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  • 2022.07.12

部下をやる気にさせるコーチング

部下をやる気にさせるコーチング

どのようにして人材を育成していくか

パワハラに関する法律相談が増えている印象があります。その際、パワハラの加害者とされる上司からは、事実関係はおおむね認めるものの、自分がパワハラをしているという認識はなく、「指導の一環」なので問題はないという意見が述べられることも少なくありません。

上司の指導がパワハラと評価されるかどうかはともかくとして、少なくとも部下がパワハラだと感じるような指導方法が人材育成の方法として妥当であるとはいいがたいでしょう。パワハラだと感じるような指導によって、部下が過度に委縮し、モチベーションの低下のほか、自分の意見が言えない、上司の指示には無批判に従うなど、能動的・主体的な行動を行うことができないようになるおそれがあるからです。

では、部下がやる気を出し、能動的・主体的に行動し、持っている能力を最大限発揮できるようにするためには、どのような人材育成方法を行えばよいのでしょうか。この点について、人材育成の方法にはさまざまな方法がありますが、本稿ではコーチングを取り上げたいと思います。

「ティーチング」ではなく「コーチング」

そもそも、部下の指導とは、仕事のやり方を『教える』、仕事を進めるうえで必要な知識を『教える』、仕事を行う上でNGとなることを『教える』など、何かを『教える』ことであるというイメージがあるかもしれません。

確かに、『教える』(=ティーチング)によって、情報や知識を短時間で効率的に伝達することができます。しかし、ティーチングによって得られるものはあくまで情報や知識そのものにすぎません。すなわち、部下が自らで能動的・主体的な行動をするためには、情報や知識を教えるだけでは限界があるといえます。
他方、コーチングの「コーチ」とは、馬車(coach)に由来します。馬車がその人を目的地まで送り届けるように、コーチングとは人の可能性を『引き出す』ものといえます。

具体的な事例でコーチングを考える

【事例1】

上司:取引先から注文を受ける際は、商品の種類と個数をよく確認すること。

部下:わかりました。

【事例2】

上司:取引先から注文を受ける際は、何を確認する必要があると思いますか。

部下:商品の種類ですか。

上司:そうですね。他に何かありますか。

部下:よくわかりません。

上司:どのようなことで、納品の時に取引先とトラブルになるでしょうか。

部下:わかりました、商品の個数ですね。

上司:そのとおり。

【事例1】も【事例2】も上司が「取引先から注文を受ける際に商品の種類と個数を確認する必要がある」という指導をしている点で違いはありません。
しかし、【事例1】は、上司が部下に対して一方的に「取引先から注文を受ける際に商品の種類と個数を確認する必要がある」という情報を伝えています(ティーチング)。部下は「わかりました」といっているものの、本当に内容を理解し、自分の中で血肉化できているのか疑わしいといわざるを得ません。

他方、【事例2】は、上司は、取引先から注文を受ける際に確認する必要がある事項について、部下自らに語らせようとしています。上司がヒントのようなものを出していたりしますが、これは部下が自分で答えを引き出すことができるようにするためのものといえます。この【事例2】のように、部下が自らの力で目標に向かうことで、モチベーションが上がるとともに、主体的・能動的な行動が可能になるのです。この取組みを上司が支援する営みこそがコーチングの本質であるということができます。

コーチングに必要なスキル

さきほど、【事例2】がコーチングの例であると述べました。そうすると、コーチングとは、「自分が知っている答えをあえて言わずに部下に考えさせさえすればよい」と思うかもしれません。しかし、【事例2】と【事例3】とを比較すると、そうではないことがお分かりいただけると思います。

【事例3】

上司:営業先にもっていくものは?

部下:ええと・・・

上司:昨日作ったプレゼン資料に決まっているだろ!他は?

部下:商品のサンプ・・・

上司:サンプルじゃない。全然違う!それはこないだ持って行っただろ。なぜ覚えていないんだ!

【事例3】も上司が部下に対し、答えを引き出そうとしている点では、【事例2】と全く同じです。
しかし、おそらく【事例3】の部下は、上司の半ば詰問のような聞き方の質問に対し、自分で冷静に考えて回答しているとはいいがたいでしょう。また、部下が何とかひねり出して回答しようとしたところ、上司が遮るように「全然違う!」と全面的に否定され、強烈なプレッシャーを受けていることも容易にうかがえます。これでは、良いコーチングということはできません。

では、【事例2】と【事例3】とで何が違うのでしょうか。【事例3】の上司にはコーチングに必要なスキルが不足していると考えます。コーチングに必要なスキルにはさまざまなものがありますが、ここでは、①傾聴・②質問・③承認を取り上げたいと思います。

言葉を受け取る「傾聴」のスキル

部下をやる気にさせるコーチング

「コミュニケーション上手は聞き上手」としばしばいわれます。部下が自分の話を「聴いてくれている」と感じることから、コミュニケーションが始まると言っても過言ではありません。その意味で傾聴とはコーチングに不可欠なスキルといえます。では、傾聴を行うためにはどのような点に気を付ければよいのでしょうか。

まず、部下の話を途中で遮らないことです。早く自分の話をしたいと思うあまり、相手の話を途中で遮ってしまうこと、部下はプレッシャーを感じるものです。また、部下の話が終わった後に部下に伝える受け止めの言葉を用意しておくことも重要です。例えば、「なるほど」、「それはおもしろそうですね」といった前向きな言葉なども有用ですし、部下が言ったことを繰り返すだけでも「自分はあなたの話をきいていますよ」という気持ちを伝えることができます。

答えを引き出す「質問力」のスキル

コーチングが答えを引き出す営みである以上、上司が行う質問は極めて重要です。
ポイントとしては、最初はざっくりしたものでもよいので部下が答えやすいシンプルな質問をすることです。例えば、「最近気になることは何ですか」といった抽象的なオープンクエスチョン(「はい」か「いいえ」で回答できない質問)でも差し支えありません。最初の質問をとっかかりにして具体的な質問を深堀りしていき、徐々に信頼関係を深めつつ本質に迫っていくのです。逆に【事例3】のように、非難めいた詰問のような質問をしてしまうと、部下は殻にこもってしまい、信頼関係も生まれないでしょう。

やる気につながる「承認」のスキル

部下が自分で考えた回答を話したとき、頭ごなしに否定をする上司がいますが、これでは一気に部下のモチベーションをさげることとなります。他方で、上司から承認されていることがわかった部下は、モチベーションが高くなり、行動を起こしやすくなります。

仮に部下の回答の内容が適切ではないものであったとしても、回答ができたことを承認しつつ、よりよい回答のヒントを提示するなど、上司がほんの少し工夫することで大きな効果につながっていきます。

コーチングは上司と部下とのコミュニケーション

本稿ではコーチングのごく基本的な内容について説明してきました。ところで、コーチングの効用は、部下をやる気にさせ、その能力を発揮させること以外にも重要な意味があると考えます。それは、コーチングは上司と部下とが信頼関係をもってコミュニケーションを行うための手段としても有効であるということです。

コーチングによって上司と部下との間で信頼関係が生まれれば、その分風通しの良い職場になり、職場環境の改善にもつながります。
人材育成だけでなく、職場環境の改善にもつながるのがコーチングといえるのではないでしょうか。

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