地域そのものが「舞台」!ゲーム仕立ての地域活性でファンづくりに成功した事例
地域活性の重要性が唱えられる一方で、十分な成果をあげられず苦慮している活性化事業もあります。そんな中、その土地に実際に足を運んでもらう方法として、ゲームを絡めた地域活性が注目されています。若い世代からも喜ばれる手法を使い、地域の魅力を体感してもらいながらファンづくりに成功している事例を紹介していきます。
「移動する楽しさ」をもたらしたゲームによる地域活性
コロプラ、Ingressなどのように、位置情報を利用して実際にその場へと足を運ばせるゲームは地域活性に大きな影響を与えました。
さらに、2016年の夏に世界中で熱狂的なブームを巻き起こしたポケモンGoは、部屋から街へ飛び出すという新しいゲームの楽しみ方を提案し、さまざまな話題を各地に提供しました。人気のなかった神社や仏閣が人であふれた例や、これまで注目されていなかった場所が一躍にぎやかな観光地になった例も聞かれます。
こうしたゲームの持つ集客効果を利用し、地域活性化に役立てる試みも数多く見られるようになりました。この背景には、ゲームに慣れ親しんで育った世代が、現在、社会の中核を担っているという状況があります。街おこし、村おこしを企画する担当者たちは、ゲームやキャラクターの持つ力を十分に理解している世代で、柔軟性をもってその魅力を活用しています。また、企画のターゲットとなるのも、ゲームに親しんで育った世代です。
地域の魅力を発信するだけでなく、実際に体感してもらうための手法として、ゲームやアニメを絡めた手法は今後も注目を集めそうです。
事例1:商店街でリアルな「人生ゲーム」
商店街を歩き回り、ボードゲームの定番「人生ゲーム」をリアル体験できるというイベントで地域活性化につなげたのが、島根県出雲市の例です。
市役所の一職員の発想から生まれたこの企画は大人気を博し、出雲地域ではすでに7回の開催を数えています。ヒントとなったのは、空から見た商店街の形が人生ゲームのボードに良く似ていたことだそうです。「人生ゲーム」は幅広い年代で男女問わず体験があり、誰にとってもなじみ深い遊びであることから、集客を目的とした街おこしのテーマにも適していたといえるでしょう。
イベントでは、参加者が仮想通貨の「縁」を持ってルーレットを回し、指示通りに商店街のさまざまな店を訪れます。各店舗では体験やイベントが準備されており、それに従って行動すると、「縁」が増減するシステムです。
最終的にはゴールに到達した時点での「縁」の額によって、商品や商品券がもらえるというもの。街のすみずみを巡り、商店街の人々と言葉を交わしながら通貨を貯めるという面白さが話題となり、開催を重ねるごとに参加人数が増加しています。
このイベントのポイントは、ルーレットの目によって、普段ならば立ち寄らないような店にも入るきっかけができることにあります。一緒に歩く家族や友人、店のスタッフなど「リアル人生ゲーム」がもたらすコミュニケーションは、想像以上の楽しさを与えてくれるようです。
人生ゲーム仕立ての地域活性は全国的に評判を呼び、山形県新庄市や福井県小浜市、千葉県船橋市でも同様の試みが行われています。
事例2:スマホ連動の「謎解きゲーム」
京都エンタテインメントワークス株式会社が提供するのは、 謎解きゲームとARを使い、商業施設や地域の観光振興を行なうスマホサービス「リアスポ・謎解きアプリ」です。スマホゲームの中に実在の施設や店舗を登場させ、その場所に行くとゲーム内でアクションができたり、キャラクターが登場したりします。商店街を巡ってもらったり、スタンプラリーや物産展の展示紹介などにも活用できます。
実施例としては、妖怪をモチーフとした謎解きゲーム「九十九ノ語(つくものがたり)」が京都大将軍商店街で開催され、店名の認知拡大や交流といった成果が得られています。また京都リサーチパークのイベント「KRP-WEEK2017」では、宝探し謎解きゲーム「博士と謎の古地図」が出展され、多くの家族連れでにぎわいました。
「リアスポ・謎解きアプリ」は、「サービス等生産性向上IT導入支援事業(IT導入補助金)」の補助対象サービスとなっており、商店街や中小企業に対しては最大100万円のIT導入補助金が提供されています。開催側の負担が少ないことや、設営の手軽さもメリットに挙げられます。
若い世代へのスマホゲームの威力は絶大ですが、アプリ開発からとなるとなかなか手を出せません。現代にマッチした地域活性策として、こうしたサービスを上手に活用することもひとつの方法です。
地域住民とのコミュニケーションでファンづくりを促進
ゲームによる地域活性は、全国からの集客が期待できるほか、住民とふれあう機会が生まれるというメリットもあります。また、地域そのものをゲームの舞台とすることで、魅力を体感してもらうことができます。通常の旅行とは違う視点で地域に親しんでもらいながら、ファンづくりにつなげられる効果も期待できるでしょう。
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