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  • 2019.09.04

新事業展開に取り組むためのキーツール、「デザイン思考」とは?

新事業展開に取り組むためのキーツール、「デザイン思考」とは?

経済・社会構造の変化の中、中小企業は既存事業だけでなく、新事業展開に取り組むことが求められています。

私は支援機関において、「デザイン思考」を取り入れた新製品開発を支援する事業を担当しました。しかし、「デザイン思考」の取り組みについて、中小企業のなかではまだ認知度が高いとはいえず、うまく使いこなせないことも少なくありません。

「デザイン思考」を取り入れ新事業展開に取り組んだ中小企業は、新たな事業の柱をつくり、新たな顧客獲得につなげています。さらに、組織横断的なプロジェクトチームで取り組んだことで、組織活性化につなげている企業もあります。本稿では、「デザイン思考」が求められている背景、および「デザイン思考」の思考プロセスについて解説します。

新事業展開に取り組む企業は、経常利益率が増加傾向

平成の30年間では経済・社会構造の大きな変化がありました。一つは少子高齢化に伴う人口減少による、国内需要の減少です。国外に目を向けると、新興国の台頭を始めとしたグローバル化による国際競争の激化があります。ICT技術の急速な発達を背景にしたデジタル化は「第4次産業革命」とも言われています。

このような大きな経済・社会構造の変化に対応するため、中小企業は既存の事業だけでなく、積極的に新事業への取り組みを進め、新たな収益の柱を作っていくことが求められます。

新事業展開に取り組むためのキーツール、「デザイン思考」とは?

(出所:中小企業庁編「2017年版中小企業白書」)

2017年版の中小企業白書では、新事業展開の取組みと経常利益率との傾向について調査しています。上図を見ると、新事業展開を実施している企業は、実施していない企業と比べて、経常利益率が増加傾向にあることがわかります。

しかし、新事業展開は容易にできるものではありません。支援先の経営者からの声でも、「どのように市場を見極め、新事業を作り上げていけばよいのかわからない」という声を伺います。新事業展開を考えるには、既存事業のフレームワークにこだわらず、今までにない発想をすることも必要です。ここで、ヒントとなるツールの一つが、「デザイン思考」です。

「デザイン思考」とは?

(1)デザイナーの考え方をもとにした、イノベーションの技法


「デザイン思考」とは、デザイナーがデザイン業務で使う思考のプロセスを活用した、前例のない課題に対して解決方法を導くための思考プロセスです。

デザイナーというと、パッケージやチラシのデザインといった、「見た目をきれいにする」という役割を想起する方も多いかもしれません。「現状の状態をより好ましいものに変えるべく行為の道筋を考案するものは、だれでもデザイン活動をしている」と、『システムの科学』の著者ハーバート・サイモンが述べているように、現状をよりよくする「方法」を考えることが、「デザイン」なのです。

デザイン思考は新製品開発のほか、組織開発や社会課題の解決方法を生み出すためにも取り入れられています。

(2)チームで取り組み、多様な価値観を取り入れる


デザイン思考ではチームをつくり、多様な価値観を取り入れて複数人で考えます。コミュニケーションを重視することで、より創造的なアイディアを創出するマインドを作ることが、デザイン思考の特徴です。

製品開発プロセスにデザイン思考を取り入れたある企業は、年齢・役職を問わず、様々な職員を新規事業のプロジェクトチームに参加させました。社長や役員たちが思いも浮かばなかった視点や切り口を若手社員やアルバイトが出し、そのアイディアを基にした製品で、新たな顧客を切り開くことにつなげています。

デザイン思考の5つのプロセス

デザイン思考は次の5つのプロセスで実施します。

新事業展開に取り組むためのキーツール、「デザイン思考」とは?

