ビジネス英語 これが言いたい! ビジネスで使いたいちょっとした英語表現

1.はじめに
初めての海外赴任や非日本人とのビジネス機会。
英語は学校で勉強したけど言いたいことが言えるかどうか不安。
そう思う人は多いでしょう。
日本で生まれ、日本で育ち、英語を使う機会がなければ、外国語である英語をスラスラ話せるというわけにはいきません。
スラスラとは話せなくても、ちょっとした表現を知っておくだけで伝えられるニュアンスが増えます。会話ができることで、相手が繰り出す英語表現を自分のものにすることもでき、さらに自分の英語のレパートリーが増えて意思疎通レベルが一気に上がるという好循環が生まれていきます。これは何度かの海外駐在を経てきた筆者が身をもって体感しているところです。
しかも使う英語の殆どは難しい単語ではなく、どこかで見た単語を組み合わせるだけで言えることも多いです。
本稿では、ビジネスの場面で使いそうな、ちょっとした英語表現を場面ごとに紹介します。会話で使う言い回しを中心に記載していますので、少し覚えれば、さっそく使えると思います。
特に、日本人が使う英語という観点で使える表現を集めたつもりです。逆に、英語を母語とする人々の使う慣用句的な表現は経験上、筆者も含めた一般的な日本人には使いにくいので極力避けました。
2.シチュエーション別・使える表現
■会議の席上で
・さあ、始めましょうか。
-Let’s get started.
(解説)be started とは会議などが始まった状態を表します。このbeがgetに置き換わったものですが、そういう理屈は抜きにしてそのまま覚えてしまったほうがいいでしょう。
・誰が議事録を取りますか?
-Who’ll take minutes (of the meeting)?
(解説)minutes of meetingは議事録という意味です。ある特定の会議について指していますので、the meetingと定冠詞の”the”が付きます。meetingを省いてWho’ll take the minutes?と表現することもできます。
・要するにどういうことでしょうか?
-What is the main point you are making?
(解説)説明がわかりにくいときに切り込む言い方です。説明者が長々と要領を得ない説明を続けているときには、Can you get to the point more quickly, please? と言うこともできます。
・次のスライドお願いします。
-Can you go to the next slide? あるいは Next, please.
(解説)プレゼンテーションを誰かに操作してもらうときの表現です。
・では会議を終わりにしましょうか
-Shall we close the meeting
(解説)これはそのままですね。直訳すると会議を閉じましょうか?という意味です。
■電話
・どちら様ですか?
-To whom am I speaking? /Who is speaking, please?
(解説)日本語的に名前をお伺いしていいですか?という気持ちでMay I know you name?と言いたくなりますが、これはパーティーなどで対面して名前を聞くときに使うもので、電話口で使うことはあまりないようです。
■部署内での会話
・本件を財務部に督促しておいてくれますか?
-Can you chase this (issue) with Finance (Department)?
-Can you follow this up with Finance (Department)?
・部下にも周知しておいてください。
-Please cascade this to your department/people/colleagues.
(解説)cascadeというのは滝が流れるようなイメージ、上から下に伝達する、といったニュアンスがあります。部下というのは直訳するとsubordinateという単語がありますが、あまりこういう場面では使われないようです。
・ちょっと頼まれてくれませんか?
-Would you mind doing XXX for me?
(解説)ちょっとお願い事をするときに使います。似たような表現にCan you do me a favor?というものがありますが、こちらは無理筋の頼みごとをするときの表現で、仕事上の頼みごとは上記のように言うのが一般的のようです。
■休暇取得
・午前半休を取らせてください。
-Would it be possible to take half day leave on (日付)?
-May I take a half day leave on (日付)?
(解説)上司に休暇のお伺いを立てるときの表現です。
・風邪をひいたみたいです。
-I seem to have caught a cold.
(解説)風邪を引いたという状態が続いていることから、現在完了形を使います。
・医師に診てもらってきます。
-I am going to a medical consultation.
