MENU
  1. TOP
  2. Alibaba JAPAN PRESS
  3. アフターコロナのSDGs―中小企業が生き残るために―
  • 2020.11.18

アフターコロナのSDGs
―中小企業が生き残るために―

アフターコロナのSDGs―中小企業が生き残るために―

企業経営においてSDGsの視点は欠かせません。さらに、コロナ禍で人々の価値観が変わりつつあり、企業にはSDGsなど社会課題解決への取り組みがより一層求められるようになってきたといえるでしょう。

これまで普通だった生活が維持できないという不安を感じた人々は、持続可能な社会の再構築が必要だと理解したのではないでしょうか。今年は、2015年に定めた国際目標であるSDGsの活動が本格化するはずだったタイミングでもあり、企業の社会的責任という視点からSDGsに意識が向くのは自然な流れでもありました。こうした状況下で、企業として取り組むべき課題には取り組み、その活動状況はしっかりと広報して世の中の理解を得るということが、ますます必要になってきています。

ただし、グローバルな活動を行う大企業ならまだしも、経営資源の限られる中小企業にまで過度な期待を寄せられても困るという実情もあるでしょう。本稿では、コロナ禍後に中小企業が生き残っていくための経営戦略として、SDGsにどう向き合うかについて考察します。社会課題解決の活動として「CSR」「メセナ活動」なども参考にしながら整理してみたいと思います。

コロナ禍とSDGs

コロナ禍が引き起こした最大の試練は人と人との分断です。感染爆発を防ぐために人々の移動が禁止され、ソーシャルディスタンスが求められました。文化・芸術・スポーツの活動が止まり、経済活動が停滞し、企業の業績は悪化、個人収入と生活そのものがダメージを受けました。それは、外国人労働者や社会的弱者へのしわ寄せとなり、格差の拡大にもつながります。

一方、SDGsが目指すのは、環境面からの持続可能性だけでなく、経済的、社会的にも未来に向けて人類社会が発展していくことです。自分だけでなくすべての人々の幸福を目指すことによって、全体の幸福がもたらされるという考え方です。
国際的な協力関係が必要なSDGsが、世界的なパンデミックによって進展を妨げられる危機に直面した格好です。しかしながら、国際社会はなんとしてもSDGs達成を目指し、災害やパンデミックにも強いレジリエントな(回復力の高い)社会にしなければなりません。

SDGsをおさらい

Sustainable Development GoalsSDGs)は「持続可能な開発目標」と訳され、2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標です。20159月にニューヨークの国連本部で開催された「国連持続可能な開発サミット」で、すべての加盟国の合意のもと「持続可能な開発のための2030アジェンダ」が採択され、17の目標と169のターゲットが掲げられました。「だれ一人取り残さない」を基本理念としており、5つのPをキーワードとしています(People=人間, Planet=地球, Prosperity=豊かさ, Peace=平和, Partnership=パートナーシップ)。

例えば、コロナ禍により健康を害することは「3.すべての人に健康と福祉を」を後退させ、経済的ダメージは「1.貧困をなくそう」にも悪影響を与えたといえます。

昨今特に問題視される「使い捨てプラスチック」については、廃棄物削減の観点から「12.つくる責任つかう責任」に該当しますが、同時にマイクロプラスチックによる海洋汚染問題であり「14.海の豊かさを守ろう」につながります。さらに、海洋生物が餌と間違えて食べてしまうことにより「3.すべての人に健康と福祉を」にも関わってきます。

アフターコロナのSDGs―中小企業が生き残るために―

参考:外務省のSDGs情報サイト
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sdgs/index.html

中小企業の立場で気を付けなければならないのは、自社が社会に良いことをしようということに加えて、サプライヤーとしての適格性を取引先企業から厳しくみられる可能性が高まるということです。世界中で公的機関や大手企業がSDGsに沿った目標に舵を切る中で、その取引先は、環境汚染を引き起こしていては不適格となるし、(外国人を含む)労働者の人権を損ねていては失格とされるでしょう。まさに、世界中が目指すべきところを向いていると認識しなければなりません。

