標権を取得されてしまうことがあります。事業展開を考えている国には、あらかじめ商標登録をしておくことをおすすめします。

①出願国の選び方

海外で商標登録するには費用がかかるため、どの国で商標登録出願をすべきか戦略的に判断する必要があります。すでに事業展開をしている国はもちろんのこと、今後、事業展開の具体的な計画がある国、その中でも、ターゲットとする市場が大きい国で出願をするという考え方があります。また、特に模倣品対策が必要な国には、商標登録出願をする必要性が高くなると考えられます。

②出願方法

特許と同様に、商標権を取得するための出願方法は、以下の図のように、大きく分けて「直接出願」(各国別出願)と「マドプロ出願」の2つのルートに分かれます(特許庁「商標の国際登録制度活用ガイド」より)。

海外で知的財産権を取得しませんか?

特許と同様に、商標もパリ条約に基づく優先権主張は可能ですが、主張できる期間は日本出願から6カ月以内と、特許の12カ月と比べると期間が短いことにご注意ください。

「マドプロ」とは、「標章の国際登録に関するマドリッド協定に関する1989627日にマドリッドで採択された議定書(protocol)」 の通称です。この制度を利用した出願を行うには、日本の特許庁において既に商標権を有しているか、商標登録を出願している必要があります。

マドプロ出願は、基礎となる日本出願の商標と同一の商標のみ出願が可能です。日本以外の商標権を取得したい国(指定国)を指定して、日本国の特許庁に出願します。日本の特許庁での方式審査を経て、世界知的所有権機関(WIPO)に移され、国際登録されます。国際登録により、指定国すべてに商標登録出願をしたことになります。WIPOから国際登録の通達を受けた指定国が、1年又は18カ月以内に、その商標の登録を拒絶する旨の通報をしない限り、その指定国において商標登録されたものとみなされます。

マドプロ出願は、直接出願に比べて、海外代理人費用や翻訳費用が削減できます。また、商標登録後の更新や名義変更などの手続を、各国の特許庁ごとにする必要がなく、世界知的所有権機関(WIPO)に対して一括して手続きすればよく、利便性が高い制度です。

海外の知的財産に関する情報

工業所有権情報・研修館(INPIT)と日本貿易振興機構(ジェトロ)が各種サービスを提供しています。また、東京都の中小企業は、東京都知的財産総合センターも利用可能です。 詳細はそれぞれの機関のウェブサイトをご確認ください。

補助金・助成金

海外での知的財産権の取得にかかる費用の一部を助成する制度(中小企業等海外出願支援事業)や国際出願の軽減制度が用意されています。また、知財関連経費は、ものづくり補助金の対象です。他にも、補助金・助成金がございますので、海外で知的財産権を取得することを検討されるときには、下記サイトなどで、最新の情報を調査することを、おすすめします。

JETRO 中小企業等外国出願支援事業
URL:https://www.jetro.go.jp/services/ip_service_overseas_appli.html

特許庁:国際出願に係る手数料の軽減措置の申請手続
URL:https://www.jpo.go.jp/system/patent/pct/tesuryo/pct_keigen_shinsei.html

海外で知的財産権を取得する事業上の意義の再確認

海外で知的財産権を取得するには、ご紹介した支援機関や補助金などを活用しても、労力と費用がかかります。海外で知的財産権を取得することで、事業・経営上の課題が解決するのか、十分な費用対効果が見込めるかなど、事業的視点から評価したうえで、適切な範囲・国で知的財産権を取得することが重要です。

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