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  • 2022.05.13

長時間労働を是正するために必要な業務の効率化

長時間労働を是正するために必要な業務の効率化

なかなか是正されない長時間労働

働き方改革により労働基準法における時間外労働の規制が強化されたことなどから、多くの企業が長時間労働の是正に向けた取組みを行っています。他方で、実際に長時間労働を是正することは容易ではなく、さまざまな取組みを行ってもなお、十分な効果をあげることができていない企業も少なくないでしょう。
そこで、今回は長時間労働を是正するために必要な取組みについて解説をしたいと思います。

ワーク・ライフ・バランス改善のためだけではない
長時間労働の是正

そもそも、なぜ長時間労働を是正しなければならないのでしょうか。この点について、働き方改革実行計画(平成29年3月28日働き方改革実現会議決定)が参考になります。同計画において、長時間労働は、「健康の確保だけでなく、仕事と家庭生活との両立を困難にし、少子化の原因や、女性のキャリア形成を阻む原因、男性の家庭参加を阻む原因」であるとされています。そのうえで、同計画は、「長時間労働を是正すれば、ワーク・ライフ・バランスが改善し、女性や高齢者も仕事に就きやすくなり、労働参加率の向上に結びつく。経営者は、どのように働いてもらうかに関心を高め、単位時間(マンアワー)当たりの労働生産性向上につながる」と指摘します。

ここで注目すべきは、長時間労働の是正は、ワーク・ライフ・バランスの改善のみならず、単位時間(マンアワー)当たりの労働生産性向上にもつながると指摘されていることです。
ワーク・ライフ・バランスの観点から長時間労働の是正が必要であることは間違いありません。しかし、実はこの点を強調しすぎると、かえって従業員の長時間労働の是正が困難となる場合があります。

例えば、長時間労働是正の取組みとして、定時を過ぎるとパソコンが強制的にログアウトされることがあります。確かに、この方法は、事実上強制的に業務を打ち切ることとなるため、その意味において長時間労働は是正されることになります。しかし、強制的に業務を打ち切っても業務それ自体がなくなるわけではありません。したがって、従業員は、自宅に仕事の持ちかえり、私物のパソコンで業務を行うことなどを余儀なくされるため、結局長時間労働の是正にはつながりません。

また、管理職に部下の残業時間の削減という結果だけを求める取組みをしている例もあります。この場合、部下が行うべき業務を管理職が代わりに行うことによって形式的に残業時間の削減をしていることがあります。これでは、長時間労働の根本的な是正につながりません。

このような適切とはいいがたい取組みが行われているのは、「長時間労働の是正とは、労働時間を減少させることに尽きる」と考えていることによります。ワーク・ライフ・バランスの改善という点のみに着目するとどうしてもこのような思考に陥りがちです。

真に長時間労働を是正するためには、効率的な業務の遂行という側面にも注目する必要があるのです。また、業務の効率化という観点からの長時間労働の是正は、「残業することが当たり前、定時退社は仕事をしていないことに他ならない」という長時間労働それ自体を賛辞する企業慣行を是正することにもつながるものと考えます。

「絶対的な質の確保」から「時間に応じた質の確保」へ

長時間労働是正のために効率的に業務を行うとは、「単位時間(マンアワー)当たりの労働生産性」を向上することを意味することにも注目する必要があります。すなわち、「絶対的に質の高い業務」をするのではなく、「限られた時間の中でいかに質を高めていくか」という視点も持つことが重要になるのです。

ドラッカーは、「時間は最も欠乏した資源である」といいます。限られた財源をどのように効率的に配分するかを検討するように、時間についてもどうすれば効率的に配分することができるかを考えていく必要があるのです。

長時間労働を是正するために必要な業務の効率化

業務の効率化を図る取組み①:業務の課題を見つける

では、どのようにして業務の効率化を図っていけばよいのでしょうか。第一にすべきことは、業務の見える化、すなわち現在行っている業務がどのような流れで行われているかを明らかにしていくことです。その際に明らかにすべきことは、おおむね以下のような内容です。

