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キラリと光る!中小企業

手ぬぐいを世界へ!創業120年の老舗問屋が挑む海外展開 神野織物株式会社

手ぬぐいを世界へ!創業120年の老舗問屋が挑む海外展開 神野織物株式会社

大阪府吹田市に本社を構える神野織物株式会社は、創業120年を数える、老舗の手ぬぐい問屋だ。顧客からの注文に応じ、オーダーメイドでオリジナルの手ぬぐいやタオルを販売している。
全国の多数の染工場と協力関係を築いており、顧客の要望に応じて、最適な素材や工法、納期や工場を提案できることが同社の強みだ。
注文に対して迅速・丁寧に対応することで、幅広い顧客から支持を受けており、その製作実績は1,550万枚以上 を誇る。

近年は、音楽ライブでのアーティスト物販用タオル、アニメーション・ゲーム作品のタオルや剣道用の手ぬぐいまで、多様な製品を手掛けている。

今回は、代表取締役の神野哲郎(かんの・てつお)氏と部長を務める辻良岳(つじ・よしたけ)氏から、同社の強みや、海外展開に向けた施策についてお伺いした。

手ぬぐいを世界へ!創業120年の老舗問屋が挑む海外展開 神野織物株式会社

工場を持たない問屋だからこそ、顧客の要望を叶えられる

「現在の弊社の主力商品は、手ぬぐいとタオルです。なかでも、『別注品』と言われるオリジナルデザインの手ぬぐいやタオルの制作を得意としています。多品種少量の注文に迅速にお応えできることが、弊社の強みですね。比率としては、タオルが3割、残りの7割を手ぬぐいが占めています。近年は、オリジナル手ぬぐいの取扱高が増えてきています」(神野氏)


神野織物は、自社では工場を保有していないため、設備の稼働率やスペックなどに縛られない提案を行うことができる。顧客が欲しているものをくみ取り、国内100か所以上の協力工場の中から、顧客の要望を最もうまく実現できる工場を選び出す。

ひとくちに工場といっても、各社に得手不得手がある。『工場直販』を謳い、低価格を訴求する同業他社もあるが、全ての顧客の要望に適う生産設備を自社で保有することは難しい。工場直販の場合、自社設備の都合で顧客の要望を曲げざるを得なかったり、注文を受けられなかったり、という場合も多いそうだ。

「弊社は自社工場を持っていないからこそ、お客さんにとっての、『一番都合の良い会社』としてご注文をいただけているのだと思います。

従業員みな、協力工場のことを熟知しておりますので、難しいご要望に対しても『この染め方、この工場が最適です』というアドバイスが可能です。納期や品質はもちろんですが、従業員の知識量と協力工場の数、そしてチャレンジ精神に関しては、同業他社のどこにも負けない自信があります」(神野氏)

手ぬぐいを世界へ!創業120年の老舗問屋が挑む海外展開 神野織物株式会社

昭和30年代~60年代(1950年代~1980年代)には売上高の9割をタオルが占めていたという同社は、今日までに商品ラインナップを大きく変化させてきた。

「手ぬぐいは、市場の規模こそ小さいですけれども、ニッチな商品なのでタオルよりも競合企業が少なかったのです。2011年頃に商品構成を切り替えました」(神野氏)


2011年、同社はオリジナル手ぬぐい製作受注のため、新たにWEBサイトをオープンするとともに、ダイレクトメールを全国の剣道部や剣道クラブ、道場に向けて発信した。

日本でもっとも日常的に本染めの手ぬぐいを使っているのは、剣道の選手だ。性別を問わず、防具の「面」を被る前に「面手ぬぐい」「面タオル」と呼ばれる手ぬぐいを頭に巻く。

前髪をまとめ、汗が滴って目に入ることを防ぐためだ。吸水性の高さから、プリントではなく本染めの手ぬぐいを使用することが一般的である。チームの士気を高めるため、道場や部員が「お揃い」の面手ぬぐいを作り、試合に臨むことも多い。

この「お揃い」の手ぬぐい製作需要に同社は目をつけ、今日までにオリジナル手ぬぐいの売上高を成長させてきた。

手ぬぐいを世界へ!創業120年の老舗問屋が挑む海外展開 神野織物株式会社

繊維の街に根付いた、老舗手ぬぐい問屋

「弊社の創業は明治32年(1899年)で、今年で創業120周年です。
私の曾祖父は縫い針の行商から商売を始め、北海道小樽市で貿易会社を興しました。その会社の商品の仕入担当部門として、繊維の街・大阪に設立された支社が、今の『神野織物』のルーツとなっています」(神野氏)


大阪は「繊維の街」と呼ばれ、大阪市中央区にある船場(せんば)地区を中心に、繊維関連の問屋が集積している。明治時代には繊維製造業や繊維を取り扱う商社が大きく成長し、帝人や東洋紡、伊藤忠商事、丸紅といった企業が誕生した。