CSR・CSV・メセナ活動とSDGs

さて、「企業の社会的責任」といえばCSRCorporate Social Responsibility)です。経済産業省のホームページでは次のように表記しています。

――「企業の社会的責任」とは、企業が社会や環境と共存し、持続可能な成長を図るため、その活動の影響について責任をとる企業行動であり、企業を取り巻く様々なステークホルダーからの信頼を得るための企業のあり方を指します――

つまり、法令遵守、環境保全、地域貢献、従業員や取引先への適正な対応、投資家や消費者への責務など幅広く企業市民としての責任を含んでいます。
SDGsは世界中の国や組織や一人ひとりの目標として掲げたものですが、その理念や目標を見ると企業の社会的責任とされる内容の多くを含んでいます。今や、SDGsへの取り組みをもってCSR活動とみなすこともできます。

そのほかにCSVCreating Shared Value)という考え方があります。これはハーバード大学のマイケル・ポーター教授が提唱した概念で、「共有価値の創造」等と訳されます。企業が経済活動を行う「企業価値」とその事業を通じて社会課題を解決できる「社会価値」とを両立させるという考え方です。持続可能性(サステナビリティ)への貢献という点ではCSRと変わりありませんが、本業を通じた実現させるという部分に注目したものです。そのため、本業を通じてSDGsを目指す活動と見ることもできます。

もう一つ、企業の社会貢献面を表す言葉に「メセナ」があります。芸術・文化を支援することを意味しており、企業によるメセナ活動が音楽、美術、演劇などを支えている面があります。従来は本業ではない社会貢献の面が強かったのですが、CSVとして本業との関わりの強いものや、様々な社会課題の解決へと概念が広がっています。
メセナ活動はCSRの一部分といえますし、SDGsにも含まれます。

調査と表彰に見る企業の活動状況

日本の企業メセナ活動を推進するための団体が、公益社団法人企業メセナ協議会で、大手企業や文化施設のほか、地域に根差した文化支援を行う中小企業も会員になっています。その企業メセナ協議会で、毎年行っているメセナ活動実態調査に加えて、コロナ禍のメセナ活動への影響に関する調査を行いました。8月にシンポジウム「SDGsとメセナ」とあわせて報告会が行われたので、筆者も参加しました。

調査結果では、取り組み目的として「社業との関連、企業としての価値創造のため」という回答の増加が目立ち、自社資源の活用や経営との結びつきを意識する傾向が高まっていることが分かります。また、取り組み目的を「芸術・文化による社会課題解決のため」と答えた中では、その重視した点として「SDGs」を挙げる企業が急増しました。

アフターコロナのSDGs―中小企業が生き残るために―

出典:2019年度メセナ活動実態調査報告書(企業メセナ協議会発行)より抜粋
*詳しくはhttps://www.mecenat.or.jp/ja/news/pressrelease/7411

コロナの影響調査では、ほぼすべての企業が「コロナ禍で影響を受けた芸術文化活動への支援」を必要と回答していました。また、コロナ禍が過ぎた後、芸術文化の社会的な役割や存在価値が高まると答えた企業が多数でした。

アフターコロナのSDGs―中小企業が生き残るために―

出典:公益社団法人企業メセナ協議会・株式会社ニッセイ基礎研究所
「新型コロナウイルス感染症による企業メセナ活動への影響に関するアンケート調査結果」
2020年6月より加工

メセナ活動を中心とした調査ではありますが、企業価値とSDGsの関連性への意識が高まっていること、コロナ禍の収束後には文化活動などの復興支援が必要と考えている企業が多いことが表れています。

シンポジウムでは3社から活動紹介があり、その中で、大分県の鬼塚電気工事株式会社がユニークな取り組みを紹介しました。なお同社は、11月に発表された「メセナアワード2020」で優秀賞を受賞しています。

大分市に本社を置く鬼塚電気工事は、2011年当時、地域の再生が必要であると危機感を持ち、地元経済同友会や県を巻き込んだ提言をしました。大分県はクリエイティブな手法で新たな産業創出を目指す事業を開始し、同社は「プロジェクトONICO」を開始。クリエーター、大分県立芸術文化短期大学との産学官連携プロジェクトにより、地域課題解決への取り組みをスタートしました。

