1. TOP
  2. Alibaba JAPAN PRESS
  3. 海外進出における留意点~著作権編~

意外と知らない知的財産権(第4回)

海外進出における留意点~著作権編~

海外進出における留意点~著作権編~

個人でも動画や写真等で情報発信することが多くなった昨今、著作権は一番身近な権利であり、多種多様なコンテンツを商業利用する事業者にとって、益々重要性が増し、深い理解が求められる分野です。
しかし、著作権の対象は広範囲に渡っていて、ルールが複雑で例外も多く、全容が掴みにくい権利でもあります。著作権は、権利の発生に申請を要する特許権や商標権(第2回第3回参照)と違い、多くの国において著作権の登録をしなくても創作した瞬間に権利が発生します。しかし、米国では、著作権登録が権利行使の要件となるケースがある等、国によっては日本と異なる留意点があります。
今回は、オンラインショップを展開する際に注意すべき著作権のポイントを中心として紹介します。

オンラインショップでの注意点

例えば、オンラインショッピングサイトのイメージ画像に、他人が撮影した写真を無断利用すると、著作権侵害に問われる場合があります。ページ制作を外部委託した場合に、委託された会社が利用した写真をその出所を確認せずに自社のホームページ等のウェブサーバーにアップロードしてしまうことがないように注意しましょう。
また、委託先との契約期間内のみ利用可能なコンテンツの場合、特約がなければ期間経過後も利用し続けることはできません。広告会社が、写真の著作権者との契約終了後に許諾なくクライアントのパンフレットにその写真を利用させたとして、損害賠償等を求められたケースが実際にありました。

他人のブログから文章を無断コピーして掲載することも著作権トラブルの原因となります。著作権フリーの素材もインターネット上にあふれていますので、それらの素材を利用することもあると思われます。著作権者が自分でありかつ著作権フリーであることを表示している場合でも、商業利用は不可と併記されていることがありますので、注意事項等は良く確認しましょう。著作権者や許諾の有無等が不明な著作物の利用は控えることがリスク軽減になります。

一方で、公表された著作物は一定の範囲で引用して利用することができる等、著作権が制限されるケースもあります。しかし、公正な慣行に合致するものであって、報道や批評や研究等、目的上正当な範囲内である必要があります。
例えば、オンラインショップの宣伝のために自身のエッセイを掲載しているブログの中で、必然性があって一部に他人の小説の一節を利用する場合は、自身のエッセイの部分が大半で引用部分はごく一部であって、出所の明示を行い、改変を一切せず、鍵括弧で囲む等の方法で自分のブログ文章部分と区別するように気を付けて、引用であることがわかるようにしましょう。

海外進出における留意点~著作権編~

オンラインショッピングサイトでイメージ画像に他人の登録商標に近似したパッケージやロゴの写真を自社製品の販売ページで勝手に利用すると、商標権においても侵害を問われる可能性があります。日本でも音の商標の登録が認められるようになり、著作権と商標権の両方で多面的な保護を図れるコンテンツの種類が増えました。著作権による保護以外に別の面から他の知的財産権で保護できる場合は検討してみてはどうでしょうか。

存続期間に関して、著作権は、平成30年12月30日に発効したTPP11協定(環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定)に伴い、原則として著作者の死後70年経過するまでが存続期間となりました(例外は多々ありますのでご注意ください)。著作権は存続期間が長い知的財産権ですが、10年毎の更新により100年でも200年でも継続できる商標権とは違い、一定期間経過後は権利が消滅し、誰でもその著作物を利用することができるようになります。

「著作権」について

自社のオンラインショップのページ制作を外部に委託する場合等、ビジネスの相手が「著作権」と言ったときに、どこまでの権利を指しているかをまず確認することが必要です。著作物に関する契約書においては、トラブルを防止するために言葉について明確に定義することが必要です。
なぜなら、相手が「著作権」と一口に言っても、財産的権利としての著作権のみを意図していることもあれば、人格的権利である「著作者人格権」を含む著作者の権利を意図しているケースもあるからです。さらに、著作者の権利のみならず、著作物を伝達する者(例えばダンサーなど)の権利である「著作隣接権」等も含んだ総称として用いている場合もあります。

