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  • 2021.04.12

子育て中の女性を生かすには

子育て中の女性を生かすには

1.女性活躍推進法の改正で求められる情報公表

令和元年に改正された女性活躍推進法により、現在は、常時雇用する労働者数が301人以上の事業主は一般事業主行動計画の策定と女性の活躍推進に関する情報公表が必要となっています。
これが令和4年4月より、常時雇用する労働者数が101人以上の事業主にまで拡大されます。
以下のそれぞれの区分から1つ以上選択し、求職者が簡単に閲覧できるよう情報公表しなければなりません。

(1)職業生活に関する機会の提供に関する実績(女性労働者の割合、管理職に占める女性労働者の割合等)
(2)職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備に関する実績(平均継続勤務年数の差異、
一月当たりの平均残業時間等)

子育て中の女性を生かすには

厚生労働省 改正の概要 https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000594316.pdf

令和元年の統計によると、女性の育児休業取得率は83%、男性も年々上昇し7.48%となっており、育児をしながら働き続けることが一般的になってきました。その背景の一因には、自治体も企業も法令に合わせて、産休・育休、育児をサポートする体制の整備を進めていることがあります。

一方で、「柔軟な勤務体系や制度を整えたにも関わらず、優秀な女性が結婚や出産で辞めてしまう」という経営者の声も多く聞かれます。

今後の情報公表によって、今働く女性が辞めてしまうことに加え、新たに優秀な女性を採用することも難しくなる可能性があります。そのため、今後は女性の雇用問題に向き合わなければならない中小企業が増えるでしょう。しかし、実は女性の雇用問題に向き合うことは、企業のこれからの成長に繋がることでもあります。それはどういうことなのでしょうか。

2.「子育て中の女性」は千差万別

20年前(1999年)の女性の育児休業取得率は56.4%でした。しかし、それ以前に結婚で辞める人も多く、辞めない人は男性と同じように働くことを求められたり、辞めるよう嫌がらせを受けたり等のマタニティハラスメントはよく聞く話でした。

その頃に比べると、今は制度が充実し、マタニティハラスメントも禁止され、恵まれた環境と言えます。なのに、なぜ女性が出産や育児で仕事を辞めるために就業率が低下する現象「M字カーブ」はなくならないのでしょうか。それを解くカギの一つが「フルキャリマネジメントー子育てしながら働く部下を持つマネージャーの心得(東洋経済新報社)」(武田加奈著)によって提唱された「フルキャリ」という概念です。

従来、子育てをする女性は、家庭やプライベートの都合を仕事の制約にせず、男性と対等に仕事での成功やキャリアアップを追求したい「バリキャリ」(バリバリ働きたい)か、家庭やプライベートの時間を確保することを優先し、それが可能となる範囲で仕事をする「ゆるキャリ」(ゆるやかに働きたい)か、という二元論で語られてきました。

しかし、近年、制度が整ったからこそ、プライベートでは結婚も出産もし、家事や子育てに積極的に取組みながら、仕事でも周囲の期待に応える成果をしっかりと出したいと考える女性が増えてきました。これが「フルキャリ」です。「働く女性5,454人に聞く仕事とキャリアの本音調査(2018年)(NRI)」によると、現在「フルキャリ」は働く女性の5割を占めるそうです。

従来企業が進めてきた「就業継続を目的とした支援」は「ゆるキャリ」に対して、「男女雇用機会均等を目的とした支援」は「バリキャリ」に対して、効果的に効いてきました。しかし、5割を占める「フルキャリ」に対してはどうなのでしょうか。

「社内制度を整えたにも関わらず、優秀な女性が結婚や出産で辞めてしまう」という声の原因の一端はここにあるのかもしれません。

3.「フルキャリ」の仕事への思い

一般的に、子供が幼いうちは、時短勤務や残業ができないことにより、仕事に割く時間が実質的に減るだけでなく、子供の急な発熱や行事等で休暇が増えます。

しかし、それをもって仕事への意欲が低くなったと捉えるのは早計です。「フルキャリ」は仕事に割く時間が減ったからといって仕事への意欲は減少しません。「子供を預けてまで働くからには、仕事で成果を出したい」という思いが強いからです。そうすると、短時間で、かつ突発的に休む可能性がある中で、どのように業務を完遂させるかを考える結果、必要に迫られ、効率的に仕事こなします。

例えば、「時短を取得したい」という要望を聞いた上司は「仕事への意欲が低下し、子供との時間を確保したいのだろう」と思いがちですが、本人は「保育園の預かり時間と通勤時間を逆算すると時短勤務をせざるをえないが、その時間で今までと変わらない成果を出そう」と思っているかもしれません。

その結果、給与と評価という面で彼女たちは壁にぶつかります。もし、同じ成果を残した2人がいたとして、残業して働く人材と、定時で働く人材の場合、後者の方が優秀なはずなのですが、労働時間の差で必然的に前者の給与が高くなる企業が多いでしょう。
それに加えて、評価でも差が出ることがあります。現在、意識が変わりつつあるとはいわれますが、今の日本企業では会社に投資できる時間を無意識に評価軸としている管理職もまだいます。

