Afterコロナ時代を生き抜くための
相手を動かす提案資料作成術
最近はリモートワークの進展により、対面によらない形での提案のスタイルが定着しつつあります。このため、口頭での補足説明がなくても伝わるような提案資料のニーズが高まっているのです。そこで今回のコラムでは、提案内容を的確に伝えて成果を出すための提案資料作成術をご紹介します。
提案資料の目的とは
日常の仕事において何らかの提案資料を作成する機会は多いと思いますが、あなたは提案資料の目的について考えたことはありますか?
当たり前のことかもしれませんが、提案資料にはきちんとした目的があります。それは、提案資料を通じてその読み手を動かすことです。具体的には、読み手に承認、協力、支援などをしてもらうことになります。例えば、社内における新製品提案であれば、新製品の商品化について社内の承認をもらうことになります。また、取引先に対する自社商品の提案であれば、取引先に提案商品の導入をしてもらうということになりますね。
相手を動かす提案資料とは
それでは、このように相手を動かすための提案資料を作成するにはどうしたらよいでしょうか?
もちろんこちらの提案内容をきちんと伝えることが前提となりますが、一番大事なことは
「読み手の立場に立って資料を作成する」ということです。
どれだけ提案の内容が素晴らしくても、読み手に受け入れてもらえなければ相手を動かすことにはつながりません。ただ単に自分が伝えたいことを資料にまとめるのではなく、読み手にどうしたら受け入れてもらえるかを考えながら資料を作成する姿勢が必要です。
要するに読み手に対して、自分の提案資料を商品として提供するようなイメージで作成すればよいのです。読み手に受け入れてもらい、喜んでもらえる商品を届けるような気持ちで資料を作成することが重要ですね。
STP分析について
読み手を顧客ととらえて提案資料を作成するためには、マーケティングの手法を活用するとよいでしょう。ここでは、マーケティングにおける代表的な手法であるSTP分析のフレームワークを活用してみましょう。
STP分析とは、セグメンテーション(Segmentation)、ターゲティング(Targeting)、ポジショニング
(Positioning)の3つの視点から、マーケティング戦略を立案するための分析を行う手法になります。3つの視点の頭文字を取ってSTP分析と呼ばれています。なお、それぞれの内容は以下のとおりです。
<STP分析の3つの視点>
視点1:セグメンテーション(Segmentation)
顧客を一定の条件に基づき層別して整理します。例えば地域や年齢、性別、ライフスタイルなどによって顧客を細分化していきます。
視点2:ターゲティング(Targeting)
細分化した顧客の中からターゲットとする顧客を選定します。自社が狙うべきターゲットを絞り込む作業になります。
視点3:ポジショニング(Positioning)
ターゲットとする顧客に対する自社の立ち位置(ポジション)を明確にします。具体的には競合他社との比較により、自社の優位性や独自の提供価値をわかりやすく訴求します。
大きな流れとしては、セグメンテーションで顧客全体を整理し、ターゲティングでその顧客の中から狙いの顧客を選定し、ポジショニングで自社の立ち位置を明確にするという形になります。
STP分析を応用した提案資料作成
それでは、このSTP分析の考え方を提案資料の作成に応用してみましょう。基本的な流れは先ほどと同じです。同様に3つの視点に沿って進めていきます。
視点1:セグメンテーション(Segmentation)
最初に提案資料の読み手を性格などの属性に基づき代表的なタイプに分類します。ここでは一つの例として4つのタイプに分類してみます。
1)結論重視型(結論を急ぐせっかちなタイプ)
2)分析重視型(データによる分析を重視するタイプ)
3)協調性重視型(周囲との関係性や協調性を重視するタイプ)
4)実績重視型(実績や経験を重視するタイプ)
視点2:ターゲティング(Targeting)
