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  • 2022.02.04

知っておきたい下請法の知識
~下請法の内容をざっくりつかむ~

知っておきたい下請法の知識 ~下請法の内容をざっくりつかむ~

下請事業者を保護する下請法

例えば製造業を営む企業が製品生産に必要な部品の製造を委託するといったように、企業は自らの活動を行うために他の企業にさまざまな業務を委託しています。このような場合、委託元(以下「親事業者」といいます)は大企業で委託先(以下「下請事業者」といいます)は中小企業という場合や、委託先は委託元に売上の相当部分を依存していることも少なくありません。

このため、親事業者が下請事業者に対し優位な立場となり、親事業者からの不合理な要求に対し、下請事業者が容易に拒むことができないということがしばしば起こり得ます。

この点について、独占禁止法において「優越的地位の濫用」とされる行為が禁止されている(独占禁止法第2条第9項第5号、第19条)ものの、その要件が抽象的であるため、何をもって「優越的地位の濫用」となるかの認定に相当の時間を要するなど、必ずしも下請事業者の利益につながらないところがあります。

そこで、独占禁止法を補完しつつ、適用対象や親事業者の下請事業者に対する禁止行為をある程度具体的に規定し、迅速かつ効果的に下請事業者の保護を図るため、下請代金支払遅延等防止法(以下「下請法」といいます)が定められています。今回は、親事業者・下請事業者のいずれの立場でも知っておきたい下請法の基本について説明します。

下請法が適用となる事業者とは

下請法が適用される事業者かどうかは、取引内容と当該事業者の資本金によって決まります。具体的には、以下の図のとおりです(下請法第2条第7項、第8項。なお、厳密にいえば下請法上の適用がある委託元を「親事業者」、委託先を「下請事業者」といいます)。

知っておきたい下請法の知識 ~下請法の内容をざっくりつかむ~

出典:公正取引委員会・中小企業庁『下請取引適正化推進講習会テキスト』2頁(令和3年11月)

親事業者が下請法上負う義務

親事業者は、下請法上以下の義務を負うこととされています。

① 書面の交付義務(下請法第3条)

② 書類の作成・保存義務(下請法第5条)

③ 支払い義務を定める義務(下請法第2条の2)

④ 遅延利息の支払義務(下請法第4条の2)

1 書面の交付義務(下請法第3条)

親事業者は、発注をした際は、原則として下請事業者がなすべき給付(下請事業者が、親事業者から受注して製造・作成等した商品等を引き渡したり、役務を提供することをいいます。以下同じ)の内容、下請代金の額、支払期日及び支払方法などを記載した書面を下請事業者に交付しなければなりません。書面の交付が親事業者の義務とされているのは、親事業者が下請法上禁止されている行為をしたかどうかの重要な証拠となるからです。なお、書面の交付を怠った場合は刑事罰の対象となります。

2 書類の作成・保存義務(下請法第5条)

親事業者は、下請事業者に対し、発注をした場合は、給付の内容、下請代金の金額等について記載した書類を作成し、2年間保存しなければなりません。

この書類は、発注の内容のみならず、検査の有無、給付の内容の変更又はやり直しがあった場合の内容とその理由、下請代金の変更があった場合の金額や変更の理由など、発注後の事情についても記載する必要があります。なお、親事業者が書類の作成・保存をしなかった場合は、書面の交付と同様に刑事罰の対象となります。

3 支払期日を定める義務(下請法第2条の2)

親事業者は、検査の有無にかかわらず、親事業者が下請事業者の給付を受領した日から起算して、60日の期間内のできる限り短い期間内において、下請代金の支払期日を定めなければなりません。これは、親事業者がいたずらに下請代金の支払いを引き延ばすことを禁止するためです。

4 遅延利息の支払義務(下請法第4条の2)

親事業者は、下請代金の支払期日までに下請代金を支払わなかったときは、下請事業者の給付を受領した日から起算して60日を経過した日から支払をする日までの期間について、その日数に応じ、年14.6%の遅延利息を支払わなければなりません。

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下請法上禁止されている行為

下請法は、親事業者が以下の行為を行うことを禁止しています(下請法第4条)。これらの禁止行為は、下請業者が了解を得ていた場合や、親事業者が禁止されていることを知らなかった場合であっても下請法違反となりますので、十分注意をすることが必要です。

1 受領拒否

下請事業者に責任がないのに、親事業者が下請事業者の給付の受領を拒むこと。

2 下請代金の支払遅延

下請代金をその支払期日が経過しても、親事業者がなおその全額を支払わないこと。

3 下請代金の減額

下請事業者に責任がないのに、親事業者が下請代金を減額すること。

4 返品

下請事業者に責任がないのに、親事業者が下請事業者の給付を受領した後に返品すること。

5 買いたたき

親事業者が市価よりも著しく低い下請代金の額を不当に定めること。

6 購入・利用強制

下請事業者の給付の内容の均一性を維持するなど正当な理由がある場合を除き、自己の指定する物の購入や役務の利用を強制すること。

7 報復措置

下請事業者が親事業者による下請法違反行為を公正取引委員会や中小企業庁に知らせたことを理由に、親事業者が下請事業者に対し、取引停止などの不利益な取扱いを行うこと。

8 有償支給原材料などの対価の早期決済

原材料等を親事業者から購入させた場合に、下請事業者に責任がないのに、当該原材料等を用いる給付に対する下請代金の支払期日より早い時期に、原材料の対価を下請事業者に支払わされたり下請代金から控除したりすることによって、下請事業者の利益を不当に害すること。

9 割引困難な手形の交付

下請代金の支払の際に、一般の金融機関による割引を受けることが困難であると認められる手形を交付することによって、下請事業者の利益を不当に害すること。

10 不当な経済上の利益の提供の要請

親事業者が、自己のために金銭や役務等の経済上の利益の提供を下請事業者に要請することによって、下請事業者の利益を不当に害すること。

11 不当な給付内容の変更及び不当なやり直し

下請事業者に責任がないのに、下請事業者の給付の内容を変更させ、又は下請事業者の給付を受領した後にやり直させることによって、下請事業者の利益を不当に害すること。

下請法に違反するとどうなるか

公正取引委員会や中小企業庁長官は、親事業者又は下請事業者に対し、下請取引に関する報告をさせたり、立入検査を行うことができます(下請法第9条)。

そして、報告や立ち入り検査による事実関係の調査の結果、下請法違反行為が確認できた場合は、公正取引委員会は、違反行為の是正などを求める勧告を親事業者に対して行うことができます(下請法第7条)。勧告が行われた場合は、原則として事業者名や違反行為の内容などが公表されます。さらに、勧告に従わない場合は独占禁止法に基づく排除措置命令や課徴金納付命令が行われることもあり得ます。
このように、親事業者が下請法違反の行為を行うと行政処分の対象となるリスクがあるのです。

これまで下請法の主な規律について概説してきました。では、具体的にはどのようにして下請事業者が下請法によって救済されるのでしょうか。この点については、【応用編】として、改めて別の機会にご説明いたしますのでご期待ください。

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