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CASE和の心を乗せ、中古自動車部品を世界中に届ける競争から協調へ会宝産業株式会社

輸出先は累計86カ国。静脈産業のパイオニア

世界のゴミ問題。それは私たちが解決すべき一つのテーマである。そんな大量に出るゴミを「宝」に変えてしまう凄い企業がいると聞き、石川県金沢市に訪問した。 日本で回収した中古自動車を解体し、各種中古パーツを国内外に販売する会宝産業株式会社だ。同社の特徴は、廃棄される運命にあった自動車を回収し、それをパーツごとにバラして販売することで、ゴミ問題解決に繋げ、さらにビジネスとして成立させている点にある。 今回は、アリババを使って海外の新規販売ルート開拓を行っている、執行役員の佐藤寧彦(やすひこ)氏に、これまでの海外事業展開と今後の戦略についてお話を伺った。

市場価格の3倍で中古エンジンが売れた!

市場価格の3倍で中古エンジンが売れた!

創業は1969年、現会長の近藤典彦氏が22歳の時に有限会社近藤自動車商会を設立したことに遡る。
当時は廃棄自動車を買い付けて解体し、そこから出た鉄くずの国内販売をメインに生計を立てていた。その後、高度経済成長に沸く日本の傍らで、大量に増え続ける産業廃棄物に危機感を覚えたことと、鉄くずの市場価格が安定しないことから、徐々にエンジンや部品販売も手掛けるようになる。

ある時、クウェートのバイヤーが直接工場に中古エンジンの買い付けに来たことがあったそう。驚いたのは先方が提示した金額である。日本で販売される価格の3倍の値で買いたいと申し入れがあったのだ。「これは商機がある」と考えた近藤氏が指揮を取って海外事業を推進し、それから現在まで約30年間に渡り、取り組み続けている。

前職の経営コンサルタント時代から会宝産業と関わり、同社の社風に感銘を受けて転職したという佐藤氏は、当時から変わらない近藤会長の実直な姿勢に尊敬を示す。
「『環境に良いことをすると、利益につながり、さらには経済も促進できる。そういうビジネスモデルを作っていかないといけない』という会長の基本姿勢は当時から全く変わらないです。ずっと前から遠い未来のビジョンをイメージして、そこに向かって進み続けられるというのは経営者として凄みを感じます」

佐藤氏のコメントからは会長への尊敬と共に、会長の社会貢献への誇りが社員に伝播され、「会宝スピリット」を創り上げているのを感じた。

アリババを活用して南米を攻める

クウェートのバイヤーから買い付けがあって始まった海外事業は、それから順調に口コミやHPからの問い合わせ、直接の来訪などでバイヤーを獲得し、売上を伸ばしていった。
そして2011年、さらなる海外の販売ルート開拓先を図ることを検討していたちょうどその時、世界中のバイヤーから引き合いを集められるアリババのサービスを知り、迷わず利用を決めた。サービス開始後、特に受注を獲得できたのが南米圏。それまで南米の取引先が少なかった同社としては狙い通りだったという。
受注につなげられた要因はなんだったのだろうか?

「サイトに魅力的なページを掲載することはもちろんですが、それ以外にも大きく3つあると考えています。1つは、バイヤーの要求する物量に応えられる調達力です。次に、言語(スペイン語)を話せる社員がいたことも大きかったと思います。特に貿易をしていると、相手の母国語が話せるだけでグッと距離を近づけられることを何度も体感していますし、スペイン語圏は特にその傾向が強い気がしますね。最後にこれまでの海外取引に対する実績への信頼。大きくこの3つが要因だと考えています」(佐藤氏)

そう力強く話を展開する一方で、海外からの問い合わせは必ずしも良いものばかりではないとも言及する。

アリババを活用して南米を攻める

「現在は毎日、約10件の問い合わせが集まり、チームメンバー5人のうち2人がメインで対応に当たっていますが、問い合わせの見極めには常に目を光らせています。この間も、何度かやり取りをして手応えを感じていたら突然『輸入時にはこの書類に一筆いるから書いて欲しい』とフォーマットが送られて来て、内容を見ると明らかに怪しくて商談が成立しなかったり(笑)」(佐藤氏)


おそらく、多くの企業ではスペイン語に対応できる社員はまずいないだろう。将来の海外展開を見据えた社員採用を行っていたからこそ商機をつかんだ同社。そして需要に対応できる仕入れ力も見落とせないポイントではないだろうか。

