中国は日本企業の海外進出先の4割以上を占めており、海外進出先として最も多い国です。経済産業省の調査によると、2022年の中国における日本企業の拠点数は3万拠点以上にのぼります。

ただし、中国進出をして黒字化している企業は6割程度であり、計画無しの進出にはリスクが伴います。成功するためには日本企業が中国に進出するメリットとデメリットを理解しておき、自社の製品やサービスが中国市場で通用しそうか事前に確認しておくのが良いでしょう。

当記事では、日本企業が中国進出するメリットとデメリットを解説します。海外進出先を検討する際の参考にしてみてください。

中国進出のメリット

日本企業の中国進出には、以下のメリットがあります。

【日本企業が中国へ進出するメリット】
・越境ECの市場規模が巨大
・人件費の削減につながる可能性がある
・誘致政策により法人税を安く済ませられる

これらのメリットが、日本企業が中国進出をする主な理由となっています。自社の海外進出の目的と一致しているかを確認した上で、中国進出をするか判断しましょう。

越境ECの市場規模が巨大

中国の越境ECの市場規模が巨大であるということは、日本企業が中国に輸出をする際のメリットになりえます。越境ECの市場規模が大きいということは中国市場は海外製品を多く輸入していることを意味するためです。

【越境電子商取引の市場規模(2022年)】

国名
越境EC購入額(円)
中国
5兆68億
アメリカ
2兆2,111億
日本
3,954億

参照:経済産業省「電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました

経済産業省の調査によると、2022年度の中国における越境EC購入額は5兆68億円でした。また、中国消費者による日本事業者からの購入額は2兆2,569億円であり、中国における越境ECの取引シェアの約45%を日本が占めている形になります。

日本の巨大なシェアの背景には、中国国内で購入できない製品の需要がある他、日本製品の価格や品質、ブランドに魅力を感じている消費者が多いことが理由として挙げられます。

また、輸出製品別では日本の美容関連商品、医療機器、健康食品、マタニティ・ベビー用品、デジタル家電、衣類、食品などのB2C向け商品が人気であることが2021年のジェトロの調査 より読み取れます。

とくに自社商品の販路拡大においては、越境ECの市場の大きい中国進出は日本企業にチャンスがあると言えるでしょう。

Alibaba Japan Pressを運営するアリババジャパン株式会社は、中国の越境EC市場におけるシェアの約半数を誇るAlibabaグループの日本法人であり、日本企業向けにサービスを提供しています。

中国向けの越境ECだけでなく、中国を含むアジアや欧米の海外バイヤーと日本企業を繋げるプラットフォームも展開していますので、弊社サービスに興味がある人はサービス概要の資料請求をしてみてください。
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人件費の削減につながる可能性がある

日本企業の中国進出は人件費の削減に繋がる可能性があります。中国の最低賃金は日本より低いため、現地の法人で中国人を雇用すれば日本国内で事業をするよりも人件費を抑えられるケースがあるためです。

【最低賃金の比較(2022年)】

地域
フルタイムの月給
日本
約166,353円
上海
2,580元(約51,758円)
北京
2,320元(約46,291円)

2022年において、上海市は中国の全地域の中でも最低賃金が高い地域です。同年の日本におけるフルタイム換算の最低賃金は約16万程度であり、中国はその1/3以下の賃金で人を雇用できることになります。

もちろん、業種によって賃金の差はあります。中国の製造業における平均年収は約180万円である一方で、広告ディレクターやプログラマーなどIT関連企業の平均年収は1,000万円を超えているため、雇う人材によっては日本国内の労働力と比較して高額になるケースもあり得ます。

人件費削減を目的として中国に進出する場合は、現地で雇用する人材の年収の相場を調査しておきましょう。進出する地域によっても賃金の差があるので、併せて地域別の賃金相場を確認しておくのをおすすめします。