財産的権利としての著作権は、複製権、上演権、演奏権、上映権、公衆送信権(例えばインターネット送信など)、展示権、譲渡権、貸与権、翻訳権等々、多くの権利(支分権と言います)に分けることができます。
著作権の英語表記はCopyrightであることから、上述した多数の支分権の中でも、複製権(Right of reproduction)のみを意図してコピーライトや著作権という言葉を相手が使っていることもあります。

海外進出における留意点~著作権編~

Ⓒに名前や年が併記されている表記をよくみかけますね。このⒸはコピーライトの頭文字「C」を用いた著作権表示のためのマークです。

日本で著作物になりうる対象としては、小説、講演、楽曲、歌詞、ダンス、絵画、マンガ、彫刻、舞台装置、地図、ゲームソフト、映画、写真、プログラム等、多種多様なものが含まれます。ただし、著作物として認められるには、思想又は感情を創作的に表現したものである必要があります。

著作物の定義や範囲、保護期間、侵害に対する罰則等は、他の知的財産と同様に、各国少しずつ違いがあるものの、国際条約で共通化が進んでいます。一方で、インターネットの普及やデジタル技術の発展により、常に新しい形態のコンテンツや新しい伝達方法が生み出されており、侵害形態も進化しています。

また、著作権は数々の点で他の知的財産権と異なる注意点があります。特許権や意匠権等は他人が独自に作っても内容が同じものには及ぶ権利である一方、著作権は、他人が独自に創作したものには及ばない権利であるという点も大きな違いの一つです。
したがって、他の知的財産権の契約に慣れている場合でも、著作権に関する契約を初めて行う際には弁理士によるリーガルチェックをお薦めします。

海外進出における留意点~著作権編~

米国及び中国の著作権について

現在では、米国でも著作物の登録をしなくても著作権保護がされるようになり、著作権表示は不要になりましたが、米国で最初に発表された等、一定の条件に当てはまる場合は、著作権侵害などで訴訟を起こす際には、予め登録申請等の所定の手続をしておくことが好ましいと考えられます。

中国においても、著作権者が権利行使する際に、著作権の登記証書があると、権利を有していることの初歩的な証拠となり得ます。このことを利用した商標の冒認出願対策として、一定の独創性があるロゴマークに関する中国での著作権登録があります。例えば、先日中国で類似する商標を使用していたタイヤ会社を商標権侵害で訴えて約330万元の支払を命じる判決を得た株式会社ブリヂストンは、過去に著作権登録制度を利用し商標の冒認出願の登録取消の裁定を得ることに成功しています。同社は特徴的なBのロゴマークについて中国で著作権登録していたので、中国のある会社がタイヤとは異なる分野で出願したロゴ(上述したBのマークに近似するBの文字を含む6文字)について登録されてしまった際に、無効審判を請求した際に著作権の登記証書等を提出し商標登録取消の裁定を得ました。

このように複数の知的財産権制度を上手に組み合わせて戦略的に保護をできるだけ「先手」で行うことが、
第1回で述べたように重要となります。

改正等について

本記事の内容は、2019/11/19現在の内容です。知的財産の法律は毎年のように改正があり、例外規定も多く、各国で改正のタイミングが異なるのでご注意下さい。

SHARE

意外と知らない知的財産権

連載一覧へ

海外展開に対するお問い合わせはこちら

おすすめ記事

中国における越境EC市場の現状は?参入する際の注意点も解説

2023.12.21

中国における越境EC市場の現状は?参入する際の注意点も解説

越境ECの始め方と必要な準備を解説

2023.12.20

越境ECの始め方と必要な準備を解説

FDA認証とは?対象となる商品や取得方法など解説

2023.10.31

FDA認証とは?対象となる商品や取得方法など解説

資料のご請求や
お問い合わせはこちら