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  • 2023.02.20

JICA民間連携事業報告書を読もう!

JICA民間連携事業報告書を読もう!

2022年は急速に円安が進行し、ドル円のレートは一時1ドル150円を超えた。2023年に入ってからは1ドル
120円台に戻る場面も出てくるなど、状況は落ち着いているが、今後を見据えて海外進出を進めなければいけない、国内に留まっていることがむしろリスクなのでは、と思わされた企業も多いのではないだろうか。

しかしながら、海外市場にうってでるハードルは高い。どうやって海外進出の準備をすればよいのか、どのようなことを調べればよいのか、見当もつかないという企業も多いだろう。検討はしたが、やはりわからないのでやめてしまう。そのような経験をされた担当者も少なくないはずだ。

そのような中で、もし他社の海外市場調査の内容が公開されているとしたらどうだろう?しかも長年の蓄積によるかなりの分量が揃っていて、さらにデータベース化までされているとしたら、初めての海外進出を考える企業にとって大きな助けになるだろう。
そして、実際にそのようなありがたい制度は実在する。独立行政法人国際協力機構(英語名Japan
International Cooperation Agency,
以下「JICA」)が行う民間連携事業の報告書である。

JICA(独立行政法人国際協力機構)民間連携事業とは?

JICAは、日本の政府開発援助(ODA)を一元的に行う実施機関として、開発途上国への国際協力を行う外務省所管の独立行政法人である。
青年海外協力隊の派遣元としても知られ、世界に96ヶ所に拠点を持つ。

JICA民間連携事業報告書を読もう!

出典:JICAWebサイト 「JICA at a Glance 一目でわかるJICA」

JICAは単に公的なODA事業を行うだけでなく、民間連携事業といわれる民間企業の活力をいかして国際貢献につなげるスキームが存在する。その代表的なメニューが、「中小企業・SDGsビジネス支援事業」である。
令和4年度から制度が変わっているため、以下の図はやや古い内容になるが、新興国が抱える開発課題解決に役立つ技術・製品などを持つ企業の海外展開を支援するものである。

中小企業・SDGsビジネス支援事業では、年1回公募が行われ、採択された案件はJICAの委託調査としてJICAから発注される形で、当該事業の市場調査などを行うことができる。
そのため、企業側からみると、本来全額自己負担をするべき海外展開のための調査費用を補助してもらえるため、実質的な補助金として活用できる計算になる。

一方、委託調査であるため、詳細な報告書を成果物として提出することが義務となる。
この報告書は、国民の税金を使って企業に委託して調査を行った内容であり、国民の資産として、Webサイトに掲載されている。

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JICA中小企業・SDGsビジネス支援事業 基本スキーム ※令和4年以降一部変更あり

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JICA中小企業・SDGsビジネス支援事業 プロジェクト実施体制・契約形態

報告書を探す

実際の検索画面を見てみよう。
JICAのWebサイトから、案件事例検索ページ(https://www2.jica.go.jp/ja/priv_sme_partner/index.php)に進むと、国やスキーム、分野、年度などが選択できる検索画面が出てくる。
民間連携事業の対象は、中小企業だけではなく大企業の場合もあるため、仮に中小企業の事例のみを探したいということであれば、「中小企業海外展開支援事業」という文言の入った、中小企業向けのスキームを検索してみるのが良いだろう。

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JICA民間連携事業 案件事例検索ページ

選択事項を指定して検索すると、以下のように該当する事業内容が表示される。直近進行中の事業などは、報告書の作成が未完のため、検索ででてきても報告書が表示されない場合も存在するが、多くの場合右端に報告書へのリンクが出てくる。

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JICA民間連携事業案件事例検索ページ検索結果

なお、たくさんあってどれを読むのがよいか迷う、という場合は、特に優れた事業について、グッドプラクティスの紹介ページ(https://www.jica.go.jp/priv_partner/case/release/index.html)があるため、参考にして探してみるとよいだろう。