(解説)医師の診察はmedical consultationといいます。
・朝から貧血なんです。
-I have been feeling dizzy since this morning.
(解説)朝からずっと貧血の状態が続いている、というニュアンスになりますので、現在完了形を使います。
・それはいけませんね。お大事に。
-That’s too bad. Take care.
・彼女は今日出社する予定でしたが休んでいます。
-She was supposed to come but she has taken leave today.
(解説)もともと~する予定だった、というニュアンスを表すのにbe supposed toを使います。朝からずっと休みを取っている状態が続いているので、これも現在完了形を使います。
・11月10日に休暇を申請します。
-I will apply the annual leave on 10-Nov’20.
(解説)申請する、はapply。休暇はannual leave(年次有給休暇という意味です)。傷病休暇はmedical leaveと言って区別します。
・新しい人を雇うときは3か月の試用期間を設定します。
-All new employees must undergo a three-month period of probation.
(解説)試用期間はperiod of probationと言います。undergoは試練のような少し重いことをくぐりぬける、といったニュアンスの言葉です。
■会食
・今晩の(会食の)座席はどうなっているのでしょうか?
-What is a seating arrangement (seating plan) for tonight?
(解説)日本だと入り口から遠いほうが上座、近いほうを下座、としますが、筆者の経験上そういう習慣は世界的には少数派ではないかと思います。それでも特に日本人が段取りする会食ではそれを意識して座席配置をするのが日本流のおもてなしではないかと思います。座席配置はseating arrangementと言います。
■契約交渉
・この金額での契約は難しいかもしれません。
-It may be difficult to continue the discussion in view of this pricing.
(解説)直訳するとこの価格を見ると議論を続けるのは難しいかもしれませんね、となります。
-If you lower the price to XXX(具体的な価格), we would be much more willing to do business.
(解説)価格を具体的な水準まで下げてくれたら前向きに考えることができる、というニュアンスを伝える表現です。If you don’t accept our request, we can no longer continue the discussion.という言い方も理論的にはできますが、いくばくかの敵愾心を感じられる表現になってしまいますので、具体的にいくらにしてくれたら話を進められますよ、という言い方にするのがいいでしょう。
・御社がこれ以上この計画を続けるなら法的措置に出ざるを得ません。
-If you continue this plan, we will be forced to take a legal action.
(解説)legal actionは法的措置です。We must take a legal action.とも言うことはできますが、やむを得ず法的措置を取らなくてはいけなくなる、というニュアンスを出すためにbe forced toとしたほうがよいでしょう。
・今回はご縁がなかったということにさせてください。
-Unfortunately, let’s close the file.
-We can no longer continue with the business in hand.
-We can no longer continue to take this proposal forward.
(解説)商談を断るときの表現ですが、いずれも条件が折り合わないためこのビジネスは続けられません、という意思を表現しています。
・前向きに検討させていただきます。(〜の方向で検討させていただきます。)
-We will give your proposal (serious) consideration.
