日本企業の海外進出数は増加傾向にあり、海外で事業展開を行う日系企業数は7万拠点以上にのぼります。海外進出を考えている企業の中には、海外進出が自社にとってメリットとなるのかを知りたい人もいるでしょう。
当記事では、日本企業が海外進出するメリットとデメリットを解説します。海外進出を成功させるためのポイントも紹介しているので、海外進出を検討中の企業の人は参考にしてみてください。
日本企業の海外進出におけるメリット
日本企業の海外進出には、以下のメリットがあります。
【日本企業が海外進出するメリット】
・販路を拡大できる
・日本よりも人件費や税金が安い場合がある
・新たなビジネスチャンスの創出につながる
・ブランドイメージや企業価値の向上につながる
日本企業が海外進出をする主な理由として、販路の開拓やコストの削減が挙げられます。海外進出先の経済環境や自社商品のニーズによって異なりますが、企業利益の拡大のチャンスとなることが海外進出のメリットとなるでしょう。
販路を拡大できる
日本企業が海外進出することにより、販路を拡大することが可能です。日本市場が縮小傾向にある中、市場規模の大きな国や今後の経済成長が見込まれる国へ進出することで、売上の拡大や新たな顧客層の開拓が期待できます。
日本の人口が約1億2千万人であるのに対し、中国とインドはともに14億人を超えており、消費者数の多さからも市場規模の大きさがうかがえます。
また、中国に次いで日本の海外進出先として人気の高いアメリカは、人口が約3億人と中国やインドほど多くありませんが、1人当たりの購買力が高くGDPでは中国を上回っています。
海外では日本製品の品質やブランドイメージに対する評価が高く、国内で販売する以上の利益につながる可能性があります。異なる文化や価値観を持つ海外のターゲットに向けて商品を販売することで、新たな需要の発掘にもつながる場合もあります。
ただし、進出先の国によっては、生活習慣や文化の違いから自社商品の需要が見込めない場合もあります。事前に現地のニーズを調査した上で、売上が見込める国への進出を検討しましょう。
なお、販路開拓を目的とする場合、貿易や越境ECを利用して拠点を設けずに海外への販路を開拓する方法もあります。海外進出にはどのような方法があるのか知りたい人は「企業が海外進出する方法とは?形態や流れを解説」を確認してみてください。
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日本よりも税金や人件費が安い場合がある
海外進出先によっては、日本よりも税金や人件費が安い場合があります。人件費の相場や税率は国によって異なるため、進出先次第ではコストを削減し、企業利益の向上につなげることが可能です。
たとえば、法人税の場合、日本の税率は23.2%ですが、シンガポールでは17%です。さらに、日本の場合は地方税率が加算されるため、納税額を計算する際に用いる実効税率は30%以上になる一方で、シンガポールでは優遇措置により実効税率が低くなります。
また、賃金の相場が安い地域へ生産拠点を移すことにより、日本で労働力を確保するよりも人件費を削減できる場合があります。
ただし、海外進出先によっては日本よりも税率や人件費の相場が高い場合もあります。近年の経済成長による中国の人件費高騰など、海外進出後に市場の変動が起こる可能性もある点は留意しましょう。
新たなビジネスチャンスの創出につながる
海外進出を、新たなビジネスチャンスの創出につなげている企業もあります。海外では、日本と異なる文化や経済環境にある地域が多く、現地の顧客ニーズをもとにした新商品やサービスを開発するきっかけとなります。
たとえば、こんにゃくの製造を行う企業では、海外進出にあたり新たにこんにゃくを使用した麺やチップスを開発した事例があります。こんにゃくに馴染みのない海外では食感や香りが受け入れにくいことに注目し、食べやすさを工夫した商品の開発により世界各国への商品展開を進めています。
また、海外の人材やパートナー企業との関わりから、これまでにない技術やノウハウを獲得できる可能性もあります。
飲食業界では、海外での日本食ブームにより、自社商品を海外向けにアレンジして販売する企業も増えています。日本と異なるニーズの発掘や、海外での技術の獲得などにより、新たなビジネスチャンスの創出につながるでしょう。
