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世界で見つけた日本製品【チリ編】

南米の優等生チリのマーケット事情

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チリってどんな国?

日本から最も遠い国のひとつ、南米のチリは南アメリカ大陸の西側にある世界一細長い国です。南北にわたるその長さは約4600kmもあるため、同じ国の中でも場所によって全く異なる気候、自然環境を持つ国です。北側は赤道に近く、地球上で最も乾燥していると言われるアタカマ砂漠があり、南は南極大陸に面する極寒の地があります。また東側にはアンデス山脈が連なり、西側は大西洋が広がる自然の要塞に囲まれた国です。

チリといえばまず思い浮かぶのが、コストパフォーマンスの良いチリワインやサーモン。ビジネスの世界では、世界一の銅の産出量を誇る鉱山資源に恵まれた国として知られています。

モダンで近代的な高層ビルが立ち並ぶ首都サンティアゴ

国土面積は日本の約2倍で、人口は約1800万人。南米らしからぬ安定経済を誇り、南米の優等生と呼ばれています。治安も南米の中では一番良く、日本のように四季のある首都サンティアゴは快適で暮らしやすい地域です。

南米の優等生チリのマーケット事情

サンティアゴにはスペインの植民地時代を思わせる歴史的な建物が並ぶ旧市街と、モダンな高層ビルが立ち並び、緑豊かな整然とした住宅街のある今やビジネスの中心となっている新市街があります。新市街は高層ビルやホテル、大型のショッピングセンターが立ち並ぶ都会そのもので、チリが南米で一番先進国に近いことを物語っています。

長年の安定性から経済成長にやや陰りも

チリは、経済と政治においてラテンアメリカトップの安定性をもつ国として、国際的に評価が高く、財政金融面の健全性は南米ナンバーワンでした。しかしここ数年は世界的な経済低迷や、米中貿易摩擦等からの中国景気の減速で、中国を最大顧客とする銅の輸出に大きな影響を与え、チリの長年の経済成長にも陰りが見え始めてきています。

また、経済的に安定してきたとはいえ、中南米諸国同様チリは国民の経済格差が大きい国の一つ。蓄積された国民の経済的格差への不満や物価上昇、経済成長の陰りに対する不安などから、昨年全国的に起きた大きな市民デモが深刻な経済損失を生み、国内経済に大きな影響を与えましたが、現在ではデモは収束し、市民生活もほぼ通常に戻っています。

今回の経済打撃に対してチリ中央銀行や一部のエコノミストたちは、チリにはほとんど債務がなく、また銅産業も混乱の影響を受けていないことから、チリが回復に向けて優位な立場にあるとしており、早期の経済復興に期待を寄せています。

「南米の日本」と呼ばれるチリ

チリ人は中南米の日本人と言われることもある、よく働く真面目な国民性を持っています。ラテン系の人懐っこさもありますが、ラテン系にしてはシャイで控えめな性格で、その点も日本人と似ています。ビジネスにおいても計画を用意周到に進める真面目さと粘り強さもあるので、日本人ビジネスマンからはチリ人とはビジネスがやりやすいと評価されているようです。

チリはラテンアメリカのビジネスハブとしても機能しており、日本の商社をはじめ多くの多国籍大企業がサンティアゴに拠点を置いています。一時的な経済の不安定さがあるとはいえ、軒並みインフレ率の高いラテンアメリカ諸国中にあって、過去20年間低いインフレ率で安定しているチリは、依然ラテンアメリカのビジネスセンターとして機能し、今後もますますその地位を強化すると予想されます。

移民増加で経済にも好影響

2000年以降、南米の近隣諸国からの移民ラッシュでチリの人口は増え続けています。もともと少なかった人口に加え、少子高齢化が進むチリでは、移民の受け入れは労働力を補い、成長の原動力となると期待されています。政府も合法的な受け入れ体制の整備を、積極的に行なっています。また市民もおおむね移民を好意的に受け入れているようで、移民に対して目立った排他的な印象はありません。

チリへの移民の多くは学歴が高く、就業率も高い傾向にあります。景気予想でも移民の増加はチリ経済に大いにプラスになると期待されており、国内消費マーケットにもプラスの効果が期待されています。

チリの消費事情。週末はショッピングモールへ

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チリには全国で約60の巨大ショッピングモールがあり、単なる買い物の場所だけでなく、映画館、レストラン街、医療施設やスポーツジムなども併設されています。週末になれば買い物をしなくてもショッピングモールへ出かける人がたくさんいるため、週末になるとショッピングモールは大変賑わいます。

