1. TOP
  2. Alibaba JAPAN PRESS
  3. 英文ライセンス契約書のチェックポイント
  • 2022.07.01

英文ライセンス契約書のチェックポイント

英文ライセンス契約書のチェックポイント

英文ライセンス契約書のチェックを
専門家任せにしていませんか?

あなたのブランドや技術を海外企業にライセンスをしたり、逆にライセンスを受けて事業を拡大する機会が訪れることがあります。海外企業とのライセンス契約書は、日本企業との契約書と比較して条項が複雑です。また英語で書かれていることがほとんどです。契約書を読むのに時間がかかるため、弁護士など法律の専門家にチェックを任せきりになりがちではないでしょうか。

契約書の確認には法的な知識が必要ですが、ビジネスの観点からライセンス契約の妥当性を評価できるのは、法律の専門家ではなく経営者です。本稿では、経営者が自らチェックするべきポイントを厳選して解説します。

ライセンスの範囲(License Scope)

まずライセンスの範囲に、ライセンスを受けて行うビジネスに必要な知的財産が、すべて含まれているか確認します。ライセンスの範囲が決まらないと、ライセンスの対価として支払われるライセンス料やライセンス期間を決めることができません。

ライセンスの対象となるものは、一般的には知的財産と呼ばれ、製品などを作るための技術、デザイン、ブランドなどが含まれます。これらが権利化されると特許権、意匠権、商標権などの知的財産権になり、国ごとに権利が発生します。また、知的財産権は永久に存続するものではなく、権利化から一定期間が経過したり、必要な維持費用の支払いを行わないと失効してしまいます。

例えば、ある製品の製造と販売についてライセンスを受ける場合、製品やその製造方法に関する特許権をライセンスの範囲に含めます。それ以外にも、その製品のブランド名に関する商標権や、製品パッケージに関する意匠権についてもライセンスが必要か、検討する必要があります。ライセンスを受けて行うビジネスを具体的にイメージして、ライセンスを受ける必要がある知的財産を特定し、ライセンスの範囲を決めます。

ライセンスの範囲が決まると、次にライセンスを受ける知的財産を定義して契約書に記載します。特許権や意匠権などの知的財産権であれば、その登録番号を記載します。一方、権利化されていないノウハウなどの知的財産は、登録番号では特定できないため、ノウハウを具体的に記載した資料を、契約書に添付する必要があります。特に製造ノウハウについては、実際に製造するのに必要な情報が網羅されているか、その製造技術がわかる技術者に確認させる必要があります。

ライセンスの形態(Exclusive/Non-Exclusive)

ライセンスが独占的(Exclusive)か非独占的(Non-Exclusive)かを確認します。独占的とは、1社のライセンスを受ける側だけに独占して技術・ノウハウなどの知的財産を使わせることです。ライセンスを受ける側は、競合が使えないように、独占的にライセンスを受けたいと考えます。一方、ライセンスをする側にとっては、ライセンスを受ける側が事業を拡大して十分なライセンス料を支払えるかわかりません。そのため、複数の会社に非独占的なライセンスをしたいと考えます。

独占させる分、独占的なライセンスの方が、非独占的ライセンスよりもライセンス料が高くなります。ライセンスを受ける知的財産の一部を独占的ライセンスとして、他の知的財産を非独占にすることで、ライセンス料を減額できることもあります。どの知的財産について、独占が必要か、ビジネスの観点から検討する必要があります。

ライセンスすることができる権利者かどうか(Ownership)

ライセンス対象となる知的財産を確認した後、ライセンスをする側が、その知的財産をライセンスする権利を持っているのか、確認する必要があります。つい確認を怠りがちですが、特許権などの権利が失効していることもあります。特に独占的なライセンスを受ける知的財産権については、弁理士などの専門家に依頼し、権利が存続しているか、ライセンスをする側が権利を持っているか確認してもらうこともあります。また、ライセンスをする側が正当な権利者であることを表明する表明保証条項(Representations and Warranties)が、契約書に定められているかもチェックしましょう。