ブランドイメージや企業価値の向上につながる
海外進出により、ブランドイメージや企業価値の向上につながる可能性もあります。提供する商品やサービスはブランドイメージにも直結するため、海外のニーズに合わせた高品質の製品を提供できれば、企業に対する評価も向上するからです。
日本製品に対する海外からの評価は高く、技術力や性能の面から海外市場でも高いシェアを獲得している日本企業は数多く存在します。世界的に自社商品やサービスが評価されることにより、国内の市場においても企業や商品への信頼が高まる可能性があります。
また、海外進出を行うことで、グローバルな事業展開を行っていることを社外へアピールできます。国内外での評価が高まり企業価値が向上することで、売上だけでなく従業員のモチベーション向上や採用活動における優位性も期待できるでしょう。
日本企業の海外進出におけるデメリット
日本企業の海外進出には、以下のデメリットも考えられます。
【日本企業が海外進出するデメリット】
・初期コストが掛かる
・言語や商習慣の違いからトラブルに発展する可能性がある
・カントリーリスクの影響を受ける可能性がある
日本企業が海外進出する場合、準備に掛かるコストのほか、文化の違いなどによるトラブルが発生しやすいことがデメリットとなる可能性があります。海外進出のメリットだけでなくデメリットも把握したうえで、自社の海外進出の必要性を検討しましょう。
初期コストが掛かる
日本企業の海外進出では、国内で事業展開する場合と比較して、初期コストが掛かることがデメリットです。海外進出を成功さるには、現地調査や戦略の設計など様々な準備が必要であり、それに伴い多くの費用や時間を要するためです。
たとえば、海外進出に向けて現地調査を行う場合、調査に向かう人数分の交通費や宿泊費が掛かります。また、海外での事業展開に関する戦略の設計や社員の研修も必要となるため、時間的なコストも発生します。
中小企業においては、限られた予算や人材の中で海外進出を進めていかなければならないことから、初期コストがデメリットとなる可能性があるでしょう。
言語や商習慣の違いからトラブルに発展する可能性がある
日本企業が海外進出した場合、言語や商習慣などの違いから、トラブルに発展することも考えられます。言語の違いによりコミュニケーションが困難となることや、現地の生活や法律に関する理解が不足することで、お互いに誤解が生じる可能性があるためです。
たとえば、日本では断り文句として「難しいです」や「考えておきます」という表現を用いることがありますが、海外では断られているという認識が無く、話が進められてしまう場合があります。また、意思決定のスピードや時間に対する感覚などが日本企業と異なる場合があり、認識の相違から関係性の悪化につながる恐れもあります。
言語や商習慣の違いによるトラブルを防ぐため、外国語でのコミュニケーション能力に長けた人材を確保することや、事前調査により現地の生活や商習慣への理解を深めておきましょう。
カントリーリスクの影響を受ける可能性がある
海外で事業展開する場合、カントリーリスクの影響を受けて、企業が損失を被る恐れもあります。カントリーリスクとは、国の経済状況の変化や自然災害などが原因となるリスクの事であり、政治や経済状況が不安定かつインフラの整備が不十分な新興国や発展途上国で起こりやすい傾向にあります。
たとえば、政治リスクには内乱やテロの発生が挙げられ、治安の悪化や貿易の制限により企業の損失を招く恐れがあります。また、通貨の下落やインフレなどの経済リスクもつながり、為替レートの変動が企業の海外進出に影響を及ぼすこともあります。
円安の場合、輸出した日本製品が海外で安く買われるため、輸出業は好調になる傾向にあります。一方で、コスト削減のための生産拠点の移転や輸入業を始める場合は、日本へ仕入れる際のコストが高くなるため、海外進出の恩恵を受けにくくなります。
海外の情勢によって、企業の海外進出にリスクをもたらす可能性があります。海外進出をする際は、自社の目的に加えて現地の状況を踏まえた上で、海外進出の方法や時期を検討しましょう。
なお、海外進出の際は進出予定先で起こりやすいカントリーリスクを把握し、問題の発生や重大化を未然に防ぐための「リスクマネジメント」が大切です。リスクマネジメントについては「企業の海外進出におけるリスクと対処法を解説」の記事でも解説しているので、参考にしてみてください。
