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  • 2020.08.25

2020年度版ものづくり白書から
~不確実な時代に立ち向かうための4つの戦略とは

2020年度版ものづくり白書から~不確実な時代に立ち向かうための4つの戦略とは

ものづくり白書とは

「ものづくり白書」は、別名を製造基盤白書ともいい、「ものづくり基盤技術振興基本法第8条に基づく年次報告」の通称です。毎年、政府がものづくり基盤技術の振興に関して講じた施策がまとめられています。

過去2年間に発行されたものづくり白書では、デジタル技術革新が製造業に影響を及ぼす中、ものづくり人材に求められるスキルの変化や、製造業のサービス化(サービタイゼーション)を含む、新しい付加価値提供のトレンドといった状況が取り上げられ、このような状況下において日本の製造業が持つべき危機感やこれらの状況に対応するための戦略などが提案されてきました。

2020年、ものづくり企業が直面する「不確実性」

2019年から2020年にかけて、製造業の経営環境は大きく変化しています。

米中貿易摩擦に代表される保護主義的な動きの台頭、地政学的なリスクの高まり、さらには急激な気候変動や地震・水害・山火事といった自然災害にくわえ、新型コロナウイルス感染症の感染拡大など、製造業を取り巻く環境は、これまでにない速さと規模で変化をし続けています。このような環境変化の「不確実性」は、日本の製造業にとって大きな課題となっています。 これらの変化に伴い、いま日本の製造業は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的な感染拡大を始めとする、事業環境の大きな変化に直面しているといえるでしょう。

大きな変化を乗り越えるため、非連続的な変革の必要性は高まり、またものづくりの「デジタル化」が与えるインパクトに対する経営者の認識は年々高まっています。
では、このような不確実性の高い時代において、製造業はどのような戦略を取るべきなのでしょうか。ものづくり白書では4つの戦略が提示されています。

①企業変革力(ダイナミック・ケイパビリティ)強化
②企業変革力を強化するデジタルトランスフォーメーション推進
③設計力強化
④人材強化

4つの戦略について、ひとつずつ見ていきましょう。

①企業変革力(ダイナミック・ケイパビリティ)強化

大きく変化する環境に対応するためには、企業が自らを変革する能力が非常に重要です。この能力を「企業変革力(ダイナミック・ケイパビリティ)」といいます。2020年度版ものづくり白書は、不確実性の高い時代において、「日本企業は戦略的に『企業変革力』を強化していく必要がある」と強く訴えています。

特に製造業においては、新型コロナウイルス感染症の流行によって、国際的なサプライチェーンの脆弱性が明らかになりました。国際物流の流れが止まった際に、重要な部品を他国から輸入できなくなる事態が発生したためです。グローバルサプライチェーン上の課題をもつ企業は、今のサプライチェーンが持つリスクを測定し、将来的なサプライチェーンの寸断に備えた柔軟な製造出荷体制の構築を行うといった対応が必要となってくるでしょう。

自社を取り巻く脅威や危機を認識し、機会を逃すことなく捕捉して、事業環境の変化に対応するため自社が持つ既存の資産・知識・技術を再構成することが、これからの時代の競争力を獲得する上で重要なのです。

②企業変革力を強化する
デジタルトランスフォーメーション推進

デジタルトランスフォーメーションとは、2004年にスウェーデンのエリック・ストルターマン教授が提唱した概念で「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」ことを指します。(総務省, 2018)

デジタル技術は、企業変革力を高める上で重要な武器になります。例えば、IoT(インターネット・オブ・シングス)やAI(人工知能)といったデジタル技術は、これまでも生産性の向上や、工場の安定的な稼働、生産する物品の品質の確保といった面で、製造業に様々な恩恵を与えてきました。
今後は、販売の機会を逃さずに適時生産を行うための変種変量生産の実現や、「サービタイゼーション」の潮流への対応、また組織や企業文化などを柔軟なものへと変革させるデジタルトランスフォーメーションといったデジタル技術が、企業変革力を増幅させる上で非常に有用となってくるでしょう。

サービタイゼーションは、「サービスを組み合わせることで、製品に新たな価値を創出する活動」と定義されています。製品をサービスと組み合わせることでコモディティー化を避け、市場における競争優位を獲得することを狙った活動です(西岡, 2016)
言い換えれば、製造業のサービス化とも呼ぶことができるでしょう。