【業務の現状の把握】

① 業務の目的
何のためにその業務を行うのか。

② 業務の関係者
その業務に関係する当事者(自社の従業員・取引先の担当者)は誰か。

③ 業務の際に行うべき作業の内容
その業務を行う際に具体的にどのような作業が必要となるのか。

④ 業務の成果
その業務を行うことでどのような成果を生むことができるのか。

業務の現状を把握することができたら、その業務・作業のあるべき姿を検討します。そして、業務・作業の現状とあるべき姿を比較してどのようなギャップがあるかを発見していきます。このギャップが改善すべき課題ということになります。

その際、業務の効率化という観点からは、改善すべき課題を発見していくにあたって、「その業務・作業に不要な時間はないか」という視点が重要になります。その際、①移動のムダ(場所の移動やオンライン空間への移動に要する時間のムダ)、②待ちのムダ(他の者が行う作業が完了するのを待つ時間のムダ)、③やり直しのムダ(自分が作成した成果物をやり直す際の時間のムダ)の3つの「ムダ」に着目すると不要な時間の発見が容易になります。

業務の効率化を図る取組み②:どのような改善策があるかを
検討する

改善すべき課題を特定したら、具体的にどのような改善策があるかの検討を行っていきます。この段階では、その効果はともかくとして、どのような改善策がありうるかを思いつく限り挙げていきます。
ここで、業務の効率化をするための重要な視点となるものとしてECRSの原則があります。

【ECRSの原則】

〇 排除(Eliminate)
業務や作業それ自体をなくすことができないか?

〇 結合(Combine)
排除できないとしても、他の業務や作業と1つにまとめられないか?

〇 交換(Rearrange)
結合できないとしても、業務や作業の順序などを入れ替えることで、効率化できないか?

〇 簡素化(Simplify)
交換できないとしても、不要な業務や作業をなくし、より単純にして効率化できないか?

業務の効率化を図る取組み③:改善策の内容を検討する

改善策を挙げることができたら、それぞれの改善策の内容について検討していきます。具体的には、その改善策を実施することでどの程度業務の効率化につながるか(時間の削減につながるか)、その改善策を実施するために必要なコスト(労力や費用)はどれくらいか、その改善策を実施することによってどのようなリスクがあるのかについて検討していきます。
そして、これらの改善策の検討結果を踏まえて実施する優先順位を決定していくのです。

業務の効率化を図る取組み④:グループで検討する

業務の効率化のための課題の発見及び改善策の検討は、個人で行うのではなく、グループで検討する必要があります。これは複数で検討したほうがいろいろな考えが出ることのほか、業務の効率化、ひいては長時間労働の是正の必要があることについての問題意識を組織の中で共有できるという利点があるからです。

「働き方改革」は、働く方の置かれた個々の事情に応じ、多様な働き方を選択できる社会を実現し、働く方一人ひとりがより良い将来の展望を持てるようにすることを目指すものです。その意味においても、さまざまな価値観や考え方を持つ従業員が業務の効率化のための議論に参加することは極めて意味のある取組みといえるのではないでしょうか。
本稿が企業の長時間労働の是正の一助となることを願ってやみません。

武田 宗久

武田 宗久

PROFILE

ライター,コンサルタント
1978年生まれ,大阪府出身。京都大学大学院法学研究科修了
2011年弁護士登録(大阪弁護士会所属)
2020年中小企業診断士登録

債権回収や離婚等の一般民事事件を担当する一方,大阪の中小企業や自治体を元気にするため,法務・労務を中心とした支援に取り組む。著書に『改正民法対応!自治体職員のためのすぐに使える契約書式解説集』(令和2年,第一法規,共著)など。

お問い合わせ先
株式会社プロデューサー・ハウス
Web:http://producer-house.co.jp/
Mail:info@producer-house.co.jp

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