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  • 2019.09.17

中小企業だって、オープン・イノベーションの時代

中小企業だって、オープン・イノベーションの時代

近年、イノベーションに取り組む企業から着目されている手法の一つが「オープン・イノベーション」です。
「オープン・イノベーション」とは、外部企業や研究機関、大学といった異業種・異分野の技術やノウハウを取り入れて、新製品や新サービスの開発、新規事業の立ち上げを実現することを指します。
大学のような教育・学術研究機関と企業が連携して共同研究や技術移転、研究成果の事業化に取り組む「産学連携」や、行政機関を巻き込んでの「産学官連携」もオープン・イノベーションの一つの形です。

オープン・イノベーションは、米国カリフォルニア大学バークレイ校ハース・スクール・オブ・ビジネスで教鞭を執るヘンリー W. チェスブロウ教授によって、以下のように定義されています。
「組織内部のイノベーションを促進するために、意図的かつ積極的に内部と外部の技術やアイデアなどの資源の流出入を活用し、その結果組織内で創出したイノベーションを組織外に展開する市場機会を増やすことである。」
*Henry W. Chesbrough(2003)『Open Innovation』

自前主義によるイノベーションが限界を迎えている

オープン・イノベーションで利用される外部の経営資源は、技術やアイデアに留まりません。外部から資金や人脈、組織間のコネクションなどを取り込み、利用することもオープン・イノベーションの一種です。

オープン・イノベーションが活発化している理由には、全てを自社のみで行う「自前主義」でのイノベーション(クローズド・イノベーション)の実現が限界を迎えつつある、という背景があります。かつては、自社の技術やノウハウを保護するために、クローズドな(外部には門戸を開かない)環境でイノベーションに取り組むことが一般的でした。
しかし、自社のみの経営資源を用いて、研究開発や事業開発、販路開拓を行う場合、人手や資金といった経営資源不足が課題となることが多いのです。

文部科学省科学技術・学術政策研究所の調査によれば、「イノベーションの阻害要因」「イノベーションを実施しなかった理由」として61%の企業が「能力のある従業者の不足」を挙げ、53%の企業が「良いアイデアの不足」を挙げています。
規模が大きい企業ほど、新製品やサービスの需要の不確実性のために経営資源の投下をためらい、規模が小さい企業ほど、内部・外部資金の調達が難しいためにイノベーションが阻害されている、という状況です。
皆様の周囲にも、「良い技術やアイデアがあっても、資金不足・人手不足のために事業化をあきらめた」という経験をお持ちの方がいらっしゃるのではないでしょうか。

中小企業だって、オープン・イノベーションの時代

文部科学省科学技術・学術政策研究所「第4回全国イノベーション調査統計報告」
https://www.nistep.go.jp/wp/wp-content/uploads/NISTEP-NR170-FullJ.pdf

1990年代以降、通信をはじめとした技術が急速に普及し、市場のグローバル化が進行するとともに、技術革新の速度が加速していきました。
その結果、顧客ニーズの多様化・製品ライフサイクルの短期化、製品に用いられる技術の複雑化・高度化が進み、たとえ大企業であっても、自社が持つ経営資源のみでは、イノベーションを起こすことが難しい時代となってきたのです。

経済産業省の「2016年版ものづくり白書」の調査結果によれば、「10年前と比較して製品ライフサイクルがどのように変化しているか」という質問に対し、すべての業種において「長くなっている」より「短くなっている」企業の方が多くなっています。
特に「電気機械」は34.7%、「化学工業」は30.2%が「短くなっている」と回答していることから、これらの業種において、製品ライフサイクルの短縮化が進んでいる様子が見て取れます。

中小企業だって、オープン・イノベーションの時代

製品ライフサイクルの10年前との比較(平成29年度科学技術白書)
http://www.mext.go.jp/component/b_menu/other/__icsFiles/afieldfile/2017/06/02/1386489_004.pdf

このような状況のもと、注目を集めたのが「オープン・イノベーション」です。外部の技術を探したり、組織間の連携を行ったりするための、オープン・イノベーションが行いやすい環境の整備が進んできたこともあり、企業にとって実効性の高い選択肢として、オープン・イノベーションの重要性が高まってきています。

