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意外と知らない知的財産権(第1回)

知的財産権の種類と事業への活かし方とは

知的財産権の種類と事業への活かし方とは

家庭生活の中では、「知的財産権」という言葉はあまり馴染みがなく、詳しく知らなくても日常において支障が出てくることは多くないでしょう。
しかし、事業を行う上で「知的財産権」はとても重要な権利になります。

海外との貿易を事業に含む場合においては、国内のみの事業を行う場合に比べて知財リスクについて注意すべき範囲が広くなります。とはいえ、学校で知的財産について学んだ方は、特に40代以上ではあまりいらっしゃらないと思います。

そこで今回は、知的財産についてよく知らないという方のために、重要なところだけ、かいつまんで解説していきます。できるだけ平易にするために、多少正確性を犠牲にしているところもありますので、その点はご了承ください。

知的財産権の種類

知的財産権の代表例は特許権ですが、その他にも実用新案権、意匠権、商標権、著作権等があります。

技術的なアイディア(発明、考案)の知的財産は、特許権、実用新案権で保護しますが、そのアイディアを具現化した商品のデザインは意匠権で保護する等、一つの商品が複数種類の知的財産権で多面的に守られていることも多くあります。

例えば、あるクレーン車について見てみると、遠隔操作のシステムについて特許権があり、クレーン車のフォルムのバリエーションについて意匠権があり、車体の横についている会社のロゴマークには商標権があります。
身近な商品も知的財産権で守られている商品が多くあります。例えば食品 でも、インスタントカップラーメンの製造方法について特許権があり、商品パッケージについて意匠権があり、商品名には商標権があります。

知的財産権の大きな特徴は、原則として 、権利者が独占的に実施することができ、他者が許可なく実施してはいけないというところです。したがって、事業を安心して継続的に行うためには、事業に必要な知的財産権を獲得し、ライバル社をはじめとする他社の権利の侵害にならないようにすることが必要です。その次の段階で、社内に知的財産を守り育てるしくみを作り、事業計画に応じて、知的財産権で守る範囲を広げ、知財力を強化していきます。

特許権や実用新案権や意匠権は、所定の期間が過ぎると権利が切れて、誰でも使えるようになります。権利が切れることは、時に事業の存続の危機になり得ます。
たとえば、薬剤のように、メインの特許が切れると多数の後発品が出てしまう商品があります。後発品の出現により、今まで独占的に得られていた利益が大幅に減少するので、事業計画は、大いに影響を受けることになります。

ほぼ一つの特許がメインとなって製品を守っている商品もあれば、自動車のように多数の特許で守られている商品もあります。

商標権は、10年毎に更新して100年でも権利を存続させることができるという点で、特許権等とは大きく異なります。

知的財産権の種類と事業への活かし方とは

重要なキーワードは「先手」

知的財産権について忘れてはならない重要なキーワードの一つは、「先手」であると考えます。
知財の相談を受けてきた中で、

「自分が考えていたアイディアなのに、他人に権利を先に取られてしまった!」
「自分が使っていた店名なのに、他人に先に出願されてしまった!」

というような「しまった!」をよく聞きます。

「あのとき出願しておけばよかった」と、悔やんでも、残念ながら時間は元に戻りません。
先手を打っておかなかったばっかりに、得られたはずの利益を失ってしまうのは、残念です。

「知財立国」を政府が打ち出し、知財基本法が成立した後も、知財で痛い目に遭って初めて知財の重要性に気づくという事業者の方は、まだまだ多くいらっしゃいます。

「オリジナルで開発した商品について、ユニークなネーミングを付けた商品を国内で売ったら売れ行きが良かったので、3年ほど準備して海外にも輸出したら、自社の輸出品が、他人の意匠権と商標権の侵害品として訴えられてしまった。」

このようなトラブルは実際にいくつもあり、どんな会社でも他人事ではありません。
数十年前には考えられなかったほどインターネット環境が整備され、世界の多くの場所で、誰でも情報を発信することができるようになったと同時に、誰かが発信した情報を世界中のどこにいても、一瞬にして得ることができるようになりました。

知的財産権の種類と事業への活かし方とは

販売がされていれば、他人がその商品について知る可能性があります。その商品のアイディアやデザインについて、他人が意匠権や特許権を取得してしまった場合、取り消しを求めるためにかかる費用は、出願費用を上回るケースがほとんどです。費用をかけても取消が認められないこともあります。

自分が付けたネーミングでも、原則として先に商標出願した人に権利が発生します。そのネーミングが有名である等の例外の説明は省略しますが、リスクを感じる方は知財の専門家である弁理士に是非ご相談ください。

上記のようなトラブルを防止するには、特許・意匠・商標については、基本的に、先に出願して権利を取得することが肝要です。「先手」ですね。

やみくもな権利取得は必要か

ただし、いくら先手が重要とはいえ、世界中で権利を取得することは、中小企業にとって必ずしも良い方法ではないケースも多くあります。自社も代理店もない非輸出国で特許権を取得したとしても、侵害があったという事実や侵害者を見つけることができなければ、侵害者 に対する権利行使はできません。

自社や代理店などが発明品を製造も販売も輸出もしておらず、今後も一切予定がないという状況では、かけたコストが全くの無駄になってしまいます。

権利を取得するときだけでなく、権利維持にも費用が掛かります。日本をはじめとする主要国の多くで、特許権の維持費用は維持年数が長くなると段階的に高額となります。権利を取得する前から維持費用が発生する国もあります。

特許出願した内容は、一定期間後公開されることにも注意が必要です。
したがって、事業計画と権利取得可能性と営業秘密を考慮して出願の要否及び記載内容を決める必要があります。

なお、著作権については、登録しなくても創作した瞬間に権利が発生しますので、権利の発生に申請は不要です。しかし、権利の移転等、登録しておいた方がメリットのあるケースもありますので、事情に応じた対応が必要です。

知っていると便利な制度

まず日本で特許出願したという場合、海外はいつまでに出願すればよいでしょうか?
前提として、どこにも発表していない技術的なアイディア商品で、中国での特許取得のみを考慮するとします。

中国は、PCT条約加盟国のため、直接中国に特許出願する以外に、国際出願することが可能です。いずれの場合も、そのアイディアの新しさ等の判断において、最初に出願した日本の出願日を基準に審査してもらうことができる「優先権制度」の利用ができます。この「優先権制度」を利用する場合は、原則として最初に出願した日本の出願日から1年以内に中国への特許出願あるいは国際出願を行う必要があります。

最初の出願から3年位経ってから「外国でも知的財産権を取得したい」と考えても、取れる手段が限られて来るため、優先権制度を利用する場合には、「1年以内」に十分注意してください。なお、優先権の期間は、意匠出願や商標出願では6か月です。

改正等について

本記事の内容は、2019/5/7現在の内容です。知的財産の法律は毎年のように改正があり、例外規定も多く、各国で改正のタイミングが異なるのでご注意下さい。また、国際出願のルール、加盟国等も変わるのでご注意下さい。

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