MENU
  1. TOP
  2. Alibaba JAPAN PRESS
  3. 悪質クレーマーと戦う!
  • 2020.09.17

悪質クレーマーと戦う!

悪質クレーマーと戦う!

企業が活動するにあたって、常に顧客に満足してもらえる製品・サービスを提供できるとは限らないことから、顧客からのクレームが発生することがあります。このクレームの対応を誤ると、無用のトラブルやそれに伴う従業員の疲弊、ひいては企業の信用失墜を招きかねません。

そこで、今回はクレーマーに対し、どのような対応をすべきかについて、解説していきたいと思います。

正当クレームと悪質クレーム

まず、クレームは正当クレームと悪質クレームの2種類あることに注意する必要があります。
正当クレームとは、要求内容及び要求方法のいずれもが正当なものをいいます。正当クレームは、企業にとって宝であると認識するべきです。なぜならば、顧客は提供された製品やサービスに満足しないとき、多くの場合、企業にその内容を伝えることなく、競合他社の製品やサービスに乗り換えてしまうため、企業が何に満足していないかを把握することは必ずしも容易ではないからです(私は、このような状態を「サイレントクレーム」と呼んでいます。)。

この点で、正当クレームに対応することは、企業の製品やサービスを改善するための貴重かつ重要な機会といえます。そして、正当クレームに誠実に対応したことで、かえってその顧客が当該企業のファンになることもありえるため、正当クレームへの適切な対応は良質な顧客獲得の機会でもあるといえます。

他方で、要求内容又は要求方法のいずれかが不当である悪質クレームについては、毅然とした対応をする必要があります。

               要求の方法

    要求内容

       正当

       不当

     正当

     正当クレーム

     悪質クレーム

     不当

     悪質クレーム

     悪質クレーム

(正当クレームと悪質クレーム)

正当クレームと悪質クレームの見分け方

それでは、正当クレームと悪質クレームとはどのようにして判別すればよいのでしょうか。正当クレームと悪質クレームの判別は容易ではない場合があります。まずは、当該顧客の主張をよく聞くことが重要です。そして、当該顧客に対応した従業員から聞き取り等を行ったうえで、正当クレームか悪質クレームかの判断をすることとなります。正当クレームか悪質クレームかの判断にあたっては、次の要素を踏まえて検討するとよいでしょう。

1 クレームの内容

そのクレームの内容に事実関係の誤りがある場合は、悪質クレームである可能性が高くなります。また、そのクレームがおよそ法的に認められないような内容の要求である場合も悪質クレームである可能性は極めて高くなります。

2 クレームを主張する方法

ウェブサイトの問い合わせフォームを用いて何回も同じ内容のクレームを主張したり、長時間の架電で同じ内容を繰り返したりなどする場合は悪質クレームである可能性が高くなります。

3 クレームを主張する顧客

クレームを主張する顧客がいわゆる「常連」であれば、悪質クレームである可能性は高くなります。

悪質クレーマーに対応するための準備

顧客の主張を聞き、従業員の話も聞いたうえで、悪質クレームだと判断した場合、悪質クレーマー対応の準備をする必要があります。悪質クレーマーと対応する際には、おおむね以下の点を準備しておけばよいと思います。

1 担当者の決定

どの部署で担当するか、誰が担当するかを決めます。担当者は1人ではなく、複数で対応するとよいでしょう。複数で担当することで、悪質クレーマーの攻撃対象を分散させることができますし、対応する従業員が受けるストレスも軽減することができます。

2 事実関係や交渉の経緯の時系列による整理

クレームの原因となったできごとやこれまでの交渉の経過について、時系列で整理をし、担当者間で共有しておきましょう。

3 対応方針の決定

整理された事実関係等を踏まえ、担当者間でどの場所で対応するか、誰が録音するか、どのような内容であれば応じるかなど、大まかな対応方針をあらかじめ決定しておきます。

4 会話の録音の用意

ICレコーダー等で会話を録音できるようにします。なお、録音をする際は、悪質クレーマーの了解を得る必要はありません。
では、悪質クレーマーから「録音をしているのか。」と質問があった場合はどうすればよいでしょうか。この点については、「録音をしていない。」と回答すると、後々録音をしていたことが悪質クレーマーの知るところとなったときに「嘘をついていた。」と無用のトラブルを招く可能性があります。「後日のトラブルにならないように録音しています。」と回答しておく方が無難かもしれません。

