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  • 2019.08.09

アトツギはカッコいい!今注目の『ベンチャー型事業承継』とは

アトツギはカッコいい!今注目の『ベンチャー型事業承継』とは

中小企業に携わる皆さまは、「ベンチャー型事業承継」という言葉を聞いたことはありますでしょうか。

「ベンチャー型事業承継」とは、先代から受け継ぐ経営資源を基盤としながら、後継者が新規事業や業態転換、新市場参入といった新たな領域に挑戦し、社会に新しい価値を提供する——という形の事業承継を指す言葉です。

新規に起業する「ベンチャー」でもなく、先代とまったく同一の事業を行う「事業承継」とも少し異なる、「ハイブリッド型ベンチャー」、「事業承継の新たな形」として提唱された「ベンチャー型事業承継」は、NHKの番組「おはよう日本」でも取り上げられるなど、徐々に浸透してきました。

この言葉が提唱された背景には、日本の中小企業の深刻な悩みである「後継者不足」という課題があります。

経営者の高齢化と後継者の不在に悩む中小企業

中小企業庁がまとめた2019年版「中小企業白書」によれば、経営者年齢の高齢化は、年々進行しています。
中小企業の経営者について「最も多い年齢」は、1995年には47歳だったところ、2017年には69歳にまで上昇しています。
2017年において、年齢が「70歳超」である経営者の数は198万人にのぼり、経営の担い手の2人に1人が60歳以上、5人に1人が70歳以上という状況です。

アトツギはカッコいい!今注目の『ベンチャー型事業承継』とは

出典:2019年版「中小企業白書」第2-1-2図 経営の担い手の推移

さらには、今後10年のうちに、70歳を超える中小企業・小規模事業者の経営者は約245万人となり、そのうちおよそ半数の127万人は「後継者未定」の状態であるといいます。

実際に、廃業予定企業のおよそ3割は「後継者難」を理由として廃業を検討しています。みなさまの身の回りにも、「子供に事業を継ぐ意思がない」「子供がいない」「後継者が見つからない」といった理由で、将来の廃業を考えている中小企業の経営者や個人事業主が、多かれ少なかれ、いらっしゃるのではないでしょうか。

経営者が事業承継を行うことができない場合、利益を上げている企業であっても廃業となってしまったり、その企業が創出し維持してきた雇用や、磨き上げてきた技術・ノウハウが失われてしまったりと、地域経済にとっても産業にとっても、大きなデメリットがあります。

このままでは、経営者の高齢化・後継者不在により中小企業の廃業が急増し、2025年頃までに累計約650万人の雇用、約22兆円のGDPが失われる可能性さえあると、中小企業庁は警鐘を鳴らしています。
まさに「経営者の高齢化」「後継者の不在」という2つの問題は、日本経済の危機を左右する、大きな課題であるといえます。

そこで、これら問題の解決策の一つとして「法人向け事業承継税制」や「事業引継ぎ支援センターの設置」といった施策に並び、提唱されたのが「ベンチャー型事業承継」なのです。

アトツギはカッコいい!今注目の『ベンチャー型事業承継』とは

出典:中小企業庁 事業承継・創業政策について(平成31年2月5日)

多様なベンチャー型事業承継のバリエーション

前述のように、「ベンチャー型事業承継」とは、承継した既存の経営資源をベースに、後継者が新規事業や業態転換、新市場への参入などに挑戦することを指します。一口に「ベンチャー型事業承継」といっても、その態様はさまざまです。

「うちには既存資源がないから、ベンチャー型事業承継は難しい」
「うちの後継者候補は若くて事業の知識もないから、ベンチャー型事業承継は難しい」とお悩みになる経営者の方も多くいらっしゃいますが、ベンチャー型事業承継において、経営資源や後継者のスキルが高いハードルになる、ということは多くありません。

活用できる既存の経営資源については、設備や人材といった有形のものから、取引関係やノウハウ、情報といった形のないものまで、幅広い資源が活用可能です。
特に「無形の経営資源」は、社内ではなかなかその貴重さに気づきづらいものですが、事業承継でこそ得ることができるものが多く存在しています。例えば、先代経営者が長年培ってきた取引先・顧客との信頼関係は、ベンチャー企業が一朝一夕に獲得できるものではありません。

また、後継者候補の年齢の若さや事業知識の少なさも、武器になりえます。
「若者、よそ者、変わり者」はイノベーションの起爆剤になりうる人的要素だと言われています。業界にとっての「よそ者」であるからこそ持っている視点やアイデアが、新規事業のヒントになる可能性は大いにあるでしょう。

例えば、異業種で経験を積んできた後継者であれば、異業種における知見や他産業分野のノウハウを活用したり、語学に自信のある後継者であれば、海外市場進出やインバウンド顧客の獲得に取り組んだりするなど、後継者の特性や興味、得意分野によって、多様な分野、多様な手法を用いたチャレンジが可能です。

まずは自社が持っている有形・無形の経営資源を棚卸しし、整理するとともに、後継者候補の特性や得意分野、興味のある分野と掛け合わせることができないかと検討してみることが、ベンチャー型事業承継の第一歩といえるでしょう。

「かっこいい」ベンチャー型事業承継が、中小企業を救う

アトツギはカッコいい!今注目の『ベンチャー型事業承継』とは

中小企業白書によれば、「ベンチャー型事業承継」という言葉は、単に言葉を刷新する意図だけではなく、「中小企業の事業承継」のイメージを、「ベンチャー」という言葉が持つ前向きなイメージに変えていこうという意思が込められているといいます。

「ベンチャー型事業承継」という言葉の提唱者が立ち上げた、一般社団法人ベンチャー型事業承継では、34歳以下の若手後継者を「アトツギU34」と表現し、ハッカソンをもじり、家業の経営資源を活用したビジネスアイデアを競う「アトツギソン」というイベントを各地で開催しています。

経済産業省の近畿経済産業局では、後継者を「既存事業をリノベーションする者」=「Renovator(リノベーター)」と位置づけ、新たなイノベーションを創出する後継者の支援を行っています。学生や若手後継者を対象とした、既存企業のイノベーション創出のための講座を実施するなど、後継者となることが決まっていない早期段階から、家業を持つ若者に働きかけています。

このように、中小企業の後継ぎ候補となる若者を「アトツギ」「Renovator」と呼んだり、事業承継を「ベンチャー型事業承継」といった新たな言葉で定義したりすることで、「中小企業の後継ぎ」という言葉が持つイメージの刷新が図られていることがわかります。

「起業家を目指すのもいいけれど、二代目、三代目社長として会社を継ぐのもかっこいいじゃないか」と、後継者候補にワクワクしてもらえるような取り組み・魅せ方を工夫することや、新規事業・新市場へのチャレンジを推奨する気風を社内に醸成していくことが、後継者不在に悩む中小企業にとって重要なポイントであるといえるでしょう。

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