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  • 2021.08.27

どうすればよい?同一労働同一賃金

どうすればよい?同一労働同一賃金

早急な対応が求められる同一労働同一賃金

大企業では2020年4月1日、中小企業では2021年4月1日から改正パートタイム・有期契約労働法(以下「法」といいます。)等が施行されました。これにより、同一労働同一賃金が始まりました。この法改正は、パートや有期雇用といった雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保を図るためのもので、企業も早急に対応する必要があります。しかし、具体的な内容などについて理解をするのは決して容易ではありません。

そこで、今回は、同一労働同一賃金の考え方や企業がとるべき対応について解説します。

正規雇用との不合理な差別を禁止する
日本版同一労働同一賃金

「同一労働同一賃金」という単語の文言からすると、「同じ内容の労働を行うものに対しては、同一額の賃金を支払わなければならない」(職務内容に応じた賃金水準。同一『価値』労働同一賃金といいます。)と考える方もいるかもしれません。

しかし、日本においては、従業員の賃金は、『現時点』での職務内容や責任だけではなく、『将来』に期待される役割や配転の可能性なども考慮の上で決定される傾向があります。これは、終身雇用や年功序列といった日本的な人事制度によるものであるといえます。また、賃金をはじめとする労働条件の決定にあたっては、企業の経営判断や労使間の交渉を尊重すべき面もあることは否定しがたいといえます。

そこで、法は、パートや有期契約といった非正規雇用の従業員の労働条件について、正規雇用の従業員と『不合理な差別』をすることを禁止することとしました(法第8条)。いいかえれば、合理的な理由があれば、労働条件について正規雇用と非正規雇用との間で異なる取扱いをすることが許されるともいえます。この点で、日本における同一労働同一賃金とは、同一『価値』労働同一賃金を意味するものではありません。この点は非常に誤解をしやすいところですので、注意をする必要があります。

正規雇用と非正規雇用との労働条件の相違が問題となった事例

では、具体的にどのような形で正規雇用とパートや有期雇用のような非正規雇用との労働条件の相違が問題となるのでしょうか。

近時の事例としては、正規雇用である教室事務員の従業員には賞与を支給し、アルバイトである有期雇用の従業員には賞与を支給しないことについて、不合理な差別であるか否かが争われた事案があります(大阪医科薬科大学事件:最判令和2年10月13日判タ1483号81頁)。
この事案では、以下の理由からアルバイト従業員に賞与を支給しないことが不合理な差別ではないとされました。

【結論】
アルバイト従業員に賞与を支給しないことは、不合理な差別ではない。

【理由】
① 賞与の目的は、正規雇用である教室事務員としての職務を遂行し得る人材の確保やその定着を図るものなどであること。

② 職務の内容について、アルバイト従業員は相当に軽易であることがうかがわれるのに対し、正規雇用である教室事務員は、学内の英文学術誌の編集事務等、病理解剖に関する遺族等への対応や部門間の連携を要する業務又は毒劇物等の試薬の管理業務等にも従事する必要があったのであり、両者の職務の内容に一定の相違があったこと。

③ 配置の変更について、正規雇用である教室事務員は、正職員就業規則上人事異動を命ぜられる可能性があったのに対し、アルバイト従業員については、原則として業務命令によって配置転換されることはなく、人事異動は例外的かつ個別的な事情により行われていたこと。

④ その他の事情について、人員配置の見直し等により正規雇用の教室事務員の正職員は極めて少数となっていたこと、アルバイト従業員に正規雇用の登用制度を設けていたこと。

他方、正規雇用の従業員に対しては年始期間の勤務に関する祝日給が支給される一方、有期雇用の従業員には祝日給が支給されないことが不合理な差別にあたるかが争われた事案(日本郵便(東京・大阪・佐賀)事件:最判令和2年10月15日判タ1483号64頁)では、以下の理由から有期雇用の従業員に対し祝日給を支給しないことが不合理な差別に当たるとされました。

【結論】
有期雇用の従業員に対し祝日給を支給しないことは、不合理な差別に当たる。

【理由】
① 年始期間の勤務に対する祝日給の目的について、最繁忙期であるために年始期間に勤務したことについて、その代償として、通常の勤務に対する賃金に所定の割増しをしたものを支給することであること。