新型コロナウイルス感染症の流行期においては、感染予防の観点から、事業所への出勤を避けてリモートで業務を行う取り組みが広く行われました。遠隔で業務を行うためには、これまでオフィスでしか行えなかった業務を、デジタル化することが必要となってきます。また、これまで紙でしか保管されていなかった書類をデータ化し、自宅からでも内容を確認できるようにしたり、会議室の代わりにツールを使い、同僚同士が自宅からコミュニケーションを行えるようにしたり、といった取り組みがデジタル化の例として挙げられます。

この不確実性の時代において、市場において優位なポジションを得るためには、単に自社に新しい技術を導入するだけではなく、新しい技術を企業変革力の強化に結び付けられるか否かが重要なポイントとなります。

2020年度版ものづくり白書から~不確実な時代に立ち向かうための4つの戦略とは

③設計力強化

これまで日本の製造業の強みは、開発よりも製造の現場における、熟練工の技能、すなわち「匠の技」にあると認識されてきました。しかし、熟練工の高齢化が進み、製造技能の継承が問題となるなど、企業にとっての強みを個人に依存することの限界が見えてきています。

2020年度版ものづくり白書から~不確実な時代に立ち向かうための4つの戦略とは

「不確実性」が高く、市場の環境が急激かつ迅速に変化するという状況下では、製品の設計や開発のリードタイムを短縮することが重要です。上図のように、「製品の品質やコストの8割は設計段階で左右される」と言われることもあるように、製品開発の工程が進むに従って仕様変更の自由度が低下していくことがその背景にあります。

迅速かつ柔軟な対応を可能とする企業変革力を強化する上では、「設計力」を高め、新たな強みとしていくことが肝要であると、ものづくり白書では強調されています。

④人材強化

ここ数年来、日本の製造業のデジタル化を進める上でのボトルネックとなっているのは、人材の質的な不足であると言われています。デジタル化を進める上では、「システム思考」や、数理的な能力が必要になります。
このような能力を持つ人材を採用したり、社内の人材を育成して必要な能力を身につけさせたりといった採用、人材育成の取り組みが、企業のデジタル化を進めていく上で必須といえるでしょう。このような人材を育成することは、付加価値の創出や、従業員の労働生産性を高めることにもつながります。

国としても、ものづくりの基盤となる教育活動をいっそう充実させるために、数理やデータサイエンス、AIといった分野のリテラシー教育を進めていく方針が示されています。

ものづくり白書では、これら4つの戦略について、企業からのアンケートデータや、専門家によるコラム、実際に取り組んでいる企業の事例などを交えて詳述されています。
ものづくり白書は無料で公開されており、PDF形式・HTML形式で閲覧することが可能です。4つの戦略の中にひとつでも「自社の課題感に似ているな」と感じられるポイントがあれば、ぜひお読みになってみてはいかがでしょうか。

出典:

経済産業省, 厚生労働省, 文部科学省. (2020). 2020年版ものづくり白書(PDF版)
https://www.meti.go.jp/report/whitepaper/mono/2020/honbun_pdf/index.html

総務省. (2018). 平成30年版 情報通信白書.
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h30/pdf/n1000000.pdf

西岡健一. (2016). 製造業のサービス化に向けて ~ICTによる製造業のサービス化促進~. サービソロジー, 3(2016)(3), 18-23.
https://doi.org/10.24464/serviceology.3.3_18

狩野 詔子

狩野 詔子

株式会社プロデューサー・ハウス

PROFILE

ライター、コンサルタント
大阪府中小企業診断協会 観光・サービス経営研究会 代表

サービス業・観光業における生産性向上を専門とするコンサルタント。
ヤマハ株式会社、デロイトトーマツコンサルティング合同会社にて、製造業の国内外拠点における業務改善プロジェクトに多数参画。
現在はテーマパーク運営企業にて飲食部門・バックオフィス等の業務効率化を手掛ける。

共著「一人ひとりの『働き方改革』講座」(日本マンパワー株式会社)
執筆記事「サービス業で使える!生産性を上げる『カイゼン』テクニック5選」、「サービス業のマーケティング入門!自社の『7P』を把握しよう」(中小企業庁ポータルサイト「ミラサポ」)ほか多数。

お問い合わせ先
株式会社プロデューサー・ハウス
Web:http://producer-house.co.jp/
Mail:info@producer-house.co.jp

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