海外進出を考える人の中には、越境ECの利用を検討している人もいますよね。また、越境ECに参入した場合に、販路開拓や売上向上が見込めるか気になる人もいるでしょう。
越境ECとは、国境を越えて行われる電子商取引のことであり、企業における海外進出の手法のひとつとしても注目されています。
当記事では越境ECの市場規模について、今後の予測を交えて解説します。越境ECの市場規模の推移を知りたい人や、これから越境ECを始めたいと考えている人は参考にしてみてください。
越境ECの市場規模は年々拡大している
越境ECの市場規模は年々拡大しており、2019年の調査では世界の越境EC市場規模は7,800億USドルでした。2021年には7,850億USドルにのぼり、2年間で50億ドル(約7,245億円)の増加が見られます。
通信技術やスマートフォンの普及により手軽にECを利用できるようになったことや、SNSの流行にともない海外製品への取得欲求が高まったことなどから、越境ECの利用は世界的に広まりました。
また、新型コロナウイルスの流行により外出が制限されたことも、越境ECの普及の後押しとなっています。自宅にいながら海外の商品を購入できることから、コロナ禍での越境ECの利用が活発化しました。
制限が緩和されて以降も、ECの利便性や海外製品への需要の高まりから、越境EC市場は衰退することなく拡大を続けています。
2030年には約10倍に成長すると予測されている
経済産業省の「令和4年度 電子商取引に関する市場調査報告書」によると、2030年には越境ECの市場規模は7兆9380億USドルまで拡大する見込みです。2021年の7,850億USドルと比較すると、10年程度で約10倍の規模へ急成長する予測となっています。
越境ECの市場規模が急成長すると予測される理由には、以下が挙げられます。
【越境ECの市場規模拡大が見込まれる理由】
・越境ECの認知度向上
・自国にない商品(日本限定品)の取得欲求の向上
・企業側の積極的な越境EC市場への参入
・新興国や発展途上国における物流レベルの向上
・インバウンド観光客の増加
たとえば、経済成長によって通信技術や物流が整備されることにより、今後は新興国と呼ばれる国々でも越境ECが普及していくことが予想されます。世界的に越境ECの利用人口が増えることから、市場規模の拡大が期待されます。
また、インバウンド観光客の増加も越境ECの利用者数に影響すると考えられています。滞在中に気に入った商品を帰国後に越境ECを通じてリピート購入する場合もあり、コロナウイルスの終息によりインバウンド観光客が増加することで、越境ECの利用者も増加する可能性があります。
越境ECの需要は、外出制限によるEC利用によるものだけではありません。EC技術の向上や社会情勢の変化により、今後も越境ECの市場規模は拡大していくでしょう。
中国は世界のEC市場規模の過半数を占めている
BtoC-ECの 市場規模を国別に見た場合、中国の割合が50.4%と最も多く、全体の過半数を占めています。
【2022年における各国のEC市場シェアとEC化率】
国名 | 市場シェア(%) | EC化率(%) |
---|---|---|
中国 | 50.4 | 45.3 |
アメリカ | 18.4 | 15.0 |
イギリス | 4.5 | 35.9 |
日本 | 3.1 | 12.9 |
韓国 | 2.5 | 30.1 |
中国は越境ECの市場規模だけでなく、全ての商取引のうち電子商取引が占める割合を指す「EC化率」や、インターネット購買人口も世界1位となっており、EC取引が活発であることがうかがえます。
また、EC市場シェアの第2位はアメリカですが、EC化率ではイギリスや韓国が上回っています。ほかにも、インドネシアやシンガポールなどのアジア圏でEC化が進んでおり、今後はアジアの新興国を中心に、世界各国でEC取引が普及していくと考えられています。
日本における中国およびアメリカとの越境EC取引の現状
日本、中国、アメリカの3国間における越境EC取引では、日本からの輸出額が輸入額を大幅に上回っています。2022年のBtoC-EC取引を見ると、日本での中国とアメリカ経由の購入総額は約3,953億円である一方で、中国とアメリカへの輸出総額は約3兆5,625億円でした。
【日本における中国・アメリカとの越境EC】
取引先国 | 日本の輸入額(円) | 日本からの輸出額(円) |
---|---|---|
中国 | 392億 | 2兆2,569億 |
アメリカ | 3,561億 | 1兆3,056億 |
中国やアメリカでの日本製品への評価は高く、幅広いニーズが見込まれます。ブランド品や美容関連商品などの定番商品のほか、トレーディングカードやアニメのフィギアなど、日本限定商品へのニーズも高まっています。
また、円安の影響で日本製品が割安で購入できるようになったことも、日本にとって越境EC販売が好調となった一因です。これまでよりも安く日本製品を購入できるようになったことで、まとめ買いによる売上増加や、新たな越境ECユーザーの開拓につながりました。
アメリカや中国では、品質の高さや信頼性から日本製品を選ぶ傾向にあります。商品を気に入ってもらえれば、越境ECを通じた継続的な購入も期待できるでしょう。
ただし、中国やアメリカにはすでに多くの日本企業が進出しています。日本製品のニーズは高いものの競合も多いため、海外進出を考えている人は競合調査や他社との差別化につながる戦略を検討して進出先を決めましょう。
越境ECを始めるために必要な準備
越境ECへの参入を検討している人は、越境ECを始めるためにどのような準備が必要となるかを確認しておきましょう。
【越境ECを始める際の準備項目】
・現地の市場や法規制などの事前調査
・販売方法や取り扱う商品の決定
・数値目標の設定
・販売方法の決定
・配送方法の決定と業者の手配
越境ECを始める場合、まずは海外の事前調査を行い、現地に合わせた戦略を立てることが求められます。日本と海外では言語や法規制のほか、ニーズや商習慣などさまざまな点が異なるため、日本での事業展開と同様に進めることでトラブルにつながる可能性があります。
また、越境ECの始め方には「国内の越境ECプラットフォームへの出店」「海外の越境プラットフォームへの出店」「自社の越境ECサイト立ち上げ」など複数の方法があり、それぞれ必要な準備も異なります。予算や適切な人材の有無など、自社の状況に合った方法を選択しましょう。
越境ECの始め方ごとのメリットとデメリットや、向いている企業などを詳しく知りたい人は「越境ECの始め方と必要な準備を解説」を参考にしてみてください。
まとめ
越境ECの市場規模は年々拡大傾向にあり、2021年には7,850億USドルとなりました。2030年には7兆9380億USドルにのぼると予測されており、10年程度で約10倍の市場規模に成長すると予測されています。
世界の越境EC市場規模をみると、中国が世界全体の半数以上を占めており、商取引におけるEC化率やEC利用人口も世界1位となっています。中国以外にも、アメリカやイギリス、アジアを中心とした新興国などで越境ECの利用が広まっています。
中国やアメリカでは日本製品の品質に対する評価が高く、越境ECによる継続的な購入も見込めます。越境ECへ参入したいと考えている人は、まずは現地調査によりニーズや競合を把握したうえで、ターゲットとする国や商品の販売方法などを検討しましょう。