神野氏の曾祖父の時代には、大阪で仕入れた繊維商品を、小樽を経由して満州に輸出していたという。昭和恐慌の時代に小樽の本社は廃業したが、大阪支社は「神野織物」と名前を変えて存続することとなった。

手ぬぐいを世界へ!創業120年の老舗問屋が挑む海外展開 神野織物株式会社

取引先・仕入先との信頼関係で乗り越えた、2度の経営危機

神野氏が事業を承継して以来、順風満帆に見える同社であるが、過去には2度窮地に陥ったことがあった。

「10年ほど前、当時の従業員が得意先と仕入先を連れて、辞めてしまったことがありました。売上にして2億円、当時の年商のおよそ半分ほどが一気に引き抜かれ、一度は廃業も考えました。先代の墓参りまでしたのです。

でも、この時社内に残ってくれた従業員から『続けてください』という声が上がり、事業を続けることにしました」(神野氏)


その後、1年後には引き抜かれた2億円のうち、1億5千万円分の売上を再び獲得することができた。しかし、数年後に再び離反劇が起こる。

「前回『続けてください』と、廃業を引き留めてくれたその従業員が、得意先さんと仕入先さん、さらに他の従業員を連れて独立することになったのです。ショックでしたね」(神野氏)


呵々大笑しながら、大事件について語る神野氏。この時も1年ほどのうちに売上を盛り返すことができたという。

「多くの取引先は、『社歴が1年もない会社より、神野織物に頼みたい』と弊社に戻ってきてくださったのです。長年積み重ねてきた取引先・仕入先との信頼関係が、急速な売上回復に繋がりました」(辻氏)

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フランスを足掛かりに、海外展開を目指す「神野の手ぬぐい」

現在の神野織物は、平均年齢およそ38歳。部長の辻氏は35歳だ。2年連続で新卒を採用している同社の社内は、活気にあふれている。

「歳をとると保守的になって、新しいことができなくなってしまうものです。私も今年60歳を迎えますので、どんどん若手に任せるようにしています。 若手も『同じことを続けているだけでは、絶対あかん』と理解しているので、色々とチャレンジしていますね」(神野氏)

同社が開拓した顧客の多くは、WEBサイト経由での受注だ。国内外向けのECサイトを開設するだけでなく、神野社長自ら、1日4本もの動画コンテンツを更新し続けるなど、WEBサイトやSNSの情報鮮度の維持に気を配っている。

WEBサイトを通じて実現した、同社の新たな取り組みの一つが、フランス剣道連盟における剣道大会「フランスオープン(l’OPEN de FRANCE de KENDO)」向けのオリジナル手ぬぐいの受注・出店だ。同大会の公式サイトのトップページ には、大きく「TENUGUI 2019」という文字が躍っている。

WEBサイト経由で手ぬぐいを注文してくれていた個人顧客からの「訪日時に同社を訪問したい」という要望に応じたところ、なんとその顧客がフランス剣道連盟の広報担当者だったという。この偶然が、新たな取引に繋がった。

手ぬぐいを世界へ!創業120年の老舗問屋が挑む海外展開 神野織物株式会社

フランスオープン(l’OPEN de FRANCE de KENDO)のWEBサイトで紹介されている手ぬぐい
http://www.cnkendo-dr.com/opendefrance/opendefrance.html

「日本の購買力推移の予測値によれば、30年後には、国内の購買力は現在の半分ほどになってしまいます。国内向けの商売だけを続けていてはいけないと、3年前から海外展開に力を入れ始めました。10年後には、売上高の海外向け比率を50%にまで高めることを目指したいですね」(神野氏)

「アリババさんで取引を始めて以来、仕入先としても中国企業とのお付き合いが生まれました。日本の顧客の需要を満たせる、優良メーカーも多いと感じています。彼らと一緒に仕事をして、ともに成長していければと考えています。今月、中国江蘇省の商品展示会にも参加予定です」(辻氏)

手ぬぐいを世界へ!創業120年の老舗問屋が挑む海外展開 神野織物株式会社

写真 左:神野氏 右:辻氏

入社以来、手ぬぐいを国内外に広めたいという思いで事業を営んできたという神野氏。

これからは、単品を売るだけではなく、『剣道選手やスポーツプレイヤーを応援する会社』といった、新たな事業の定義付けを考えていきたいです

と、目を輝かせながら今後の展望を語ってくれた。

熱意あふれる従業員の皆さんに支えられ、活気とチャレンジ精神に満ちた神野織物株式会社。同社の新たな事業展開を目にする日も遠くないだろう。

神野織物株式会社 会社サイト
http://www.e-kanno.com/
手ぬぐい 神野(手ぬぐい専門ページ)
http://www.kanno-tenugui.com/

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