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  • 2020.12.15

貿易実務 いまから学ぶインコタームズ®2020

貿易実務 いまから学ぶインコタームズ®2020

はじめに

中小企業においては、日本国内を主たる活動の場とし、国内の顧客との取引が中心となっているケースが多いかもしれません。ただ、製品によっては国内市場が飽和し、海外市場に活路を見出さざるを得ない場合もあるでしょう。海外へ顧客層が広がることで、ビジネスの広がりも期待されることから、会社を成長させるための原動力ともなり得ることでしょう。中小企業が海外市場へも目を向ける価値はますます高まっています。

海外進出を始める企業にとって、ネックになり得る事柄の一つは、国際商慣行かもしれません。
海外の顧客と取引関係を結ぶケースにおいては、トラブルを防ぐためにも国際的な取引ルールを知っておく必要があります。取引にあたっては、海外顧客と自社との間に日本の商社を仲介して販売することも多く、貿易実務は商社に任せるケースも多いようですが、輸出側である企業でも、その基本的なルールを知っておくことは適正にコストを把握することにも繋がり、望ましいと言えるでしょう。

本稿では国際的な取引の標準ルールであるインコタームズ®2020について、基本的なところを解説し、これから貿易をしようと考えている中小企業の皆様の一助にしていただければと思います。

インコタームズ®2020とは?

インコタームズ(Incoterms)は、国際商業会議所(International Chamber of Commerce =ICC)が制定した貿易取引条件とその解釈に関する国際規則(International Commercial Terms)です。初版は1936年に制定されました。それまでは、貿易取引条件の解釈が国によって異なっており、トラブルが生じる原因となっていたことから、さまざまな行き違いをなくすことを目的として制定されました。現在は2020年1月1日発効の「インコタームズ®2020」が最新版となっています。

ICCの登録商標であるため、本稿では、「インコタームズ®2020」と表記します。
また、貿易取引なので、本稿では簡易的に売主を輸出側、買主を輸入側と表現します。

インコタームズ®2020が取り決めていること

インコタームズ®2020は、輸出側と輸入側の間で、費用負担の範囲とリスク分担を取り決めています。費用負担の範囲は輸出側と輸入側のそれぞれがどういう費用を負担するかを取り決めることですのでイメージしやすいのですが、リスク分担というのはわかりにくいかもしれません。これは、輸送途上で万が一製品が何らかの理由で輸出側、輸入側のいずれの責任にもよらず滅失したり損傷した場合、輸出側と輸入側のどちらがそのリスクを負うかを取り決めたものです。

例えば、売買契約が成立した場合、輸出側は製品を供給する責任、輸入側は代金を支払う責任があります。もし輸出側のリスク負担が輸出港湾にいる船に積み込む時点までであれば、船が出港した後のリスク負担は輸入側となります。
つまり、輸送途上で製品が何らかの理由で滅失したり損傷した場合でも輸入側は代金を支払う必要があり、このことで輸入側が受けた損失は、輸入側自身で保険求償するなどの作業が必要になります。

費用負担について

企業が、ある製品を海外に売る場合を考えます。製品を輸入側に届ける必要があります。この行為が輸出ですが、輸出するにあたっては、一般的には以下のようなコストがかかります。(船で輸送するケースを簡易的に図示しています)

貿易実務 いまから学ぶインコタームズ®2020

① 輸出側の工場から最寄りの輸送業者までの輸送費用
② 国際空港/国際港までの輸送費用及び港湾関連、輸出関連費用
③ 国際空港/国際港から現地国際空港/国際港まで輸送費用、港湾関連、輸入関連費用
④ 現地国の国際空港/国際港から輸入側までの輸送費用

さらには輸送保険などもかかる場合があります。これらの費用を輸出側と輸入側のどちらが負担するのかを明確化しておこうという考えが根底にあります。

リスクの移転


輸出側から輸入側に製品が搬送される間に事故などにより商品が滅失したり損傷することも考えられます。そのときに誰の責任で原状回復するかを取り決めておく必要があります。インコタームズ®2020では、各々の規則においてリスクがいつ輸出側から輸入側に移転するか取り決めています。

インコタームズ®2020における規則の種類

インコタームズ®2020においては、あらゆる輸送形態に使える規則と船舶輸送のための規則と大別して2つの規則が設定されています。

輸出側が輸入側に提示する単価のことを建値(たてね)と言いますが、実際に建値として使われる、インコタームズ®2020で定めている規則を以下に解説します。費用負担の範囲が切り替わるタイミングとリスク移転のタイミングは異なる場合があることにご注意ください。(FCA/CPT/CIPのケース)

