プレゼンを成功に導く魔法のツール
「ストーリーテリング」とは?
「入念に準備してプレゼンしたのに相手の反応がなくがっかりした」
「顧客からプレゼンの内容がわかりにくいと言われてしまった」
上記のような経験をしてプレゼンがもっとうまくなりたいと思ったことはないでしょうか?
そのような方には、近年注目されている「ストーリーテリング」がおすすめです。
本コラムでは自分の考えや主張を伝える手法として、プレゼンテーションの場面において多く活用されている「ストーリーテリング」についてご紹介します。
ストーリーテリングとは
ストーリーテリングを直訳すると、「物語を話すこと」になりますね。ストーリーテリングとは、自分が伝えたい考えや主張を物語にして語ることで、聞き手に強い印象を与えるコミュニケーション手法のことです。実際の体験談やエピソードを交えて物語として話すことで、より効果的に浸透させることができるのです。
ストーリーテリングの手法は企業におけるブランディングやマーケティング、営業活動など、様々なビジネスシーンにおいて活用されています。ただ単に数字やデータを使って論理的に伝えるのではなく、ストーリーを交えて聞き手の感情面に訴えた方が、聞き手の心を動かす可能性が高まるのです。その結果として、プレゼンテーションの成功に繋がるケースが多く見受けられます。
ストーリーテリングの効果
ストーリーテリングの主な効果としては次の3つがあげられます。
1)伝わりやすい
数字やデータの羅列よりも体験談やエピソードを交えて説明することで、聞き手が具体的なイメージを持つことができます。複雑で難しそうな内容でもわかりやすく伝えることができるため、聞き手が内容を理解しやすくなります。
2)記憶に残りやすい
ストーリーがあると人間の記憶に残りやすくなります。スタンフォード大学の研究によると、単なる事実のみを伝えた場合に対して、ストーリーがあった方が最大22倍も記憶に残りやすくなるといった結果も出ています。あなたもお気に入りの映画や小説の内容はよく覚えているのではないでしょうか。単なる数字やデータの羅列だけの説明よりもストーリーを交えた説明の方が断然記憶に残りやすいのです。
3)共感を得ることができる
ストーリーに引き込まれることで、そのストーリーに聞き手が感情移入し、自分事として考えるようになります。「自分にも当てはまるな」とか「確かにそうだな」といった感情を持つことで、聞き手がこちらの考えや主張に共感するようになるのです。
そして、聞き手がストーリーに共感した結果として、こちらが期待する行動をとるようになるのです。
実践する上でのポイント
1)ターゲットとなる聞き手を意識する
ターゲットとなる聞き手の属性に合わせてストーリーの内容を工夫します。聞き手の知識や理解度に合わせた表現を意識することも重要です。例えば聞き手が不特定多数を対象とする場合では、専門用語を使わないなどの点に注意する必要があります。
2)起承転結のある構成にする
単調なストーリーでは聞き手の印象には残りません。基本は起承転結のあるストーリーにすることが必要です。特に逆境や失敗からの復活などギャップのあるストーリーであれば、より強く印象付けることができます。逆境や失敗を乗り越えたストーリーは人の心に響くのです。
3)具体的な描写を盛り込む
具体的な描写があると信憑性が増すため、聞き手がストーリーの内容に引き込まれていきます。また、視覚や聴覚、嗅覚などの五感に訴えかけるような表現をすることも非常に有効です。聞き手にストーリーの情景が浮かぶように、詳細な内容を盛り込めるとよいでしょう。
4)冒頭で興味、関心を持ってもらう
プレゼンにおいて一番記憶に残る部分は最初と最後と言われています。このため最初と最後は特に注力する必要があります。中でも最初は特に重要です。最初の段階でこの話は自分にとっては関係ないと思ってしまうと、人はその後の話を聞かなくなってしまいます。最初の数分で「このプレゼンは自分に関係がある」、「自分にとってメリットがある」と思ってもらうようにすることが重要です。
2つのストーリーを意識する
興味を持ってもらうための代表的な手法として、サクセスストーリーとホラーストーリーの2つがあります。サクセスストーリーとは成功事例を説明することで、その有効性を訴えるものです。わかりやすい例をあげると、「毎朝ヨーグルトを食べるようにするとビフィズス菌を定期的に摂取できるため、正常な腸内環境を維持しやすくなり便秘や下痢の解消につながる」というような感じですね。
一方でホラーストーリーとは失敗事例を説明することで、その有効性を訴えるものです。こちらの具体例をあげると、「自動車保険に加入していないと、万が一事故を起こした時に、事故の相手に対して莫大な補償金額が必要になる」というようなケースです。こちらの方がインパクトは強そうですね。
ストーリーの手法としてはどちらも有効ですが、一般的にはホラーストーリーの方がより効果的だと言われています。人間の心理として成功したい欲望よりも失敗したくない欲望の方が強いのです。不安をあおる提案で聞き手に危機感を与えることで、「この提案を受け入れないと大変なことになる!」と認識させるのです。ただしあまり度が過ぎると逆効果になってしまう可能性が高いので、その点についても注意が必要です。
ストーリーテリングのおすすめ書籍3選
最後にストーリーテリングを本格的に学びたい人のために、おすすめの書籍を3冊ご紹介します。
1)『プロフェッショナルは「ストーリー」で伝える』
アネット・シモンズ著(海と月社)
ストーリーテリングの第一人者によるアネット・シモンズの著書です。この分野におけるバイブル本的な位置づけとなっています。本書では人を動かしたいときに役立つ6つのストーリーを紹介しています。
2)『ビジネスと人を動かす 驚異のストーリープレゼン』
カーマイン・ガロ著(日経BP社)
ストーリーを語ることで人生や仕事を大きく変えた37人の事例を紹介しています。スティーブ・ジョブズやイーロン・マスク、ビル・ゲイツなど著名人の魅力的なプレゼンの内容が紹介されています。
3)『心に刺さる「物語」の力』
キンドラ・ホール著(パンローリング株式会社)
プロのストーリーテラーとして全米で講演を行うキンドラ・ホールの著書です。ビジネス向けのストーリーテリングについて、バリューストーリー、ファウンダーストーリー、パーパスストーリー、カスタマーストーリーの4種類のストーリーに分けて説明しています。
今回は主にプレゼンテーションでの活用方法についてご紹介しました。しかし前述のとおり、ストーリーテリング自体はプレゼンテーション以外にも様々なビジネスシーンで活用することができます。今回ご紹介したストーリーテリングのポイントを活用して、ぜひ今後のビジネスに役立てていただければ幸いです。
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