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  • 2021.03.19

海外との初めての売買取引 留意のポイントは?

海外との初めての売買取引 留意のポイントは?

1. はじめに

グローバル化といわれて久しく、すでに国境を越えて商取引が行われるのも普通のことになってきています。日本企業が海外企業と取引をする場合は、日本の卸売業者を介して取引を行うことも多いですが、さまざまな理由で海外企業との直接取引をしたいというケースも多々あるものと思います。

しかし一般的には、海外企業との取引は国内取引にはないリスクがあると言えます。そのため、リスクをいかに最小化するかという観点が必要です。仮にリスクが現実化したときの損失をにらんで、それを回避するために事前に講じる手段にかかる費用はどのくらいか、ということも同時に考える必要があります。

本稿では、日本企業が売主となって、買主である海外企業に直接販売する際に留意したいポイントをご紹介したいと思います。商品特性によって細かい点では違いがあるかもしれませんが、大きな部分では変わるものではないので、いずれのポイントも確認しておきたいところです。

2. 取引を行う前に想定すべきリスク

取引を開始する前に、その取引のリスクを検討することが望ましいです。
スピード感勝負のビジネスの世界でそんな悠長なことは言っていられない、という声が聞こえてきそうですが、時間をかけてリスクを分析するということではなく、こういうリスクも加味して、その取引を実施するかどうかを判断する軸を持つということが重要です。一般的に、海外との商取引には以下のリスクがあります。

・信用リスク

日本企業が海外企業に商品を販売するとき、長年取引関係のある企業同士であれば、まず商品を納品し、その後に請求書を発行して代金を回収するという流れで、特段の問題は生じないと思われます。なぜならば、売主は買主が必ず代金を支払ってくれると知っているし、買主も発注書を交付したら売主がきちんと納品していることを知っているため、相互の信頼関係が構築されているからです。

ところが、初めて取引する相手先だったらどうでしょう。買主の支払能力は未知数です。期限どおりの支払いがなされるかは明らかではありません。商品を納入しても、買主に支払能力がなければ売主は損をしてしまいます。支払能力を知らない相手先に商品を納入することは、代金が回収できないリスクがあることになります。こういう状況を信用リスクと言います。
この取引においては、商品単価が1,000円だとして、最悪は商品1個あたり1,000円の回収不能リスクを売主が持つことになります。海外企業と与信取引をする際は、この信用リスクを十分に考慮する必要があります。

与信リスクを回避する方法としては、まずは前金を受領したのちに商品を納入するといったことが考えられます。これは先に代金を貰うわけですから、売主にはリスクがもっとも少ないことになります。さらには、普段から取引のある卸売業者に商流に入ってもらう、という方法も考えられます。つまり、売主はその卸売業者に販売し、卸売業者から海外業者に販売するという形にすることもあります。この場合は、信用リスクが卸売業者に移転するので、卸売業者が独自に信用リスクを検討し、その取引を引き受けるかどうかを検討することになりますが、卸売業者という中間業者が入りますので最終客先に渡るときの価格、あるいは売主のマージンに影響する可能性があることは考えておかなければいけません。

・輸送リスク

国内取引に比べて長距離の商品移動が発生します。日本国内から出るためには船舶や航空機を使って輸送する必要がありますが、輸送途上に何らかの事故に巻き込まれて商品を損傷したり、滅失したりする可能性もあります。貿易取引の場合は、インコタームズ2020®という国際的なガイドラインで、売主と買主の費用負担、危険負担を定めていますので、それに基づいた価格設定をするのが一般的です。(拙稿「いまから学ぶインコタームズ2020®」も併せてご参照頂ければと思います)

・為替リスク

どの通貨で販売をするか、というのも考えておきたいポイントです。海外企業であっても日本円で取引ができればベストですが、なかなかそういうわけにはいかないのが実情です。多くの場合は日本円以外の通貨で販売をすることになります。外貨建の取引をするときに留意すべきリスクは、為替リスクです。

為替は常に変動していますので、同じものを売り上げても、円高では日本円での売上が目減りしますし円安になると日本円での売上が増大します。この為替の増減の幅を為替リスクといいます。為替リスクを軽減するための方法として、将来のある時点での為替を固定した形での取引を予約しておく為替予約というやり方を用いて日本円での売上を確定してしまうことが考えられます。

なお、もし仮に海外企業への販売が今後増加する見込みがあり、かつ、素材などを仕入れるときにも外貨での支払いが見込まれるのであれば、外貨建ての決済口座を持つことも検討すべきです。例えば米ドル建ての決済口座を持つとすれば、売上を米ドルで入金し、仕入れも米ドルで支払いを行えば、少なくともその口座の中での為替リスクは存在しないことになるからです。

取引通貨が混在すると利益が出ているのか、損失なのか、といった把握が瞬時にしづらい面もありますので、同じ通貨に換算して常に損益をモニターするなど、しっかりとした管理をすることが望まれます。

3. 売買契約の締結

海外との初めての売買取引 留意のポイントは?