誘致政策により法人税を安く済ませられる

中国に進出して事業を展開する場合、政府の誘致政策により日本国内で事業をするよりも法人税を安く済ませられます。中国には経済発展を目的としたさまざまな優遇を受けられる地域である経済特区や開放都市が設けられ、税金の減免や行政手続きの簡易化、貿易の規制緩和などの施策が行われているためです。

2023年時点における中国の企業所得税の基本税率は25%です、これは一般的な日本の法人税の23.2%よりも高い税率ですが、日本の法人はこのほか国税と地方税が上乗せされるために約30%程度の税率となるため、総合的な法人税は日本よりも中国の方が安くなります。

また、中国国内の経済特区における法人税率は15%です。さらに、貿易の円滑化を目的とした上海自由貿易試験区では12.5%、ハイテク産業に特化した地域開発を目指すハイテク産業開発区では10%など、業種や進出地域によってはより高い優遇を受けることができます。

ほかにも地域によって諸手続きの免除や土地の使用権の獲得など、さまざまな優遇措置が設けられています。企業が進出しやすい環境が整っていることも、日本企業が中国進出をする際のメリットとなるでしょう。

中国進出のデメリット

日本企業の中国進出には、以下のデメリットもあります。

【日本企業が中国へ進出するデメリット】
・文化や習慣の違い
・法人設立や貿易の手続きが煩雑
・チャイナリスクの影響を受ける可能性がある

中国と日本では言語や商習慣、法律など異なる点が多く、認識の相違からトラブルに発展する恐れがあります。中国進出を検討する際には、デメリットも把握した上でリスクマネジメントを行いましょう。

文化や習慣の違い

日本と中国における文化や習慣の違いがデメリットとなる場合があります。コミュニケーションの取り方やビジネスに対する考え方の違いなどから、思わぬトラブルに発展する恐れがあるためです。

たとえば、日本では相手の要求を断る際に「善処します」や「検討します」と濁して伝える場合がありますが、中国でははっきりと物事を伝える傾向にあります。発言内容が中国のパートナーに異なる意図で捉えられ、認識の違いから企業の関係が悪化する恐れもあります。

文化や商習慣などの違いによるトラブルを避けるためにも、事前に現地の習慣や考え方を理解しておくことが大切です。自社に中国のビジネスに詳しい従業員がいない場合は、中国の言語や文化に馴染みのある人材を新たに雇用することも検討しましょう。

法人設立や貿易の手続きが煩雑

中国でビジネスを展開する場合、他の国と比較して手続きが多く煩雑である点もデメリットとして挙げられます。防犯や技術流出の防止といった観点から、中国で事業を行う場合や撤退する場合には複数の申請や審査が求められており、諸外国と比較して手続きにコストや手間が掛かる可能性があります。

手続きを行うために、まずは中国の言語やビジネス習慣への理解が必要です。中国語を理解した上で、中国の法律や習慣に従い各種手続きを行わなければなりません。

また、中国では政策や法規制の変更が頻繁に行われる傾向にあるため、事前調査していた内容と異なりトラブルが発生する恐れもあります。

中国政府の誘致政策により諸手続きの簡易化の動きも見られますが、中国進出をスムーズに進めるためには中国の言語やビジネス習慣を理解し、どのような申請や手続きが必要になるかを事前に把握しておきましょう。

チャイナリスクの影響を受ける可能性がある

企業が中国進出する場合、チャイナリスクによる影響も考慮しておかなければなりません。チャイナリスクが企業にとっての損失や事業継続の困難につながり、中国からの撤退を余儀なくされる可能性もあるためです。

チャイナリスクとは中国におけるカントリーリスクのことであり、政治、経済、社会、環境などが影響するさまざまなリスクが考えられます。

【チャイナリスクの例】

分類
内容
政治
・頻繁な法規制の変更
・外国企業の活動における制約の強化
経済
・人件費や物価の高騰
・貿易摩擦による中国経済の悪化
社会
・労働者によるストライキやデモの発生
・知的財産権の侵害
環境
・感染症の流行や大気汚染による健康被害
・衛生環境の未整備