災害時も利用できる無料充電ステーションを、アート作品として制作し、中心市街地に設置しました(写真は「ONICO」と「鬼桜」)。防災に役立つ情報発信や、子ども図書館の機能も備えているとのこと。7月の豪雨では日田市で孤立した避難所に電気設備の整備を行うなど、活動が広がっています。本業で培ったノウハウを生かし、アートを起点にして災害支援へと活動が発展しました。

アフターコロナのSDGs―中小企業が生き残るために―

写真©masayo momijiya
参考:企業メセナ協議会ホームページ
https://www.mecenat.or.jp/ja/mecenat_awards/mecenat_awards

実践と積極的広報で価値ある企業に

こうして現在の社会状況を見渡してみると、中小企業は社会貢献活動を行う余裕がないという議論は少し焦点がずれているかもしれません。今多くの中小企業に求められているのは、本業を生かした活動、あるいは本業の中で社会課題を解決する行動を意識することではないでしょうか。
持続可能な社会でなければ皆が生き残れない。それを皆が意識します。目標に向かって動き出した大企業や行政機関と取引する企業にも同様の意識が求められます。ただし、まずは本業の企業活動の中でできることから考えてみましょう。

そしてもう一つ大事なことは、今取り組んでいることを知ってもらう努力をすることです。すでに企業活動として工夫して取り組んでいるものが、SDGsの中のいくつかの目標に合致するということは多いと思われます。それを再発見して、できればさらに発展させて、関係者に対して知らしめることができれば、企業価値を高めることに直結します。

中小企業がSDGsを経営に生かす戦略を検討するためのツールとして、中小企業診断士のグループで開発したフレームワークがあります。取り組みやすい工夫がなされていますので、ぜひ参考にしてみてください。

アフターコロナのSDGs―中小企業が生き残るために―

「SDGs経営推進フレームワーク」
出典:「中小企業のSDGs経営推進マニュアルに関する調査研究」報告書
*中小企業診断協会のホームページ下記URLで調査研究が紹介されています
https://www.j-smeca.jp/attach/kenkyu/honbu/r1/sdgs-keieisuisin.pdf

経営戦略としてのSDGs活用

戦略としてSDGsを考えるとき、上記にご紹介したフレームワークでも分かるように、①強みに注目すること、②自社のメリットと地域社会のメリットを考えること、③協力・活用できる外部資源を検討すること、といったことがポイントになります。
最初からすべてのストーリーが完成するわけではなく、ブレストから始めるつもりで進めていくことで気付きを得ていくことができるでしょう。

最後に、SDGsCSRCSV・メセナといったものは経営理念と密接に関連しています。企業が生き残るためのSDGsを考えるとき、自社のミッション、ビジョン、バリューに立ち返って議論することをお勧めします。経営理念がさらに強靭なものになるチャンスかもしれません。

宮田 昌尚

宮田 昌尚

株式会社プロデューサー・ハウス

PROFILE

ライター、コンサルタント

熊本県宇城市出身。早稲田大学政治経済学部卒業後、新聞社に入社。広告部門で営業や企画立案等を長年担当し、CSR部門でメセナ活動を含む各種事業の推進に携わった。現在はグループ会社に勤務。

2020年中小企業診断士登録。
東京都中小企業診断士協会 城東支部所属。


お問い合わせ先
株式会社プロデューサー・ハウス
Web:http://producer-house.co.jp/
Mail:info@producer-house.co.jp

SHARE

おすすめ記事

アフターコロナのSDGs―中小企業が生き残るために―

2020.11.18

アフターコロナのSDGs―中小企業が生き残るために―

2020年度版ものづくり白書から~不確実な時代に立ち向かうための4つの戦略とは

2020.08.25

2020年度版ものづくり白書から~不確実な時代に立ち向かうための4つの戦略とは

強みを生かすと会社が伸びる!知的資産経営とは?

2020.07.03

強みを生かすと会社が伸びる!知的資産経営とは?

資料のご請求や
お問い合わせはこちら