上述の要素を検討した後に、売買契約を締結することになります。契約書を仕上げるまでに一定の手間がかかりますが、適切な契約書を作ることで、自社が被るリスクをコントロールすることができます。ここで注意したいのは、自社の中で取引のスキームを明確にしていないと、顧問弁護士など法律専門家に契約書の素案を依頼したとしても求める効果は得られないということです。
彼らは法律の専門家ではありますが、ビジネスの専門家ではありません。実際にビジネスをしている最前線の方がどういう点を取り決めておきたいか、ということをしっかりと考慮しておく必要があります。

一般的に、取り決めておいたほうが思われる事項は以下の事項です。

・保証期間

商品などの故障等が生じた場合に売主が代替品の供給等の責任を負う保証期間についての取り決めです。
完璧を期していたとしても商品にトラブルが生じることもあり得ます。きちんと取り決めておき、責任を取る期間を明確にしておきたいです。

・注文取消の際の対応

せっかく決まった取引、既に発注書も取り交わしたものの、それでも買主の事情によって注文取消をされるということが生じることがあります。その際に、いつまでなら取り消しが受け入れられるのか、返品の際の商品の返送負担は誰が行うのか(通常は買主になりますが、きちんと取り決めておく必要があります)など、トラブルにならないように取り決めておく必要があります。また、あまりないかもしれませんが、商品が逼迫していて売り主のほうから取り消しを願い出ざるを得ないケースもあるかもしれません。その場合の対応も売買契約でカバーできればベストです。

・不可抗力(Force Majeure)

地震・噴火などの天災、騒乱・戦争などの治安不安など、当事者が想定していなかった事象が生じる可能性もないとは限りません。契約当事者双方のいずれの責めに帰すべき事由によらない債務不履行の原因を不可抗力といいます。このときの対応についても取り決めておくのが一般的です。

東京商工会議所の海外ビジネスワークブックには不可抗力に関して、以下の条項の例文が記載されています。(https://www.tokyo-cci.or.jp/soudan/globalsupport/work/)

天災地変、政府の命令もしくは抑止、戦争もしくは戦争状態、もしくは売主が制御できないその他の事由が発生した場合は、 売主はそれにより、直接的乃至は間接的に起因する貨物の出荷不能、もしくは契約履行の遅延に対して、責任を負わないものとする。その場合、 買主は船積遅延、もしくは、売主より申出があった場合、 本契約の一部もしくは全部の解約に応じるものとする。

(英文)

In the event of Acts of God, government orders or restraints, war or warlike conditions, or of any other contingencies beyond Sellerʼs control, Seller shall not be liable for non-delivery of the Goods or delay in performance of the Contract caused directly or indirectly thereby, in which case Buyer shall accept the delayed shipment or the cancellation of all or any part of the Contract, if proposed by Seller.

売買契約において価格や納期は重要な要素であるのはいうまでもありませんが、それ以外にも、上記の要素についてもぜひ確認されることをお勧めします。これらの事項は平時にはあまり気づかないのですが、もし何かトラブルがあった際に威力を発揮します。取引のスキームについて十分に理解をしているのは当事者ですので、弁護士に丸投げすることなく、契約書の条項を確認していく必要があります。

4. おわりに

海外との売買取引に関する留意事項について考えました。実際のビジネス現場におられる方々にとっては百も承知のこととは思われますが、取引を行うこと自体は常にリスクがあることを認識した上で、最悪のケースになったとしても自社で取り扱える範囲に抑えることを常に意識して取引に臨むことが肝要だと思われます。
本稿が海外との安全なよい売買取引の参考になれば幸いです。

安田 雅哉

安田 雅哉

PROFILE

ライター、コンサルタント

1970年生まれ、鳥取市出身
京都大学大学院工学研究科機械工学専攻修了
2018年ファイナルシャルプランナー1級取得
2020年中小企業診断士登録

プラント建設会社、電機会社を経て現在は総合商社で東南アジアに駐在し経営管理を担当。得意分野はプロジェクトマネジメント、業務改革、ファシリテーション、貿易実務、売買契約。

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