1. TOP
  2. Alibaba JAPAN PRESS
  3. DX!と言う前に知っておくべきこと ~パーパス経営の視点から~
  • 2022.01.26

DX!と言う前に知っておくべきこと
~パーパス経営の視点から~

DX!と言う前に知っておくべきこと ~パーパス経営の視点から~

最近は猫も杓子もDX(デジタルトランスフォーメーション)。その必要性は、生産性向上、スマートシティ、SDGsなど様々な社会的テーマと結びつけて語られます。

日本でDXが頻繁に話題にのぼるようになったのは、2018年に経済産業省が「DXレポート~ITシステム『2025年の崖』の克服とDXの本格的な展開~」を公表したあたりでしょうか。以来、コロナ禍によるリモートワークの普及があり、非接触型ビジネスの拡大ありと、急速な環境変化とともに、DXという言葉も社会に浸透してきました。しかし一方で、企業のDXはまだ進んでいない所も多いようです。

本コラムでは、主に中小企業経営者がDXの旗を振る前に知っておいてほしい、基本中の基本を整理しておきたいと思います。

「崖」はさておき、「DXレポート」で言っていること

DX推進に関する企業の動向アンケート」(帝国データバンク、20211227日実施、有効回答1,614社)によると、本格的なDXに取り組んでいる企業は約1割にとどまっています。DX推進に向けた取り組みを行っている企業1,320社のうち、「オンライン会議設備の導入」は61.9%なのに対して、「既存製品・サービスの高付加価値化」は11.7%、「新規製品・サービスの創出」は10.8%という具合です。初期段階のDXは大企業が中小企業より進んでいますが、本格的な取り組みについてはあまり変わりません。

経済産業省の「DXレポート」では版を重ねるごとに、変革を加速させようと議論されてきましたが、狙いどおりには進んでいないようです。
20189月の最初の「DXレポート」では「2025年の崖」が強調されました。社内システムが老朽化し、保守できる人材も定年退職の時期を迎えます。カスタマイズで複雑化・ブラックボックス化した「レガシーシステム」が業務改革の足かせとなり、システムの刷新ができなければ日本全体で年間約12兆円の経済的損失が生じると指摘しました。「崖」というのは、既存の基幹システムを早く刷新しないとシステム障害が多発するという警告なのです。

レポートの中では、DXについて「新しいデジタル技術を導入して、新たなビジネスモデルを創出する」という表現もされています。しかし、「崖」を強調することで「DX=レガシーシステム刷新」という誤解を招いてしまったようです。

次に202012月、コロナ禍に直面する中で、経済産業省は「DXレポート2(中間取りまとめ)」を発表しました。そこでは、ITシステムだけでなく“企業文化”の変革を伴って事業環境の変化に迅速に適応するという、DXの本質が確認されています。経営者が「ビジョン」を示すことが必要であり、社内関係者と視点を共有することが重要だと指摘されました。そして同時に「対話に向けた検討ポイント集」がまとめられました。

掲載ページ= https://www.meti.go.jp/press/2020/12/20201228004/20201228004.html

これまでに述べた2つの「DXレポート」では、「ベンダー企業」と「ユーザー企業」に分けてDXにおける役割を分析していました。これに対して、20218月に公表された「DXレポート2.1DXレポート2追補版)」は、すべての企業を対象に「デジタル産業」への変革という視点を提示しました。デジタル産業を構成する企業を4つの類型に分けて方向性を示しています。今後、類型ごとに成熟度を評価する「デジタル産業指数」と「DX成功パターン」を策定するとしています。中小企業を含めて「デジタル産業」化を加速させていく覚悟が表れています。

【デジタル産業を構成する企業の4類型について】

DX!と言う前に知っておくべきこと ~パーパス経営の視点から~

出所:DXレポート2.1(DXレポート2追補版)「図 3-5 既存産業の業界構造とデジタル産業の業界構造」より

失敗から見る、DXあるある

なぜDXは失敗するのか。最初の「DXレポート」の後、201812月に経済産業省が公表した「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX推進ガイドライン)」にも、失敗ケースが例示されています。

掲載ページ=https://www.meti.go.jp/press/2018/12/20181212004/20181212004.html

①経営戦略やビジョンに関わること

やみくもに技術的なコンセプト検証を行ってもうまくいきません。「AIを使って何かやれ」的な丸投げ指示も混乱のもと。どの事業分野でどういう新たな価値を生み出すか、経営戦略としてビジョンの提示がないと組織の疲弊と失敗につながります。

②ベンダーや情報システム部門の位置づけ

付き合いのあるベンダーに依存してしまうのは要注意。事業部門が主体性をもたずに情報システム部門任せになったり、ベンダーと情報システム部門だけで話を進めたりするのも禁物です。推進体制は成功の基盤です。経営レベルと事業部門が入った少人数チームで推進する方式などが良い例として考えられます。

③システム更新が自己目的化

DXプロジェクトの実行段階では、既存のITシステムを刷新することだけが目的になってしまわないよう注意が必要です。刷新して終わりではなく、新しいデジタル技術にも迅速に対応して機能追加ができるようなシステムでなければ、将来につながりません。

➃意思決定や進め方について

自社の先行事例をよりどころにした判断も要注意です。人材評価、投資基準、仕事の仕方など、過去の成功体験や常識から抜けきらないと間違った決定をするリスクがあります。また、DXは投資でもあります。すぐに結果が出ないことが多くても、会社のミッションに向かって信念をもって取り組むのがDXであると理解する必要があります。

