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意外と知らない知的財産権(第3回)

海外進出における留意点~商標編~

海外進出における留意点~商標編~

商標は、自社の商品やサービスを、他社の商品やサービスと識別(区別)するための目印となる標章です。

たとえば、スーパーに好みの牛乳を買いに行ったときに、沢山の種類(会社)の牛乳パックが陳列されていますが、勘違いして他社の牛乳を買うことはありません。
牛乳パックはどこの会社のものも同じような形状の容器であり、しかも、どの容器にも「MILK」とか
「1000ml」といった同様の表示がなされているにもかかわらず、他社の商品と誤認して購入することがないのは、そこに商標(ネーミングやロゴマークや社標など)が付されており、これを目印にして好みの牛乳(商品)と他社の牛乳(商品)とを識別しているからです。

売れそうな商品では特に「先手」で

海外でも売れている(売れそうな)商品やインターネット上で話題の商品では、これに便乗しようとする類似品が出回るリスクがとくに高いと言えます。商品自体がもつ優れた品質や機能を直ちに模倣することは困難でも、ネーミングやロゴマークやパッケージ(外装)のみを模倣することが容易である場合、国内・海外の消費者や取引業者が勘違いしないように海外においても自社の商標を「先手」(1)で適切に保護・管理する必要があります。
例えば、アップル社は中国で「IPAD」商標を買い取るのに、6000万ドルの和解金を支払いました。

海外進出を目指す企業が、商標の保護・管理において留意すべき点のうち幾つかご紹介します。

商標権の及ぶ地域

 第1の留意点は、第2回の記事でも述べましたが、特許と同様、商標も各国毎に独立しているという点です。すなわち、海外においても自社の商標を保護・活用しようとする場合には、各国ごとに商標権を取得する必要があります。
そして、多くの国が、商標権を先に申請(出願)した者に与えるという先願主義を採用しているため、日本での登録商標を海外でも出願しようとしたとき、他人に先に商標権を取得されてしまったという事態が起こり得ます。

日本でブランドを築いている会社が海外で商標権を取得してないことに目をつけて海外の国で商標権を先取りし、それを本家の会社に高値で売りつけようと目論む者が現れるリスクがあります。

商標権が各国毎に独立しているということは、各国毎に権利者が異なることが許容されているということでもあります。そのため、いったん他人に商標権を取得されてしまうと、それを取り消す(無効にする)ことは容易ではありませんし、商標権を消滅させるのは取得する場合に比して多額の出費と長い期間を要します。もっとも、外国への商標登録出願には相応のコストがかかりますので、第1回の記事でも述べたとおり、やみくもな出願は避けるべきでしょう。

なお、費用の面については、日本企業向けに、外国出願に要する費用の助成(中小企業等外国出願支援事業)や、海外の模倣品被害を食い止めたい、海外企業に自社の商標を先取りされたといったケースを対象とした補助金事業(中小企業海外侵害対策支援事業:冒認商標無効・取消係争支援)、海外で知財訴訟に巻き込まれるリスクへの対策事業(海外知財訴訟保険事業)等がありますので、出願やトラブルの際には弁理士に相談するとともにこれらの制度の活用を検討されてみてはいかがでしょうか。

保護する商標

 第2の留意点は、海外においても商標権を取得する場合に、申請すべき商標をどのように決定するかという点です。

 前述のとおり、商標は、自社の商品等と他社の商標等とを識別する標章であり、日本国内においては、文字・図形・記号・立体的形状・音・色の商標が認められており、アルファベットのみならず、ひらがなやカタカナ、漢字を構成要素とする様々な商標が登録されています。ひらがな等の文字は多くの日本人にとって読み取ることができます。ところが、使用言語の異なる外国人にとっては、通常可読性がなく、特定の意味合いを想起せずに単なる記号又は図形(デザインの一種)として理解される可能性があります。そうすると、例えば、「ヌ」と「ス」のように、日本人にとっては称呼が異なるため識別可能な文字であっても、国によっては外国人にとっては発音できない単なる記号又は図形に過ぎず外観上近似すると認識される事態も想定されます。中国のように漢字を用いる国であったとしても、日本とは異なる読み方(称呼)であったり異なる意味を観念させたりする場合があることに注意が必要です。このような認識の違いは、それぞれの国での商標登録の可否や商標権の権利範囲の広狭に影響します。

