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【経営者必見】小さな会社のための”財務の教科書”(第2回)

お金を残すためのお金の儲け方

1. はじめに

お金を残すためのお金の儲け方

私達は、会社経営の目的は、社員と家族を幸せにし、会社をとりまく全ての人々を幸せにすることと定義しています。そのために会社はお金を儲け、お金を残さなければなりません。


今回は財務体質を強化するために一番重要なお金の儲け方について説明します。

2. 会社経営で一番重要なのは社長の戦略

経営コンサルタントの一倉定先生は、「電信柱が高いのも、郵便ポストが赤いのも全て社長のせいだ。会社経営は社長で99%決まる」と言っておられます。

特に中小企業の経営においては、ほぼ社長で決まります。

ところで儲かっている会社と儲かっていない会社の違いはなんだと思いますか?
それは差別化です。
メーカーならば製品、技術、ビジネスモデルが他社に比べて差別化されているか、メーカー以外なら商品、サービス、ビジネスモデルが差別化されているかです。

すなわち儲かっているかどうかは会社の商品等が差別化されているかどうかで決まります。
会社の中で誰が差別化された商品、サービス、ビジネスモデルを開発しているかといえば社長です。

ですから、一倉先生も99%会社は社長で決まると言っています。会社は過去及び現在の商品等が差別化されているから儲かっています。経営は環境の変化に対応して、自社の商品等を変えていかなければなりません。
その決定をするのが社長です。

社長の仕事は、未来への商品、サービス、ビジネスモデルの選択です。この選択によって会社の未来が変わります。これが戦略です。

そして戦略の誤りは、営業力、組織力、財務力等の技術ではカバーできません。会社の未来は戦術ではなく、戦略で決まるからです。

戦略は社長、戦術は全社員で考えるべきものです。

3. 粗利益率で戦略は決める

戦略とは言い換えると「お金を儲けるためにどこに手を打つべきかを決めること。」です。
古田土会計では、古田土式月次決算書を使ってお金の儲け方を毎月お客様に説明しています。

具体的には、未来会計図表【図表1】という表で説明しています。

【図表1】

お金を残すためのお金の儲け方

売上高はP(価格)×Q(数量)、
変動費(VQ)は仕入、外注費、材料、仕入等。
売上高と数量比例性のあるもの、固定費(F)は、変動費以外の経費で人件費や地代家賃等、売上高に関係なくかかるものです。

粗利益(MQ)から固定費を差し引いたものが、利益です。
よって利益は、粗利益と固定費のせめぎ合いで決まります。固定費を粗利益で割ったものが損益分岐点比率(F/MQ=f/m比率)です。

中小企業が儲けるためには、固定費の削減では効果が少なく限度があります。
変動費もそんなに下げられません。下請け先の経営が成り立ちません。大企業ではあたりまえのように毎年仕入先に価格値下げを要求しています。

私達中小企業が一番やるべきことは、粗利益を増やすことです。
粗利益を増やすには価格(P)戦略で行くのか、数(Q)の戦略で行くのか社長は決定しなければなりません。
この決定に重要なのが粗利益率です。粗利益率の高い低いによってPの戦略かQの戦略か決まるからです。

図1で粗利益率と経常利益の関係について説明します。
粗利益率が1%増えると粗利益額が何%増えるのかすぐに計算できるでしょうか。
また経常利益が何%増えるかすぐに計算できるでしょうか。

図1のように売上高が1,000万円で粗利益率が50%の会社があります。
この会社の粗利益率が1%アップすると粗利益額は510万円となり、2%上がります。
同様に、もし粗利益率25%の会社の場合は260万円と4%増え、12.5%の場合は、135万円と8%増えます。

お金を残すためのお金の儲け方

粗利益率が低いほど粗利益率アップによる効果は高くなります。
増えた分の粗利益率を元の粗利益率で割ると粗利益額が何%増えたかがわかります。
「粗利益率が1%上がった、1%下がった、また3%、5%上がった、下がった」というだけでは社員はよくわかりません。この計算方法を頭に入れ、粗利益額がどれだけ変わるか全社員が理解することが大事です。

