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  • 2021.02.26

偽装請負といわれないための業務委託をするときの
注意点

偽装請負といわれないための業務委託をするときの注意点

アウトソーシングに潜む落とし穴

自社の人材を有効活用するために、定型的な業務を外部の業者に委託し人件費の適正化を行うことがあります。この外部の業者と業務委託契約を締結することをアウトソーシングといいます。

アウトソーシングをする業務は、もともとは自社で行っていた業務が多いかもしれません。このため、実際に業務をしている委託業者の個々の従業員に対し、業務の内容で気になった点を指摘したり、業務を効率よくしてもらうために指導をしたりしたいと考える場合もあろうかと思います。しかし、業務委託契約の発注者としての立場で、受注者の個々の従業員に対し、業務の内容についての指摘や指導をすることは「偽装請負」となってしまうリスクがあります。

前提知識の解説:労働者派遣について

偽装請負を理解するためには、労働者派遣について理解する必要があります。
労働者派遣とは、派遣元が自己の雇用する労働者を、派遣先の指揮命令を受けて、派遣先のために労働に従事させることをいいます(労働者派遣法第2条第1号)。
通常、使用者と労働者との間に労働契約が締結され、使用者が労働者に対して業務上の指示や監督をします。

他方、労働者派遣の場合は、派遣元が派遣する労働者(派遣労働者といいます。)は、派遣元と労働契約を締結しており、派遣先とは何らの契約関係もありません。しかし、派遣先は、派遣労働者に対して業務上の指示や監督をします。

この意味で、派遣労働者は、契約関係と指揮命令関係が一致しない形態であるといえます。

偽装請負といわれないための業務委託をするときの注意点

偽装請負とは

業務委託の場合は、あくまで委託先が受託先に対して「業務を行うこと」を委託しているにすぎません。受託先の労働者は、受託先と労働契約を締結するとともに、受託先の指揮命令を受けます。

したがって、仮に委託先のオフィスで受託先の従業員が業務を行っていても、委託先は受託先の個々の従業員に対して指揮命令をすることはできません。

偽装請負といわれないための業務委託をするときの注意点

ところが、形式上は請負・委託として契約を締結しているものの、発注者側からの指揮命令等を受けて受託者の労働者が作業を行う形態となっており、その実態として労働者派遣となっているものがあります。このように、形式的には請負・委託となっていても実質的には労働者派遣となっているものを偽装請負といいます。

労働者派遣制度の潜脱となる偽装請負

そもそもなぜ偽装請負が発生するのでしょうか。

労働者派遣制度においては、さまざまな法規制がなされています。例えば、労働者派遣事業を行おうとするものは、厚生労働大臣の許可が必要となります(労働者派遣法第5条)。また、港湾運送業務、建設業務、警備業務等の業務では、そもそも労働者派遣を行うことができません(労働者派遣法第4条)。このほかにも、派遣可能期間の制限などもあります。

したがって、労働者を派遣する企業としては、このような規制を免れるために請負や委託という形をとるという動機があると思われます。また、偽装請負により労働者を派遣する企業に対するコストが安く済むことなどから労働者を受け入れる企業も、偽装請負の発注をしてしまいがちであるということもいえます。

偽装請負にはどのようなリスクがあるか

偽装請負により労働者を派遣した企業は、派遣事業の許可なしの労働者派遣や、派遣禁止業務への労働者派遣にあたる場合は、刑事罰(労働者派遣法第59条第1号・第2号)の対象となります。また、派遣事業の許可があり、かつ派遣禁止業務でない業務への労働者派遣にあたる場合でも、労働者派遣の枠組みを満たしていない点で労働者派遣法に違反しますので、行政指導や行政処分の対象となります。

他方、偽装請負により労働者を受け入れた企業についても、行政指導や行政処分の対象となります。また、公的機関から業務を受注している企業の場合、偽装請負により指名停止の措置を受けることもありえます。

さらに、労働者派遣法の規定の適用を免れる目的で、偽装請負により労働者の受け入れをした場合は、労働者派遣の役務の提供を受ける企業が、偽装請負を開始した時点で、当該労働者に対して直接雇用の申し込みをしたものとみなされます(労働者派遣法第40条の6第1項第5号)。すなわち、偽装請負により労働者の派遣を受けた場合は、当該労働者を直接雇用しなければならないことになりかねないのです。