なお、「録音するなら話はしない。」と悪質クレーマーがいってきた場合は、「録音にご了解いただけないならばお話することはできません。」といって、会話を打ち切ることも一つの方法であると考えます。なぜならば、悪質クレーマーとの会話は証拠化しておく必要性が高いからです。

クレーマーと会話をするときの注意点

準備が整い、いよいよ悪質クレーマーと話しをするときには、どのような点に注意すべきでしょうか。

まず、悪質クレーマーに何をいわれても冷静に対応することです。悪質クレーマーは感情的にまくし立ててきます。これに対しこちらも感情的になってしまうと悪質クレーマーのペースでどんどん話が進んでしまいます。悪質クレーマーに冷静に対応するためには、事前にこのように対応するのだという確固たる方針を立てていることが重要になります。あいまいな回答に対して悪質クレーマーは感情的に突っ込んでくるからです。仮に明確な回答ができない場合であっても、「その点については現時点ではお答えできません。」などとはっきりと回答しておく必要があります。

また、顧客に対しては丁寧に説明するのは当然だと思っている方も多いと思います。基本的にはそのとおりなのですが、悪質クレーマーに対しては、丁寧に説明するとかえって揚げ足をとられてしまうことも少なくありません。そこで、例えば、「なぜ、謝罪文を書かないのか!」というクレーマーに対し、端的に「その必要がないからです。」と回答することが必要になってくるときがあります。
このほかに、悪質クレーマーからの質問に対し、「個人情報ですので、回答できません。」などと回答を拒むための盾として個人情報であることや守秘義務を利用することも有用です。

その一方で、例えば、悪質クレーマーが「誠意を出せ。」といってきた場合に、「誠意とは何ですか。具体的にいってもらわないと分かりません。」と応答するなど、悪質クレーマーにはその主張を具体的にするよう求めていくことが有効です。

悪質クレーマーが「社長を出せ」といってきたときの対応

悪質クレーマーが「お前では話にならない。社長を出せ。」といってきたとき、どのような対応をすればよいでしょうか。この点について、素直に社長を出すのはとてもリスクを伴うものであることを理解しておく必要があります。

仮に社長が悪質クレーマーに対応した場合、「社長の発言=会社の見解」と受け止められてしまい、「あのとき社長はこういっていた。」などと揚げ足をとられかねません。また、そもそも社長としても、なんの事前レクチャーもなく、いきなり悪質クレーマーの対応をさせられても、的確な判断をすることは困難でしょう。
したがって、「私が担当者です。」、「私の方から社長に報告します。」などとはっきりと社長は対応しない旨を伝えるべきです。

悪質クレーマーと戦う!

悪質クレーマーが企業の建物内に居座ったときの対応

悪質クレーマーは自分の要求が受け入れられないことが分かると、要求が受け入れられるまで企業の建物から退出せずに居座るケースもあります。
権限を有する者から、退去する旨の要求を受けたにもかかわらず、なおもその建物内に滞留していた場合、不退去罪(刑法第130条)が成立することとなります。

したがって、企業の建物の管理者や管理者から委任を受けた従業員が悪質クレーマーに対し退去されたい旨の要求を行い、一定の時間が経過したにもかかわらず、退去しなかった場合は、警察に通報することを検討すべきです。
その際は、退去を要求したことを明確にするため、できれば退去命令書を作成して悪質クレーマーに交付したり、悪質クレーマーの居座りが想定されるときは、あらかじめ警察に相談しておくとよいでしょう。

