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  • 2019.12.02

中小企業の人材不足解決の鍵となるか?
2019年入管法改正のポイント

中小企業の人材不足解決の鍵となるか?2019年入管法改正のポイント

中小企業の7割は「人手不足」に悩んでいる

少子高齢化による労働力の減少が進む日本。有効求人倍率は、1974年以来の高い水準となっています。仕事を探す人の数よりも求人募集の数が多い「売り手市場」が続くなか、中小企業基盤整備機構の調査に対し、7割以上の中小企業が「人手不足」で「人材の採用が困難」であると感じている、と回答しています。

中小企業において、人手不足の影響は売上減少や商品・サービスの質の低下につながっています。また、社内で対応しきれない業務を外注したり、派遣人材を活用したりすることにより、費用が増え、利益が減少している状況だといいます。

近年の採用難が続いた結果、外国人採用を検討しているという中小企業の方も、読者の皆さまの中にはいらっしゃるのではないでしょうか。今回の記事では、外国人人材の短期・長期的な活用を検討するうえで、外すことのできない話題「入管法」の改正について、押さえておくべきポイントをお伝えいたします。

完全失業率と有効求人倍率の推移

(出典:厚生労働省 平成30年版 労働経済の分析)

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改正入管法で期待される、34万人の外国人労働者

入管法は、正式な名称を「出入国管理及び難民認定法」といい、日本にやってくる外国人だけではなく、日本に出入りするすべての人を対象とした法律です。2018年10月に入管法の改正案が閣議決定され、20194月より、改正入管法案が施行されました。同時に、外国人材の増加を見込み、外国人材の受け入れ環境を整備するために従来法務省の下にあった「入国管理局」が格上げされ、「出入国在留管理庁」となりました。

今回の法改正における大きなトピックは、新しい在留資格である「特定技能」の創設です。これまで、外国人人材について「高度人材や専門性的な技術を持つ労働者は受け入れるが、単純労働者は受け入れない」「技能実習生や留学生など、将来の帰国を前提にした、期間限定での単純労働のみ認める」という姿勢をとってきた日本政府が、大きく方針転換を行い、より多くの外国人労働者を受け入れられるように変更されました。

この法改正により、初年度となる2019年度は最大で47550人、5年間で約345000人の外国人労働者の受け入れが期待されています。

14の受け入れ分野と従事する業務区分

(出典:外務省 入管法改正による新しい在留資格特定技能の創設)

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ただし、無条件に受け入れることができる…というわけではありません。

「特定技能」には「1号」と「2号」の2段階があり、「特定技能1号」は相当程度の知識・経験を要する技能と、日本語能力が求められます。技能実習を修了するか、技能日本語能力の試験に合格すれば在留資格(特定技能1号)を取得できる、という制度です。在留期間は通算5年間ですが、これを終えても永住権の取得は認められません。また、家族の帯同も認められていません。また、「特定技能1号」の受け入れ分野は「農業、漁業、飲食料品製造、外食、介護、ビルクリーニング、素材加工、産業機械製造、電気・電子情報関連産業、建設、造船・舶用工業、自動車整備、航空、宿泊」の14の産業分野に限定されています。

さらに高度な試験に合格した方に与えられる「特定技能2号」は、「特定技能2号」は、特定産業分野に属する、熟練した技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格です。大学卒業後10年間の実務経験を積んだ方が取得する就労系の在留資格とほぼ同様の扱いを受けることができます。

在留資格は13年ごとに審査を受け更新することが可能です。更新回数に制限はありません。特定技能1号とは異なり、要件を満たせば配偶者や子どもなどの家族の帯同も可能となっています。

就労が認められる在留資格の技能水準

(出典:出入国在留管理庁 在留資格「特定技能」について)

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従来の技能実習が抱えていた問題

今回の法改正で導入された「特定技能1号」は、既存の制度である「技能実習」を3年間修了した方も資格を申請することが可能です。法改正の前には、既存の在留資格に該当しない、技能の専門性や習熟度が低い外国人人材を採用する場合、「外国人技能実習制度」を利用する企業が多くありました。「外国人技能実習制度」は発展途上国への技術移転・人材育成を目的とし、特定の技能を習得するために最長5年間、日本での就労を許可するものです。

ただし、「外国人技能実習制度」は基本理念として「技能実習は、労働力の需給の調整の手段として行われてはならない」という点を掲げており、企業の人材不足をカバーするための制度ではありません。

技能実習生は実習期間を終えたのち、全員が帰国せねばならず、人材を定着させたい企業側と「期間限定の単純労働」である技能実習の仕組みとの間に、ミスマッチが生じていました。今回の「特定技能」という在留資格が新設されたことで、今後は技能実習期間修了後も、継続して働き続けることが可能になったのです。また、飲食店でのアルバイトを行っていた方など、就学中に働いていた留学生についても、試験に合格すれば特定技能1号の資格を取得し、継続して働くことができるようになりました。

永住権取得のハードルは依然高い

今回創設された「特定技能1号」の在留資格では、日本の永住権を取得することはできません。永住権を取得するためには、「特定技能2号」の取得が必要である点に留意が必要です。

「特定技能2号」は従来の在留資格とほぼ同等レベルのメリットを享受できるものですが、その一方、資格取得のハードルも非常に高くなっています。まず、受け入れることができる産業分野が「特定技能1号」よりも格段に少なく、現状「建設」「造船・舶用工業」の2分野のみとなっています。

さらに、これらの業務について実務経験を積み、かつ受け入れ業種の管轄省庁が定める試験に合格する必要があります。実務経験についても、単なる従事経験ではなく、リーダーとしての経験が求められています。

例えば建設分野を例にとってみますと、建設現場において複数の建設技能者を指導しながら作業に従事し、工程を管理する者(班長)としての実務経験が必要だとされています。このことから「特定技能2号」の資格取得は難関であると想定されます。

外国人人材の活用の幅が広がる

ここまで、2019年の入管法改正の最大のポイントである「特定技能」の創設についてご紹介してまいりました。

外国人人材の登用に関する制度はやや複雑であり、先行企業の事例も少ない中ではありますが、法改正以降、外国人人材の活用を検討している企業の数は増加しています。2019年10月時点の調査によれば、外国人人材を雇用している事業所の数は21万か所以上あり、過去最高を更新しています。これら事業所の過半を占めているのは、従業員数30人未満の中小規模の事業所です。

本改正によって、外国人人材の活用の幅が広がり、中長期的な活躍も期待できるようになりました。人手不足や、海外市場・インバウンド需要の獲得のために外国人人材を活用したいとお考えの方は、ぜひ一度検討されてみてはいかがでしょうか。

【参考】

厚生労働省 平成30年版 労働経済の分析
-働き方の多様化に応じた人材育成の在り方について
1-(2)-2図 完全失業率と有効求人倍率の推移
https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/roudou/18/backdata/1-2-02.html

厚生労働省「外国人雇用状況」の届出状況【概要版】(平成3010月末現在)
https://www.mhlw.go.jp/content/11655000/000472891.pdf

中小企業基盤整備機構 中小企業アンケート調査報告
「人手不足に関する中小企業への影響と対応状況」
https://www.smrj.go.jp/doc/org/20170508_info01.pdf 

外務省 入管法改正による新しい在留資格特定技能の創設
https://www.mofa.go.jp/mofaj/ca/fna/ssw/jp/index.html

法務省 新たな外国人材の受入れ及び共生社会実現に向けた取組(在留資格「特定技能」の創設等)
http://www.moj.go.jp/nyuukokukanri/kouhou/nyuukokukanri01_00127.html

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