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  • 2021.10.05

ブラック企業といわれないために!
メンタルヘルス不調の従業員への正しい対応方法

ブラック企業といわれないために! メンタルヘルス不調の従業員への正しい対応方法

メンタルヘルス不調の従業員に対して
どのような対応をするのが良いか

働き方改革による労働時間の削減に向けた取組みなど職場環境の改善が行われているとはいえ、依然として長時間労働などによりメンタルヘルス不調となってしまう従業員は少なくありません。そして、メンタルヘルス不調となった従業員への対応に頭を抱えているとの企業からの相談もしばしば受けます。メンタルヘルス不調となった従業員への対応が適切でなければ「あの企業はブラックだ」などとして企業の評価が損なわれることはもちろん、訴訟などのリスクも生じます。

そこで、今回は、メンタルヘルス不調の従業員に対してどのような対応をするべきかについて説明します。

メンタルヘルス不調の従業員の早期発見

メンタルヘルス不調の従業員に対しては早期に対応をする必要があります。早期に対応するためには、早期の発見が重要になります。メンタルヘルス不調の従業員が自ら上司に対して「自分はメンタル面で問題がある」と申告するケースは決して多くはありません。『いつもと違う部下の様子』を上司が把握して声かけをすることが適切な対応への第一歩につながります。

【いつもと違う部下の様子の例】

〇 遅刻・早退・欠勤が増える。
〇 残業が増える。
〇 今までにないような些細なミスが増える。
〇 業務時間中に居眠りをするようになる。
〇 アルコールの臭いがする。

声かけをしても医師の受診を拒む従業員に対する対応

様子がおかしいことに気づき医師の受診をするように声かけをしても、その従業員が素直に受診してくれるとは限りません。なぜならば、従業員はメンタルヘルス不調であることが不名誉なことと考える傾向があり、受診をするとメンタルヘルス不調であることを認めてしまうことになるからです。

この場合、まずは当該従業員に受診を説得することになりますが、その際に注意すべきことがあります。それは、「最近精神的にしんどくないですか」というように直接メンタルヘルス不調について言及するべきではなく、「最近ミスが少し多いようですが何か原因はありますか」、「最近同僚に対して怒鳴ることが増えてきていませんか」などと問題となっている『客観的な事実』を指摘するということです。従業員がメンタルヘルス不調であることを指摘するのではなく、自らメンタルヘルス不調に気づいてもらうようにすることで従業員による無用の反発を招かないようにする必要があります。

それでもなお受診に応じない場合は、従業員に対し、拒否した場合は懲戒処分の対象となりうる業務命令として医師への受診を命じる(これを「受診命令」といいます。)ことを検討します。具体的な状況の下で労使間における信義則ないし公平の観念に照らし合理的かつ相当な理由のある措置であれば、就業規則等にその定めがなくても受診命令を出すことは可能とした裁判例もありますが(京セラ事件:東京高判昭和61年11月13日判時1216号137頁)、就業規則に所定の場合は受診命令を行うことができる規定を設けておくことが無難であるといえます(電電公社帯広局事件:最判昭和61年3月13日労判470号6頁)。

休職をした従業員への対応

メンタルヘルス不調により業務に支障が出ている従業員が医師の診察を受け、就労不能との診断書が作成・提出された場合、当該従業員を休職させることとなります。休職とは、従業員による就労が不可能となったときに一定期間就労を免除し、当該期間が経過した際に復職が可能であれば復職し、不可能であれば解雇又は労働契約の終了とするという制度で、解雇の猶予措置ともいうべきものです。

休職中の治療については、基本的には主治医に委ねることなるものの、従業員と1、2か月に1回程度定期的にコミュニケーションの機会を持つようにする必要があります。例えば、「お見舞い」として従業員の自宅に訪問するというのも一つの方法です。自宅訪問は、従業員本人の生活状況や家族との関係などの把握も可能であることから従業員の現状を把握するための有効な手段であるといえます。

復職可能であるかどうかは最終的には企業が判断する

休職期間の満了が近づいたら、休職していた従業員の復職が可能であるかどうかについて検討します。この点に関し、休職をしていた従業員から復職を希望する旨の申出とともに、主治医の「復職可能」との診断書が提出されるのが通例です。

しかし、主治医は休職する前に従業員がどのような業務を担当していたのかについて、具体的に把握しているわけではありません。また、主治医の診断書については「病状の回復程度によって職場復帰の可能性を判断していることが多く、それはただちにその職場で求められる業務遂行能力まで回復しているか否かの判断とは限らないことにも留意すべきである。また、労働者や家族の希望が含まれている場合もある」との指摘もあります(『心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き』(厚生労働省、平成24年7月))。

したがって、常に主治医の診断書のみを根拠として復職を認めるのは相当ではなく、必要に応じて産業医に意見書を作成してもらうなどの措置を講じる必要があります。

そして、そもそも復職が可能かどうかは純粋な医学的判断ではなく、企業が当該従業員の職種・職場環境も考慮しながら総合的に判断するものであるということも忘れてはいけません。

なお、「労働者が職種や業務内容を特定せずに労働契約を締結した場合においては、現に就業を命じられた特定の業務について労務の提供が十全にはできないとしても、…当該労働者が配置される現実的可能性があると認められる他の業務について労働の提供をすることができ、かつ、その提供を申し出ている」場合には企業は一定の配慮をする必要がある旨を示唆した判例もあります(片山組事件:最判平成10年4月9日民集188号1頁)。場合によっては従前の業務とは別の業務を行ってもらう形で復職してもらうことも検討する必要があるといえます。

ブラック企業といわれないために! メンタルヘルス不調の従業員への正しい対応方法

従業員の復職を支援する

従業員の復職が決まったら、職場において復職する従業員を受け入れるための環境の整備を行う必要があります。そのなかで、職場の同僚にどこまで休職していた従業員の病状を伝えるかが問題となります。一般的には、通院のために仕事を早退することや薬の副作用のために居眠りの可能性があることは同僚の理解を得ておいたほうがよいと思われますが、最終的にどのような情報を同僚に伝えるかどうかはプライバシーの問題ですので、従業員本人と十分に協議して決めることになります。

また、従業員の職場復帰が始まったのちも、上司や人事担当者が定期的に面談を行い、症状、通院状況及び業務の遂行状況等について確認し、相談に応じるというのも企業が行うべき支援といえます。その際は、当初の声かけのときと同様に、復職した従業員との面談においては、具体的な事実に着目して話を進めていくことに注意しましょう。

メンタルヘルス不調はどこの職場でも起こりうる問題

これまで、メンタルヘルス不調の従業員の対応の基礎について説明してきました。どこの職場でも従業員がメンタルヘルス不調となってしまうおそれはあります。全社的にメンタルヘルス不調への理解を深めていくことが、メンタルヘルス不調の従業員に対する適切な対応の第一歩となります。本稿がそのための参考になれば幸いです。

武田 宗久

武田 宗久

PROFILE

ライター,コンサルタント
1978年生まれ,大阪府出身。京都大学大学院法学研究科修了
2011年弁護士登録(大阪弁護士会所属)
2020年中小企業診断士登録

債権回収や離婚等の一般民事事件を担当する一方,大阪の中小企業や自治体を元気にするため,法務・労務を中心とした支援に取り組む。著書に『改正民法対応!自治体職員のためのすぐに使える契約書式解説集』(令和2年,第一法規,共著)など。

お問い合わせ先
株式会社プロデューサー・ハウス
Web:http://producer-house.co.jp/
Mail:info@producer-house.co.jp

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