そうすると、この会社で働き続けていいのか、会社に貢献できていないのではないか、と「フルキャリ」たちは失望し、高かった意欲を奪われ「ゆるキャリ」になる人もいます。他の環境で挑戦したいと退職する人もいます。そして、そういう人が「両立が大変」という理由で退職してしまうと、企業側が課題に気が付くことなく、次の退職等を招いてしまうのです。

それを防ぐために取組む企業があります。厚生労働省が公開している女性活躍・両立支援に積極的に取り組む企業の事例集によると、「モリタグループ」では、ライフイベントがキャリア形成の妨げとならないよう評価制度等を見直したり、幅広い部署に女性を配置することで多くの女性が活躍するようになったそうです。

子育て中の女性を生かすには

4.「フルキャリ」に対して必要なこと

「フルキャリ」にとって必要な基本的な制度は、今までの「就業継続を目的とした支援」や「男女雇用機会均等を目的とした支援」で既に整備されています。その上で、彼女たちに必要なことは大きく以下の2点です。

①過剰な配慮をしないこと

彼女たちは過剰な配慮をされることを望みません。
業務時間が短くても、常に出張は出来なくても、必要な時にはサポートを手配することで、残業も出張もできることがあります。それを上司が理解しておらず、以下のような「過剰な配慮」をしてしまうことがよく聞かれます。

・定時までの研修の機会を、時短勤務の女性に打診せずに勝手に上司が断る。
・出張がある案件は無理だろう、と配慮して他の人の担当にする。
・子育てがあるからと、重要な案件を任せない。

こういう過剰な配慮が後で本人に伝わった結果、それを知ったときの失望が彼女たちの働く意欲を奪うのです。

また、よくある事例が、専業主婦の妻を持つ管理職が自分の妻と女性部下を重ね合わせて「こうあるべきだ」という概念で接してしまうことが、知らないうちに過剰な配慮になっていることです。
それぞれ家庭の事情は違います。夫と家事や育児を分担している、両親の助けを借りられる、ベビーシッターなどのサポートが使えるなど、家庭の数だけ事情があるのです。

配慮はもちろん必要でしょう。しかし、「過剰な配慮」をしないことは、会社やチームのパフォーマンスをあげるためにも、とても重要です。そのためには、上司も女性社員もプライベートな情報や仕事への思いを共有した上での、お互いに納得した形の配慮が必要でしょう。

②挑戦できる環境と長期的なキャリアパスの共有

「フルキャリ」の仕事の意欲に対しては、「やりがい」が重要なキーワードです。
例えば、独身時代より難易度の低い業務を任されたとしても、彼女たちは「急な呼び出しがあるため、今までと同じように業務ができないから配慮されているのだ」と理解しています。

しかし、難易度の低い業務では自分の成長も少なく、大きな成果をあげることも難しいです。その状態が続くと彼女たちはやりがいが持てなくなり、仕事への意欲が低下していきます。

もし、難易度の低い業務を担当してもらうのであれば、彼女たちにその配置の意図や、彼女の能力や長期的な活躍を期待していることを明確に伝えることが重要です。その上で、長期的なキャリアプランをお互いに共有することで、「フルキャリ」は今の状態が一時的であることを理解し、やりがいをもって前向きに業務に取組めるようになります。

5.「フルキャリ」は伸びしろのある人材

今回記載した「過剰な配慮をしないこと」「挑戦できる環境と長期的なキャリアパスの共有」は、実は「フルキャリ」にだけではなく、全ての従業員にとって重要な事です。しかし、周りが「子育て中の女性」というアンコンシャスバイアス(無意識の偏見)に囚われることで、「フルキャリ」には実施されずに、本人が仕事への意欲をなくして「ゆるキャリ」に変化したり、退職してしまう事例が多々あります。

今、コロナ禍で多くの企業の業績は厳しい苦境に立たされています。
そんな中、「フルキャリ」は仕事への意欲が高いという点でこれからも企業に貢献してくれる可能性が高い伸びしろのある人材といえます。
さらに、働く時間に制約のある子育て中の女性の多様な思いや意欲を知り、生かすことができれば、今後、介護や色々な事情で時間の制約のある社員が増えていったとしても、その知見を活用することができるのです。

子育て中の女性を活かすことは、企業のこれからの成長にとってとても有用でしょう。

那須 美紗子

那須 美紗子

PROFILE

ライター、コンサルタント
岐阜県出身、東京在住。2006年より、大手企業にて新サービスの導入、ITシステムの企画・導入、業務改善などに従事。
2019年中小企業診断士登録。東京都中小企業診断士協会 城北支部所属。
また、自身の育児経験を活かし、育休後アドバイザーとして、子育てをしながら働く親の支援活動も行う。

お問い合わせ先
株式会社プロデューサー・ハウス
Web:http://producer-house.co.jp/
Mail:info@producer-house.co.jp

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