国際物流で重要な役割を担う「フォワーダー」という業種をみなさんはご存知でしょうか?

これから貿易を始めようとしている方は、耳にしたことがあるかもしれません。

海外に商品を送る際、小包程度のサンプルの場合はEMSや国際宅配便での配送が便利ですが、輸出量が大きくなった場合や大型の商品の場合、コンテナ単位の海上、航空貨物などで送るのが一般的です。
その際に必要になるのが、貿易書類の準備や通関手続き、海運業者への貨物引き渡しなど、さまざまな手続きや作業。輸送会社の手配から書類の手配や通関手続き、荷役手配や港湾運送など、面倒で複雑な手続きをまとめて引き受けてくれるのがフォワーダーです。

今回、フォワーダー業務を主に行うSRK株式会社の李琦(リ・キ)代表取締役社長に保税倉庫を案内していただきながら、フォワーダーの主な業務内容について伺いました。

貿易における旅行代理店のようなもの

フォワーダーは国際物流に深く関わっていますが、自らは輸送手段を持たず、荷物を送りたい荷主と自社で輸送手段(船舶、航空機)を持つ運送業者(キャリアー)の間に入り、コーディネートを行います。

商品の種類や大きさ、荷物を送る国などから、コストや手続きの調査をしたり、また最適な輸送方法を提案してくれます。

東京港のガントリークレーン

旅行業界でそれぞれ例えると、JALやANAなどの航空会社がキャリアー、HISやJTBなどの旅行会社がフォワーダーと言い換えると分かりやすいかもしれません。


航空会社のHPから直接航空券を予約するよりも、旅行会社でホテルと航空券がセットになっているプランを予約した方がお得なことがあるように、輸出でも同様のことが起こります。
つまり、キャリアーに直接輸送を依頼するよりも、フォワーダーに輸送と通関手続きをまとめて依頼した方がお得なこともあるのです。

これも、HIS・JTBなどの旅行会社が安くツアーを組めるカラクリとよく似ていて、フォワーダーはキャリアーから空きスペースを安く買い上げることで輸送費用を抑えています。

航空会社は定期便を満席にした方が儲かるので、予め乗車率が低くなりそうな便のシートを旅行会社に安く売り、乗車率を高めて運行しているのと同様、キャリアーもコンテナスペースを満載にしたいので、フォワーダーに安く売りさばいて、積載率を高めて運行をしているのです。

日中の輸出入を手掛けるSRK株式会社

SRK株式会社は、中国の外国語大学で日本語を専攻していた李社長が2011年10月に日本で創業したフォワーダー会社で、国際貨物の物流フォワーダー業務、輸出入代行、物流に関するコンサルティングなどを行っています。

留学を機に来日し、日本の魅力に惹かれたと話す李社長

世界各国に輸送できるキャリアーとコネクションを持っているそうですが、特に強いのはやはり中国への輸出入。創業当時は中国から日本への輸入を中心にサービスを行っていましたが、数年前からは輸出業務にも力を入れ、日中間の輸出入両方を手掛けています。

フォワーダーは関係業者との密な連絡が重要

日本に来た当初は貿易とは全く関係のない仮設建築資材レンタル会社に入社した李社長。日本の商社から高価格で買っている商品を、中国から直接輸入してほしいと頼まれたことから貿易の世界に入ります。

創業後は、工業用品などの産業材から日用品、食品までとありとあらゆる物を取り扱うようになりました。

保税倉庫の一部を見学

保税とは「税を一時留保する」という意味。保税倉庫は外国から輸入された輸入手続きが済んでいない外国貨物を一時的に保管しておく倉庫のことです。

倉庫は外国貨物として置いておけるよう、東京湾の青海コンテナターミナルのすぐ隣に立地しています。周りはたくさんの大きな倉庫が並ぶ倉庫街。SRK株式会社の契約している倉庫エリアはこの中にあります。

東京港青海コンテナターミナルに隣接する倉庫

敷地内に入るとコンテナを積んだトラックやフォークリフトが忙しく行き交っています。

階段を上り、契約しているエリアに到着するとパレットや商品が大量に積まれていました。

山積みになったパレット

段ボールに書かれた文字を見ると自転車のようです。

この日はネットショップで販売する中国製自転車が入ってきたところだそう。ちょうど大量の自転車が入った段ボールをフォークリフトで荷物を移動させているところでしたが、高く積まれた段ボールを少し怖くなるくらいの速さでどんどん運んでいき、あっという間に荷物が片付いていきました。

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輸入の場合、港についた商品を保税倉庫にいったん保管した後、輸入申告や関税支払を行い出庫されます。輸出の場合はその逆になり、保税倉庫に保管した後、輸出手続きを行い、それぞれの国に送られます。


ここからまた国内の倉庫に運ぶ場合もあるそうですが、ネットショップの出店者からは、「中国から仕入れた商品を日本の消費者に直接配送してほしい」というニーズがあるそうで、ここからこのまま消費者に直接送るというサービスも行っているそう。

フォワーダー業者の選び方

初めてのフォワーダーを依頼する場合、どのようにフォワーダー業者を選べばいいのでしょうか?

まずはフォワーダーにコンタクトを取り、得意とする輸送方法(海上、航空)、相手国、品物の種類などは何か聞いてみましょう。いろいろな観点から、最適と思われるフォワーダーを選ぶことがスムーズな輸送には不可欠です。

李社長にフォワーダーの選び方について聞いてみると、頼もしい回答が返ってきました。

「各フォワーダーによってサービス内容や得意な国・エリアなど強みが違いますので、それをしっかり把握して最適な業者に依頼することが大事です。とはいえ初めての輸出では、最適なフォワーダーを見つけるのは難しいことも事実です。我々は中国向けの輸出入を得意とするフォワーダーですが、それ以外の国の場合でも、コーディネートや事業者紹介もしていますので、我々でよければお気軽に是非ご相談ください」

まずは貿易や物流に詳しく信頼できる会社に相談してみるのも一つの方法でしょう。

社長のコメントでもあった通り、フォワーダーの業務も多岐に渡り、一口にフォワーダーと言っても、通関業務を自社でカバーしている企業や、特定の国にネットワークを持つ企業などそれぞれ得意分野や特長があります。

急に大きな発注が入っても慌てないよう、それぞれのフォワーダー業者がどんなサービスを行ってくれるのかを事前に知っておくこと、また事前にいくつかの業者と連絡を取っておき、その時に応じた最適な事業者を選択できるように準備をしておくことが重要と言えるでしょう。

SRK株式会社
http://srk-rk.co.jp/


2011年創業。輸出入代行、中国から日本への越境EC物流業務の依頼を中心に事業を行う。
2018年10月には事業拡大に伴いオフィスを日本橋に移転。今後はさらに通関業務も受け入れられるよう体制を整えている。