たとえば、中国では日本と比較して頻繁に法改正が行われることから、企業に混乱が生じ事業活動や市場全体に影響を及ぼす恐れがあります。また、中国経済の拡大による影響力の大きさから、諸外国との対立も顕著になっています。

社会主義国家特有の政治問題や環境汚染など、中国は多くのリスクを抱えていると考えられています。事前にチャイナリスクを把握し、対策を行うことでトラブルを防ぐことにつながるでしょう。

なお、企業の海外進出におけるリスクマネジメントについては「企業の海外進出におけるリスクと対処法を解説」を参考にしてみてください。また、リスクについて専門家に相談しながら中国進出を進めたい場合は、一度Alibaba JAPANの無料相談を活用してください。貴社サービスが中国進出においてどのようなリスクが想定されるか、当社の専門家がお答えします。

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中国へ進出した日本企業の事例

中国進出を成功させている企業は数多く存在しています。ここでは、中国進出をした日本企業の事例を2つ紹介します。

【中国進出を成功させた企業の事例】
・失敗経験をもとにした経営戦略で売上向上につなげた工作機械メーカー
・中国の現状を踏まえた施策によりコスト削減を実現した自動化機械の設計製作会社

JETRO(日本貿易振興機構)の調査レポートには、中国進出した日本企業の成功事例が掲載されています。企業の事例を詳しく知りたい人は「華東地区に進出する日系企業の成功事例」を参考にしてください。

失敗経験をもとにした経営戦略で売上向上につなげた工作機械メーカー

工作機械を扱うメーカーでは、失敗経験をもとに経営戦略の見直しを行ったことに加え、半導体ブームなどの影響もあり徐々に売り上げを伸ばすことに成功し、2018年には企業全体で過去最高売上を達成しました。

もともと欧米への進出で成功経験があり、技術的な強みを活かせば業績が見込めると考えていましたが、市場調査の甘さや戦略の曖昧さから中国進出当初は苦労する部分も多かったようです。

2011年の中国進出当初は、注文のキャンセルや代金回収の遅延などの問題が多く、中国での事業展開に頭を悩ませていました。そこで、誠実な代理店のみと取引を行えるよう企業を選定することで、現地パートナーとのトラブル回避につなげています。

また、現地でのニーズを把握するために行ったのが、業種を問わずさまざまな企業に向けて販売を行うことです。まずはターゲットを絞らずに複数の企業と提携し、利益率の低い業種から撤退することで販売先の絞り込みを行うことで受注率の向上を実現しました。

現在は、大量生産ではなく付加価値の高い製品の生産により現地のメーカーとの差別化をはかっています。さらに、代理店と協力してモノづくり商談会などの大きなイベントに出展し、企業の知名度向上を目指しているそうです。

中国の現状を踏まえた施策によりコスト削減を実現した自動化機械の設計製作会社

自動化機械の設計製作会社では、人件費の高騰や経済成長などの中国の現状を踏まえたさまざまな対策により、コスト削減を実現しています。

人件費を削減するため、社員教育と技術教育を徹底して行い、従業員の定着と業務の効率化をはかりました。繁忙期にも、安易に従業員を雇うのではなくパートナー企業からの協力を得ることでランニングコストを抑えています。

また、ローカル製品の採用を推進していることもコスト削減の要因のひとつです。使用する部品の調達時には日本製と中国製のものを比較し、同等の品質であれば価格が安い中国製を使用することによりコストダウンにつなげました。

現在、中国の急速な経済成長により物価や人件費が高騰しつつありますが、日本に製造拠点を置くよりも低コストでの事業展開に成功しています。

まとめ

巨大な越境EC市場があり、日本製品の人気も高いため、中国市場は輸出による販路開拓に利用できます。また、賃金や税制の観点から、現地に法人を設立する場合もコストカットに繋がる可能性が中国進出のメリットです。

しかし、中国進出には商習慣の違いによるトラブルやチャイナリスクなどのデメリットもあります。事前に現地調査などの情報収集によりリスクマネジメントを行いましょう。

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