海外進出に成功した企業の事例
海外進出を行い、販路の拡大や利益の向上につなげている日本企業があります。
【海外進出に成功した企業の事例】
企業 | 概要 |
---|---|
① 麹製品の販売を行う企業の事例 | ・国内での優位性確保に課題を感じ、海外ではなじみのなかった「甘酒」を最新の冷凍技術を用いて輸出 ・甘酒の栄養価に注目し、美容や健康への意識の高い国をターゲットに販路を拡大 ・海外展開の実績が認められ、地元の小学校給食で自社商品の味噌が使用されるようになる |
② 緩衝材の設計・開発を行う企業の事例 | ・取引先の海外進出に伴い、フィリピンへ生産拠点を設ける ・現地で調達する原材料や水質に合わせて製品をローカライズし、高品質な梱包材の製造を実現 ・品質の評判が口コミで広がり、国内外での受注の増加と各国への拠点の立ち上げにつながった |
③ 医療施設へ提供する冷凍蒸野菜の製造を行う企業の事例 | ・中国を中心に生産を行っていたが、1か国への依存から脱却するため様々な調査を重ね、生産に適した産地を選定 ・現在は海外7か国に工場を構え、カントリーリスクの分散を実現 |
④ 化粧品と健康食品の製造・販売を行う企業の事例 | ・オンライン展示会を利用して、化粧品と健康食品の販売を行う ・日本製品の品質への評価に注目し「Japanese」「high quality」という単語を用いて海外へPR ・現在はオンライン展示会を通じて世界37か国と取引を行い、年間2億円の海外売り上げを達成 |
海外進出によって得られるメリットは、海外での販路開拓と売上の増加だけではありません。国内での事業展開にもメリットをもたらした事例や、カントリーリスクの分散を実現した事例もあります。
また、海外進出の方法も企業によってさまざまです。海外へ支店や生産拠点を設ける方法のほか、輸出や越境ECの利用など、日本にいながら海外への販路を開拓している事例もあります。
なお、当サイトの「お客様事例」では、オンライン海外展示会「Alibaba.com」を利用して海外進出を行った企業の事例を紹介しています。オンライン展示会を利用した事例に興味がある方は確認してみてください。
海外進出を成功させるポイントは市場とニーズの事前調査
海外進出を成功させるポイントは、現地の市場とニーズに関する事前調査です。日本と海外では生活環境や顧客のニーズが異なる場合があるため、日本で売れている商品やサービスが、海外でも受け入れられるとは限らないためです。
たとえば、宗教への信仰心の強い地域では食べられる食材に制限がある場合があり、禁止食材を使用した商品を現地で販売することは困難です。また、すでに競合が多数進出している国では新たな価値を提供することが難しいため、現地顧客のニーズに加えて競合他社の状況も確認することが望ましいです。
調査や計画が曖昧な状態で海外進出をした場合、思い通りに売上を伸ばせないことや、経営状況の悪化により事業撤退のリスクも高まります。現地の市場調査をもとに、自社の強みを踏まえて明確な事業計画を立てることで、海外進出の成功につながりやすくなるでしょう。
なお、海外の市場調査の方法を詳しく知りたい人は「海外市場調査に必要な項目と調査方法を解説」を参考にしてみてください。
また、自社商品がどの市場にニーズがあるのか調査したい場合は、Alibaba.comのサービス利用を検討してみてください。
Alibaba.comに商品を掲載することで、海外のバイヤーから問い合わせが来るようになるので、どの地域にニーズがあるのか試すことができます。
まとめ
企業の海外進出には、販路の拡大やコスト削減、ブランドイメージの向上など、企業の利益につながる様々なメリットがあります。一方で、初期コストの問題や文化の違いによるトラブル、カントリーリスクなど、海外進出が企業にとってデメリットとなる可能性もあります。
企業の海外進出によるメリットとデメリットは、海外進出先によっても異なります。自社の海外進出の目的に合わせて、海外進出を行う国や地域を検討してみてください。
海外進出を成功させるためには、現地の市場やニーズに関する事前の調査が大切です。調査をもとに、リスクに対する対策の検討と、現地にあわせた事業戦略を設計しましょう。