続いて読み手であるターゲットを明確にします。ターゲットが上記4つのタイプのどれに該当するかを当てはめてみましょう。その上でそれぞれのタイプに応じて資料構成をアレンジします。尚、読み手が複数存在する場合には、決定権者など最も影響力のある人をターゲットとして考えるとよいでしょう。
1)結論重視型(結論を急ぐせっかちなタイプ)の場合
このタイプの読み手はとにかく結論を早く知りたがっています。この場合は、資料の冒頭に結論を説明する資料構成にしましょう。
2)分析重視型(データによる分析を重視するタイプ)の場合
このタイプはきちんとしたデータを提供することで提案内容を信頼してくれます。そのためには提案の根拠や裏付けとなる客観的なデータを充実させるようにしましょう。
3)協調性重視型(周囲との関係性や協調性を重視するタイプ)の場合
このタイプは周囲の関係者の意見や反応に気を使います。そのため関係者の意見や要望をできる限り多く取り入れたり、関係者との事前の調整結果を反映させたりするとよいでしょう。
4)実績重視型(実績や経験を重視するタイプ)の場合
このタイプには実績が物を言います。そこで社内、社外を含めたこれまでの導入実績などを添付するとよいでしょう。
さらに上記に加えて、読み手の最近の関心事や資料の内容に関する理解度などを踏まえた上で、資料の内容に反映させるとよいでしょう。
視点3:ポジショニング(Positioning)
最後に自社の立ち位置を明確にした上で、独自の提供価値を訴求します。ここでは、自社が行う提案内容のメリット、効果をわかりやすく伝えます。具体的には、「自社の提案が読み手の困り事や課題をどう解決できるのか」について説明します。この場合に注意したいことは、あくまでも読み手の視点でメリットを伝えることです。提案を採用する前と採用した後で、具体的に何がどう変わるのかについて、Before/After形式で表現すると理解してもらいやすくなります。
伝わる提案資料のポイント
伝わる提案資料にするためには、読み手にとってわかりやすい資料であることが必須です。ここではそのポイントを3つご紹介します。
そもそも人は理解しづらいものについては、あまり積極的に読もうとはしません。これを踏まえて読み手に読んでもらうようにするためには、読み手に余分な負担をかけないようなわかりやすい資料にすることが必要なのです。
ポイント1:伝えたいポイントを絞る
提案資料にあれもこれもと多くの内容を盛り込みすぎると結局何が言いたいのかよくわからなくなってしまいます。こういった資料では最悪の場合、最後まできちんと読んでもらえなくなる危険性があります。このような事態を避けるために、伝えたいポイントを絞るようにしましょう。基本は一つのスライドには一つの内容だけを書くようにします。いわゆる「1スライド1メッセージ」を常に意識しましょう。
ポイント2:見た目の第一印象がよくなるように工夫する
見た目にも煩雑で俗にいう“ビジーな資料”だと読み手が理解することを諦めてしまいます。一方で、資料をパッと眺めて一目で何が書いてあるかがわかるような資料であれば、読み手に好意的に読んでもらえる可能性が高まります。やはり提案資料も第一印象が大事です。第一印象をよくするためには、以下のことを意識すると効果的です。
(上下左右の余白スペースを多くする、段落を分けて余白スペースをつくる)
・体言止めや箇条書きを利用して文字数を少なくする
・図表やイラストを効果的に使用する
・スライドの中にできる限り多くの余白スペースを設ける
ポイント3:資料全体の統一感を意識する
資料全体に統一感があると、読み手が理解しやすくなります。逆にスライド毎にレイアウトやフォントなどの表現がバラバラだと、読み手が混乱してしまうのです。このような事態を避けるためには次のようなルールを決めておくとよいでしょう。
・各スライドのレイアウトに統一性を持たせる
・文字のサイズとフォントを統一する
・資料の中で使用する色は3色までにする
ここまでご説明したように読み手を意識したマーケティング思考を取り入れることで、“確実に読んでもらえる提案資料”になる可能性が高まります。ぜひ今後の営業活動に取り入れてみてください。
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