この強力な集客力を見込んで、世界のファストファッションブランドも南米第一号店をサンティアゴにオープンし、南米進出の足がかりとしました。まだ日本ブランドの進出はありませんが、アジア系では中国のインテリア雑貨ブランドがチリに進出し、若い世代を中心に人気を博しています。

ECも一人当たり利用額で南米トップ

チリではe-コマース(EC)も急成長しており、過去5年の間に2倍以上となっています。2018年の一人当たりEC利用額は中南米でトップ、ECの総売上総額は588,800万ドルで南米3位となっています。チリで一番ECが盛り上がるのが、年に2回行われる大セールイベント「サイバーマンデー」「サイバーデー」です。20195月に行われたこのイベントでは、出品業者は300店以上、3日間のサイト訪問者は1億人、総売上が25,800万ドルという凄まじい盛況ぶりでした。

ただし、イベント外のECのプラットフォームはまだそれほど数がなくアイテムのバラエティも十分でないことから、まだまだ多くのチリ人は国外のプラットフォームを利用することも多いようです。国内のECマーケットは、まだまだ競合が少ないことから、ビジネス参入の余地が残されていると感じます。

チリの小売業スーパーマーケットは財閥系の4大グループが全体の90%を占める独占状態で、そのため健全な価格競争が少なく、価格カルテルになりがちだと言われています。ECでは健全な価格競争が行われるマーケットが構築できる可能性が高いため、ECはこれからもますます伸びると予想されます。

チリで目にする日本製品

チリで見かける「日本ブランド」製品といえば、自動車、建設機械や重機です。デジタルカメラなどのマルチメディア機器、ゲームやマンガもすでに15年以上前からギークな若者たちに人気です。

チリのSUSHIはもはや国民食

食に保守的な人が多いチリですが、SUSHIの人気は絶大です。大都市はもちろんのこと、地方の中小規模の街でさえ、SUSHIデリバリーやレストランがあり、外食業ではチリ料理と同数程度もあり、もはや国民食といっても過言ではありません。

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SUSHISUSHIレストランやNIKKEIレストラン(和食とペルー料理のフュージョン料理)で提供されているほか、デリバリー専門も多数あります。逆に純日本食レストランはあまり数がなく、日本人が経営する店も数えるほどしかありません。
チリ人は一般的に濃い味付けが好みで、SUSHIもチリ式になっています。アボカドやサーモン、クリームチーズなどを使った創作ロール寿司が中心です。今までSUSHI以外の日本食はありませんでしたが、最近ラーメン店がサンティアゴにオープンし、じわじわと人気を呼んでいます。

チリでも年々アジア系食材が一般化しつつあります。醤油やのりなどはすでに一般的となっており、大型のショッピングモールやスーパーでも簡単に手に入ります。首都サンティアゴには、アジア食品を扱う店舗が集まる小さな地域があり、そのエリアの店舗では、所狭しとアジア食材が並び、週末には大勢の消費者が食材を求めて買い物にやってきます。
しかし、それらの店舗で扱われている製品はほとんどが中国や韓国のものです。日本製品は割高な印象で、価格の安い中国製や韓国製のものがチリでは日本食の材料として使われています。

一家に一台:意外なロングセラーの日本製品

チリにある意外な日本製品といえばTOYOTOMIの灯油ストーブや石油ファンヒーターです。すでに10年以上前からのヒット商品で、一家に一台あるといっても過言ではないほどチリの生活に浸透しています。未だ古い家も多く、気温はそれほど下がらないとはいえ底冷えのするチリの冬に根強い人気です。

チリ人は食べ物でも製品でも、気に入ればずっと使い続ける、お店も通い続ける傾向があります。石油ストーブやSUSHIのように一度国民に受け入れられれば、ロングセラーになることは間違い無いでしょう。

ラテンアメリカ諸国とは違うチリの消費傾向

またチリは環境問題にも関心が高く、2019年に行われた欧州、中南米、アジア24カ国を対象とした環境保護に関する調査では、環境保護への積極的な取り組みに対する社会関心の高さがヨーロッパ諸国を抜いていました。このことからチリへのビジネス参入を検討する上で今後環境保護に留意することは重要となってくるでしょう。

現在チリは、昨年の市民デモの影響で一時的に不安定な時期となっていますが、今後成長する可能性のあるチリおよび中南米市場を、ラテンアメリカ市場進出のスタートとして中長期的に検討されてはいかがでしょうか。

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