報告書の内容

具体的な報告書の内容を見てみよう。本稿では、バングラデシュ人民共和国およびミャンマー連邦共和国で案件化調査を行ったグリッドマーク株式会社の報告書を参照する。グリッドマーク株式会社の事業内容は以下に示す概要の通り、極小のドットコードを読み込むことで発音を再現できる音声ペンと音声ペン用教材の販売を通じて、バングラデシュ人民共和国およびミャンマー連邦共和国における教育向上につなげるものである。

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グリッドマーク株式会社案件化調査概要

報告書の目次を見ると、第1章は対象国の基礎情報、第2章は自社にとっての事業の位置づけ、第3章は実際に行った調査活動の内容、第4章は効果検証、第5章は事業の実施可能性に係る結論をまとめた内容となっている。
なお、第1章の内容は基礎的なものであるが、基礎的である分、当該企業以外でもそのまま活用できる情報が含まれる。自社が進出したい地域の報告書があれば、そのまま参考にすることも可能である。

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グリッドマーク株式会社案件化調査報告書目次

第2章以降を読んでいくと、当該調査で、どのような場所を訪問したか、どのような対象にデモを行ったかなどの情報を詳細に見ることができる。
例えば、以下の訪問先一覧からは、潜在的な需要者だけではなく、官公庁なども訪問していることなどを見て取ることができる。他社がどのように海外展開調査を進めているのかを追っていくことができる貴重な資料といえる。
一般に新規の海外展開を行う際は、独立行政法人日本貿易振興機構(JETRO)などに相談をすることが多いと思われるが、こうした情報をしっておくことで、自社の海外展開にあたってどのような相手を紹介してほしいか、どのような調査を行いたいかなど、より具体化して相談することができるようになる。

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グリッドマーク株式会社案件化調査訪問先

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グリッドマーク株式会社案件化パイロット調査/デモンストレーション実施内容

また、通常報告書には、多くの写真が掲載されている。これまで海外展開をしていない企業の場合、どのような作業をこれからしていくのかイメージがつかず、経営者も従業員も積極的になれない、というような状況がある。こうした写真を参考にすることで、自社が海外展開を行っていくうえでのイメージ感を持つことができるのも、報告書を読むメリットといえる。

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グリッドマーク株式会社案件化報告書掲載写真

上述のように、様々な企業の海外展開のための調査内容を閲覧することのできるが、以下のような限界があるのは念頭においておきたい。
①先進国の事例はない
 国際協力プロジェクトであるという性質上、事業実施対象国は開発途上国・新興国に限られる。そのため、
 先進国向けの事例は含まれない。

②事業内容の偏り
 国際協力プロジェクトである関係上、環境・エネルギー関連、保健医療関連、農業関連などに偏りがちで
 ある。そのため、業務内容によっては、自社に近い事例が見つからないという可能性がある。

一方で、自社の事業がJICAのスキームに適合しそうであれば、単に報告書を参照するだけにとどまらない展開も考えられる。JICAWebサイトには、民間企業の製品・技術の活用が期待される開発途上国の課題を集めたページ(https://www.jica.go.jp/priv_partner/case/reference/subjects/index.html)もあるので、自社の技術・製品を念頭において報告書内容を具体的に分析し、進出先を検討することができる。そして、最終的には、自らJICA事業のスキームに応募してみることもできるだろう。

令和4年度からは、これまでの制度から一部内容が変更となり、従来の「調査委託型」として実際に現地で製品・サービスを提供して実証事業を行う「①普及・実証・ビジネス化事業」と、新制度として始まる「ビジネス化支援型」に分類される「②ニーズ確認調査」及び「③ビジネス化実証事業」の3類型が募集されている。

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JICA民間連携事業募集内容(令和4年以降)

JICA民間連携事業報告書は特に独自の技術を持つ企業にとっては、宝の山であるとともに、自社の海外進出の手段の一つともなる可能性もある。読んで損のない情報と言えるだろう。
ぜひ参考にすることをおすすめしたい。

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