世界のリーダーが注目する「禅」。グローバルに戦う力をつける法則とは

「マインドフルネス」が全世界的に注目され、グローバル企業がビジネスリーダー育成の研修プログラムに取り入れているケースもみられます。

しかし、そうしたブームの以前から、「禅」に惹かれ、その精神を実践していたトップリーダーが数多くいます。アップル創業者のスティーブ・ジョブズ氏をはじめ、著名な経営者たちが行きついたといわれる「禅」。

ビジネスの第一線で活躍する人たちが、禅に注目するその理由を紐解いていきましょう。

世界のリーダーが注目する「禅」とは

禅といえば、座禅を組んでいる深遠なイメージがあります。
禅は、深い呼吸と瞑想のなかで雑念を払い、悟りに到達するものです。

現在注目されているマインドフルネスは、瞑想するという形は同じですが、厳密にいうと禅とは本質的な違いがあるといわれます。マインドフルネスには、現代人が抱える心の奥底の不安を取り除いたり、それにより心身が健やかになったりするという目的があります。

それに対して禅には、目的がありません。道元が説いた「只管打坐（しかんたざ）」は、ただ坐禅をする、それ自体が目的であるとしています。
無を求めて瞑想することにより、自らの道がおのずと見えてくるという考えです。利益追求のビジネス界にあって、進むべき方向を常に模索している世界のリーダーが、禅に傾倒するのも理解できます。

スティーブ・ジョブズは、禅の影響をもっとも受けた経営者として知られています。老師の助言がなければ、事業から引退していたといわれるジョブズ氏。シンプルであることにこだわり、生み出す製品には禅の精神を反映させ続けました。

ビジネスに「禅」を取り入れるメリットとは

禅を通して体得できるのは、自身のぶれない軸や自己認識・自己統制の力といわれています。
その時々の状況に惑わされず、真理を求め続ける姿勢は、さまざまな価値観と対峙するグローバルリーダーに必要な素養といえます。
しかし、こうした力は、普段のビジネスのなかで磨くことは難しいものです。禅を取り入れることで、ビジネスに向き合う精神力の土台をつくれるというメリットを享受できます。

また、ストレスやプレッシャーに打ち勝つ強さは、現代のビジネスパーソンに欠かせない力です。座禅、瞑想といった実践を重んじる禅は、集中力を高め、いかなる苦境にあっても乗り越えられる強靭な精神力を身につけられるといった効果も期待できます。

禅には決まった道筋や正解があるわけではありません。余分なものを排除し、穏やかな心で本質を見つめることそのものが、判断力を磨くステップといえるのです。

心にとどめておきたい「禅語」

禅には、その教えを短い語句で表現した禅語があります。禅語は、ビジネスの現場にも活きることばです。代表的なものを紹介していきましょう。


●真玉泥中異（しんぎょくでいちゅうにいなり）
「宝石は泥の中にあっても輝きが失せない」という意味です。
境遇や周囲の状況に関わらず人は輝ける、不遇を他事のせいにせず懸命に業務に打ち込めば、必ず光が見えてきます。

●悟無好悪（さとればこうおなし）
「悟りを開いた人には好き嫌いはない」が本来の意味です。
ゆるぎのない自分でいられれば、外野の評価は気になりません。他人のひとことに惑わされない精神力の強さが、ビジネスの運を開きます。

●一華開五葉（いちげつごようをひらく）
「一つの花に五弁の花びらが開いて、やがて実りにつながる」という自然の様を表しています。
5つの花びらには、「他者をありのまま受け入れる」「分け隔てのなく平等であること」「本質を見極める観察力」「他者のために行動できること」「すべてを与えられたものと感謝すること」という意味があります。高い精神力の持ち主は、おのずと道が開け、成功の実を結びます。

●身心脱落（しんしんだつらく）
「あらゆる執着から身も心も自由になること」を本来の意味とします。
座禅や瞑想で得られる「無」の境地です。雑念を払い目の前のことに集中できれば、困難な仕事も苦には感じず、他者の評価が気にならなくなります。また、自在に「身心脱落」の状態に置ければ、日々のストレスにさいなまれることもなくなるでしょう。

禅は長い年月をかけ、研鑽され、人の心を救う道として今日に至っています。
どの時代でも、禅の精神に心惹かれ、自分の道を求める人の支えとなってきました。時間に追われる現代の競争社会では、自身をコントロールする力が重要視されます。禅にはグローバルに通じる、生き抜く力を養う知恵があるといえます。

世界のトップリーダーが禅を選択するのは、そこに人生の真実が見出せるからに違いありません。