ライセンス料(License Royalty)

ライセンス料の算定方法を確認します。算定方法としては、ライセンスを受けた製品などの販売価格に、ライセンス料率をかけて算定するRunning Royaltyが採用されるケースが多く見られます。Running Royaltyを採用した場合、ライセンス料率に注目しがちですが、算定の基礎となる販売価格の算定方法によっても、ライセンス料が大きく変わるため、販売価格の定義について確認が必要です。

具体的には、販売価格に、消費税、関税、運送費、保険料、返品を受けた製品の代金、値引額、リベートなどが含まれるか確認します。これらの項目が含まれるかどうかで、ライセンス料にどの程度の影響があるかを計算し、ビジネスの観点から、販売価格の定義の妥当性を確認します。

監査(Audit)

ライセンスをする側は、契約書に監査をする権利(監査権)が設定されているか確認します。一般的には、ライセンスを受ける側が、ライセンス料の算定に関する情報を、ライセンスをする側に報告します。監査権とは、ライセンスをする側がその報告が信用できない場合、公認会計士などを、ライセンスを受ける側に派遣して、情報が正しいかどうか確認できる権利です。

日本企業・大学などへのアンケートによると、ライセンス料に関する情報について監査した案件のうち、約50%の案件で、ライセンス料の過少払いや未払が発見されるという調査結果が出ています(2010年度 特許庁産業財産権制度問題調査研究報告書「知的財産のライセンス契約に伴うロイヤリティ監査に関する調査報告書」(20112月))。実際に監査を行うことを想定していなくても、監査権を設定すること自体が、ライセンスを受ける側への注意喚起となります。必ず監査権が設定されているか、確認しましょう。

技術指導(Technical Assistance)

ライセンスを受けた知的財産を使うために、ライセンスをする側からの技術支援が必要となる場合があります。特に製造技術やノウハウのライセンスを受けた場合、ライセンスをする側で製造実績があっても、ライセンスを受けた側の製造設備や立地、原料の品質などの違いにより、所望の製品を製造ができないことがあります。ライセンスをする側から技術指導を受ける必要がある場合は、所望の製品を製造するのに必要な技術を習得できるように、技術指導の条件を詳細に決める必要があります。

ライセンスをする側がライセンスを受ける側の工場などに、技術者を派遣して指導する場合と、ライセンスを受ける側がライセンスをする側の工場などに、技術者を派遣して訓練を受ける場合があります。いずれの場合も、①指導内容、②指導期間、指導時間、週労働日数、③派遣技術者の人数、④派遣料(日当、超過時間に対する指導料など)、⑤旅費、宿泊費、ビザ取得費用の負担など、指導の範囲と費用の詳細を決めましょう。特に海外企業とのライセンスの場合は、派遣料や旅費などが高額になるため、具体的な数字を予め決めておく必要があります。

ライセンス契約書の本文に、「技術指導の条件に関しては別途契約して定めることとする」と記載し、後送りされている事例も見られますが、技術指導に関する費用負担で後日、トラブルになることがあります。技術指導の詳細については、ライセンス契約締結前に書面で合意すべきです。

英文ライセンス契約書のチェックポイント

経営の観点からの最終確認

英文ライセンスは、交渉や契約書のチェックに労力がかかるため、ともすれば契約締結という手段が、目的であるかのような錯覚に陥ってしまうことがあります。経営の観点で、英文ライセンス契約書全体を評価して、目的としているビジネスを行うことができるか、十分な費用対効果が見込めるか、最終確認することが重要です。

SHARE

海外展開に対するお問い合わせはこちら

おすすめ記事

中国における越境EC市場の現状は?参入する際の注意点も解説

2023.12.21

中国における越境EC市場の現状は?参入する際の注意点も解説

越境ECの始め方と必要な準備を解説

2023.12.20

越境ECの始め方と必要な準備を解説

FDA認証とは?対象となる商品や取得方法など解説

2023.10.31

FDA認証とは?対象となる商品や取得方法など解説

資料のご請求や
お問い合わせはこちら