悪質クレーマーが「謝罪文を書け」といってきたときの対応

悪質クレーマーが謝罪文を書くことを従業員に求めることがあります。いったん謝罪文を書いてしまうと、悪質クレーマーはその内容を拡大解釈してさらなる要求をするおそれがあります。また、SNSやブログが発達した今日では、謝罪文をインターネットにアップするといったことも想定されます。

したがって、基本的には謝罪文は書くべきではないと考えます。仮に、どうしても書かなければならない状況が発生した場合であっても、例えば「連絡がなかった点については申し訳ありません。」といったように、何に対して謝罪をするのかを明確にしておく必要があるなど、一字一句に細心の注意が必要です。

悪質クレーマーが執拗に電話やFAX・メールで面会を
求めてきたときの対応

要求に応じることができないことを明確に伝えているにもかかわらず、悪質クレーマーがこれに納得していない場合など、悪質クレーマーが執拗に電話やメールをして面会を求めてくることがあります。
既に企業としての見解を伝えている以上、基本的にはこれらの電話やFAX・メールに対して無視しても差し支えはないと考えます(なお、メールの場合、ウイルスを送付していることも考えられるので、開封は慎重にするべきです。)。

しかし、悪質クレーマーが業務への支障が出るほど執拗に電話、メールで面会を求めてくることもありえます。
そのような場合、まずは、弁護士に依頼し、今後一切の連絡をしないようにとの通知を内容証明郵便で送付することが考えられます。内容証明郵便を送付しても、なお電話やFAXが止まらない場合は、裁判所に架電禁止又はファクシミリ送信禁止の仮処分の申立てを行うこととなります。

ただし、裁判例では、「法人に対して行われた当該法人の業務を妨害する行為が、…業務に及ぼす支障の程度が著しく、事後的な損害賠償を認めるのみでは当該法人に回復の困難な重大な損害が発生すると認められるような場合に…上記妨害行為の差止めを請求することができる」(大阪地判平成28年6月15日判時2324号84頁)とされており、単に「電話が煩わしい」といった程度では架電禁止やファクシミリ送信禁止は認められないと考えられます。

そこで、例えば損害賠償の支払いを求める悪質クレーマーであれば、企業の方から悪質クレーマーに対し、損害賠償を支払う義務がないことの確認を求める債務不存在確認請求訴訟を提起することも考えられます。このような訴訟を提起することで、悪質クレーマーに対し、「いいたいことがあれば裁判所でいってくれ。」というメッセージを通告することができるのです。

日常の備えが功を奏する

悪質クレーマーのさまざまな対応方法を紹介してきました。悪質クレーマーは突然あらわれます。現段階で悪質クレーマーがいない企業であっても、あらかじめ対応を検討しておくことで、いざというときに的確な対応をすることができます。悪質クレーマーの対応の検討に本稿が参考になれば幸いです。

武田 宗久

武田 宗久

株式会社プロデューサー・ハウス

PROFILE

ライター,コンサルタント
1978年生まれ,大阪府出身。京都大学大学院法学研究科修了
2011年弁護士登録(大阪弁護士会所属)
2020年中小企業診断士登録予定

債権回収や離婚等の一般民事事件を担当する一方,大阪の中小企業や自治体を元気にするため,法務・労務を中心とした支援に取り組む。著書に『改正民法対応!自治体職員のためのすぐに使える契約書式解説集』(令和2年,第一法規,共著)など。

お問い合わせ先
株式会社プロデューサー・ハウス
Web:http://producer-house.co.jp/
Mail:info@producer-house.co.jp

SHARE

おすすめ記事

悪質クレーマーと戦う!

2020.09.17

悪質クレーマーと戦う!

エネルギーに満ちた国、インドで見つけた日本

2020.07.22

エネルギーに満ちた国、インドで見つけた日本

日本と縁の深い台湾 - そのマーケット事情

2020.04.16

日本と縁の深い台湾 - そのマーケット事情

資料のご請求や
お問い合わせはこちら