ニッチ市場でシェアを獲得するには?グローバルニッチトップ企業から学ぶ3つの法則
経済産業省では、ニッチ市場において国際的に高いシェアを獲得している中小企業を「グローバルニッチトップ企業(GNT)100選」として選定しています。限られた分野で各国の市場に深く入り込み、世界的に高いシェアを獲得している企業です。
特定分野の製品や技術に強みを活かすことで、大企業並みの利益率を確保し、ニッチ市場でゆるぎない優位性を獲得し続けられるチャンスが広がります。ここでは特定分野において国際的競争力をもつ先駆者の事例を紹介しながら、成功のポイントに迫っていきましょう。
全自動どら焼き機で世界シェア100%
埼玉県所沢市に本社を構えるマスダックは、全自動どら焼き機の販売で、世界シェア100%の会社です。現在の販路は、欧州、中東、北米、中米、アフリカと、どら焼きのイメージをくつがえすほどのグローバルな展開を行っています。
マスダックのどら焼き機は1959年に開発され、国内のシェアをほぼ独占。2002年に開催されたパリ国際製パン・菓子見本市「ユーロパン」に出展したのが、海外進出のスタート地点でした。ドイツの2003iba見本市出展以降は、「サンドイッチパンケーキマシーン」として認知され、世界進出を加速させています。
成功の要因は、ユーロパンで得た外部パートナーの存在です。欧州の食品機械業界に精通したオランダ人パートナーのサポートにより、餡をチョコレートクリームに変えた、海外仕様のどら焼きにたどり着きます。
どら焼きをサンドイッチパンケーキとして、海外のニーズに適応させた柔軟性が、ニッチ市場獲得の大きなポイントになったといえるでしょう。
錆びたネジを簡単に外すプライヤー「ネジザウルス」
非常にシンプルな悩みでありながら、世界の誰もが実現できなかった解決策を提示したとき、世界シェア100%の可能性が生まれます。これを実証しているのが「ネジザウルス」という商品です。穴がつぶれたりして抜けなくなったどんなネジでも、つかんで回すだけで外すことができるという機能を持っています。
開発したのは、大阪府大阪市にある従業員30名の株式会社エンジニアです。ネジザウルスが外せるのは、つぶれたネジ、錆びたネジ、固着したネジ、そして一般的なドライバーが合わない特殊ネジです。つまり、ほぼすべての「外れないネジ」がネジザウルスを使えば、苦もなく解決します。
ネジザウルスは、じつは2002年より業務用として存在していました。リーマンショック以降に収益が激減した折、顧客のニーズを分析し、家庭用に改良して2009年に新型を発売。瞬く間にヒット商品となり、180万本を売り上げます。成功のカギは、どこにでもある悩みをピンポイントで解決できたこと、実際に使った人たちの感想が口コミやメディアで広がりを見せたことです。
完璧にネジを外せるプライヤー型の専用工具は、世界のどの国にもありませんでした。2011年に4代目に当たる「ネジザウルスGT」が権威あるドイツの工業デザイン賞、iFを受賞したのを機に認知度が向上、現在では世界シェア100%を達成しています。さらに2017年には6代目「ネジザウルスZ」が再び、iFデザイン賞を受賞。今後もさらなる海外展開が期待されます。
パリコレにも採用された世界一の極薄織物「天女の羽衣」
石川県七尾市の株式会社天池合繊が世界シェアを独占しているのは、超軽量織物分野。
その商品「天女の羽衣」はなんと約40分の1ミリの糸で織られた、世界一軽く、薄い織物です。薄く、軽く、柔らかで上品な光沢をまとうこの繊維は、ファッション業界から注目を浴び、パリのオペラ座やハイブランドのパリコレクションに毎年採用されています。
「天女の羽衣」の前身は、じつは産業資材用の素材として開発されたものでした。用途変更の必要性に迫られ、視点をファッション分野へと転じます。繊細で美しいファッション用途の繊維とするために、設備機器の改良を重ね、世界一の軽さと薄さを実現しました。
圧倒的な技術力と、日本古来の伝説にちなんだ神秘的なネーミングにより独自のブランドが確立された今では、世界的なファッション企業からの注文が殺到する存在となっています。
ニッチ市場は中小企業にこそチャンスが多い分野
商材の領域を絞り込むことで、市場に深く食い込む展開が可能になります。ニーズに対しての貪欲な研究精神と商品開発への情熱が、低迷しがちな業界にあって活路を開きます。
ニッチ市場は、小回りがききやすい中小企業こそ狙いたい領域です。世界シェア1位となるグローバルニッチトップ企業へのチャンスは、どんな会社にも平等にあります。自社のポテンシャルを信じ、世界の高みを目指してみてはいかがでしょうか。
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