シンガポールの越境EC市場動向は?売れ筋商品と人気のECサイト
ASEAN地域でもっともネット環境が整備されているといわれ、スマホの普及率が高く、所得水準も高いシンガポール。EC市場の拡大が見込まれている国のひとつで、2017年には米アマゾンも参入し、競争は激化していくと予測されています。ここでは、シンガポールにおける近年のEC市場動向について紹介します。
シンガポールのEC市場規模と利用者の傾向
シンガポールはASEANのなかでもインタ―ネットの普及が顕著で、クレジットカードも多く利用されている国です。その反面、全小売りに占めるECの割合は2%程度と極端に低く、これからの市場拡大が大いに期待されています。
シンガポールの政府系投資ファンド、テマセク・ホールディングスと米国のグーグルが2016年に行った共同調査によれば、シンガポールのEC市場は2015年が10億ドル。これが、2025年には54億ドルに拡大すると見込まれています。
この状況を鑑み、2016年4月にはシンガポールに本社がある EC事業者「ラザダ」の株の過半数をアリババグループが買収。2017年7月には米アマゾンが、プライム・ナウ(会員制の短時間配送サービス)で展開をスタートしました。
決済方法は、VISAやマスターカードなどのクレジットカードやPayPal、銀行振り込み、代金引換といった日本でもおなじみの方法があるほか、小切手郵送で決済されるケースもあります。ちなみに、現在展開しているECサイトの8割はクレジットカード決済が可能です。
これらの決済方法については、2015年にシンガポール情報通信メディア庁が興味深い調査を行っています。ECサイトで商品購入をしたことのある人のうち、71%がクレジットカード決済の経験があると回答。ただし、15~24歳でももっとも多かったのが代金引換(59%)、25~34歳ではデビットカード決済などの銀行口座を利用した決済(60%)となっていました。シンガポールEC市場に参入する際には、多彩な決済方法を準備しておく必要がありそうです。
シンガポールのEC市場売れ筋は?
シンガポールのECショップでの売上げが高いのは航空チケット、衣類、電化製品など。女性では、美容関連商品やサプリメントの購入も多くなっています。
注目すべきは、シンガポールへの越境ECには、数多くの管理品目が設定されている点です。サプリメントは販売数が多く管理品目の設定はありませんが、医薬品、化粧品やシャンプーなどの美容関連製品、玩具の一部は管理品目となっています。これらを販売するには所轄当局から輸入ライセンスを取得する必要がありますので注意しましょう。
シンガポールは海外との交流も盛んで、ASEANの中心地としての機能も有することから、すでに海外のECサイトで商品を購入する人も一定数います。そのため、参入の際には先行企業の取り組みを参考にしながら独自性を見いだし、差別化を図っていく必要があります。
日本のECサイトも近年に参入しているものの、必ずしも成功を収めているわけではありません。楽天は2014年1月に大きな注目を集めながら市場参入しましたが、2016年2月に閉鎖。現在は海外販売向けの外部サイトでの対応をするだけとなっています。
ジェトロの発表によれば、日系企業が運営を行うECサイトは26ほどあります。実店舗を持ちながらサイト運営も行う企業と、ECサイトのみを行う企業がほぼ同数となっています。アジアのいくつかの国では、「日本ブランド」を武器にすることで消費者の注目を集め、知名度を利用することも可能となるケースがありますが、シンガポールでは競争が激しく、事情が違うことを心得ておくべきでしょう。
シンガポールで人気の高い2大ECサイト
シンガポールで人気が高く、日本からの出品が可能なサイトを2つ紹介します。
■ラザダ(Lazada)
http://www.lazada.sg/
シンガポールに本社を置くECサイトで、2012年にインドネシア、マレーシア、フィリピン、タイなどでサイトを立ち上げています。現在は、中国のアリババグループが買収し、ASEAN各国への販売力の強化が見込まれています。
扱い商品は幅広く、モバイル機器やパソコン、家電、美容品、ファッション、玩具などほぼすべてのカテゴリーの商品を扱っています。シンガポールでの物流の弱さを改善するため、「Seller Center」という専用システムを使って商品の管理や配送を行うのが特徴で、ラザダ内の決済システム「Payoneer」への登録も必要となります。
■キュー・テン(Qoo10)
http://www.qoo10.sg/
ファッションや健康食品、ダイエット商品、デジタル機器、家電などの商品を幅広く扱う総合ECサイトです。日本でも利用することができ、世界に拡大を続けています。シンガポールでは登録ユーザー数が非常に多いのが魅力のひとつです。
出展者は販売額とサービス評価によってグレード分けされるのが特徴で、これが上がるとサービスフィが割安となります。なお、グローバルサイトに登録するには、日本のサイトへの登録が必須となっています。
自社の強みをいかせる進出国を選ぼう
越境ECでは自社に適した進出国を見極めることが重要です。そのためには、成長性やトレンド、参入障壁などの観点をもちながら情報収集をすることが必須となります。今後の市場拡大が見込まれることにくわえ、ASEAN各国への将来的な足がかりとなることも期待できるシンガポールは、多くの企業にとって検討したい国といえるでしょう。
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