DXの本質と期待される変革

上記から分かるように、DXの最終目的は「DXを成し遂げる」ことではありません。デジタル技術が今後どのように活用されるのか、Society5.0と呼ばれる将来社会で人々の生活はどう変わるのか、そういった環境変化の中で、新しい価値提供を行うべく自らを変革することがゴールです。そしてそのためには、自社の「ミッション」あるいは「パーパス」を確認することが必要なのです。
参考例として、いくつかの業種でDXの概況を見てみます。

○製造業

製造業では従来から生産工程の自動化(ファクトリーオートメーション)が行われています。さらにデジタル技術の活用が進み、IoTInternet of Things)によって製造ラインの稼働状況をリアルタイムで一元管理するなど、生産性と品質の向上が期待できます。生産や物流など各種データをAIによって分析・活用する「スマートファクトリー」は、業務プロセスを飛躍的に変え、人材面の課題解決や製品の性能向上などにつながります。

○建設業

デジタル技術の進展は、人手不足などの課題を解決し、サービス品質においても顧客への提供価値を高めています。AIによる画像認識は工事の進捗状況の把握に活用され、危険個所からのデータ収集にIoTやドローンが使われるケースもあります。豊富なデータを取得することで、顧客に対して正確な施工状況を報告できるようになります。

○農業

食料自給率や食の安全性など重要な社会課題を抱える農業においては、担い手確保、安定的な収入への構造改革などが求められます。農業水産省は20213月に「農業DX構想~『農業×デジタル』で食と農の未来を拓く~」をまとめました。そこでは、「デジタル技術で様々な矛盾を克服して価値を届けられる農業」を目指しています。「スマート農業」の技術としては、IoT、ドローン、自動走行装置などが挙げられます。例えば、各種センサーとドローンの組み合わせで生育状況の常時管理を可能にします。生産効率と品質を高めて収入を安定させ、高齢者にも負担の少ない農業の実現が期待されます。

中小企業こそDX

繰り返しとなりますが、「DXはそれ自体が目的ではなく手段」です。
なぜDXが必要なのか改めて整理すれば、①世界的にデジタル化が進んだ競争環境で、対応しなければ企業として生き残っていけない、②テクノロジーの進化は新しい製品やビジネスモデルの創出を可能にしている、という2つの面があります。また、先進テクノロジーはSDGsなど社会課題の解決にも有効です。自社の「ミッション」や「パーパス」に向かって変革するのがDXだと言えます。

では、明確に「ミッション」や「パーパス」を掲げていない中小企業はDXを行わない方がいいのでしょうか? あるいは、変革すべき方向が決まっていないうちはDXに取り組むべきではないのでしょうか? そうではなく、望むべきは「パーパス」を確認して変革の方向性を定めることです。そしてこの点は、中小企業の方が大企業よりも向いています。経営者の決意のもとで全社一丸となって取り組むには、小回りが利く方が有利だからです。

中小企業は経営資源が少ないのでDXは難しいという声もあるかもしれません。しかし、かつてのシステム開発とは異なり、現在は、大きな費用をかけずにクラウドサービスを利用することができます。専門的なITスキルがなくても多くのことが実現できます。中小企業がDXに向かない理由は見当たらなくなっているのです。

ゼロからのスタートで何から手を付けようか、というケースもあるでしょう。そういう場合は、従業員がスマートフォンを持ち、SlackChatworkなどのビジネスチャットを使うというところから、まず始めることをお勧めします。小さくても成果を実感できれば、DXのイメージをつかんでいけるはずです。

DXは将来を目指すための必要条件

DXが必要なのは「崖」を越えるためではなく、遠くない未来に企業が生き残っていくためです。そのためには、デジタル化の進んだ社会で求められる新たな価値を提供できるように、自ら業務プロセスやビジネスモデルの変革に取り組む必要があります。

ただし、自己変革は困難が伴います。従業員の皆が納得するような「ミッション」または「パーパス」がなければ、一丸となって改革を断行することは難しいと言わざるをえません。新しい価値創造を目指して皆が腹落ちする方向性、それがDXに求められます。

「目的」を見失わないでDXに取り組むこと。このことを理解して積極的なDXが展開されることを期待したいと思います。

宮田 昌尚

宮田 昌尚

PROFILE

ライター、コンサルタント

熊本県宇城市出身。早稲田大学政治経済学部卒業後、新聞社に入社。広告部門で営業や企画立案等を長年担当し、CSR部門でメセナ活動を含む各種事業の推進に携わった。現在はグループ会社に勤務。

2020年中小企業診断士登録。
東京都中小企業診断士協会 城東支部所属。


お問い合わせ先
株式会社プロデューサー・ハウス
Web:http://producer-house.co.jp/
Mail:info@producer-house.co.jp

SHARE

おすすめ記事

頭の中のモヤモヤをスッキリさせる!経営者、経営幹部のための思考整理術

2022.04.21

頭の中のモヤモヤをスッキリさせる!経営者、経営幹部のための思考整理術

ESGって得するの?

2022.03.22

ESGって得するの?

POSレジがなくなる日はくるのか?~流通小売業界でのIT変遷と今後~

2022.03.07

POSレジがなくなる日はくるのか?~流通小売業界でのIT変遷と今後~

資料のご請求や
お問い合わせはこちら