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  • 2018.11.08

持続可能な街づくりから 未来に残るビジネスを考える(第1回)

オレゴン州 ポートランド レポート 前篇

オレゴン州 ポートランド レポート 前篇

大量生産・大量消費の経済システムが限界を迎えつつあります。

内閣府の「国民生活に関する世論調査※1」によると、1980年代以降、消費者の価値観はモノの豊かさよりも心の豊かさに力点を置く傾向が強まっていると言います。

商品の購買時には、その商品背景や開発ストーリー、社会貢献に繋がるかどうかを意識する人が増えています。実際に、フェアトレード商品やオーガニック商品を購入したいと考える人が増えていることを示すデータもあります※2
環境に優しい製品、企業姿勢に共感できる製品、つまりサステナブルな製品や企業が選ばれる時代に突入したと言えそうです。

そうした時代の流れを先取るように、「人と環境に優しい都市」「全米でもっとも住みたい都市」などの評価と共に、世界中から注目を集めている街がアメリカにあります、オレゴン州ポートランドです。
ここでは、サステナブルな土地のイメージを追い風にして、アウトドア分野やIT分野などのさまざま企業が自社のブランド価値を高めています。

サステナブルとは具体的にどういうことなのか?
かつてポートランド市開発局で都市再生と経済開発の最前線で活躍された山崎満広さんに、ポートランドの街づくりや、そこに集まる人々や企業の考え方をお聞きし、サステナブルの本質について探ってきました。

オレゴン州 ポートランド レポート 前篇

山崎 満広(やまざき みつひろ)

1975年東京生まれ。茨城県の工業高校を卒業後、95年に渡米。南ミシシッピ大学にて学士と修士号を取得。専攻は国際関係学と経済開発。卒業後、建設会社やコンサルティング会社、経済開発機関等へ勤務。2012年にポートランド市開発局に入局し、ビジネス・産業開発マネージャー、国際事業開発オフィサーを歴任しポートランド都市圏企業の輸出開発支援と米国内外からポートランドへの投資・企業誘致を主に担当。
2017年6月より独立起業し、地域経済開発、国際事業戦略、イノベーション・コンサルタントとして日米を中心に多くのプロジェクトを手がける。また、グローバル イノベーションデザイン コンサルティング会社Ziba Designの国際戦略ディレクター、つくば市まちづくりアドバイザー、東邦レオ顧問アドバイザー、拓匠開発株式会社顧問、大鏡建設株式会社顧問、ポートランド州立大学シニアフェロー等を兼任。
著書に第7回不動産協会賞を受賞した『ポートランド 世界で一番住みたい街をつくる』(学芸出版社)、『ポートランド・メイカーズ クリエイティブコミュニティのつくり方 』(学芸出版社)がある。

持続可能な“街づくり”は 長く愛され続ける“商品づくり”に似ている

1970年以前のポートランドは、全米の他の都市と同様に、中心市街地は荒廃し、郊外の乱開発による自然破壊が進んでいました。

その後、ヒッピー運動を追い風に、自由で創造的な文化が根付き始めると、他都市に先駆けて行政・住民・デベロッパーが一体となった街づくりをスタート。
今や市街地を歩けば豊富な緑と水を讃えた公園がそこかしこにあり、歩行者優先の優しさに包まれた豊かな都市へと変貌しました。

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再開発により新たな賑わいが生まれたパール街区

ポートランドの再開発にあたっては、行政・住民・デベロッパーが同じテーブルに座り、「どんな街が豊かなのか?」「どんな街ならば100年先も残っていくのか?」が徹底して議論されました。
確実な利益が求められるデベロッパーでさえも、中長期の視点で街の価値を引き上げることが自社のメリットにもなると理解し、住む人優先の開発を徹底しました。そのような街づくりの過程は商品のプロトタイピングと似ていると山崎さんは言います。

「質の高い商品を作るにはまずハード(外観)を作り込む前に、そこにはどんなソフト(機能や役割)が乗るかを考える必要があります。どんな形なのか、どんな人が使うのか、どんな匂いがするのか、そこを検討しながら、ユーザーへインタビューしてまた検討を重ねます。そして、その結果に合わせて、ハードの形も少しずつ修正していきますよね。ポートランドのまちづくりもまさに同じでした」

街づくりはステークホルダーの数が多く、数百人クラスの人が関わるのでとても難易度が高い問題です。しかし、その過程を妥協せずに議論を突き詰めたからこそ、長く愛される街が生まれたのです。
この考え方の基本は、ものづくりやサービスを考える際にも大いに活かすことができる視点ではないでしょうか。

社会のベネフィットを重視する 次世代を生きる若者たち

地域を良くしたい、社会を良くしたいという意識の高まりもあり、消費者の商品を選ぶ際も、その背景にある存在意義が重視されるようになりました。山崎さんは、その傾向は特に若い世代に顕著だといいます。

「2000年代以降に生まれたジェネレーションZと呼ばれる世代は、未来への漠然とした不安に包まれて育ちました。温暖化は進み、賃金は上がらず貯金もできない。少子高齢化や地方衰退など、生まれながらにして多くの社会課題にも直面しています。彼らは、今の大人が想像する以上に環境への配慮に敏感になっています」

今後、企業やブランドが大きな共感を得ていくためには、そうした価値観に寄り添う姿勢が不可欠になっているようです。

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改めてポートランドに住む人の暮らしを眺めてみると、“緑や水が豊富”という環境先進都市のイメージだけではない印象を受けます。 街全体のシェアリングエコノミーへの意識は高く、UBERやLYFTなどのライドシェアの他、BIKETOWNというシェア自転車、最近ではBIRD、Lime、SKIPというシェアリングの電動スクーターの姿も見かけるようになりました。歴史や文化、自然を尊重しながらも、新しい価値を気軽に受容してくれる懐の深さを感じます。

“持続可能性”を求めて 多くの企業がポートランドへ進出

ここ数年は、ポートランドの“住み心地”を求めて、全米中から人が集まっていると言います。

「ITのハードとソフトウェアエンジニアリング分野では長年にわたりシリコンバレーが注目を集めてきましたが、その裏では伸び悩みという事実もあります。シリコンバレーは、あまりに大きくなりすぎたため、よほどの結果を出さない限り企業が機能を維持することは難しくなってきています。そこで注目されているのが、シアトルやデンバーやポートランドです。サステナブルな意識が高い街の人間関係は非常にフラットで、企業間の人材の交流も活発です。たとえ属する企業が競合であっても、秘密事項以外はみんなで共有する意識をもっています。その点ではいわば世界の最先端とも言えるかもしれません」

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西海岸ならではの、ゆるやかなコミュニケーションが人々をつないでいる。

そんなポートランドのブランドイメージを上手く使いさまざまな企業が価値を高めています。
世界的に人気の高いアウトドアブランド「Columbia」が本社を構える他、ポートランドの隣町ビーバートンには世界的スポーツブランド「NIKE」が本社を構えています。
優秀なIT人材も集まることから、GoogleやAmazon、Yahoo!やSalesforceなど、名だたるIT企業がオフィスを構えはじめているといいます。

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アウトドアシューズの「KEEN」は、ポートランドの環境に惚れ込み創業後に本社を移転した。

後篇では、さらにサステナブルな視点から、企業やブランドのあり方を探っていきます。

【出典】
※1 内閣府 国民生活に関する世論調査(平成25年6月調査)
※2 株式会社ヤラカス舘 SoooooS.カンパニー「生活者の「社会的意識・行動調査」結果 50%超の生活者が、商品の「安さ」より「社会性の高さ」を評価!」2015年6月8日

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