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倒産寸前だった大阪の小さな工場が復活をかけて開発した かかとのない靴下「つつした」

倒産寸前だった大阪の小さな工場が復活をかけて開発した かかとのない靴下「つつした」

アリババジャパンプレス編集部に「倒産寸前だった靴下メーカーが自宅と工場を売却してまで開発した商品「つつした」、クリエイターとコラボした展示イベントを行っているので是非取材してください」という内容のメールが届きました。

差出人は樋口メリヤス工業株式会社様。ホームページを見ると、「どんな足にもフィットする、かかとのない靴下」という独特な商品を作っている会社だとのこと。かかとのない靴下ってどういうことだろう?と興味が沸き、銀座で行っている展示イベントをのぞかせていただくことにしました。

色とりどりのくつしたが壁にも天井にも並ぶ

向かったのはリクルートG8ビルにあるクリエイションギャラリーG8。
会場に入ると、明るくパワフルな雰囲気の女性が迎えてくれました。迎えてくれた方は、メールを送ってくださった樋口メリヤス工業株式会社 代表取締役の中江優子氏です。

会場を見渡すと、色とりどり、デザインもさまざまな靴下がずらりと並んでいます。
並んでいるのはすべて167人のクリエイターのデザインを編みこんだ靴下で、可愛らしいものもあれば、靴を脱いだときに笑いを取れそうなものまで、たくさんのデザインが壁やトルソー、天井にまで展示されています。ひとつひとつにはデザインしたクリエイターのコメントがあり、ストーリーも含めて楽しむことができます。

倒産寸前だった大阪の小さな工場が復活をかけて開発した かかとのない靴下「つつした」

167のデザインを2台の編機で3ヶ月かかって製作

この展示会を企画したのはリクルートのCREATION Project。デザインを生活用品に組み合わせた作品を展示・販売することで、日本のものづくり技術とデザインを繋げるプロジェクトで、出た収益は義捐金や慈善団体などに寄付されます。1990年から毎年続いており、去年は磁器のカップ、おととしはマフラー&ブランケットなど毎年違うテーマでイベントを行っています。
靴下はずっとやりたいテーマだったそうですが、靴下は大量生産を基本とするメーカーが多く、たくさんのデザインを少量ずつ製作できる会社がなかなか見つからず、やっと探し当てたのが、オリジナルデザインの小ロット製作を行っていた樋口メリヤス工業だったのだとか。

個人や企業のオリジナルデザインを製作していたとはいえ、167ものデザインを製作するのは初めて。最初は受けようか断ろうか迷ったといいます。
「従業員数5名、2台の旧式の編機しかない小さな会社です。古い機械なので製作の途中で故障もあったり、製作には3ヶ月かかりました」と中江氏。

倒産寸前だった大阪の小さな工場が復活をかけて開発した かかとのない靴下「つつした」

製作の過程についてのパネル展示

オリジナルデザインを作る過程で驚いたのは、編機に読み込ませるデザインデータをカセットテープに保存するということ。デザインデータを作るパソコンも編機も30年くらい前に製造されたものを使っています。古い機械は壊れても一部の部品交換で修理することができるため、長く使えるのだそうです

工場復活を賭け、生まれた「つつした」

倒産寸前だった大阪の小さな工場が復活をかけて開発した かかとのない靴下「つつした」

壁や天井にかかっている靴下を見ると、ホームページで見たとおりかかとがなく、つつしたの名前どおり筒のような形をしています。
かかとがない靴下「つつした」はなぜ、どのように生まれたのでしょうか。

1933年に軍手軍足の製造工場として創業した樋口メリヤス工業株式会社。下請けとしての製造は、どうしても安い価格での仕事を受けなければならず、ミリ単位の違いでも返品になるなど負担が大きく、同業者でも倒産してしまう会社をたくさん見てきました。同社も得意先の倒産で負債をかかえ、倒産の危機が訪れます。祖父の代から長年続けてきた会社をどうにか存続させたいと社長に就任したのが、現在の代表取締役、中江氏でした。

靴下の低価格化が進み、安くて質の悪い靴下ばかり売られていることに強い危機感を持った中江氏は、よい商品を直接お客様に売りたいという想いで自社製品の開発にチャレンジします。百貨店や展示会でお客様と直接話し、靴下にどんな不満を持っているかを聞いて回りました。その悩みを解決すべく試行錯誤した結果、どんな足の方にもぴったり合うオーダーメイドのような履き心地の靴下、かかとのない靴下「つつした」が誕生するのです。

一般的な靴下とは逆の編み方で、肌に触れる内側の部分に天然素材を使用、外は丈夫で伸縮性に優れた素材を使っているため、蒸れにくく、つま先やかかとも破れにくいため長持ちするといいます。わたしも購入して履いてみましたが、全体的にとてもよく伸びるため、ゴムの部分だけきつく感じるというようなことがありません。つま先にはしっかりとした厚みがあり、いつも履いている靴下とは全く違う安心感があります。

靴下を売る一般的なお店では陳列したときに商品が綺麗に揃うことが前提のため、こういった編み方の靴下は置きにくいそうですが、自社ブランドなら見た目ではなく素材や履き心地にこだわった商品を販売できます。今は自社オンラインショップを始め、コンセプトを理解してくれる一部の百貨店やセレクトショップで取り扱っているのだそうです。

当日は、製造過程で出る材料を使った人形作りのワークショップに参加させていただきました。靴下のつつの中に綿のようなものを入れて形を作っていくのですが、靴下がかなり伸びる素材で作られているため、どんどん綿が入ります。ぱんぱんに綿を詰めたつつに顔をつけて完成した靴下人形。参加者ひとりひとりでまったく顔や形が違う個性的な人形になりました。

国内をまず固めることに集中。いずれは海外へ。

倒産寸前だった大阪の小さな工場が復活をかけて開発した かかとのない靴下「つつした」

「実は数年前アリババの海外市場開拓セミナーに出席したことがあるんです」
その時は国内を立て直すのに精いっぱいで海外進出までは考えられなかったのだそう。ただいずれは海外につつしたを売りたい、海外に出たいという想いは強く持っており、その日は遠くない未来にやってきそうです。

倒産の危機に面した際、当時の社長だった元ご主人が倒産を希望したため、中江氏は離婚を選び、小学生の息子さん二人を育てながら事業の再建に奮闘しました。そんな背中を見てきた息子さんが自ら会社を継ぐという決意をしてくれたのだと言います。

「アメリカに留学している息子が、卒業したら会社を継ぎたいと言ってくれているんです。
まずは国内をしっかり固めることが最優先ですが、その後は息子の力も借りて絶対海外には挑戦したいと思っています」と嬉しそうに語る中江社長。「海外に出るのは今だ!という時が来たら必ず声をかけてくださいね」と話し、会場を後にしました。

素材や質にこだわり、技術力を活かして作られたメイドインジャパンの商品。
Alibaba.comへの問い合わせやお客様から成約実績を伺うと、海外のバイヤーから日本の製品に求められているのはやはりそういった製品だと感じます。わたしたちアリババ株式会社も、優れた製品をもつ日本の中小企業がどんどん海外にチャレンジできるよう、日本会員様へのサービスを充実させていきたいと改めて思いました。


樋口メリヤス工業株式会社 会社サイト
http://www.higuchiknit.jp/

つつした オンラインショップ
http://higuchiorder.jp/


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