空前の猫ブームといわれる日本。「ネコノミクス」と呼ばれる経済効果は今や2兆円を超え、国内経済の立役者として数えられるほどです。猫にまつわるさまざまな観光地は、最近では外国人の集客にも一役買っています。身近な存在として愛され続けてきた、日本の猫文化について紹介していきます。
猫と日本人の深いつながり
キプロス島の約9500年前の墓から発見された猫の骨が、現在確認されている猫と人とのもっとも古いつながりとされています。以降、農場などでハンター役を務めながら、人間社会の中で愛され続けてきた猫。日本に渡来したのは、仏教が伝えられた6世紀といわれています。大切な経典をねずみの害から守るための役割を担う猫は、お寺や仏教関連施設には欠かせない存在でした。
猫の優美でたおやかな姿に、人々はやがてその役割以上の価値を見出します。ミステリアスな猫を題材にした物語や絵画が数多く創られ、日本文化に独特の色彩を与えてきました。有名な浮世絵の中にたくさんの猫が登場しているのを見ても、庶民の生活に溶け込んでいたことがわかります。
恐らく誰もが知っているであろう夏目漱石の「吾輩は猫である」、その弟子の内田百閒が書いた哀切に満ちた「ノラや」、生涯に500匹以上の猫を飼ったという大佛次郎の「猫のいる日々」など、文学の世界でも猫にまつわる作品は枚挙にいとまがありません。
猫がやってきて以来、時代を重ねるごとに、私たち日本人は猫の魅力にとらわれてきたようです。
日本の「猫カフェ」が海外に飛び火?欧米でもブームの兆し
一大ブームを巻き起こした猫カフェの発祥の地は、実は日本ではなく台湾です。1998年にオープンした「猫花園」が、世界初の猫カフェとして知られています。日本では2004年に最初の猫カフェができ、現在では日本各地に300店舗以上が開業しています。
猫カフェの本場が日本とされているのは、この店舗数の多さゆえです。世界中のどこを見ても、これほど猫カフェのある国は見当たりません。背景には、都市化の進む日本の住宅事情や、独居世帯の増加が考えられます。元来猫好きが多い日本らしく、自宅に猫がいる人でも猫カフェに通うという人も少なくないようです。
日本の猫カフェを訪れた外国人が、自国で店を開業する例も多く見られ、海外でも猫カフェが増加しています。たくさんの猫に囲まれて、ゆったりと過ごす時間に魅了されるのは、万国共通なのでしょう。
外国人にも人気がある日本の「猫島」
四方を海に囲まれた日本の猫たちはこぞって魚好きですが、その影響なのか、人間の数よりも猫の方が多いという猫島もたくさんあります。北は宮城県石巻湾にある田代島、南は沖縄県の竹富島まで、観光客が訪れる猫島は数多く存在します。田代島では山の猫と浜の猫の2種類が島内を闊歩し、山の猫は小動物をとり、浜の猫は漁師からもらった生の魚を食べているようです。
猫好きな日本人観光客はもちろんのこと、わざわざ猫島を訪れるために来日する外国人観光客も珍しくありません。都会の猫たちよりも人との距離が近く、自由気ままに過ごす猫本来の暮らしぶりを観察できることが人気の理由に挙げられます。飼い猫とは違った一面を楽しめる猫島人気は、まだまだ続いていくことが見込まれています。
猫アイテムは世界共通のヒット商品
猫に癒されると感じるのは世界共通のようです。猫をモチーフにしたアイテムはヒットにつながりやすいといわれ、国内外問わず数多く商品化されています。猫との密接な関係を築いてきた日本人の猫文化は、今後も海外からの注目を集めそうです。猫がもたらす経済効果に、これからも期待したいところです。