独自規格を作り、売り手市場を創造する

独自規格を作り、売り手市場を創造する

海外事業を推進する同社には一つ課題があった。それは価格の決定権がバイヤー側、つまり買い手にあったことである。
それまでは中古エンジンの場合、何キロ走ったのか?ということが不透明なマーケットで、バイヤーが直接そのエンジンを見て値踏みするという商習慣だった。

しかし、本来であれば商品の売り手が価格を決めるのが一般的なのに対し、中古エンジン業界では真逆の慣習だったことに違和感を覚えた近藤会長は、「自分たちの商品価値をマーケットに認めてもらう努力を怠った結果」だと捉え、改革に着手する。

その一つが2013年、中古エンジンの状態を可視化した独自の評価規格を設けたことである。それが「PAS777」だ。この規格を取得した中古エンジンにはタグが付けられ「何キロ走ったのか、内部の汚れや外観はどうか、オーバーヒートの有無はあるか」といった品質の数値化を実現した。この評価規格が瞬く間に広がりを見せ、現在は海外でもこのタグが安心の証として認知されるまでになった。

「先日もアリババで出会ったチリのお客様のところに訪問した際に、『あ〜このタグは会宝のだね』と認知されていたのは嬉しかったですね。相手もプロですから、どういうテストをしてその結果がどうだったのか、ということがこのタグを見れば一発で分かるようです。それが安心につながって認知されているのだと思います」(佐藤氏)

まさにパイオニアとしてマーケットに革命を起こした瞬間だった。

世界初! 中古自動車部品のネットオークションをUAEで開催

2014年、誰もが納得できる価格で中古部品の取引ができるマーケットをつくるべく、近藤会長は業界に一石を投じる。それは中古自動車部品のネットオークションをUAEで開催したことである。
それまで中古自動車部品の競りはあっても、ネット入札形式でのオークションはなかった為、世界的にも例がない、正に初の試みだった。またUAEで開催したのも、当国は日本からの国別中古車輸出量で常に上位に位置しているため、日本製の中古自動車部品の需要も高いのでは、と睨んでの選択だった。
さらにここに出品する中古自動車部品には例によってPAS777のタグを付けたのだが、これが効果てき面だったという。

「中東では現在、会宝のタグが付いていると付けてない時よりも高く売れます。嬉しいことに、PAS777は品質証明の目印としてUAEでも認識されています。土地柄か、良いものと判断したモノには惜しみなくお金を出してくれる印象ですね」(佐藤氏)

また、オークションの開催にあたっては国内の同業社と協業で商品も出品したという。そこには同業社をライバルではなく、長期的なマーケットを創る同志と捉えての判断があった。

「そもそもオークションなのでたくさん物量があった方が盛り上がりますよね(笑)。というのと、会長が10年以上前から掲げる『競争から協調へ』という言葉の通り、目先の利益ではなく、将来のマーケットを一緒に作っていくことに理解を示して頂いた企業とアライアンスを組み、協力してオークションを開催しています」(佐藤氏)

時折冗談も交えながら、会宝産業の理念に沿った具体的な施策を丁寧に話していただき、そのぶれない姿勢に、ただただ圧倒された。

和の心を乗せてバイヤーの手元に届ける

これまでの輸出先は累計86カ国を数え、海外売上も年商の80%を占める、まさにグローバル企業の会宝産業株式会社。今後の展望を伺うと、同社らしい考えがあった。

「中古エンジンを世界中に届けるだけでなく、そこに日本の和の心を乗せて届けたいです。具体的には物を大切にする心だったり、後始末の文化を広めていくこと。実際にブラジルやインドでは、自動車リサイクルの普及に向けた活動を行っており、既にブラジルでは自動車リサイクルの研修センターも設立しました。ただ、海外って言葉は一見華やかですが、すごく地味なところもたくさんあるので、強い覚悟を持ってやり続ける事が重要です」(佐藤氏)

最後に、これから海外事業を始める企業に向けてメッセージをお聞きした。

和の心を乗せてバイヤーの手元に届ける

「まずやってみるという事だと思います。やって見てわかる事が多いですし、特に海外は予測できない結果が多いので、トライ&エラーをとにかく早く回す、ということに尽きるのではないでしょうか」(佐藤氏)

実は会宝の社名の由来は、「宝に会う」という意味を込めてつけられた社名。今日も会宝産業は産業廃棄物に魔法をかけ、宝を循環させているに違いない。(文:岡島 梓)

Company Information

会社名:会宝産業株式会社

業態:自動車リサイクル業
取扱商材:中古自動車パーツ
年商:25億円
海外売上:20億円
従業員数:75名

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