このように、偽装請負は、労働者を派遣する企業はもちろん、労働者の派遣を受け入れる企業にも重大なリスクをもたらすものといえます。

労働者派遣と適法な請負・委託とを峻別する37号告示

では、業務委託をする際に偽装請負とならないようにするためには、どのような点に注意をする必要があるのでしょうか。

そもそも、労働者派遣と適法な請負・委託とは、業務を行っている者に対して、受け入れ企業が指揮命令を行っているかどうかという点で区別されます。この点に関し、厚生労働省は、「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」(昭和61年4月17日労働省告示第37号。いわゆる37号告示。)において、次のとおり労働者派遣ではなく、請負であると認められるための要件を定めています。

【37号告示の概要】

1 労務管理上の独立
自己の雇用する労働者の労働力を自ら直接利用するものであること
⇒ 具体的には、業務の遂行及び労働時間に関する指示その他の管理を自ら行うべきこと

2 事業経営上の独立
請け負った業務を自己の業務として当該契約の相手方から独立して処理するものであること(具体的には、以下の①~③を満たすこと)

① 業務の処理に要する資金につき、すべてを自らの責任の下に調達し、かつ、支弁すること。

② 業務の処理について、民法、商法その他の法律に規定された事業主としてのすべての責任を負うこと。

③ 以下のイ・ロに該当し、単に肉体的な労働力を提供するものでないこと。

 イ 自己の責任と負担で準備し、調達する機械又は材料等により、業務を処理すること。

 ロ 自ら行う企画又は自己の有する専門的な技術若しくは経験に基づいて、業務を処理すること。

※ なお、37号告示では、上記を充足していても、労働者派遣法の規定に違反することを免れるため故意に偽装されたものであつて、その事業の真の目的が労働者派遣を業として行うことにあるときは、労働者派遣事業を行う事業主であることを免れることができないとされています。

〇 偽装請負とならないようにするためにはどのような点に注意すべきか

37号告示が示す要件を踏まえると、業務委託を行う際には、労働者派遣といわれないために、少なくとも以下の点に注意しておくべきでしょう。

1 労務管理上の独立について

〇 作業場の人員配置、仕事の割当、スケジュール作成、シフト、タイムカードの管理、業務方法の指示・管理等は受託者がすべて行っているか。

〇 委託者の作成する身分証明書・作業服を受託者が使用していないか。

〇 受託者からの苦情などの申し出を個々の従業員が受けていないか。

2 事業経営上の独立について

〇 業務に必要な資金全てを受託者自らの責任において調達しているか。

〇 業務に必要な道具や資材を受託者が調達しているか。

〇 業務委託契約書に、行う業務の内容が明記されているか。

〇 業務委託契約書に受託者が負う損害賠償についての規定があるか。

〇 労働安全衛生の確保、責任は受託者が負っているか。

コンプライアンスの観点からも許されない偽装請負

偽装請負が発覚するケースとして、現場で事故が発生した場合があります。なぜならば、事故のため現場で働いていた労働者がけがをした際に、誰が責任を負うのかが問題となりますが、偽装請負の場合、その責任の所在があいまいであるためです。

労働者に対して責任を持つことは、コンプライアンスの観点からしても企業に当然求められるものです。偽装請負は、コンプライアンスの観点からも非常に問題があるといわざるをえません。企業が人件費の削減のためにといって、偽装請負をすることは、絶対にすべきではありません。また、意図せずに偽装請負であるとの指摘をされないように、業務委託契約を締結する場合は、十分に注意をするべきでしょう。

武田 宗久

武田 宗久

PROFILE

ライター,コンサルタント
1978年生まれ,大阪府出身。京都大学大学院法学研究科修了
2011年弁護士登録(大阪弁護士会所属)
2020年中小企業診断士登録

債権回収や離婚等の一般民事事件を担当する一方,大阪の中小企業や自治体を元気にするため,法務・労務を中心とした支援に取り組む。著書に『改正民法対応!自治体職員のためのすぐに使える契約書式解説集』(令和2年,第一法規,共著)など。

お問い合わせ先
株式会社プロデューサー・ハウス
Web:http://producer-house.co.jp/
Mail:info@producer-house.co.jp

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