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  • 2022.03.22

ESGって得するの?

ESGって得するの?

サステナブルな(持続可能な)社会を実現するためにSDGsという目標が掲げられ、日本でもますます関心が高まっています。それと同時に、企業活動や金融の世界では「ESG」の重要性が増してきました。企業は持続可能な世界のために、Environment(環境)、Social(社会)、Governance(ガバナンス、企業統治)の観点を経営に取り入れる必要があり、それが長期的な成長に不可欠であると考えられています。

地球環境や人々の健康、働きやすさなどが守られないことには、社会も企業も将来にわたって維持することはできません。そのことが世界中で強く意識されるようになり、いまや大企業に限らず、中小企業にもESGの視点が求められるようになってきました。ESGへの対応はリスクやコストと考えるのでなく、チャンスと捉えることが大切なのです。

本稿では、中小企業が力強く生き残っていくために欠かせないESGへの理解を深めるために、ESGによって「得するポイント」を中心に、基本事項を押さえておきたいと思います。

「ESG投資」の広がり

ESGは、社会および企業の持続可能性のために必要な経営視点を表すものですが、投資対象としての企業価値と結びつけて想起されることが多いのではないでしょうか。ESGに配慮した企業への投資は「ESG投資」と表現されています。世界持続的投資連合(GSIA)の統計報告書「GSIR2020年版によると、2018年から2020年までの2年間で世界のESG投資額は15.1%増加し、約353千億米ドルに達しています。欧米での広がりと日本での急伸が分かります。

ESGって得するの?
ESGって得するの?

日本でESG投資が急激に伸びてきた背景として、世界最大規模の機関投資家であり、公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)がESG投資にシフトしたことが特筆されます。GPIFは、「長期にわたって安定した収益を獲得するためには、投資先の個々の企業の価値が長期的に高まり、ひいては資本市場全体が持続的・安定的に成長することが重要」(2020年度ESG活動報告より)とし、ESG投資を推進しています。

このように、ESGの観点が企業価値を測る尺度として世界標準になってくると、元々は法的な拘束力を持つわけではない「ソフト・ロー」も、実質的な拘束力を強めていきます。社会的規範として定着すると、実際に法令化される部分さえも出てきます。すでにグローバル企業では、ESGはコンプライアンスの対象といえるでしょう。

ESGは企業価値を高めるのか?

投資の話から入ったので、株主にとっての企業価値とESGの関係をもう少し見てみます。前出のGPIFの報告書に書かれているように、ESGを配慮する企業には長期にわたる安定収益が期待できるのでしょうか。

そもそも「ESG」という言葉が使われるようになったきっかけは、国連のアナン事務総長(当時)が提唱して2006年に発足した「国連責任投資原則(PRI)」だと言われます。PRI6つの原則からなり、第1原則は「私たちは投資分析と意志決定のプロセスにESG の課題を組み込みます」というものです。投資家に、環境・社会・ガバナンスに配慮して投資対象を選ぶことを求めています。日本のGPIF2015年にPRIに署名しました。

PRIの制定にあたっては、「ESG投資は『受託者責任』に反しないか」という議論と分析が盛んに行われました。機関投資家は個人投資家と違って、資産の保有者から資産運用を受託しているため、世の中の役に立つからといって資産保有者の利益を損ねる訳にはいかないのです。これに対する分析レポートの結果は、「ESGの課題に有効に対応することが株主価値の上昇に寄与する」というもので、ESG投資の合理性に裏付けを与えたのです。

こうして、「環境や社会に配慮し、持続可能な世界を目指すという、企業の長期的な視点が企業価値を高める」という認識が広がりました。短期的な利益重視からの方向転換ともいえるこの考え方を、ESG投資の専門家である夫馬賢治氏(株式会社ニューラル代表取締役CEO)は「ニュー資本主義」と呼び、環境・社会への配慮が利益減少につながると考える「オールド資本主義」や「脱資本主義」と区別しています(参考:『ESG思考』講談社+α新書)。