(解説)seriousを入れるとかなり前向きに検討しているというニュアンス、入れないと可能性は五分五分、といったニュアンスです。もし断りたかったら、Your proposal has not met with our expectations.と否定的な言い方ではっきりと断るのがいいでしょう。
3.知っておくと便利な単語
そのほか、会社の各分野で使える単語を以下に列挙しています。
もし日本の本社からの海外赴任であれば、1ランク上のポジションでの赴任となることも多いと思われますので、管理に関する以下の用語は知っておくと便利でしょう。
・人事
人事部 |
HR (Human Resource Department) |
新人 |
freshman |
試用期間 |
probation period |
有給休暇 |
annual leave |
傷病休暇 |
medical leave |
産休 |
maternity leave |
入院 |
hospitalization |
手当 |
allowance |
(従業員の)定着率 |
turn over |
内部告発 |
whistleblower |
(雇用期間の)終了 |
termination |
懲戒措置 |
disciplinary action |
苦情 |
grievance |
人を配置する |
deploy |
人事評定 |
performance appraisal |
履歴書 |
Curriculum Vitae(通常はCVと呼びます) |
・財務
財務諸表に出てくる以下の単語も知っておいて損はないでしょう。
売上 |
Revenue |
売上原価 |
Cost of goods sold (CoGs) |
売上総利益(売上-売上原価) |
Gross profit |
販管費 |
SG&A = Selling general & administration |
営業利益 |
Operational profit |
経常利益 |
Ordinary profit |
純損益 |
Net profit after tax |
・その他
守秘 |
confidentiality |
接待 |
entertainment |
費用を精算する |
claim the expenses |
清掃員 |
janitor |
延期する⇔前倒しする |
postpone <-> prepone |
4.留意事項
筆者の経験上、実際にビジネスの場で英語を使うにあたり気をつける点を以下にいくつか挙げてみます。
・英語を母語としない人との会話は平易な言葉で
英語で話す対象は英米人や豪州人など英語を母語とする人ばかりとは限りません。英米で使うような慣用句は、英語を母語としない人には通じないこともあります。何となく雰囲気でわかる言葉もあるようですが、平易な単語でオーソドックスに伝えたほうがいい場合のほうが多いです。
・話す内容を明確にする
特に何かを説明する場合に顕著ですが、ビジネスにおいては、きれいな英語を話すよりも、話す内容に何を盛り込むか、ということが重要です。そもそも英語「を」使ってビジネスをする、ということであって、主はあくまでもビジネスです。伝わらなければ意味がありません。
まずは伝えたい内容を事前に頭の中で整理をした上で説明をするのが望ましいです。
・流暢さは必要ない
会話にはリズムがあるので流暢であることに越したことはありませんが、ことビジネスにおいては、必要なことを伝える、必要な情報を得る、という目的がありますので、流暢さという表の部分は気にしなくていいと思います。
・むしろ日常会話のほうが難しい
ビジネス上の英語でのやりとりはテーマが決まっていますので一定の業界用語や専門用語に平易な表現を知っていれば多くの部分が対処できます。
むしろランチタイムや懇親会など、話題が、政治、経済、趣味など自由に広がるときのほうが話者の互いの文化的な背景が異なることもあり、むしろ難易度が高いです。それを考えると、ビジネス英語を必要以上に恐れる必要はないと思います。
5.おわりに
いかがでしたでしょうか。
もちろんここにある表現はたくさんある英語表現のごく一部です。これらがすんなり出てくるようになっても完璧になるとは言えないのですが、本稿を機会に読者の皆さんの引き出しの中に一つでも多くの表現が加わり、ビジネスで活かしていただくことができればと思います。
筆者は幼少期から大人になるまで、海外に一度も暮らしたことはありません。会社勤めをするようになってから仕事の関係で海外に2年ほど滞在、そして直近は20年近く日本で勤務したのち(その間に英米を含む海外への出張や日常での海外拠点では英語を使う機会は多々ありました)に、再び2年半前くらいからまた海外に赴任中です。また、同世代の人と同じように英語を学び始めたのは中学校に上がってからです。
そういう私でも海外で働き、海外の人々と日々の細かい交渉事も含めて英語で仕事をするようになっています。努力次第で誰でも英語は使えるようになるのだと思います。
本稿が少しでも英語でビジネスを行う皆さんのお役に立てれば幸いです。

安田 雅哉
PROFILE
ライター、コンサルタント
1970年生まれ、鳥取市出身
京都大学大学院工学研究科機械工学専攻修了
2018年ファイナルシャルプランナー1級取得
2020年中小企業診断士登録
プラント建設会社、電機会社を経て現在は総合商社で東南アジアに駐在し経営管理を担当。得意分野はプロジェクトマネジメント、業務改革、ファシリテーション、貿易実務、売買契約。
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