オープン・イノベーションの一翼を担う中小企業

オープン・イノベーションの主役となるのは、大企業だけではありません。経営環境の急激な変化に迫られ、イノベーション活動上の課題を抱えているという点では、中小企業も大企業と同じ状況にあります。

中小企業においても、大手企業と連携し、研究開発や新規事業展開を目指す動きが見られます。自治体や行政機関も、オープン・イノベーションに取り組む大手企業と中小企業の連携をサポートする仕組みの整備に取り組んでいます。

オープン・イノベーションに取り組む大企業のなかには、地域の中小企業と「共存・共栄を図る」というスタンスで連携を行っている事例もあります。中小企業のなかには、世界市場でトップシェアを占めるような、高い技術力を保有する企業も少なくありません。
大企業にとっても、中小企業はなくてはならないパートナーなのです。

文部科学省「平成29年度科学技術白書」によれば、平成24年度から平成26 年度の間にイノベーション活動を実施した企業のうち19%は、社外からの知識・技術の取得源として、 「グループ外の他社」を利用しています。
企業の研究開発がスピードアップを迫られる中、イノベーションに取り組む企業は、外部からの研究成果を取り込みイノベーションにつなげようとしていることが伺えます。
大学等と企業との共同研究件数についても、大学等と中小企業との共同研究件数は緩やかに伸びており、オープン・イノベーションの潮流が中小企業にも流れてきているといえます。

中小企業だって、オープン・イノベーションの時代

製品ライフサイクルの10年前との比較(平成29年度科学技術白書)
http://www.mext.go.jp/component/b_menu/other/__icsFiles/afieldfile/2017/06/02/1386489_004.pdf
※調査データの出典 文部科学省科学技術・学術政策研究所「第4回全国イノベーション調査統計報告」
https://www.nistep.go.jp/wp/wp-content/uploads/NISTEP-NR170-FullJ.pdf

オープン・イノベーションに取り組む際の注意点とは

オープン・イノベーションに取り組むにあたっては、自社内・企業グループ内での協業とは異なる点で注意が必要となってきます。

例として、今まで取引が無かった企業同士では、文化や慣習の違いや、意思決定スピードが合わないがためにコミュニケーションがうまく行えず、協業がうまくいかない、という失敗事例が挙げられます。
また、大手企業と中小企業の間にある、契約交渉や知的財産に関する知識・ノウハウの格差も協業を行う上での課題となっています。情報・ノウハウの流出に対する不安などから、大企業が中小企業との協業をためらってしまう、というケースも見かけられます。

今後、大企業や大学、研究機関などとオープン・イノベーションに取り組む中小企業は、取組の各段階において、以下のようなアクションを行うことが必要となってくるでしょう。

1)外部連携・外部資源の活用についての戦略的な検討
2)協業先を探しマッチングを実現するためのネットワークづくり・信頼関係の構築
3)知的財産の保護のための契約プロセスの整備
4)組織間のコミュニケーションの円滑化

中小企業がオープン・イノベーションを実現するためには、イノベーションを推進する、地域の支援機関や技術紹介会社といったコーディネート役の力をうまく活用しながら、これらの注意点や課題をクリアしていくことが求められるでしょう。

狩野 詔子

狩野 詔子

株式会社プロデューサー・ハウス

PROFILE

ライター、コンサルタント
大阪府中小企業診断協会 観光・サービス経営研究会 代表

サービス業・観光業における生産性向上を専門とするコンサルタント。
ヤマハ株式会社、デロイトトーマツコンサルティング合同会社にて、製造業の国内外拠点における業務改善プロジェクトに多数参画。
現在はテーマパーク運営企業にて飲食部門・バックオフィス等の業務効率化を手掛ける。

共著「一人ひとりの『働き方改革』講座」(日本マンパワー株式会社)
執筆記事「サービス業で使える!生産性を上げる『カイゼン』テクニック5選」、「サービス業のマーケティング入門!自社の『7P』を把握しよう」(中小企業庁ポータルサイト「ミラサポ」)ほか多数。

お問い合わせ先
株式会社プロデューサー・ハウス
Web:http://producer-house.co.jp/
Mail:info@producer-house.co.jp

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