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  • 2020.01.06

新事業開発成功のポイントは「組織の壁」にあり!

新事業開発成功のポイントは「組織の壁」にあり!

国内人口の減少による国内需要の変化、グローバル化に伴う国際競争の激化等により、中小企業を取り巻く経営環境の厳しさは増しています。そのような環境下、持続的な成長を遂げている中小企業は、新事業開発に積極的に取り組むことにより、新たな事業の柱を得ています。


しかし、経営資源が限られる中小企業では、新事業開発がうまく進まないケースも多くあります。その原因の一つが組織体制に「壁」があることです。中小企業が新事業開発をスムーズに進めるには、どのような組織体制を整備する必要があるのでしょうか。

1. 新事業開発を阻む、組織の壁

私は公的機関で、新事業開発に取り組む企業への支援を担当しました。
しかし、支援先企業の中では「新事業開発がうまくいく企業」と「うまくいかない企業」が存在しました。「うまく行かない企業」の原因の1つとして、共通した課題が浮かびました。それは、意思決定がスムーズに進む「組織体制」がしっかり構築されていないという点です。

ここで事例をご紹介します。消臭剤などを開発・販売するA社は、新市場を開発するために、若手社員2名を新製品開発担当者として任命しました。この2名は担当する製品が異なる営業担当者です。
2名の担当者はさっそく市場調査を開始し、新製品のアイディアを企画書にまとめることとしました。

(1)技術担当者との調整が進まない

新製品開発担当者は2名とも営業担当者であったため、新製品開発をするにも、技術的な課題については知識が不足していました。そこで技術担当者に質問をするものの「技術的にできない」などといった理由で、企画を検討し直す作業が発生し、なかなか企画案が完成しませんでした。
私たち支援機関職員や、外部専門家とともに実施する新製品開発の打合せにも、技術担当者の参加はありません。技術的な課題がでても、すぐに確認できないことが多くありました。

(2)予算がつかない

技術的課題を克服したものの、次に開発費用の問題が浮上しました。そもそも新製品開発の予算が組まれていなかったため、新規予算を組む必要がありました。しかし、予算部門との交渉も難航し、また開発のスピードが遅れてしまいました。

(3)社長が「いい」といわない

予算を最終的に承認するのは社長です。社長に新製品開発の企画を発表し、予算について承認を図るものの、なかなか社長の了承が得られません。
理由は、社長がイメージした製品や市場ターゲットと異なった製品企画だったことによるものでした。
企画をまた考え直すことになった2名の担当者は、だんだんモチベーションが低下し、開発が頓挫してしまいました……。

そもそも、この新製品開発担当者は、新製品開発だけではなく、それぞれが従前から担当している製品の営業や、ルーチンワークと同時並行で新製品開発を進めていました。課題がいくつもでるものの日常業務に追われ、私たち支援機関が訪問する際も「あまり進んでいません」という言葉が多く聞かれました。

2.新事業開発を成功させる組織体制

最初に失敗事例をご覧いただきましたが、いかがでしょうか。「うちの会社でもよくある……」「調整が大変で……」といった声が聞こえてきそうです。
新事業開発に成功を収めている企業は、どのような組織体制を構築しているのでしょうか。

(1)B社:卸売が自社製品を開発

生活関連商品の卸売会社であるB社は、「卸売からの脱却」を掲げ自社製品開発に挑戦することにしました。しかし、B社は「卸売会社」であるため、製品開発の経験もなく、何からはじめたらよいのかもわからない状況です。

①専門の部署および担当者を配置

社長は、まず自社製品開発のみを行う専門部署を立ち上げ、そこに専任担当者を1名配置しました。この専門部署は社長直結の部署としました。
あわせて、この担当者は今まで行っていた担当業務から外れ、新製品開発のみを担当しました。
それまでの担当業務から離れたことにより、新製品開発のための市場調査や、製造委託先の選定や調整など、新製品開発で日々訪れる数多くの課題に迅速に対応することができたのです。

②開発初期から社長がプロジェクトに関わる

この新製品開発プロジェクトは、専任担当者のみで進めるわけではありません。私たち公的機関が進捗確認に訪問する際には、必ず社長も一緒に同席され、開発の進捗状況、克服すべき課題について共有をしていました。
また、これらの課題解決に向け社長が動くべき案件についても、社長自ら意思決定をして動くことで、開発スピードは加速度的に上がりました。

結果、このB社は開発期間3年目に自社商品が完成。販路開拓フェーズでは同社の「卸売業」という強みを生かした販路ネットワークを通じ、順調に販売先を広げていったのです。

(2)C社:各部門から若手担当者を集め、プロジェクト体制をとる

新事業開発成功のポイントは「組織の壁」にあり!

工業用結束バンドを開発・製造しているC社は、工業用製品がメインでした。そこで新市場を開拓するため、BtoC商品の開発をすることになりました。

C社は、開発・営業・総務などから若手担当者を集め、プロジェクト体制を取りました。最初にご紹介したA社と異なり、開発初期から各部門の課題点を共有することで、企画段階での後戻りを防ぐことができました。
また、若手が集まったことで会社の「常識」から外れる議論が進み、それまでのC社の製品とは全く異なる、カラフルで「かわいい」一般消費者向けの結束バンドが生まれたのです。
技術的な課題解決は開発部門、販路開拓は営業と連携をすることで、この企業も開発開始から約2年で新製品を市場にだすという、スピード感のある新製品開発を成し遂げました。

2. 新事業開発を成功させる3つの要因

新事業開発成功のポイントは「組織の壁」にあり!

以上、B社とC社に共通することは、「組織の壁を払い、意思疎通を迅速に」実践していることです。
外部環境の変化が大きい中、経営資源が限られる中小企業にとっては、その「小回りの効く」小さい組織だからこその利点を生かさなければ、新事業開発のスピードは遅れ、新製品が開発したときは、すでに時代遅れになっているかもしれません。
新事業開発に成功したB社とC社の成功要因をまとめると、次の3点が挙げられます。

①新製品開発の専門部署と専任担当者をおき、新製品開発のみに集中させる


②経営者が開発初期からプロジェクトに参加し、進捗状況と課題を認識する


③社内組織が開発や営業などに別れている場合、部門をまたいで担当者を集めるプロジェクト組織を結成する

いずれの点も、新事業開発に伴う意識決定のスピードや障壁をできる限り取り払っていることが分かります。失敗したA社の事例では、意思決定において社内の体制に阻まれた結果、担当者のモチベーションも下がってしまったのです。
また、何よりも重要なことは、経営者が「新事業開発が我が社の最重要課題である」ことを認識し、全社員にそれを徹底させることです。これがなければ、新事業開発の担当者は日常業務に追われ、新事業開発が後回しになってしまいます。

中小企業は経営資源が限られているからこそ、大企業では難しい市場にピンポイントで、また大企業よりも早いスピードで参入することが可能です。
しかし、新事業開発には困難な道のりが待ち受けます。それを解決するのは、誰でもない、社員1人1人なのです。社員を生かす組織を迅速につくること、それこそが経営者の役目ではないでしょうか。

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