なお、これらは、「FOB横浜」や「CIF香港」など地名を併用して使われます。

1. あらゆる輸送形態に適した規則 (Rules for Any Mode or Modes of Transport)

航空輸送、船舶輸送、鉄道輸送などあらゆる輸送手段で使える条件です。

EXW

Ex Works/工場渡し

輸出側の費用負担の範囲

輸出側の工場出荷時点までとなります。

リスク移転

輸出側の工場を出たときに輸入側に移転します。

FCA

Free Carrier 運送人渡し

輸出側の費用負担の範囲

輸出側は国内の運送人に届けるまでの費用を負担します。

リスク移転

輸出側の国内の運送人に届けた時点で輸入側に移転します。

CPT

Carriage Paid To 輸送費込み

輸出側の費用負担の範囲

上図の①②③の輸送費用を輸出側が負担します。

リスク移転

FCAと同じです。

CIP

Carriage and Insurance Paid To 輸送費保険料込み

輸出側の費用負担の範囲

費用負担の範囲、リスク移転いずれもCPTと同じです。

その上で、輸入側の最寄り運送業者に手渡すまでの輸送保険を輸出側の費用で付保します。

(但し輸送事故の場合の保険求償は輸入側が行います)

リスク移転

DAP

Delivered at Place 仕向地持込渡し

輸出側の費用負担の範囲

CPTと同じです。

リスク移転

輸入側の任意の場所に到着した時点で輸入側にリスクが移転します。

DPU

Delivered at Place Unloaded荷卸込持込渡し

輸出側の費用負担の範囲

CPTに加えて、現地での荷下ろし迄の費用を輸出側が負担します。

リスク移転

輸入国の任意の場所で荷下ろしした時点で輸入側にリスクが移転します。

DDP

Delivered Duty Paid 関税込持込渡し

輸出側の費用負担の範囲

輸入側まで輸送する費用を輸出側が負担します。

リスク移転

輸入側に到着した時点で輸入側にリスクが移転します。

  1. 海上および内陸水路輸送のための規則(Rules for Sea and Inland Waterway Transport

船舶輸送で使える条件です。

FAS

Free alongside Ship 船側渡し

輸出側の費用負担の範囲

輸出側が輸出港の本船のそばまでの輸送費を負担します。

リスク移転

輸出側が輸出港の本船そばまで輸送した時点で輸入側にリスクが移転します。

FOB

Free on Board 本船渡し

輸出側の費用負担の範囲

輸出側が輸出港の本船積み込みまでの費用を負担します。

リスク移転

本船に積み込んだ時点で輸出側から輸入側にリスクが移転します。

CFR

Cost and Freight 運賃込み

輸出側の費用負担の範囲

本船で輸入側のいる国の輸入港までの運賃を輸出側が負担します。

リスク移転

FOBと同じです。

CIF

Cost Insurance and Freight 運賃保険料込み

輸出側の費用負担の範囲

CFRの費用に加えて、輸入側のいる国の国際港までの輸送保険を輸出側が負担します。

リスク移転

FOBと同じです。

おわりに

今回初めてこの規則をご覧になった方は、あまりにもたくさんあって戸惑ったかもしれません。しかしながら、インコタームズ®2020で押さえておくべきなのは、費用負担、つまり輸出取引にかかる費用をおおまかに把握し、どこまで輸出側が負担するのか、どこから輸入側が負担するのかを把握しておくこと、リスクが輸出者から輸入者にいつ移転するのかを理解することです。

上記の11種類の規則は、上から下に行くほど輸出側の費用負担の範囲、リスク負担の範囲は多くなることになります。輸入側にとっては費用、リスクとも逆となります。どの規則で取引を実施するのかいうのは輸出側、輸入側相互の交渉になると思われます。

慣れないと難しいと感じられるかもしれませんが、基本的な原理がわかれば難しくありませんし、売買を重ねていくとだいたい同じような建値を使うことに気付かれると思います。
筆者も会社で貿易実務を担当していた頃は、FOB、CIFを多用し、たまにDDPを使っていたくらいでした。

本稿が貿易実務にこれから携わる人の理解の一助になれば幸いです。

安田 雅哉

安田 雅哉

PROFILE

ライター、コンサルタント

1970年生まれ、鳥取市出身
京都大学大学院工学研究科機械工学専攻修了
2018年ファイナルシャルプランナー1級取得
2020年中小企業診断士登録

プラント建設会社、電機会社を経て現在は総合商社で東南アジアに駐在し経営管理を担当。得意分野はプロジェクトマネジメント、業務改革、ファシリテーション、貿易実務、売買契約。

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