② 有期雇用の従業員は、繁忙期に限定された短期間の勤務ではなく、業務の繁閑に関わらない勤務が見込まれているから、年始期間における勤務の代償として祝日給を支給する趣旨が妥当すること。

これらの事案からいえることは、不合理な差別にあたるかどうかは、

1 正規雇用と非正規雇用との間に異なる労働条件の定めがある場合、その労働条件の性質や目的
2 正規雇用と非正規雇用のそれぞれの職務の内容(業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度)、配置の変更の範囲及びその他の事情

を考慮するということになります。

法第8条においても、おおむね上記と同様の内容が規定されています。(なお、当該事業所における慣行その他の事情からみて、雇用関係が終了するまでの全期間において、その職務の内容及び配置が正規雇用の従業員の職務の内容及び配置の変更の範囲と同一の範囲で変更されることが見込まれるものについては、非正規雇用であることを理由として、労働条件に関する差別的取扱いをしてはならないとされています(法第9条)。)

どうすればよい?同一労働同一賃金

企業は同一労働同一賃金に対してどのような対応を
すればよいか

同一労働同一賃金について、企業がまず取り組まなければならないことは、自社において、正規雇用と非正規雇用との間に労働条件にどのような違いがあるのかを把握することです。このため、正規雇用と非正規雇用との労働条件における異なる取扱いにはどのようなものがあるのか洗出しを行い、「待遇差の見える化」をする必要があります。

次に、正規雇用と非正規雇用との間の労働条件の違いを把握したら、それがどのような理由によるのかを十分に検討し、不合理な差別ではないかの判断をしていきます(なお、企業は、非正規雇用の従業員から求めがあったときは、正規雇用の従業員との待遇の相違の内容及び理由等について説明をしなければなりません(法第14条第2項)。)。そのうえで、不合理な差別といえるものについては、速やかに是正する必要があります。

どのような場合に不合理な差別となってしまうおそれがあるのかを検討する際に参照すべきなのが、『短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者に対する不合理な待遇の禁止等に関する指針』(厚生労働省告示第430号。通称『同一労働同一賃金ガイドライン』)というものです。このガイドラインには具体的な労働条件ごとに具体例を踏まえた解説が記載されています。(このほか、厚生労働省のウェブサイトではわかりやすいリーフレットなどがダウンロードできますので是非参考にしてください。)

派遣労働者について

これまで、パートや有期雇用の従業員を中心に述べてきましたが、派遣労働者についても、派遣元事業主に対し、派遣労働者に対する派遣先労働者との不合理な待遇の禁止などが求められるようになっています(派遣法第30条の3。ただし、一定の内容の労使協定が締結されている場合などは適用除外となっています(派遣法第30条の4)。詳細については、厚生労働省のウェブサイトなどをご確認ください。)。先ほど述べた『同一労働同一賃金ガイドライン』では、派遣についても解説があります。

働き方改革のなかでも難問である同一労働同一賃金

本稿では詳しくは説明できませんでしたが、実際には、「正規雇用」と「非正規雇用」の違いをどう把握するのかといったことや、何をもって「不合理な差別」であると判断するのかについては、はっきりしない部分が少なくありません。その意味で、同一労働同一賃金は、政府が進める一連の働き方改革の中で最大級の難問であるといえます。

とはいえ、このことは、企業が何もしなくてよいということを意味するものではありません。今後の裁判例の動向にも注意しつつ、少しずつでも対策を進めていく必要があるといえます。

本稿が参考になれば幸いです。

武田 宗久

武田 宗久

PROFILE

ライター,コンサルタント
1978年生まれ,大阪府出身。京都大学大学院法学研究科修了
2011年弁護士登録(大阪弁護士会所属)
2020年中小企業診断士登録

債権回収や離婚等の一般民事事件を担当する一方,大阪の中小企業や自治体を元気にするため,法務・労務を中心とした支援に取り組む。著書に『改正民法対応!自治体職員のためのすぐに使える契約書式解説集』(令和2年,第一法規,共著)など。

お問い合わせ先
株式会社プロデューサー・ハウス
Web:http://producer-house.co.jp/
Mail:info@producer-house.co.jp

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