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実例から学ぶ! 中小企業マーケティングの新鉄則(第38回)

疑問はヒットの種となる!(コナベイハワイ)

疑問はヒットの種となる!(コナベイハワイ)

今回は、つい先日、ハワイで取材してきた話をお届けしましょう。テーマはアロハシャツです。

私、コナベイハワイのアロハシャツを、ここ数年、好んで着用しています。ヴィンテージの柄を土台にしたデザインは、華があるだけでなく、どこかせつなさすらも感じさせ、しかも配色もシンプルで、おそらく私に限らず、日本人の嗜好に合っていると思います。

ハワイのオアフ島、ワイキキに店舗があるのですが、日本国内でも購入できます。ユナイテッドアローズとはもう10年以上コラボしていますし、伊勢丹でも長らく取り扱いがあると聞きます。

ただ、ワイキキの店舗(コナベイハワイの唯一の直営店です)を訪れると、多数の柄から好きに選べますし、ショップのスタッフと話を交わすのも楽しいのです。「この一着は、名作映画で俳優が着ていたのと同じですよ」といった解説が嬉しい。

一着94ドル(税別)と、ワイキキの土産物店などで売られているアロハシャツと比べると、決して安くはありません。それでもリピーターを掴み、日本の一線級のショップなどとの協業も続いています。2001年の創業以来、着実に存在感を高め、今なお人気を保持しているのは立派だと思います。

なにしろ、オーナーは日本人で、東京・荻窪生まれ。ハワイに移住して立ち上げたブランドが、ここまで定着しているわけですから。

品質の差がこんなに大きいとは…

疑問はヒットの種となる!(コナベイハワイ)

どうしてまた、オーナーはハワイで創業したのでしょう。

「疑問があったから、に尽きますね」

どういうことか。

「僕はヴィンテージもののアロハシャツを、以前から400枚は所有していました。で、ハワイでは最初、個人的に現行のアロハシャツを購入していたんですが、ヴィンテージものとは品質の差があまりに大きいと感じたんです」

その大きな理由のひとつは、プリントの手法にあると、オーナーはすぐに気づきました。ヴィンテージものはほぼ、手間のかかる「抜染(ばっせん)という方法で柄をプリントしています。地染めして、そこから特殊な染料で色を抜いていく手法だといいます。それに対して、現行のアロハシャツの多くは「オーバープリント」。色を単純に重ねて、柄を染めていきます。オーナーに言わせると、両者の差は極めて大きいらしい。

「現行のアロハシャツを、70ドル、80ドル出してでも買いたいか。いや、そうは思えなかった。欲しいものがなかったんです」

とはいえ、ヴィンテージものは今や700〜800ドルする商品も多い。つまり、普段着るための一着として、これというものない。

「僕は今こそ移民の立場ですが、もともとはハワイへの観光客でした。その目線で捉えると、要するに『欲しいものがない』という状況なわけです」

だったらどうするか。自分で作ってしまおうとなった。それも、ただ単にいいアロハシャツを開発しようというだけではなく…。

「そもそものアロハシャツの製造工程をたどろうと考えましたね」

日本で抜染によりプリントした生地を船便で運んで、それをハワイで縫製する。これが、かつてのアロハシャツでした。それをそのまま再現する。つまりは、そういうことです。

コストよりも大変だったこと

疑問はヒットの種となる!(コナベイハワイ)

コナベイハワイは、その名から想像できるかと思いますが、2001年の創業当初はハワイ島に本拠があり、店舗は持たず、卸による販売としていました。

最初からすんなりといったのか。

「いや、日本で抜染によるプリントを引き受けてくれるところがなかった」

それはコスト上の問題でしょうか。

「コスト以上に、そもそも抜染してくれる工場を探すのが大変だったんです」

それでもどうにか探し当て、商談成立。これで思い通りのアロハシャツを生産できるめどは立ちました。さらにハワイで実力派の縫製工場と契約し、アロハシャツを作り上げる体制を整えました。

コナベイハワイの商品を始めて取り扱ってくれたのは、日本のアメカジのショップだったそうです。2001年の創業直後に話がまとまったといいますから、コナベイハワイのアロハシャツの品質が窺えます。ただし、順風満帆とまではいかなかった。

「アメカジのショップの大半は、ラインナップを多く取り扱ってはくれないんですね。サンプルを懸命に見せにいっても、店に置いてくれるのはわずか。それでは、せっかくコナベイハワイに注目してくれる消費者にも申し訳ない。次の一着を買おうとしても、買ってもらえる機会がないので」

そこで、2000年代半ばからは、セレクトショップや百貨店に取り扱ってもらう方向に舵を切りました。でも、それって簡単に答えが出るのでしょうか。バイヤーの目は厳しいはずですし。

「すべては飛び込み営業です」

そこでカギとなったのは、やはり品質の良さだったらしい。「クオリティが高そうだし、やってみましょうか」と、相次いで好反応を得ることできました。

本拠を移転した効果が…

疑問はヒットの種となる!(コナベイハワイ)

先に触れたように、コナベイハワイは2001年の創業から長らく、店舗を持っていませんでした。

2012年、本拠をオアフ島に移し、ワイキキに初めての(そして、今もただひとつの)店舗を開設します。つまり、直販にも本格的に乗り出したわけですね。現在ではコナベイハワイのサイトでも購入できます。

「この店舗をオープンさせたことが、良い結果をさらに生みました」

今では、コナベイハワイの売り上げ全体のうち、この店舗での売上高が6割を占めているそうです。

ということは、売上高も年々着実に伸びているということ?