さらに大事なのは、粗利益率が1%増えると、経常利益がいくら増えるかです。
経常利益は、粗利益額から人件費や経費などを引いたものです。
図1では、粗利益率が1%アップするだけで、経常利益は100万円から110万円と10%もアップすることになります。

私たちはよく中小企業の社長さんを対象に勉強会を開催しますが、その場で電卓をたたいてこの数字を出してみると「粗利益率が1%上がったり、下がったりするだけで利益がこんなに増えたり、減ったりするのか」とみなさん驚きます。

以上のように粗利益率が低ければ低いほど粗利益率の経常利益に及ぼす影響は大きくなります。
よって、粗利益率の高い会社は数の戦略、粗利益率の低い会社が価格(P)の戦略が大事だということがおわかりいただけたと思います。

業種によって粗利益率(m率)は違います。私達会計事務所は、m率100%、美容業は90%~95%、飲食業は66%位、製造業は50%位、卸業、小売は10%~30%です。

4.粗利益率から戦略策定後、儲けを出した事例

古田土会計がA社に関与したのは今から5年前です。
A社は今迄ほとんど利益の出ていない会社でした。(前々期は100万円の赤字、前期は100万円の黒字)

私は一般的なP/Lを古田土会計のP/Lに作り直しました。
両者の違いは、製造原価報告書の労務費と経費を固定費として販売費の中の人件費・経費と一緒にしていることです。すなわち変動費は材料費、外注費、商品仕入に限定しています。

関与したとき作ったのが、図2の比較損益計算書(P/L)の前々期、前期です。

【図表2】

お金を残すためのお金の儲け方

社長は今迄ほとんど利益が出ていないために悩んでおられました。

私は社長に「過去2期間で固定費は6,400万円で変わっていない。売上が上がっても粗利益額がほとんど増えていないのは、粗利益率が44%から41%に下がったからです。
対策としては、粗利益率を1%でも上げる。できたら前々期と同じ44%にならないか。またA社はメーカーで粗利益率が高いので、商品数、顧客数を増やすことが重要」とアドバイスしました。

具体的には数を多く売ること、競い合ったらライバルより1円でも安くして、必ず受注すること。
仕入先への交渉により仕入単価の引き下げや、生産方法の見直し等のコスト削減の努力をした。

その結果、1年後の当期には1,400万円の利益が出るようになりました。
固定費の6,400万円は当期も変わりません。変わったのは粗利益額が6,400万円から7,800万円に増えたことです。粗利益額の増加1,300万円がそのまま経常利益の増加1,300万円になっています。

5.古田土式P/Lによりお金の儲け方を学ぶ

古田土式P/Lは、粗利益率を把握することを目的としており、一般的なP/Lには無い科目の粗利益率、固定費、変動費などがあります。

一般的なP/Lでは気づけなかった「粗利益率が高いか低いかによって打つべき戦略に違いが出る」ことに気づいていただきました。

多くの経営者と社員は経常利益を見ます。
ほとんど儲かっていない会社は、例えばあと1,000万円売上が増えたら利益がいくら増えるか知りません。儲かっていないのだから利益もほとんど変わらないと思っています。

古田土式P/Lと未来会計図を使って売上の増減や粗利益率の増減によって、経常利益の増減を説明すると、みなさんびっくりします。

A社の場合も、数字は銀行報告と税務申告のために作るものだとくらいにしか思っていませんでした。そのために売上総利益率29%と粗利益率44%の違いもわかっていませんでした。

粗利益率が44%あると知ることによって、数(Q)の戦略がいかに大切か社長と幹部が理解し、正しい戦略をとったために1年後には大幅な利益を出すことができました。

6.まとめ

よく生産性を高めるといわれますが、生産性は粗利益額を労働時間、社員数、人件費で割ったものです。
多くの人は、生産性を高めるために、労働時間を短くすることを考えがちですが、中小企業で生産性を高めるのは、分子の粗利益額を高めることです。

粗利益額を増やすために、価格(P)か数(Q)の戦略があります。
価格(P)にこだわり競争にふみいるケースがあります。粗利益額を増やすことが目的ですから競争になったら、粗利益率を犠牲にしても受注すべきです。
受注できなかったら1円も粗利益額は稼げません。

社長は社員と家族を守るために数字に強くなり、会社を成長させて下さい。

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