① 共感
この「共感」のプロセスは、人々の潜在的な欲求を探すプロセスです。ユーザーがいる現場にいって観察したり、ヒアリングをしたりことで、その行動を「なぜ」行っているのか、本当に望んでいることは何かを探ります。
例えばある支援先では、新製品を開発するにあたり、顧客の工場に何度も足を運びました。結果、顧客もまだ気がついていなかったニーズを探り、新製品に反映させたのです。
デザイン思考のプロセスは、製造業にしばしば見られる、「技術ありき」の製品開発とは正反対である「人間中心」のプロセスをたどります。従来のビジネスではあまり検討されなかった、直感やインスピレーションも重視します。

② 問題定義
「①共感」で見つけた事象から、それらに共通する着眼点や状況が発生している要因を見つけるステップです。
例えば、小さな子どもがいる共働きの夫婦を観察し、「家事をする時間がない」「時間がないため余裕がなく、子どもに感情的になってしまう」など、数々の事象を発見したとします。どの着眼点を自社で解決するのか、まだ他社の製品で解決できていない課題がないかを見極める作業と考えると、イメージしやすいのではないでしょうか。

③ 創造
「②問題定義」でまとめた課題に対して、解決策をできるだけ多く考えます。この段階でよく用いられる手法は、ふせんなどを用いて多くのアイディアを出す方法です。様々な考えをもつ複数人で構成されたチームで実施することで、アイディアが新たなアイディアを呼ぶことにつながります。

④ プロトタイプ
「③創造」で出たアイディアをもとに、プロトタイプ(ごく簡易な試作品)を作ります。このプロトタイプを作るために時間や費用をかける必要はありません。支援先もホームセンターで手に入る身近な材料やダンボールでつくっていました。今では3Dプリンターも普及しており、プロトタイプを素早く作ることが可能となっています。

⑤ テスト
「④プロトタイプ」を製品のターゲットとするユーザーへテストし、②問題定義で設定した課題を解決できるか検証します。テストの結果によっては、②問題定義で設定した課題を見直すこともあるでしょう。

デザイン思考を取り入れた製品開発において、④プロトタイプと⑤テストの段階で「もっと市場調査をして、しっかりした製品でないとテストの意味がないのでは」という声もしばしば伺います。
社会変化が大きい今、調査に時間をかける時間はあまりありません。プロトタイプをユーザーに早い段階で触れさせることで、ユーザーの声が反映された新たな課題が生まれるとともに、後々の逆戻りを防ぐこともできます。「デザイン思考」はユーザーも一緒に巻き込んだ製品開発であるといえるでしょう。

「デザイン思考」を中小企業に取り入れるには

「デザイン思考」については、本を読んだだけでは実践に移すことは難しい側面があります。ユーザーを観察し、大量のアイディア出しをしたあと、そのアイディアをどう収束させてプロトタイプへ落としていくか……という一連の作業は、実践してみると大変むずかしいものです。

まずセミナー等に参加し、「デザイン思考」の一連のプロセスを体得してみることがよいでしょう。また、自社だけでは幅広い視点をもって取組みにくい側面もあるため、外部専門家としてデザイン思考を理解しているプロダクト・デザイナーや、中小企業診断士にアドバイスを依頼することも効果的です。公的機関の支援でデザイン思考を取り入れているところもあります。

デザイン思考を組織で体得し、サイクルを自力で回すことで第2・第3の新事業を生み出している企業もあります。ぜひ、読者の皆さんも「デザイン思考」を学んでみてください。

米澤 智子

米澤 智子

株式会社プロデューサー・ハウス

PROFILE

ライター、コンサルタント

1985年生まれ、神奈川県出身。

2009年地方銀行入行、債権管理および中小企業融資業務に従事した後、総務部門で銀行全体の通信設備管理や株主総会運営に携わる。

2016年中小企業診断士登録。

2017年より公的機関に勤務、専門家派遣事業において小売・サービス業を中心とした支援に携わる。

お問い合わせ先
株式会社プロデューサー・ハウス
Web:http://producer-house.co.jp/
Mail:info@producer-house.co.jp

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