「いえ、売り上げは『前年比100%』をずっと続けている状況ですよ」

それはまたどうして?

「アロハシャツというのは“爆発するアイテム”ではないんです。何かの拍子にどかんと売れるような商品ではないという話」

オーナーは「普通にだらだらと売れていくのが大事です」ともいいます。なるほど、アロハシャツのような商品の場合、流行りすたりで売り上げが伸びたり縮んだりというものではないし、もっと言えば、伸びたり縮んだりでは、事業の持続性という意味でもあまり良くないのですね。

「そうです。メディアに登場するなどによって売り上げが予想外に伸びると、えてして次の年に影響が出るものです。そうではなく、安定して売り上げがあれば、長い目で見るとそれが一番いいんですね」

コナベイハワイはリピーター客が圧倒的に多いと聞きます。しかも、ホノルルの店舗は、この7年間、店を1日も閉めていないそう。それが誇りです、とオーナーは語ります。

「アロハシャツのクオリティも、店舗営業や接客も、安定感が大事と肝に銘じています。すなわち『いつ訪れても』という話ですね」

再販売をしない理由は?

疑問はヒットの種となる!(コナベイハワイ)

コナベイハワイのアロハシャツのほとんどはレーヨン製です。風にきれいになびき、触感もまたいい。安価なポリエステル製とは一線を画します。そして、先ほどご説明したように、ヴィンテージの柄を土台に、新たな解釈を加えたデザインが固定ファンを掴んでいる。

「オーセンティック(伝統的)な柄のアロハシャツがそもそも今や少数派となっていて、しかも、抜染によるプリントの柄となるともっと少ないのが現状です」

それでいて94ドルで販売しているのですから、価格的には安いと感じる消費者も多いのではないでしょうか。

だったら…としつこく問いたいのですが、売り上げがもっとぐんぐんと伸びても不思議ではないですよね。

「数を作らないんです、僕は」

どういうことですか。

「いくら売れたデザインのアロハシャツでも、再販売はしません」

そうなのですね。理由はわかります。オーナーの言葉をさらに引きましょう。

「服というのは、バッティングしないことが基本なんです」

要するに、街なかで同じ服をまとった人に出逢わないように、という話ですね。わざわざ94ドルのアロハシャツを買い求めて、同一の柄を着た人と鉢合わせするのは、やっぱり興ざめするものです。

このことが、リピート客を増やす要因にもなっていると分析することもできそうですね。シーズンごとに新作を購入する、強い動機づけになりますから。私の場合、ハワイに出張したり旅したりするたびに、コナベイハワイのパイナップル柄を一作ずつ購入するのがクセになっています。

「こう考えると、まさに糸を紡ぐような仕事なんです」

そうですね。爆発的に突然売れるアイテムではない。いや、爆発的に売れては、そのあと事業が持続しない恐れもある。だからこそ、糸を紡ぐかのように地味地味と商いに携わる…。納得できる言葉でした。

「僕は、しゃかりきになって何かをなすタイプではないんです。そういう性格が、アロハシャツ1枚に滲んでいるのかもしれません」

ときには、商品が売れない日もあるでしょう。

「そういう場面では、『このアロハシャツを好きな人は絶対にいる』と自らに言い聞かせます。『明日、好きな人が来るかもしれない』とも」

だから、焦って増産はかけないし、手間がかかっても、最初に決めた製法は守っているということなのですね。

「もちろん、厳しい局面に陥らないように、毎日気をつけて経営に当たっているのは事実です。でも、より大事なのは…」

オーナーの締めくくりの言葉を、私の仕事にも生かしたいなあと思いましたね。

「ギスギスしたところから、人は商品を買いたくないじゃないですか」

北村 森

北村 森

商品ジャーナリスト
サイバー大学IT総合学部教授
(元・日経トレンディ編集長)

PROFILE

富山県出身。慶応義塾大学法学部政治学科卒業。

月刊誌「日経トレンディ」編集長を経て、2008年に独立。
以来、商品ジャーナリストとして活動。製品・サービスの評価、消費トレンドの分析、地方自治体や商工団体と連携する形で地域おこしのアドバイザー業務に携わっている。
2015~2016年、第1回「だれかのために考えた発明品アイデアプロジェクト」(東大阪ブランド推進機構)の総監修を担当し、全国からの反響を呼ぶ。
著作である『途中下車』は、2014年にNHK総合テレビにてドラマ化された。
2017年にはサイバー大学IT総合学部教授に就任(地域マーケティング論)。

中日新聞/東京新聞「北村森のモノめぐり」、婦人公論「女の気になるキーワード」、家電批評「北村森のヒット商品虎の穴」、FCC REVIEW「旗を掲げる! 地方企業の商機」などの連載コラム執筆に携わるほか、NHKラジオ第1「Nらじ」など、テレビ・ラジオ番組でのコメンテーター、ゲスト出演多数。

日本マーケティング協会 マスターコース講師(マーケティング・コミュニケーション)
MM総研大賞 審査委員
富山県 推奨とやまブランド ものづくり部会 審査委員
特許庁 地域団体商標広報企画 ワーキンググループ委員

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