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中小企業にもメリットがあるのか

ところで、日本ではSDGsESGがセットで認識されることが多いようです。実際両者は、サステナブルな社会を実現させるための車の両輪といえます。ただし、SDGs2015年に国連で採択された17の目標と169のターゲットであり、ESGはそれ以前から企業の重要な経営視点として欧米を中心に議論されてきました。ESG経営のための拠り所として、SDGsは行動基準を示してくれるものだと位置づけられます。

では、中小企業でもSDGsと同様に、ESGに配慮した経営をするとメリットがあるのでしょうか。産業全体を俯瞰するマクロな視点と、自社の事業運営に直接かかわるミクロな視点の双方で検討します。

①長期的視点により持続可能性が高まる

すでに述べたように、ESGは長期的に企業の持続可能性を高める視点です。それによって社会全体が課題解決と持続可能な発展を目指し、ゆくゆくはそれぞれの企業と生活者にメリットをもたらします。

②イノベーションが生まれる

環境・社会の課題に向かって事業を行うとき、新しい技術が求められ、イノベーションにつながります。共通の課題に向かって産学官の連携が生まれることもあります。「グリーンイノベーション」や、政府が掲げる「グリーン成長戦略」などが関連ワードとなります。

③サプライチェーンから外されない

自社の視点からは、大手企業との取引を維持するという守りのメリットが挙げられます。大企業ではすでに、ESGの基準を満たさないと海外取引も難しく、投資の対象から外れる可能性がありますが、中小企業でも大企業の取引先としてESG基準が求められるようになってきています。早い対応で基準を満たせば、安定した取引の確保につながります。

➃消費者と社会全体から評価を得られる

SDGsの認識が社会全体に高まり、消費者・生活者から企業に対してESGSDGsの観点から視線が注がれます。大企業も中小企業も同様です。十分なESG対応を行っていることを適切に広報活動することで、自社の評価を高めることができます。

⑤人材の確保に有利

前記同様に、ESGは就職活動でも企業評価の重要ポイントになっています。Z世代と呼ばれる若い人たちのESGSDGsに対する感度は非常に高いものがあります。人手不足が進んでいく時代において、特に中小企業では優秀な人材を確保することが大きな課題です。ESGへの配慮が有効なアピールとなるでしょう。

⑥資金調達での優遇

金融面でも有利になります。例えば「サステナビリティ・リンク・ローン(SLL)」は、企業の環境・社会的に持続可能な経済活動を促進する融資です。借り手が積極的なESGSDGsに関する目標「サステナビリティ・パフォーマンス・ターゲット(SPTs)」を設定し、その取り組み状況の報告と客観的な評価によって、金利等の融資条件が優遇されるものです。SLLは、地域の持続可能性向上への貢献が期待される地方銀行を含めて、多くの金融機関に取り扱いが広がりつつあります。

実践のためのESG指標とは

これまでESG経営のメリットを述べてきましたが、その実践にあたっては、自社にとっての重点課題を特定し、指標と目標値を設定することが必要になります。また、取り組み状況を情報開示する枠組みも大切です。ただし現在は、指標と情報開示についていくつもの国際基準があり、情報開示ルールの統一化が期待されている段階です。

そうした中で、株式会社日本取引所グループと株式会社東京証券取引所が「ESG情報開示実践ハンドブック」を公表しています。ESG課題の認識から情報開示まで、4つのステップに整理されており、中小企業にとっても非常に参考になるものです。日本取引所グループのWEBサイトからダウンロードして参照してみてはいかがでしょうか。

ESGの理解が企業の持続可能性を高める

企業が環境・社会の観点で社会全体のサステナビリティを重視し、ガバナンス(企業統治)を発揮することは、自社の持続可能性と成長につながります。ESG経営は長期的な視点から企業価値の向上に寄与するものなのです。ESGに先手先手で取り組むことで、具体的なメリットを享受していくことも可能です。

ESGは大企業に限った話ではなく、中小企業にも必要な視点であり、「得する」ポイントがたくさんあることをご理解いただければ幸いです。

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