日本で使用していた商標が海外ではスラングであった等で海外での使用に適しない場合は、日本とは別の商標で展開することになる点にも留意が必要です。
商標は1つの物品やサービスに対して1つの商標しか存在しないわけではありません。例えば、コメダ珈琲は店舗の名称のみならず店舗(建物)の外観も商標としての機能を発揮していますし、キッコーマンの醤油瓶は六角形のロゴマークのみならず容器の形態も商標としての機能を発揮しています。したがって、どれを商標登録で守るか、消費者・取引者目線を加味して選択する必要があります。
また、使用証明の提出が必要になる米国等では、出願商標を使用商標と同一の商標とすることも重要なポイントです。

海外進出における留意点~商標編~

出願の種別

第3の留意点は、海外への商標出願にあたり、各国毎に個別的に出願するか、国際出願(マドリッドプロトコルに基づく商標の国際出願)をするか、という点です。

前者は、各国の所轄機関へ直接出願するもので、各々の国の商標制度に従って出願を行うことになるため、現地代理人(弁理士等)に依頼して手続を進めます。
後者の国際出願は、日本における商標出願又は商標登録を基にして、英語で作成した一通の出願書類を提出することにより、複数国に一括して出願した効果を得ることができるというものです。

国際出願のメリットとしては、各国毎に出願する場合に比して費用を削減することができる場合が多い点や、権利化後の一括管理が図られるといった点等が挙げられます。たとえば、日本での登録商標について全ての申請国で無事に商標登録されたら統一ブランドとして使用したい意向であれば国際出願が薦められます。
一方、国際出願のデメリットとしては、非加盟国は選択できない点や、前述のとおり各国毎に別々の商標を1つの出願で行うことができないといった点等が挙げられます。

申請国を決める際には、先ずは商品の販売国が候補になりますが、場合によっては生産国や流通国にも申請することを検討すべきです。裁判制度が整っておらず権利行使が困難である国や、遵法意識が低く模倣に対する罪悪感に乏しい国があることにも留意します。
商標を出願する際には商品・サービスを指定して行いますが、指定できる商品や役務(サービス)が、各国で必ずしも日本のものと対応関係にない点に留意します。指定商品役務の表示や細かさ等の異なる国を指定しての国際出願を想定している場合、基礎とする日本出願のときから商品・サービスの選定に十分注意しなければなりません。

■改正等について
本記事の内容は、2019/5/7現在の内容です。知的財産の法律は毎年のように改正があり、例外規定も多く、各国で改正のタイミングが異なるのでご注意下さい。また、国際出願のルール、加盟国等も変わるのでご注意下さい。

伊藤 夏香

伊藤 夏香

アイエヌ知財特許事務所 代表

PROFILE

アイエヌ知財特許事務所(http://aienu-pat.com/)代表
東京工業大学卒、同大学院修士課程修了。

日本弁理士会の知的財産経営センター知財価値評価事業本部担当副センター長、知的財産支援センター運営委員、ソフトウェア委員会委員、同会関東支部(現関東会)の副支部長、幹事、知財教育支援委員会委員長、公認会計士連携委員会委員長、中小企業・ベンチャー支援委員会委員、東京商工会議所の知的財産戦略委員会委員等を歴任。

諸団体で相談員やセミナー講師を務める。特許から商標まで幅広くサポートし、知財を守る仕組みづくり等、知財活動を応援中。

セミナー多数(中小企業の知財の活かし方、ブランディング戦略、発明提案書のまとめ方、特許公報の読み方、経営に役立つ商標制度のイロハ、知的財産の価値評価 等 190回超) 記事多数(【サービス時代の事業保護の在り方に関する調査・研究】、【多法域によるプログラムの保護】、【戦略的な特許調査の進め方】、【知的財産権のライセンス使用】 等)

お問い合わせ先:
アイエヌ知財特許事務所
東京オフィス 東京都墨田区本所3-19-9-501
仙台支所   宮城県仙台市青葉区春日町9-15 3F
ホームページ(http://aienu-pat.com/)のお問い合わせフォームからご連絡下さい。
アリババジャパンプレスを読んだ旨を書き添えて頂ければ幸いです。

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